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〜第十一章 メモリア・黒い天使〜
185話❅狩の拠点❅
しおりを挟む翌日パリィはガイべにマルティアの旗を何枚か渡し見送る為に、セクトリアの西の入り口に来ていた。
そこにグラムが来た。
「はて、この者は昨日も……」
ガイべが不思議そうな顔をして言う。
「ガイべ殿
私はカルベラの村をパリィ様から預かる
グラムと言う者です
お見知り置きを……」
グラムもガイべが過去にガーディアンの勲章を受け取った、カプリセスの子孫である事を聞いて敬意を払っていた。
「カルベラ……グラム……
盗賊のグラムか?」
ガイべが初めて驚いた様子を見て、パリィが説明した。
「カルベラの村は
マルティア国の
カルベラ隊が生き残って下さった方達です
カルベラが盗賊になってしまったのは
千年前の私の責任です
コルクスの村にも迷惑を
おかけしたかも知れません……」
パリィが責任を感じている様に話す。
「パリィ様
盗みをしたのは我らの非
その罪を償う為にカルベラ隊は
千年前よりも命を賭して
マルティアに全てを捧げます」
グラムは与えられたアソオスの名に恥じない誓いと、戦士らしい力強い礼をパリィ見せ忠誠を示そうとする。
ガイべはそれを見て、パリィの元に足を運んだ事を正解だったと確信した、そしてある想いを胸に秘めて、コルクスの村に帰って行った。
数日後にはコルクスの村でマルティアの旗がはためく、僅かだがパリィの勢力が広がった。
その後グラムはバイドに用があるのか、魔法道具屋を建てているバイドの元に向かった。
パリィは屋敷に帰り地図を広げて、セクトリアから少しシャナの森の方に行った場所にパリィは苗木を育てる場所を決めた。
パリィの屋敷の裏に植えた苗木が芽をだしたのだ。
だがまだまだ植えないといけないので、その場所で苗木を育てる農園を作る事にしテミアとテリアに柵を作る事を頼んだ。
テミアとテリアの二人が悩み始めた時に、パリィは大金を持ってクイスを訪ねた。
そこでクイスと話して、鍛治に必要な物を一式、テリングから買った、パリィはテミア姉妹に、鍛冶屋を建ててあげようと思ったのだ。
セクトリアにはまだお店が少ない、鍛冶屋は多くの生活に必要な物を作り出せる、それ以外にも鉄器の手入れや修理もできる、無くてはならないお店だ。
クイスは安く売ってくれた、普通は五十万クルトはするが、二十万クルトにしてくれた。
「本当に良いのですか?
こんなに安くして頂いて……」
パリィが聞く。
「なぁに
これからのテリングと
マルティアのお付き合いを考えれば
安い物ですよ」
クイスは笑顔でそう言ってくれた。
今は雪解けも進み、早馬を出せばテリングから一ヶ月半程で届くだろう、パリィはこの日程も考え始める。短縮出来なくても、半分くらいの期間である程度のやり取り出来ないかと、千年前、マルティア国は基本的に決まった交易国は無かった。
大国になる前から、各村々の交易ルートを使っていた為に、あまり悩まなかったのだ、
パリィは悩みながら、歩いて帰っている時にふと思いついた。
交易の拠点と中継地点を作れば良い、そう思いついたのだ、だがまだそれ程の力がセクトリアには無い、後二年は先になるとパリィは考えていた。
それから数日経ちグラムに使いが来た、狩に行った者達がグラキエス山脈の麓に、狩の中継地点を作った知らせだった。
グラムはその場所を地図に記してパリィに報告に行った、パリィは屋敷にいてメーテリアと書類を作っていた、食料の管理やセクトリアの資金や、細かい事に手をつけていた。
幸いメーテリアはマルティア時代に政務も担当していた、優しい性格のメーテリアは、街の人々の暮らしを考えるのも好きであった為に、政治的な事もだいぶ学んでいた。
そこにグラムが来てパリィに報告をして地図を見せた、パリィは悩み始めてグラムに聞いた。
「この狩の拠点って
小屋は何棟ぐらいあるのですか?」
パリィが考えながら聞く。
「うん?大した小屋じゃないさ
雨風を凌げて暖を取る程度の
掘立小屋が五棟位だ……
あとグラキアを繋ぐ獣小屋を
簡単に作る程度だがどうした?」
グラムが言う。
その場所がパリィには丁度良かった、交易の中継地点として街を作りたかった場所だった。
グラキエス山脈の麓、パリィ達が極北地域に来た東の街道の入り口に当たる場所だった。
「メーテリア
明日建設に何人送れそうですか?」
パリィが聞く。
「四十人程なら……
此方の建設も進んで来たので
大丈夫だと思います。
何日ですか?」
メーテリアが言うと、パリィはサッとメモを書いてそれをメーテリアに渡した。
「この施設の建設が終わるまでです
資材はシャナの森から調達した分を
こちらから送ります。
あと石材を中心にすればもう少し
丈夫な拠点にしましょう
グラムさん
資材は最初から不足すると思いますので
その都度こちらに使いを送る様にしてください」
パリィがそう説明する間に、メーテリアはそのメモを書き写し、それをグラムに渡した。
「解ったが
そこを後でどうするんだ?」
グラムがメモを見てから聞く。
「交易の中継地点として
まだ先なりますが街を作りたいのです。
それまでの間
狩の拠点として活用しながら
少しづつ準備して行ければと思いますので
お願いしますね」
パリィは微笑みながらそう言った。
「なる程……
それは有難い向こうに行ってる奴らも
多少は良い寝床で休めるって事か
じゃあ明日の朝に
案内をここに来させるから宜しく頼む」
そう言いグラムはカルベラに戻って行った、パリィは護衛団を呼びその手配を指示し、書類作りに戻り羽ペンを走らせる。
其れから十日程経ち、天気も良く晴れた日パリィは苗木の農園に、ピルピーに乗ってメーテリアと様子を見に行った。
「パリィ様
グラキアの農場にしては
狭く無いですか?」
メーテリアが聞いてきてパリィはハッとした。
パリィは忘れていた、グラキアの牧場を作る事を、急にピルピーを蹴って走らせる、メーテリアが馬で追いかける。
土地を探してる様だ、頭の中にある地図で手ごろな土地を。
「パリィ様!
