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いじめられっ子がいじめっ子に復讐を決意するまでの話

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 体に激痛が走り、僕は泣きながら目を覚ました。
 痛みで気を失い、それよりもひどい痛みで目を覚ました僕は、素っ裸のままベッドに転がされていた。上向いた目には揺れている天井が映る。身体の上にはいつもの彼が覆い被さっていて、荒い息使いで僕を貪っていた。足は大きく開かされ、その間にはチンポが途中まで挿れられている。このひどい痛みはそれから与えられていた。

「目、覚めたのか」

 身体を前に倒して尻に全てを収めようとする姿勢のまま、ハァハァと肩で息をしながら彼はそう言った。僕は震える手で彼の肩を掴み、向こうへ押しやろうとする。

「や、やめて、草野くんッ。抜いて、抜い、ぅ、ぐぅっ……!」
「…うるせーな」

 抵抗が気に入らなかったのか草野はボソリと呟くと、亀頭までしか入っていなかったそれをグイと無理矢理ねじ込もうとしてきた。気を失う前に大量に入れられたローションがグチュグチュと卑猥な音を立て、滑りをよくしている。にも拘らず、狭い僕の尻の中に草野の全ては入りきらなかった。

「痛いっ、いた、ひっ、ぃっ、や、めて…っ!」
「嘘つけ…ホントは気持ちいいくせに」

 草野は尻を掴み、指を使って無理矢理穴を左右に広げた。そうしてチンポを少しずつ奥に入れようとしてくる。痛くて苦しい。裂ける。やめてほしい。そう思うと勝手に体に力が入り、僕の中はますます狭くなってしまったようだった。

「チッ。さっきほぐしたのに全然入んねーじゃん。」

 舌打ちをしながら草野は僕の尻をバシンと叩いた。彼はほぐしたと言ったがそれは、挿入の前にいきなり指を二本、無理矢理挿れて、二、三回グチグチと中で広げようとした、その行為のことだ。そんなのでほぐれるわけがない。

「力抜けって」
「で、できな…っ」
「できないじゃねーよ。やるんだよ」

 頬を軽く叩かれる。その衝撃で僕の眼に溜まっていた涙が頬を伝って流れ落ちた。草野は僕の身体を折り曲げて前屈みになり、それを舌でベロリとなめ取ってしまう。無理な姿勢になったことで、彼のチンポは尻からヌポリと抜けてしまった。

「…あーあ。やり直し」

 不機嫌そうに低い声で言った後、彼はつまらなさそうな顔をした。怖い。その表情から殴られることを予想した僕は彼の顔から視線をそらす。しかし彼は僕の頬をもう一度なめ、それから唇を重ねてきた。当たり前のように舌が入ってきて口の中を遠慮なくなめられる。それはキスというより蹂躙という言葉が似合う行為だった。
 キスが終わると草野は僕の身体を離し、ベッドを降りた。落ちていた下着をはくと、シーツの上に置きっぱなしだったローションのチューブをこちらに放り投げ、命令する。

「自分で穴、広げとけよ。水飲んでくるから」

 やっぱり、まだ終わりじゃないのか。僕は暗澹とした気分でシーツの上に落ちたチューブを見つめた。

 ここは草野のマンションの寝室だ。そして彼は僕と同じ高校、同じクラスの生徒であり、僕をいじめているグループの中心人物だった。四月に入学してすぐにいじめは始まり、五月に入ってゴールデンウィークが明けた頃、それは暴力的なものから次第に性的なものへと変わっていた。六月の初めにはこの部屋でレイプされ、七月になった今では週に一度ほどこうして部屋に呼ばれ、セックスをする関係になっている。断っても結局は暴力を振るわれて無理矢理抱かれるだけなので、僕は彼に逆らえず従うほかなかった。

 キッチンで音がする。痛みから解放されて少しボンヤリしていた僕は慌ててチューブの蓋を開けた。彼が戻ってくるまでに尻をほぐしているポーズだけでも取っておかなければならない。
 中身を手に取り、横になった僕は自分の尻に指を当てた。

「………っ」

 深呼吸して力を抜き、中指を穴に挿れる。第一関節まで入ったところで一度止め、再び深呼吸した。反対の手で会陰をもみ、緊張を解く。そして反発する肉の壁を押し広げるようにして中指を進めていった。
 時間をかけて第二関節まで挿れたところで一旦止め、一呼吸おいた後で中指に薬指を添わせる。同じように息を吐きながらそろっと中へ挿れた。挿れにくい時は再び会陰をもみ、それから穴を縦に広げるようにして挿れやすくする。

