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〜第四章 変わりゆく時代〜
85話✡︎気持ち✡︎
しおりを挟むフェルミンはエレナの話に乗った。
クリタス平原の返還の話を、パルセスで父のファルドクス国王に話す事にした。
そして今のままエレナとファルドクス国王が話しても、この話は纏まらない事も気付いていたがフェルミンはあえて話さなかった。
フェルミンは見たいと思った、エレナの最後に打つ一手を……
そしてカルデアでの三日が過ぎて、オーク達はアグドに帰って行った。
エレナ達も屋敷に帰る途中でフェルミンのお店に立ち寄り、エレナはフェルミンのお店に水の守護結界を張った。
フェルミンがパルセスのお姫様と言うことが知れたからだ。
そもそもフェルミンのお店にはその手のまじないは施されているがより強くしたのだ。
その時カイナの様子がおかしい事に誰も気付かなかった……。
フェルミンはエレナの屋敷にもそのままついて来た。
「エレナさん、ちょっと私サランに帰るね。気になる事があるから様子見て来るよ」
カイナがエレナにそう告げて、屋敷にも入らずサランに向かって行った……。
カイナの部屋は綺麗に片付けられていたが、まだ少し荷物があるのを見て、エレナはほっとする。
また来てくれるんだと思えたからである。
一つの出会いと一つの別れは対となる……
エレナは古い言葉を思い出し部屋の窓を開けて青空を見上げた……。
その日エレナは屋敷でゆっくりした、アグドでカナとアヤと別れ、セレスに帰りカイナと別れた。
誰かと出会えば必ず別れる時が来る、エレナは理解していたが、やはり寂しさを感じていた。
翌日、王宮にユリナと向かいその途中でフェルミンはお店に帰って行った。
エレナは王宮で、王立図書館での保証の件が滞りなく進んでいるかを確認し、セレティア金山とグルカスの闇鉱脈の開発を行う事を、シンシルと王宮の大臣と話し合う。
その中でもカルデアの要塞開発予算の縮小も話し合う。
アグドと争いが起きる可能性が低くなった今、カルデアの要塞開発をする必要性は断然低くなった為に容易な話であった。
シンシルは終始微笑みながらエレナの人を引っ張る姿を見守る。
エレナは感じていた、解っていた。
シンシルよりもエレナの発言力がましていると……時代が変わろうとしている、エレナの時代に変わろうとしている事を……。
まだ決定には至らないが話し合いはほぼ纏まる、翌日更に細かい事を話し合い、シンシルが承諾すれば決定となる。
エレナとユリナは王宮を後にし、帰りにフェルミンのお店に立ち寄る。
フェルミンはいつも通りお店をやっていた、エレナとユリナはフードをかぶり髪を隠し、いつもの席に座った。
他のお客さんが何時もより多く賑わっていた為だ、エレナの髪は目立つのでそういった場所ではゆっくり出来ない事がある。
フェルミンは気付いているが、エレナ達に合わせて素知らぬ顔で注文を聞いてくれる。
二人はアイスクアパを頼み色々と話していた。
「こうやってここでクアパを飲めるのも、もう少しなのかな?」
ふいにユリナが言う。
「そうかもね……フェルミンがもし女王様になったら、パルセスまで遠いからね。」
「はいお待たせ~」
フェルミンが二人分のアイスクアパを持って来て、忙しいそうに他のお客さんの注文を聞きにいく。
エレナとユリナは少しゆっくりして、フェルミンに代金を払うと、フェルミンは可愛く挨拶をして、エレナもフードをかぶったまま笑顔で答える。
そして二人は静かにその場を後にした。
翌日、王宮での話し合いはまとまり、シンシルが承認し、ベルリス温泉開発とセレティア金山、グルカス山脈の闇鉱脈の開発が決定となる。
王宮の大臣とエルド宮の大臣が早急に細かい調整をする事になる。
ここで意外と死力を尽くして最善を尽くそうとしたのは、エルド宮の大臣達だ。
その昔に事を起こしエレナとカナの覚えが悪い者達が、時期女王が確実視されているエレナに少しでも、過去の過ちを水に流して貰おうと全力を尽くした……。
更にエルド宮の大臣はカルデアの開発予算の縮小にも本気で乗り出す。
全てエレナの時代に乗り遅れない様にと、珍しく先々を見通して動き始めた。
エレナは彼らの動きを見て小さく笑いながら何も言わなかった。
パルセスとの交渉に乗り出す為には、彼らの力も必要だからだ。
ユリナは感じていた、母エレナがその気になっていると、斬り合い殺しあう戦場で無く、話し合う言葉の戦場に出向く支度をしていると……。
帰りに昨日のように、フェルミンのお店に立ち寄ると、丁度フェルミンがお店を閉めていた。
「どうしたの?今日は早くない?」
ユリナが聞く。
「パルセスに行くのに食材を全部売り切ったからもう閉めようかな?って
痛んじゃうと勿体ないから
仕入れないでおこうって思ったの」
フェルミンが売り切ったと言う満足げな顔して言い、エレナに頼みごとをして来た。
「ねえねえ、今日からエレナさんの屋敷に泊まっていい?
あと、パルセスに行く間、うちの武器屋の商品もエレナさんのお屋敷で預かってくれないかな?
出来れば売り上げも」
「構わないけど、どうして?」
エレナが応える。
「いいじゃんいいじゃん訳なんて」
フェルミンはそう言いながら、馬車を出しに行った。
フェルミンは考えてたのだ、自分がもし女王になるって本当に決めたら、エレナとそう簡単に会えなくなる。
エレナも女王になれば、互いに国を離れにくくなる、だから少しの間かも知れないがエレナの屋敷に居ようと思ったのだ。
「フェルミン!うちでクアパ作れる?」
ユリナが聞く。
「きっとエレナさんのお屋敷にも材料あると思うから、良ければいれるよ」
「じゃ、おっねがい」
無論、エレナの夫アルベルトが光神ルーメンだと言う事をフェルミンも知らない、そしてユリナが偉大な六大神の血を濃く引く神族だと言う事もまだ誰も知らない。
「なんでこんな時に……」
その頃カイナは、一人涙を流して孤独な道を歩いていた、カイナはエレナ達の道を共に歩みたかったがそれが叶わなくなってしまったのだ……。
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