忘れてたのですか~!」
メーテリアが追いかけながら叫ぶ、マルティア時代にも度々あったのだ、パリィが大切なことを忘れる時がある、その為にメーテリアは察しがついた。
パリィは必死になってあたりを見回す。
(パリィ様!昔と変わりませんね。
急に慌てだして必死になられる姿も
また魅力的ですぅ~
でもそう言う時はメーテリアに
お任せ下さーい‼︎)
メーテリアはニマニマして追うのをやめて、セクトリアの西門付近に先回りした。
暫くしてパリィは西門の方に、ピルピーを飛ばしてやって来た、屋敷に戻り地図を取りに来たのだが、パリィの前にメーテリアが馬に乗ったまま前に出る。
「パリィ様!お待ち下さい!」
メーテリアがパリィを止める。
「メーテリア
急いでるのです通して下さい」
パリィは必死になって言う。
「パリィ様?
左手側、北をご覧下さい」
パリィはそう言われ北を見ると。
西門から北は広い草原で、その先にカルベラの村がある、だがそのだいぶ手前に僅かな窪地がある。
「パリィ様
あの窪地使えませんか?」
メーテリアが指差して言う。
「え?」
パリィは考えていると。
「東のピルピーの川から水を引いて
あの窪地を経由して
セクトリアの南に作っている農地を通して
ピルピーの川に戻す水路を作れば
あの窪地をグラキアの水飲み場にして
牧場を作れると思いますが?」
メーテリアが考えたグラキア牧場をパリィに説明する。
パリィは考え、メーテリアの案を頭の中で、子どもが描く様な絵でイメージした、パリィは理解した多少手間はかかるが、その水路を作ればかなり効率的である事を。
「それ……良いですね。
ですが
水路を作る時間は有りません」
パリィは考えながら言う。
「パリィ様?
まずは柵と鹿小屋を作れば良いと思います
多分ですがあの窪地と川の距離からして
百人で二週間程で出来ます
その後はおよそ二百人で一ヶ月半
秋までには完成しますよ」
メーテリアの見立ては、パリィが見てもほぼ同じ位の見立てであった。
(メーテリア昔と変わらないね)
パリィはそっと微笑み。
「それで行きましょう
メーテリア貴女にお願いしますね」
そうパリィが言ってゆっくりとセクトリアに入っていく。
「はいパリィ様」
メーテリアはおしとやかに応え、パリィに続いた。
パリィもだいぶメーテリアには助けられている。
『白き風』とは言え小さい街の管理でも一人では、時折忙しくて忘れてしまう事がある。
パリィとメーテリア、二人でセットと言われたマルティア時代を静かに思い出していた。
そして屋敷についてテミア姉妹に、その場所に牧場を作る事を伝えると。
「パリィさん
ちょっと人手が足りないですよー」
テミアが初めて困った顔で言って来てくれた。
確かにセクトリアは今、多数の開発を抱えている。
まず、街作りこちらは今テリングの兵達の宿舎を作っている。
テリングの兵達も長期滞在が決まり、喜んだ者達も居る、セクトリアの女性と恋仲になった者もいるのだ、微笑ましい事だが、野営地で長期滞在は心身共に疲労が大きくなる、その為に宿舎を建設している。
それ以外にも農地開拓、植林用の苗木農場、グラキエス山脈の狩の拠点などなど、まだ人口千五百人間程の街で、尚且つ護衛団とテリングの兵達での開発には限界があった。
更に街の人々も、開発が進むにつれてお店も建て始めている、街としての機能が着実に少しづつではあるが、出来初めていた。
「とりあえず
簡単な柵を作るしか出来ないと思います
資材は問題ありませんが
今は人手がどうしても足りないです」
テリアがそう言ってくれて、パリィはそれを受け入れて翌日から簡単な柵作りが街から少し離れた例の小さな窪地付近で始まる。
パリィはテリア姉妹が、言われた事にちゃんと意見出来るのか気になっていた、無理なら無理と言ってくれた方が、違う方法や今の建設を見直す機会になる、テリアとテミアはちゃんとそれを言ってくれ、少し嬉しかった。
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