✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第四章 変わりゆく時代〜

74話✡︎未来の女神✡︎

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 ダクタリオス達も黙ってしまった、そこにベルガルが言う。
「ただ、一つ条件がある。
我がアグドと同盟を結んで欲しい、友好的な同盟を結んでくれれば今で通り、パルセス方面の部隊はそのままクリタス山脈に配備しておく事をお約束しよう……」
「つまり……」
ダクタリオスが呟くとダンガードが答える。

「勘違いするでない、パルセスと戦をする気はない、相互防衛を含む同盟と言う訳だ」

「友好的な同盟とは?」
ダクタリオスが聞いてくる。
「このベルリス温泉にアグドの交易拠点として街を作る。

商業も兼ねてだ、そなた達のクリタス山脈で取れる食料や鉄、星屑の鉱石などをここで売って欲しい……」
ベルガルがそう持ち掛ける。

 ベルガルはゴブリン達との繋がりを、より良い関係を求め提案した。

(なるほどね……面白そうじゃない)
エレナが微笑みながら心で囁く。

 星屑の鉱石は希少価値が高い、そしてそれを求めドワーフの商人などが通う様になれば、大金を落としていく……
 そして人が集まればその人々もお金を落としていく。
 ゴブリン達に売り上げの僅か二割程を税として課しても相当な収入になる……
 その構想が実現すれば、アグドは経済力も兼ね揃えた大国に成長出来る。


「良かろう……
だが最終的に決めるのは明日到着する我らの女王、トルミア様がお決めになる。
同盟となると我らでは決めることは出来ぬ、あと出来ればでいい……
トール様にご帰還願いたい」
ダクタリオスがそう言った時に。

「悪いがそれは出来ねぇ……」
トールが入って来た。

「トール様!」
ゴブリンの指揮官達はトールに跪く。

「英雄だがレジェンドだが言われてる様だがな…俺は今のままがいい……
俺が帰るとなれば、ユリナも連れて行かないといけない。
それは出来ねぇ……」
 トールがそう言うと光だして、直ぐに収まり幼竜のウィンダムの姿に戻り話しを続ける。


「見ての通り、俺は風の守護竜として生まれ変わったんだ………
俺はオプス様も守らなければならないがユリナも守る使命がある。
このエレナの娘をお前達の街に連れて行く訳にはいかねぇんだ」
ウィンダムはそう言い何かを必死に隠していた。


 トールはクリタスをあの戦いで滅ぼしてしまった……彼が滅ぼしたと言っても過言では無い……
 今回タナトスと戦い、愛するオプスを救ったことで周りに多くの力のある者が共に戦ってくれた事に気付いていた。
 そして十万年前にユニオン時代の諸国に呼びかけていれば、各種族の英雄が集ってくれた筈だった……あの悲劇を回避出来たのでは?と自ら問い詰めていた……

 戻ってやりたい……だが今はやらねばならぬ事が多い、中でもユリナを育てなくてはならない……


 ユリナが偉大な女神に成長出来るように……


 トールには様々な想いがあり、トールの姿では直ぐに悟られてしまう。
 その為にウィンダムの姿に戻ったのだ、だがリヴァイアサンはその気持ちを読み取り、エレナも理解していた。


 そう……神々でも予知したのはアインとクロノスだけの限りなく無に等しい奇跡……

 ユリナはドラゴンの血を引いている。
 過去にタナトスがアルベルトの命を奪った時、エレナはあまりの怒りでリヴァイアサンと同化しドラゴンナイトになった。
 エレナの血肉はリヴァイアサンの血肉と混ざり、それがユリナに流れ込みユリナの血肉と混ざり合った……
 そしてアルベルトがヒューマンであり、母親がエルフであり、ユリナは元々ハーフエルフである。
 その上に光神ルーメン(アルベルト)の子、神の子と言うのはエレナは知らないが、ユリナが竜の血を引いている事は理解していた。

 だがクロノスとアインは全てを見通している、ユリナは竜の血を引く神の子であり、エルフとヒューマンの血も引いている……
 正にエレナが起こした、愛とその裏にある憎しみ、その二つが一つになり産み出された奇跡の命なのだ……

 そこまで知らなくともエレナはユリナが間違った方向に育てば、冥界をも超える災いに育ち兼ねない……そう察して、大切に母親としての愛情を注いで育てて来たのである。


 ユリナが成長するにつれて神々は機会を伺っていた、ユリナを神聖な道に導く機会を……
 アインとクロノスは、ユリナがタナトスと戦う機会がある事は簡単に予知していた。
 その為にウィンディアの助言を聞きいれユリナを導く為、そしてオプスを救う為にあの時にウィンダムを送ったのだ。


 だが……その当の本人は多くの偉大な存在に見守られている事を全く知らず……

「ウィンダム……ちょっと此処には来ないって言ってたでしょ!
あ、すみませんお邪魔しました。」
 この場でトールからウィンダムに姿を変えたのも知らず、捕まえ抱き抱えその天幕から出て行った……


(教えなきゃいけないのは剣だけじゃ無いな……解ってはいたけど……
それはエレナにお願いしよう……)
ウィンダムは心で呟いた。
「なんか言った?」
「いや、何も……」


「ユリナさん、ウィンダムは何か大切なお話をしてたんじゃないの?」
カイナがユリナに言う。
「そうなの?」
「もう気にしなくていいよ、エレナがまとめてくれると思うから……」
ウィンダムは遠い目でそう言った……
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