 草野はまだ戻ってこない。この前と同じように恐らくキッチンで水を飲んだ後、リビングのソファに寝転んでスマホか何かで動画でも観ているんだろう。
 そう思いながら僕は二本の指をヌポヌポと抜き挿しした。そうしているうちに、僕のチンポがゆるゆると勃ち上がってくる。自分の指では前立腺に届かないのだけれど、草野とのセックスで偶然彼のチンポが偶然そこをこすり、感じてしまった記憶がそうさせるのだ。

「……は、ぁっ、ん……」

 一度きりではなかったその記憶を追うために僕は目を閉じ、自分のそれに反対の手を添えた。軽く握って優しく上下にこする。そのうちに物足りなさを感じ、中に挿れる指を三本に増やした。ジュポジュポとローションの泡立つ音がする。鈴口からあふれ出た我慢汁を亀頭全体に塗りたくり、手のひらでゆっくりと撫でた。強く刺激しない焦れったさが逆に快感を煽る。その分、尻の穴に指を乱暴に突き立てた。自分の快楽しか求めていないような抜き挿しの仕方は、いつもの乱暴なセックスを思い起こさせる。あのとき、こうして前立腺をこすられて、と僕は過去の記憶を反芻し、偶然与えられた快感をトレースした。

「んっ……あぁ、あっ、あっ」

 彼と同じ律動で指を動かす。ローションが尻の穴からトロトロと流れてくるのも構わず、僕はその行為に夢中になった。意地悪をするように、鈴口に指を引っ掛けるようにして刺激すると、たまらなく感じた。チンポが完全に勃起して切なくなる。出したい。そう思った時、寝室のドアが開いた。

「いい声出してんじゃん」

 第二関節を過ぎたあたりまで指を突き挿れたまま、僕は動けなくなった。閉じていた目を開け、ベッドから視線をあげると、草野がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「……ぁ、あの、ぼ…く……」
「そっちの手、続けろって。こっちは俺の挿れてやっからさ」

 ベッドに上がった草野は尻の穴から僕の指を引き抜き、履いていた下着をずらしてチンポをボロンと出した。それは既にバキバキに勃起していて、根本には血管が浮き上がっている。

「く、くさ…の…く……」
「ほら、指よりもっとイイの、挿れっぞ」

 足を広げられ、動かせないように太ももを押さえつけられた。呆然と見上げた僕の視線の先で、草野は支配者のような目つきで僕を見下ろしている。
 グイ、とすぼまりに亀頭が押し付けられ、そのまま尻の穴が押し開かれた。

「ふ、ぐ、ぅうっ……!」
「…あー、すっげ、気持ちいい……!」

 僕の指が緩ませた穴に、彼の太いチンポがズブズブと入ってくる。指三本なんて比じゃない質量のそれは、直腸の内壁をゴリゴリと粗くこすって指では届かなかった前立腺を刺激した。

「あ、あ、ああっ、やめて、やめてっ」

 僕は目を見開いて頭を横に振った。けれど彼がやめてくれるはずもない。彼は僕をいじめ、この身体を好きに扱っても良いと考えているような人間なのだから。

「ぅ、く、さの…くん、…ぁ…、ゃ、めっ……!」
「……はは。演技? じゃあ、もっと嫌がれよ。そのほうが興奮する」
「…は、ぁ、はっ、ん、……ぃや、だ……」
「お前、無理矢理っぽくされんの好きだもんな」

 抵抗するため、彼の胸を押しやろうと伸ばした両手はあっさりと掴まれた。そのままシーツの上に落とされ、彼の手に押さえつけられる。体重をかけられてしまうと、もう僕にはどうすることもできなかった。
 ニヤニヤとした顔をしながら彼は僕の上にのしかかり、奥まで全部挿れようと腰を小刻みに振り始める。

「やっば。お前のケツ、トロトロなのに奥が締め付けてくるっ」
「ぅ、ぅう…痛い、いた…い……ッ」

 いくら指でほぐしたとは言え、勃起したチンポのような太いものを奥まで挿れるのは無理だ。指では入り口しかほぐせない。中の部分は狭いままで、そこは無理矢理開かれるしかないのだ。好きで締め付けているわけじゃない。
 中が裂けるのが怖くて、僕はベッドの上へとずり上がった。しかし彼はすぐに僕の腰を掴み、奥まで一気に貫いてきた。

