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17 リーゼルと新人官吏たち2
「陛下?」
きょとんとしているのはリーンハルトだけで、訪れた新人官吏二人は急に赤い顔から真っ青に変化する。
他者を恐怖させないよういつも気を遣っているディートリヒだが、今ばかりはそんな配慮をする気さえ起きない。
「リーンハルトはお前らの侍従ではない。服装くらい整えてから来い」
そう指摘すると、彼らは逃げるように執務室を後にした。
それを確認してもモヤモヤ収まらないディートリヒは続いて、リーンハルトへと視線を向ける。
「リーンハルトも、服装に気を遣うのは俺だけにしてくれないか」
「申し訳ありませんでした……。陛下にお会いする方々なので、失礼が無いようにと思いまして……」
リーンハルトは、しゅんっと項垂れながら謝罪する。
それを見たディートリヒは、さらに心が苦しくなる。彼は自分のためにここまでしてくれたというのに、醜い嫉妬心で彼を悲しませてしまった。
「あっいや。怒っているわけではない……。卿の仕事ぶりは完璧だった」
「本当ですか……?」
「ああ。ただその……、俺の侍従を取られたような気がして……。いや、今のは忘れてくれ」
リーンハルトは、皇帝専属の侍従。ディートリヒだけがリーンハルトを独占できる。それが崩れていることが、不愉快でならない。
このような感情を抱いてしまうのも、リーンハルトの甘い匂いのせいだ。
侍従に対してここまで執着心が湧いていると知られたら、リーンハルトはきっと気持ち悪く思うだろう。
「いつも気にかけてくださり感謝申し上げます。陛下への差し入れもいただきましたし、お茶をお入れいたしますね」
そんなディートリヒの感情にも気づいていない様子のリーンハルトは、すぐに気持ちを建て直したのか、お茶を用意するために部屋を出て行った。
どちらにせよ、今のは失敗だった。ため息をつくディートリヒのもとへ、レオンが近づいてきた。
「まさか、彼らの好意がご自分ではなく、陛下に向けられたものと勘違いしているようですね」
普通に考えれば、間違いではない。ここは皇帝の執務室。本来、ここへ訪れる者は、皇帝に用事がある者のはずだから。
リーンハルトは純粋に職務を全うしているだけだ。
「むしろ、気づかないでいてくれたほうがリーンハルトのためかもしれない」
「陛下は気づかせたくないだけでは?」
「…………」
厨房でお茶の準備を整えたリーゼルは、ティーセットとお皿に盛りつけたクッキーをワゴンに載せて、陛下の執務室へと戻ろうとしていた。
「美味しそうなクッキーだわ。陛下は甘いものお好きかしら?」
陛下は好き嫌いなく、出されたものはなんでも召し上がる。それでも、仕事でお疲れの陛下には美味しいものを食べてもらいたい。
今度、何が好きなのか聞いてみようと考えながら歩いていると突然、前方から誰かが現れた。
「リーンハルト!」
「あ……。パウル卿、お疲れさまです」
(ここは陛下専用の厨房へ向かう通路なのに……)
官吏が使用する通路からは奥まった場所にあり、陛下専属の世話係しか使用しないような通路だ。パウルと遭遇すること自体が、不自然な場所。
リーゼルは、背筋が寒くなる感覚に襲われる。
(なぜパウル卿と会うと、不安になるのかしら……)
相手はリーンハルトと仲良くしたいと思っているだけなのに、あの笑みを見ると逃げ出したくなる。リーンハルトもこのような気持ちで、アカデミー生活に耐えていたのだろうか。
「リーンハルト。良かったら二人きりで話さない?」
「申し訳ありませんが、こちらを陛下へお届けする途中でして……」
「少しだけでいいからさ。何もしないから」
(目が怖いわ……)
「急ぎますのでっ」
陛下に関する仕事を遮るなんてどうかしている。リーゼルは毅然とした態度で通りすぎようとした。
しかし、あろうことかパウルがリーゼルの腕を思い切り引っ張ったものだから、リーゼルはバランスを崩して、ワゴンを派手に倒してしまった。
ガシャンっと辺りに大きな音が響く。
「きゃっ!」
リーゼルは倒れたワゴンの心配をする暇も与えられないまま、目の前にあった部屋へと引きずり込まれる。
暗い部屋へと押し倒されると、その反動で粉っぽいものが辺りに舞う。どうやらここは、小麦粉などを保管しておく食料部屋のようだ。
このような場所に連れ込まれたら、誰にも気づいてもらえない
「リーンハルト。やっと二人きりになれたね」
じりじりと近寄ってくるパウルは、今まで以上に笑みが怖い。
「やめてください……」
「どうして俺から逃げたの? 食べられるのが怖かった?」
言っている意味がわからない。彼は皇帝を恐れて床を濡らすような草食獣人。そんなパウルに対して、食べられる危機を感じるはずがない。
「卿は、草食獣人では……」
「相変わらず純粋だねリーンハルト。『食べる』とは比喩表現だよ。本当の意味は――」
卑猥な言葉を耳打ちされて、リーゼルは青ざめた。女性の姿ならまだしも、男装している状況で男性から聞かされるような言葉ではなかったから。
いや、女性の姿であったとしても、受け入れられる言葉ではないが。
「私は男です!」
「俺たちの間に性別なんて必要ないだろう?」
(何言っているの。この人……)
リーゼルはやっと、彼に嫌な感情を持っていた理由がわかった。彼はリーンハルトに対して恋心を抱いている。それも、度を越した執着心で、このような乱暴な行為にまで及んでいる。
これはもう、言葉で説得できるような相手ではない。
(怖い……。誰か助けて……!)
