✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第十一章 メモリア・黒い天使〜

184話❅勲章❅

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 クイスはパリィを心配させない様に計らった、パリィはセクトリアに帰ると、グラムが狩に行く仲間を連れて来ていた。


「パリィ様
これから狩に行く者達に祝福を」

 グラムがひざまづき丁寧に祝福を求めて来た。

パリィは微笑み瞳を瞑り唱えた。


「大地の女神テララよ
冬の女神ヒエムスよ
我らに糧を恵みを授け下さい。
我ら自然に生きる者に
祝福をお授け下さい

北の地に住みし我らに
母なる大地の揺り籠に住みし我らに
その温もりを御授け下さい……」


 すると春だと言うのに冷たくも優しい、北風が吹いた、辺りは冷えるが何故かその場にいる全ての者の体が暖かくなる。


「よし!祝福を頂いた。
お前ら行ってこい!」

 グラムが指示をだしカルベラの者達が、まだ雪の残るグラキエス山脈に向かって行った。


「パリィ様!
セディナの方から騎馬十機
白旗を掲げこちらに来ます!」

 見張り台の護衛団が慌てて伝えてに来た、パリィはセディナ側の入り口にグラムと急いだ。

 確かに騎馬が此方に来る、アンデットでは無い、その者達はセクトリアに着きマルティアの旗に驚いていた、ただ一人を除いて。

 パリィは暖かく迎えると、その者達は馬から降りて礼をし、老人が丁寧に挨拶をしてくれた、驚かなかった人物だ。


「私はセディナより北にあります
コルクスの村を治める
ガイべと申します」

ガイべと名乗る者が丁寧に言う。


「私はパリィ・メモリアです
このセクトリアと
カルベラの村を預かる者です」

 パリィも丁寧に答えるが、ガイべはパリィに驚かずに話した。

「夢の通りでしたな……」

「夢?
どんな夢を見たのですか?」

パリィは不思議そうに聞き返す。

「セディナが輝いた夜
黒い服を着た老婆が夢に現れ。

セディナから東に見える街に行け
其方の悩みはそれで晴れる。

と言われたのです」

ガイべが言う。

「解りました
詳しい話は
私の屋敷でお聞きしますね」

 パリィは笑顔で老人を屋敷に案内する。

 老人はパリィの屋敷の応接室に案内され、テリアが紅茶を入れて来てくれた。

 老人は一口紅茶を飲み、落ち着いた様子で話しだした。


「私が治めるコルクスの村は
五百人程の村で
セプテント山脈で銀を採掘し
生計を立てておりました

ですが、昨年採掘してました鉱山が崩れ
採掘も出来なくなってしまい
私は村を今までの蓄えで
維持して来ましたが
次の冬は越せそうにありませぬ

どうかコルクスの村をお救い下さい」

 パリィは老人の声から何か悲しさを感じたが、あえてそこには触れなかった。

 そして一つのことを聞く事にした。


「ガイべさんは
私の事をご存知なのですか?
先程驚かなかった様ですが……」

 パリィはそれに少しの疑問を持っていた、ガイべは人間で長くても百歳程までしか生きれない、当然パリィと面識は無い。

 マルティア時代にも生まれて無かった筈だ、パリィはそれが不思議に思えた。


 ガイべは袖から箱を取り出した、そして箱を静かに開け、布に包まれた何かを取り出してテーブルに置いた。

「これをご覧下さい。」

パリィはそう言われ触れてみる。

 触った感じから懐かしい感覚があった、ゆっくりと布を開けて中の物を見て、懐かしさが込み上げてきた。

それは勲章であった。

 マルティア時代に使った高位の勲章で、尚且つ、地位や生まれに関係なく得られる勲章が三つあり、その一つであった。

 シールドと雪の印が入った勲章、ガーディアンの勲章であった。

 全てにおいて、弱き者の為に力を尽くし剣技や精神的な強さを兼ね揃え、尚且つ英雄的な働きをした者に与えられる勲章である。


 その勲章を授与する時は、必ずパリィ自らの手で授与していた、マルティアの者にとって最高の名誉である。




「これは……
カプリセスに与えたガーディアンの勲章
ガイべさんは……」

 過去にこの勲章を授けた人間は、英雄カプリセスしかいないその為にすぐに解った。


「やはり誠の女王様でしたな

カプリセスは私の祖先にあたり
代々この勲章を名誉とし
受け継いで参りましたが

私は一人息子を
先程お話ししました鉱山事故で
亡くしました
いづれコルクスの村は長が
居なくなり

 この勲章を受け継ぐ者も
居なくなってしまいますので
お返しいたします


パリィ様……
コルクスの村も勲章と共に
パリィ様の元にお加え下さい
セクトリアの人々を見れば解ります
皆生き生きとしています
良い治め方をされているのが解ります。