「ひぅっ……!!」

 ガツンと殴られたかのような衝撃が腰に走る。

「……はぁー。やっと全部入った。……ん、はぁ、やっぱヤベーなお前のケツ…」

 欲望を中に全て挿れてしまった草野は僕の身体を抱きしめた。それから身体を起こし、僕のへその下あたりをゆっくりと撫でた。

「この中、俺のが入ってんだぜ」

 言いながら腰を動かされ、僕の身体が揺さぶられる。

「気持ちいーだろ。これから中にいっぱい出してやるからな」

 涙がにじんだ目を向けると、草野の顔は上気し、欲情していた。挿れるだけでもこんなに辛いというのに、これから彼が射精し尽くして満足するまで僕は逃げられないのだ。

「一週間、セックスもオナるのも我慢してやったんだから」

 まるで僕のために溜めてやったのだとでも言うような調子で草野が言った。そんなこと誰も頼んでない。そう言ってやりたかったけれど、彼のことが恐ろしい僕は、涙の溜まった目でただ彼を睨むことしかできない。
 草野は僕の腰を抱え上げて前傾姿勢になると、僕の顔の横に両手をついた。そのまま顔が近づいてキスをされる。腰を折り曲げられる形になった僕は苦しいとも言えず、これから訪れる苦痛の時間を思いながら目を閉じた。

 痛みから少しでも逃れたくて、揺さぶられながら自分のチンポをこする。けれど痛いものは痛かった。それを勃たせられないまま、目尻から苦痛の涙が流れる。

「泣くほど気持ちいいのかよ。俺のチンポ、そんなにいいって?」

 草野の声がした。的外れな問いかけに僕は目を閉じたままうなずいた。そうしておけば彼の機嫌を損ねないからだ。ただでさえセックスで痛みを与えられているのに、これ以上の暴力を受けたくない。

「あっ、あっ、あっ」

 パンッ、パンッ、パンッ。

 唇を薄く開くと、彼の腰の動きに合わせて声が出た。痛みが少しマシになる。彼の腰の動きが荒くなり、射精が近いのだろうと僕は予想した。腰を強く掴まれ、肉の打ち付けられる音が強くなる。骨が当たって痛いけれど、言わなかった。
 挿入の角度が変わり、反り返った草野のチンポが腹側にある前立腺に当たって僕のそれが勝手に勃ちあがる。生理現象なのだから、僕のせいじゃない。僕が悪いわけじゃない。そう自分に言い聞かせながら、我慢できずに手を伸ばした。
 固くなりつつあるそれを両手でこすりながら、僕は頭をシーツにこすりつけながら喘ぐ。

「…ん、あっ、あっ、んぁあっ、はっ」
「……マジ、いー声」

 快楽が混じり始めた僕の声を聞き、彼がつぶやくように言う。甘さの混じったようなその声に違和感を覚えて目を開けると、彼が僕を見つめていた。

「俺ので気持ちよくなってんだぞ、お前」

 僕を苦しめている彼を見上げ、僕はただ喘いでいた。

「……かわいーのな、お前」

 そう言った言葉を打ち消すように、草野は動きを激しくした。

 パンッ、パンッ、パンッ。
 グチュッ、ヌチュッ、ヌチュッ、ヌチュッ。

 肉の打ちつけ合う音と、ローションの粘着質な音が混じる。それに彼の荒い息遣いが混じり、僕は耳を塞ぎたくなった。
 しばらく我慢していると、彼が腰を大きく動かし始める。そして僕の尻を穿つようにガツンガツンと強く打ち付けてきた。何度かそうしたあと、彼は一番奥までチンポを突き入れたまま動きを止める。

「…ぅ、ん、くっ……はぁっ」

 ビュルビュルビュルッ。

 眉間に皺を寄せ、目を閉じてうめく。彼はそうして僕の中に射精した。
 後始末のことを考えると、あまり奥で射精して欲しくない。僕はそう思いながら、まだ達していない自分のものから手を離した。彼のものが大きさと固さを失い、身体に与えられる痛みがマシになったからだ。

「…はぁ、はぁ、はぁ。……一緒にってのは難しーな」

 呟き、目を開けた彼が僕のチンポをむんずと掴んだ。

「ひっ!」

 先ほどまで自分で昂らせていた部分を掴まれて、僕は思わず悲鳴をあげた。一体何をされるのか、と恐怖を覚える。しかしそんな僕を意に介さず、彼は掴んだそれを上下にゆっくりとしごき始めた。慌てて止めようとした僕の手は、彼によって簡単に払われてしまう。

