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第三章〜戦士の国アグド〜
第三章最終話✡︎結ばれた二人✡︎
しおりを挟む(姉上、この事は秘密にして下さい。
天界に知れても、私は今の幸せを守りたいのです。
姉上がトールを愛した様に、私も地上の者を愛しました。
姉上がトールの子を宿しても、暗黒の世界でお育て出来るでしょう、暗黒の世界ならトールも逢いに行けるでしょうが……
いつか真実を伝える時は必ず来ます…
そう遠くない未来に……
それまで、どうかお許しを)
アルベルトがそう心でオプスに伝えた……
オプスは微笑んで多くの者に伝えた。
「不思議な物ですね……
深き愛それも
死ななければ叶わない愛……
ヘブンス……レジェンドよ……
闇の女神オプスの名において
祝福致します。
星よ瞬き月よ陰る事なく
輝きなさい
夜空よ波打ち光よ舞い踊りなさい
見えぬ星よ美しく流れ
生まれ変わりなさい」
闇の女神オプスがそう言うと、夜空に美しい異変が起きた!
夜空一面にオーロラが現れ、数えきれない程の流星が現れては消えそして、星々の輝きがまるで夜空に埋まり切らず、落ち来てしまうのではないかと言う程に美しく彩られる。
闇の女神オプスは美しい夜空を送り、全ての者に礼と喜びを分かち合いたかった。
全ての者が今まで見た事の無い完美なる夜空が広がり、今までこの場が戦場であった事を忘れさせた。
それだけでは無く、命を落とした者達の骸から白い光がゆっくりと天に舞い上がり、星と見分けがつかなくなる程の数が高く舞い上がって行く……魂たちだ……
そして冥界の亡者達の骸は全て、星々の光と月の光によって浄化されていき静かに消えて行く……
闇の女神オプスとして光ある魂を天に導き、冥界の者の魂を母なる無に導いていた……
「美味い酒が飲めそうだな、皆の者!
命を落とした戦友と共に酔おうではないか‼︎」
ダンガードがそう言い、速やかに戦場を後にする。
グリフは隊を率いてゴブリンの軍に合流し、今の戦いを共に戦い生き抜いたことを皆で喜ばないかと誘う、ゴブリン達もこの美しい夜空の下、彼らの主神オプスの意思を見て争う気は無くその誘いに乗ってくれた。
「きれい……」
ユリナが夜空を見上げそう呟いた時に、オプスはユリナの元に舞い降り、ユリナの顔をまじまじと見る。
ユリナはかしこまり丁寧に礼をすると、
「そんなに堅くならないで良いですよ。
今はただのオプスとして居ますから」
「ただの……オプス?」
「女神として居たらトールに甘えられないでしょ?十万年も待ったんですから。」
そう言うと、一人離れた場所にいたユリナの手を引いてオプスは皆んなのいる所に向かって歩き出した。
ユリナはその手の温もりから、オプスが本当に喜んでるのを感じ、それと同時にとても近い親戚の様にも思えた。
「ユリナさんってお父さんに似てますね、心の色も似てますから、思ったことそのまま聞いちゃう感じですか?」
「子供っぽいウィンダムはいつ大人になるんですか?」
ユリナが笑顔で聞くと、オプスは口を押さえ楽しそうに笑い。
「トールに言っておきますね」
そう答えてくれた。
ユリナはオプスに親しみを感じ仲良くなれそうな気がして嬉しくなり、オプスも全く同じ様に嬉しくなっていた。
そしてかつて愛し続けた地上に今いること、トールが永遠と言っても過言ではない時を愛し続けてくれたことに幸せを感じていた。
オプスとユリナはトールが待つシェラドの陣に着くと皆が陣の前で待っていた。
「戻りましたよ、トール」
オプスが優しく美しい笑顔でトールに言う。
紫の髪が風に僅かになびき、髪に現れる星々がまるで散りばめられていく様な、そんな錯覚を思わせる。
透き通る様な白く美しい肌、愛らしく幼さを残しながらも綺麗な顔立ち、紫の唇が白い肌の中で際立ち色めいている。
そして瞑り続ける瞳がなんとも言えない、不思議な魅力を漂わせる……
神秘的な美しさに誰もが目を奪われる。
トールは歩み寄り、オプスを抱きしめた。
力強く抱きしめる……
オプスは昔から変わる事の無い、猛々しい愛をその身で感じて涙が溢れて来る。
オプスは思わず自らトールに口付けをし、トールは深い口付けで返した時に……
静かにユリナが拍手をし、それに次々と皆が続いていく、いつしかその場に居る全ての者が手をたたいていた。
凄まじ程に皆が二人を祝福していた。
キスが落ち着きトールが一言言う。
「オプス、一つだけ急いでやる事がある。
楽しみはその後にしないか?」
「やる事?」
オプスが不思議そうに聞き返す。
「相変わらずだな……俺の女神様は」
そう微笑み口に指を当て口笛を強く吹くと、さっきトールが乗っていた馬が帰ってくる。
「あいつらに一言オプスから言ってくれないか?オプスが居なかった十万年の間、俺が滅亡に追い込んでしまったにもかかわらず……あいつらは使命を忘れずに誇り高く、ゴブリンとしてタナトスに挑んで行った……」
トールはゴブリンの軍の方を見ながらそう言う……
トールはクリタス王国時代の最後の王子であり、あの最後の戦いに違う結果を残せた筈だと多くの仲間と出会い気付いていた。
せめて……彼らの真の主神である闇の女神オプスから言葉を送ってやりたいと思っていた。
「トール、相変わらず優しいのですね。
でも女の子はあまり待たせるものでは無いですよ」
「あぁ、解ってる」
「十万年も待たされたのに……
女神としてあなたの為に行きましょう」
オプスがそう言うと、トールは馬に乗りオプスは抱かれる様にトールの前に乗る。
「悪い!ユリナ少し行ってくる‼︎」
トールは形式上ウィンダムとして地上に送られた為に、オプスが主神であるがユリナも主人である。
その為にユリナに一言言い馬を走らせた。
オプスはユリナが光神ルーメンの血を引く者、つまり後に女神になる存在である事に気付いている為に、トールはウィンディアを含め最終的には三人の主神を持つ事になる……と考え……
(トール…あなたって人は、本当に素晴らしい神話を生み出し続けるのですね。
ありがとう……愛してくれて……)
そう心で呟いた、トールは暗黒を通してそれを聞き優しく微笑む。
ノウムの月も陰ること無く、二人の愛を微笑み見つめる様に輝いていた……
ユニオンレグヌス~第三章 戦士の国アグド~完
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