カプリセスの一族最後の願い
どうかお聞き下さい……」

「解りました
コルクスの村はご安心下さい

でもガイべさんも諦めないで下さい

血縁を頼る事や
良い子を養子を迎えるなど
色々と考えてみて下さい……

私も何か考えますので
気を落とさないで下さいね」

 パリィは優しくガイべに言い、今日はセクトリアに泊まる事を勧めた。

 その晩パリィは、コルクスの人達を歓迎し、細やかな酒宴を催し、ガイべとコルクスの人達と交流を持ち、穏やかな夜を過ごした。

 その晩、酒宴が終わりパリィは屋敷の裏庭で剣を振っていた。
 まだ夜は涼しく爽やかな風が時折吹いている、今夜もメーテリアはパリィの屋敷にいる。

 メーテリアもマルティアが再興した折には、パリィの側近としてパリィの近くに昔の様に控えるのだろう、パリィにとって、今も昔もメーテリアがそばにいる事に違和感は感じない。

「パリィさん
誰か来るってメーテリアさんが
言ってるよ~」
テミアが教えてくれた。

「うん?もう来てるよ
セド隠れてないで出てきなさい」
パリィが言う。

「よ!いつから気付いてたんだ?」
 そう言いながら、セドが裏の入り口から入って来た。

「いつのまに!」
メーテリアが急いで裏庭に来た。

「いよ!
俺がダークエルフってのを
忘れてないか?」

 ダークエルフ特有の黒い瞳の力、ダークセンスは意識すれば気配もある程度であるが、消すことも出来る。


「だからって
パリィ様のお布団に忍び込むのは
メーテリアの特権なのです!」

 無論パリィはそんな特権を一度たりとも与えた記憶はない、いや、むしろそんな特権は、メーテリアしか考えてないだろう。


「まぁなんの事か解らないが
剣の相手してくれないか?」

 セドはそんなことに興味は無い、ただ雇って貰うのがセドの目標である。


「えぇ、此方こそお願いします。」


 パリィとセドはメーテリアを鮮やかに無視して互いに剣を構えた。

 メーテリアは仕方なく庭の端に座る。

 二人の瞳が真剣な目つきに変わり視線が交わった時、二人同時に斬りかかる。

 二人とも上から斬りかかり、刃を交えそしてパリィが素早くいなし美しい軌道を描き次の斬撃を入れるが。

 セドは素早く躱し、僅かな距離を取りパリィの下腹部目掛け素早い蹴りを入れてくる、パリィはとっさに後ろに飛んで躱して距離を素早く詰めて斬りかかる。

 セドは感じていた、以前よりパリィの足の運びが良くなっていて、なかなか蹴り払えない。

「パリィ様
まだ剣が戻りませんね」
メーテリアがそう言いテミアが聞いた。

「え、昔はもっと強かったのですか?」

「えぇ
パリィ様の剣先を線で描いていくと
解るんだけど
少し乱れてるかなぁって気がするの
だからちょと昔より遅いなぁって……」

メーテリアが言う。


 パリィも薄々気付いていた、幾ら剣を振っても何か納得出来ない所があったのだ、それをメーテリアが言ってくれた。

 パリィは思い出しながら、かつての自分の剣を意識し始める。

 そして、次第に正確性が増し僅かな違いが生まれた、それを一番感じたのは、セドだった。

(クッ!速くなりやがった)

 今まで対等だった力の均衡が崩れ始める、セドは守りが多くなり、一瞬だがほんの一瞬だが躊躇った時、パリィの剣がセドの右肩をかすめた。


「はい
私の勝ちね」

 パリィはそう言いながら微笑み、剣を鞘に納め指輪にしまった。

「セド?明日もお願いね
やっぱりセド位の腕が無いと
稽古にならないね」

 パリィの相手を出来る人はなかなか居ない無論パリィも本気では無い。

 だが走り回りながら速い剣を振る時は正確性が重要で、確実に一点を切る事にパリィは小さな不安があった、マルティア時代には無かった不安をパリィは取り除きたかったのだ。

「勿論だ
明日は絶対に負けないからな」

セドはそう言い帰って行った。
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