「俺がしてやるって」
「や、やめて…」
「ほら。自分でやるより気持ちいーだろ」

 中途半端に勃起していた僕のそれは、彼に少ししごかれただけで固くなり、我慢汁を垂れ流し始めた。

「あ、あっ、やめて、嫌だ、嫌だっ!」
「嫌じゃねーって。嘘つくな」
「草野くんっ、やめて、草野くんっ」

 もう一度彼の手にかけた僕の手は、再び取り払われた。僕のチンポは意志に反し、いまにも射精しそうなくらいガチガチに勃起している。無理矢理なその行為に、僕は両手で顔を覆った。幾度目かの涙が頬を伝う。
 草野は僕のそれから手を離さないままに、再び腰を動かし始めた。僕の中に入ったのでままだった彼のそれは、いつの間にか固さを取り戻していた。

「ここ、だったよなっ」

 コリッ、コリッ。

 言いながら彼は前立腺をこすってきた。その度に僕の体はヒクンッと勝手に反応してしまう。腰が跳ねるさまは、もっと、とねだっているかのようだった。

「あっ、あーー」
「まだイクなっ」

 すぐにでも射精しそうな僕の根本を、彼が指で締め付ける。

「ひ、ぐっ、あ、あ、ぁああッ」

 射精寸前で強制的に止められたせいで、口から涎を垂れ流しながら喘ぐ僕は、それが草野の目にどう映っているかなんて全く考えることなく自分から腰を揺らし、覆っていた顔から離した両手をフラフラと移動させ、根本を押さえられたままのチンポをこすった。

「イキた、イキたいッ、あっ、ああっ」

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。

 僕と草野の視線が絡み合う。彼は顔を赤くし、両手で僕の腰をガシリと掴むと荒々しく尻の奥を突いてきた。ようやく自由になった僕のチンポから、突かれるたびに精液がビュルビュルと流れ出す。勢いなどなく、ただ垂れ流されたそれは、僕の腹の上にボタボタと落ちてシーツへと流れ落ちていった。

「あ、あ、イク、イッてるっ、あ、僕、ああっ」

 頭の中が真っ白になっていた僕は、涙と共に恥ずかしい言葉をボロボロと口からこぼしている。

「まだイクなッつっただろっ」

 草野は怒ったかのような乱暴な言いかたをしながら、まるで僕に罰を与えるかのように何度も腰を奥まで叩きつけるように動かした。そしてそのまま、二度目の射精を行う。奥に出されたままの精液に、新たなそれが混じった。僕の中はきっともうグチャグチャになっているのだろう。腹の中が憎らしい彼の精液で満たされているのを想像して悲しくなり、僕は自分のものから手を離す。
 そのすぐ後、彼の身体がブルリと震え、僕は自分の中での彼の射精がようやく終わったことを知った。



 一度目のそれより長かった射精が終わると、彼は僕の中からチンポを引き抜いた。そして僕の身体をうつ伏せにし、のしかかってくる。

「ま、まだするの…?」
「当たり前だろ」

 射精の余韻で身体がビリビリしている。触れて欲しくないのに、草野は僕の背中を撫でながら答えた。その手が背中を降り、尻を揉んで左右に割り広げる。ブチュッと音がして、尻の穴から精液とローションが混じったものが流れ出てきた。
 彼は僕の腰を抱え上げると、あふれ出たそれを自分のチンポに塗りつけ、そのまま挿入してくる。柔らかいままの僕の尻は、さして抵抗することもなく彼を受け入れた。

「あ、あ、…ん……」
「お前も挿れてほしそーじゃん。ホントは嬉しいんだろ?」

 射精したばかりの僕の中はまだ敏感で、かつ、全ての刺激を快感に変えて感じてしまっているようだった。奥の狭い部分を彼のもので広げられても、まるでそれが気持ちいいのだとでも言うようにピクリと身体が反応してしまう。背中を反らせて声を出してしまう自分に嫌悪感が募るのを止められない。

「奥、さっきので俺の形覚えてんのな」
「は、…あ、…はっ、んんっ」

 割り広げられた尻に彼の陰毛が触れた。後ろから彼の全てを受け入れた形のまま、僕はシーツを掴み、喘ぎながら喉をのけぞらせる。挿れられているだけで彼はまだ動いていないのに、身体の奥にはムズムズとした感覚が生まれていた。一体それが何なのか、知りたくなんかない。

「……他のヤツにヤらせんの、やっぱなしだなー」

 独り言のように言いながら、彼は腰を動かし始めた。

「ほ、かの…、って? あ、あっ」

 聞き捨てならない言葉を聞いた気がして、僕は首をひねって後ろの草野を見上げた。彼は動きを止め、僕の背中に覆い被さってくる。

「ん? …他のヤツらもさ、お前とヤりたいって」
「………っ!」

 そう言って彼は僕の唇を塞ぎ、舌でベロリとなめてきた。さっきの彼の言葉に怖気付いた僕は、嫌悪感で震える唇を恐る恐る開き、彼を受け入れる。こうして媚びておけば、『他のヤツら』にまで同じことをされなくて済むのだろうか。
 目を閉じた彼は少し笑い、僕の口の中をなめ、そして舌を吸った。

「ん、んっ」

 声をもらす僕のあごを掴み、もっと深く口付けてくる。僕の口の中で、彼になめられていないところは、もうない。
 唇を離すと、彼はもう一度僕に軽く口付けた。触れるだけのそれの後、彼は再び腰を動かし始める。

「俺がお前とばっかヤッてっからさぁ、どんだけ具合がいーのか試したいんだってよ」
「あ、あっ、あっ、ほかっの、あ、いやっ、あ、あっ」

 腰だけを高く上げた格好で、僕は揺さぶられていた。喘いでいるせいで口を閉じられない僕は、ダラダラと唾液をシーツにこぼしながら必死に訴える。

「わーってるって。させねぇ、から」
「いや、あっ、やだ、やっ、あ、んっ」
「こら。俺とヤんのはイイ、だろ」

 ズグン、とまた深く突かれた。腰と腹を両腕で抱えるようにして固定され、深い部分で抜き差しされる。竿の太い部分で前立腺をこすられ、亀頭で深い部分をグニグニを押される感覚に、僕のチンポは再び固くなった。
 なぜ。嫌なのに、草野に尻の奥まで突っ込まれて、どうして気持ちいいなんて感じてしまうのだろう。
 僕の腰を腕で抱えていた彼は、そんな僕の変化に気づいたのか、背中に舌を這わせながら言った。

「お。今日こそケツだけでいけそーじゃん」

 そして唇を背中に押し当て、そのまま僕に命令する。

「自分でチンポこすんの、禁止な」

 手を縛る必要なんてない。僕は彼のその言葉だけで手を使えなくなった。

 草野はしばらく僕を背後から犯した後、結局それだけではイケなかった僕に、仰向けになるように言った。一度チンポを抜こうとすると、挿れたまま仰向けになれと言う。諦めた表情をした僕を笑顔で見つめ、手伝ってやると言いながら彼は僕の足を大きく開いた。

「んぅっ…」
「ナカ、こすれて気持ちいい?」

 足を開いたまま腰を回すと、中に入ったままの草野のチンポがありありと感じられた。摩擦で直腸がねじれてしまったような気がする。実際はそんなことはないのだろうけれど。
 質問に答えなかった僕の奥を、彼がいきなり強めに突いてきた。少し休ませて欲しかった僕は、彼に動きを止めて欲しくて答えを口にした。

「あ、ああっ……や、やめて、あ、き、気持ち、い、から、ん、あっ、めてっ」

 気持ちいいと答え、やめてと頼んだのに、彼は動きを止めてくれない。止めるどころか、僕の両方の手首を掴んで上へと逃げる身体を捕まえ、さらに腰を打ちつけてきた。

「き、もちいっ、いいっ、ん、きもちいっ、あっ、いいっから、やめ、てッ」

 何度答えても彼はやめてくれない。見上げると、僕を睨むようにして歯を食いしばっていた。答えるのが遅かったのだろうか。それとも、気持ちいいと言いながら、やめて、と言ったのが悪かったのだろうか。ズンズンと奥を突かれながら、僕は必死になって言葉を続けた。

「きもちい、から、あ、あっ、きもち、い、いっ、くさ、の、くっ、きもちいっ」

 再び涙が溜まり始めた目で、彼の目を見つめながら必死に言う。けれど彼のチンポが何度も前立腺をこすり、先っぽがさっきよりも奥を突いてくるのを感じると、僕の頭は段々グチャグチャになり、あまり物を考えることができなくなった。後ろからされるより、前から突かれたほうが前立腺は刺激されやすく、チンポも奥まで届きやすいのかもしれない。そう思ったのは頭で考えたからではなく、実感からだ。
 僕の口からは壊れた機械のように、先ほどと同じ言葉が漏れている。うわずった自分の声を聞いていると、彼に奥を突かれることが本当に気持ち良いという気がする。だからなのか、僕の腰は勝手に動き、快感を貪欲に貪っていた。

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。
 グチュッ、グチュッ、グチュッ。

 僕は彼の目を見つめるのをやめ、天井を見上げた。喉を広げて意味のない声を出す。そうすると少しだけ残っていた痛みが逃され、快感だけが僕を完全に支配した。頭の中が真っ白になり、勝手に口が動くのを止められない。

 きもちいい。いい。
 あ、あ、そこ、そこをつかれるのが、とても、いい。
 ん、あ、うん、すき、おく、つかれるの、すき。だれに? わからな……あっ、ああっ。
 く、さの? くさ、のくん…あ、あっ。
 すき、すきっ。くさのっくんっ、あああ、いく。いくっ。

 僕は誰かに口を塞がれ、奥まで貫かれた。ヌメヌメとしたものが口を犯し、同時に腹の奥に生ぬるい液体が鈍く叩きつけられるのを感じた。それと同時に強く抱きしめられ、僕も誰かの背中に腕を回してすがりつく。暖かい。その体温にうっとりと目を閉じて、僕も射精した。

 射精後の気だるさのまま、僕はすがりついた腕をシーツの上に落とした。肌が離れ、少し寂しい気もするけれど、解放された心地よさもある。強すぎる快感の後で、僕の感覚はおかしくなっているのかもしれなかった。

「…ハハ。一緒にイけたな」

 しばらくの後、目を開けた僕に草野がキスをしてくる。当たり前のように唇を割り、僕の口の中をなめた。まだ頭がぼんやりしたままの僕は誘われるままに舌を絡ませ、唾液を飲み込む。彼が僕の腕を掴んで再び背中に回すように促したから、僕はそれに従った。

「お前もケツだけでイけたよな」

 唇を離し、彼は僕の尻を撫で、グニグニと揉んだ。中にはまだ彼のチンポと三回分の精液が入っている。

「…俺んこと、好きって言いながらイッてた」

 広がりきった尻の穴の縁を指でなぞりながらポツリと彼が言った。敏感なその部分に触れられて、僕は喘いでしまう。けれど、喘ぎ声は彼の唇で塞がれ、くぐもった声となった。

「ん…ぅっ」
「……なぁ。お前、マジで俺のこと…好き、なのか?」

 唇を離した彼が間近で僕の目を見つめ、聞いてくる。僕は驚きのあまり、彼の目を見つめ返してしまった。いつも斜に構えたように見える彼の表情が、今は少し緊張しているかのように見える。僕相手に? ありえない、気のせいだろう。

「答えろよ」

 僕は目を伏せた。答えは一つしかない。いじめられ、暴力を受けている僕に嫌いだなんて言う選択肢なんてないのだ。僕は震える唇をそっと開いて告げた。

「……す、好き、だよ」

 そう告げた途端、彼は僕を引き寄せ、強く抱きしめた。僕の中のチンポが再び固くなり、前立腺を刺激してくる。彼の背中に回したままの腕に、思わず力を入れてしまった。

「…だと思ってたわ。好きじゃなきゃ男に抱かれたりしねーもんな、普通」

 ハハ、と笑いながら彼が言う。

「……んじゃ、正式に俺のオンナにしてやるよ」

 その言葉に、僕の思考は停止した。

「嬉しいだろ?」

 僕を抱きしめていた腕を解き、彼が間近で僕の顔を見つめた。その表情は僕に今まで見せことがないほど柔らかなもので、僕は驚きのあまりそれをボンヤリと見つめてしまう。口を開けたままだった僕に、彼が深く口付けた。舌が触れてようやく気を取りもどした僕は、両手でグイと彼の胸を押して身体を離す。離れた唇に引いた唾液の糸を、僕は乱暴に腕で拭った。

「…おいおい、なんだよ? 照れてんの?」

 今までなら乱暴に口付けられたり、暴力を振るわれても仕方のなかったような僕の行動に、彼はただ、窺うように僕の顔を覗き込んで聞いてくることしかしなかった。

「…う、うん」

 僕は誤魔化すために戸惑いながらも頷いた。そうすると彼は驚いたことに僕の頭を優しく撫でたのだ。

「…さっきも思ったんだけどよ、……お前、結構かわいいのな」

 唇を指でそろっとなぞりながら彼が言った。そしてそのまま腰を動かし始める。

「……ぁ、あっ、んんっ」

 途端に僕の口から喘ぎ声が漏れた。そんな顔を間近で見つめられるのが嫌で隠そうとした両手は彼に掴まれ、シーツの上に押さえつけられた。少し近づけばキスをしてしまいそうな距離で、彼は僕を見つめながら抜き差しを繰り返す。それがひどく嫌だった僕は首を伸ばし、自分から彼に口付けた。誘うように唇を開き、舌で彼の唇を舐める。彼はすぐにそれに応じ、目を閉じて僕に覆い被さってきた。僕の喘ぎ声は彼の口の中に消える。僕は彼が唇を離さないよう積極的に舌を絡め、唾液を飲み、唇を吸った。けれど、やはり僕のやり方は拙かったのか、彼の唇は離れてしまう。

「…すっげー積極的。んなに嬉しいのか」
「……は、あっ、あ、あっ」
「俺のオンナになれたの、嬉しいんだろ?」

 喘ぎながら僕は無意識に首をゆるゆると振った。体の奥が気持ちよくて、あまり物事を考えられなくなっていたからだ。正直な僕の答えを、しかし彼は本気にはとらなかった。

「ほらっ。嬉しいんだろっ?」
「あ、う、れしっ、あっ」

 僕が涎を垂らし、喘ぎながら彼の言葉をそのまま繰り返すと、腰の動きが激しくなった。

「ああっ、んあああっ」

 僕は押さえつけられたままの指に力を込め、彼の手を握りしめた。背中を反らせ、大きく喘ぐ。一度尻だけでイッてしまったからなのか、僕の体は快感に従順になってしまったようだった。嫌なのに、彼のチンポで前立腺をこすられ、奥をガンガン突かれるとイキたくてたまらなくなる。

「イク時はさっきみたいに俺の名前、呼びながらイケよ」

 熱っぽく囁かれた声に目を開けると、快楽の涙の向こうに彼の顔があった。彼のものに喘がされている僕を見つめている。

「くさ、の、く…」
「違うって。下の名前」

 訂正される声が甘い。今までのように舌打ちもされず、頬も叩かれない。それは僕が彼のオンナになったからなのだろうか。

「ゆう、すけ…くんっ……あ、ん、雄介く…んっ」
「そ。……なんかお前に呼ばれると腰にクるっ」

 彼の言葉と同時に腰の動きが大きくなり、より奥を大きく突いてくるようになった。目を閉じると溜まっていた涙が目尻からこぼれ落ちる。シーツに頭をこすりつけ、大きく口を開いて彼の名前を呼び、喘いだ。そうすると彼は奥を強く何度も突いてきた。それがたまらなく良くて、僕はよがり、彼にすがりついた。
 何度目かの抜き差しの後、僕は言われた通り、彼の名前を呼びながら射精した。僕の腹の上に精液がボタボタと落ちてすぐ、彼も僕の中に精液を迸らせた。



 連れて行かれた浴室でシャワーを一緒に浴び、そこでも一度、立ったまま後背位でセックスをした。とうとう足腰が立たなくなった僕は今、後ろから彼に抱えられるようにして床に座り、身体を洗われている。尻の中にも指を入れられ、入念に精液を出された。腰に腕が回されて動けない状態にされた僕は、浴室の鏡に映る自分の姿を見た。
 自分を好き勝手に扱う男に身体を預け、大きく足を開いて尻に指を突っ込まれている姿だ。口はだらしなく開き、顔は赤くなっていた。
 だらしなく口を開いているのは度重なるセックスに疲れているせいで、顔が赤いのは熱いシャワーを浴びたせいだ、と自分に言い訳する。けれど本当は分かっていた。僕の体は男に突っ込まれて感じるようになってしまったのだ。

「ここ、気持ちいーよな」

 尻の中を洗うために突っ込まれたはずの指は、精液をかき出した後もそこにとどまり、前立腺をコリコリと押していた。

「…あ、あ…ん、ぁあ、い、いやだ、んぅっ」

 拒絶の言葉は彼の唇によって塞がれる。塞がれている間もそこを刺激され、体が勝手にビクンビクンと痙攣した。大きな快感の波が僕を攫い、頭が真っ白になる。もう何度目かの勝手な身体の反応に、僕はまた涙を流した。気持ちいい。指でされているのに、こんなに気持ちがいい。それが嫌だった。

「ゆ、すけ、くん…」

 なんとか唇を離した僕は彼の名前を呼んだ。

「…どした?」

 振り返って彼を見上げると、すぐに見返してくる。名前を呼ぶと返す声は甘く、僕はそれに言葉を返す。

「も、疲れた、から…」
「んー? …そっか。分かった」

 僕の主張を受け入れるなんて、これまでの関係なら、あり得ないことだった。快楽の波に飲み込まれて前後不覚になった僕が言った、好き、という一言が彼との関係を一気に変えてしまったということなのか。多分、そうなんだろう。
 軽く口付けられながら、僕の頭に、その前提を踏まえた上で一つの考えが浮かび上がる。

 彼は僕を抱えるようにしたまま、一緒に浴槽に入った。僕の身体は、背後に座った彼の足の間に収まる形になる。回された腕が僕の肩を掴み、彼にもたれるように促された。僕は媚びるように彼の肩に頭を預け、顔を見上げてみる。甘えるような仕草に、彼は一瞬驚いたような表情を見せたけれど、すぐにそれは柔らかいものに変わった。彼は、自分を慕う存在には強く出られないのじゃないか。確信めいたものを感じ、僕は口を開いた。

「…雄介くん。大好きだよ」

 嫌だ。ふざけるな。
 さっきから心の声はそう言っている。けれど、これは草野に復讐してやるチャンスなのだ、と僕は思ってしまったのだ。
 心の叫びをねじ伏せるように僕は言葉を重ねる。

「雄介くんのオンナになれて、僕、嬉しい」

 反吐が出そうな言葉だった。僕は男なのに、オンナにされたのだ。それを自ら認め、喜んでいるという宣言に心がキリキリと痛む。けれど、いじめられていた時よりも、レイプされた時よりも、痛みは遥かにマシだった。だから懸命に微笑み、彼の顔を見上げてやる。
 しかし、先ほどまでの表情とは違い、彼は眉根に皺を寄せて僕を見つめていた。あざとすぎたのか。僕は彼を見つめ返しながら必死に頭を働かせて次の言葉を探す。けれど何も言葉が見つからないうちに彼は唇を開いた。

「明。…今まで、その…お前にキツく当たって……ヤなこともいっぱいしただろ? いじめ、とか。…ホント、ごめんな」

 あっけに取られる。そんな簡単な謝罪で許されると思っているのか、と僕は少々驚いた。僕が彼を好きだと思い込んでいるせいで、そんな風に考えてしまったのか。それとも、自分がしたことがそこまで軽い出来事だと思っているのか。どちらなんだろう。
 しかし、どちらであろうと僕には関係がない。それは、これから僕がしようとすることに何の影響も与えないのだ。

 僕を抱きしめる彼の腕に力が入った。精一杯受け入れるふりをするため、僕は彼の腕に手を添え、許すよ、とでもいうかのように優しく撫でてやる。すると眉根を寄せていた彼の顔が少し柔らかくなった。

「でもこれからは、…お前のこと、すっげー大事にするから」

 彼は僕の首筋に顔を埋め、唇を押し当てた。薄い皮膚を吸われ、僕の口から快感の息が漏れる。僕はこんな自分の身体が嫌で嫌でたまらなかった。
 だから僕は彼に復讐してやるのだ。

「明。…俺もお前のこと、……好きだ」

 その言葉を聞いて、僕は心からの笑みを見せた。僕の復讐はきっと成功する。
 僕の顔を見て、彼もようやく明るい笑顔を見せた。僕の決意も知らないで。

 彼を僕と同じ場所まで堕としてやる。
 まずは、女の子では満足できないようにする。男に突っ込まないとイケないようにしてやる。そして彼好みの言動で僕に夢中にさせ、逆らえないようする。僕に依存させる。その上で、思いつく限り最もひどいやり方で捨ててやるのだ。

 彼が僕を好きだと言ったことは僕に喜びを与えてくれた。

「ふふ。嬉しい。ありがとう、雄介くん」

 心からの感謝の言葉に、彼が唇を落としてくる。僕は薄く唇を開き、侵入してくる舌を受け入れながら、僕を好きだという彼のことが本当に好きでたまらないな、と思った。
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