パウルともみ合いになりながら必死に抵抗していると、急に食料部屋のドアが開いて、光が部屋へと差し込んできた。
「リーンハルト!」
「陛下……」
ドアを開けたのはディートリヒ。
彼は、執務室からここまで全力疾走してきたかのように息を切らせている。
ディートリヒは部屋の状況を目の当たりにすると、怒りに満ちた表情ですぐさまリーゼルとパウルを引き離した。
「貴様……。リーンハルトに何をしようとしていた!」
きょとんとしているのはリーンハルトだけで、訪れた新人官吏二人は急に赤い顔から真っ青に変化する。
他者を恐怖させないよういつも気を遣っているディートリヒだが、今ばかりはそんな配慮をする気さえ起きない。
「リーンハルトはお前らの侍従ではない。服装くらい整えてから来い」
そう指摘すると、彼らは逃げるように執務室を後にした。
それを確認してもモヤモヤ収まらないディートリヒは続いて、リーンハルトへと視線を向ける。
「リーンハルトも、服装に気を遣うのは俺だけにしてくれないか」
「申し訳ありませんでした……。陛下にお会いする方々なので、失礼が無いようにと思いまして……」
リーンハルトは、しゅんっと項垂れながら謝罪する。
それを見たディートリヒは、さらに心が苦しくなる。彼は自分のためにここまでしてくれたというのに、醜い嫉妬心で彼を悲しませてしまった。
「あっいや。怒っているわけではない……。卿の仕事ぶりは完璧だった」
「本当ですか……?」
「ああ。ただその……、俺の侍従を取られたような気がして……。いや、今のは忘れてくれ」
リーンハルトは、皇帝専属の侍従。ディートリヒだけがリーンハルトを独占できる。それが崩れていることが、不愉快でならない。
このような感情を抱いてしまうのも、リーンハルトの甘い匂いのせいだ。
侍従に対してここまで執着心が湧いていると知られたら、リーンハルトはきっと気持ち悪く思うだろう。
「いつも気にかけてくださり感謝申し上げます。陛下への差し入れもいただきましたし、お茶をお入れいたしますね」
そんなディートリヒの感情にも気づいていない様子のリーンハルトは、すぐに気持ちを建て直したのか、お茶を用意するために部屋を出て行った。
どちらにせよ、今のは失敗だった。ため息をつくディートリヒのもとへ、レオンが近づいてきた。
「まさか、彼らの好意がご自分ではなく、陛下に向けられたものと勘違いしているようですね」
普通に考えれば、間違いではない。ここは皇帝の執務室。本来、ここへ訪れる者は、皇帝に用事がある者のはずだから。
リーンハルトは純粋に職務を全うしているだけだ。
「むしろ、気づかないでいてくれたほうがリーンハルトのためかもしれない」
「陛下は気づかせたくないだけでは?」
「…………」
厨房でお茶の準備を整えたリーゼルは、ティーセットとお皿に盛りつけたクッキーをワゴンに載せて、陛下の執務室へと戻ろうとしていた。
「美味しそうなクッキーだわ。陛下は甘いものお好きかしら?」
陛下は好き嫌いなく、出されたものはなんでも召し上がる。それでも、仕事でお疲れの陛下には美味しいものを食べてもらいたい。
今度、何が好きなのか聞いてみようと考えながら歩いていると突然、前方から誰かが現れた。
「リーンハルト!」
「あ……。パウル卿、お疲れさまです」
(ここは陛下専用の厨房へ向かう通路なのに……)
官吏が使用する通路からは奥まった場所にあり、陛下専属の世話係しか使用しないような通路だ。パウルと遭遇すること自体が、不自然な場所。
リーゼルは、背筋が寒くなる感覚に襲われる。
(なぜパウル卿と会うと、不安になるのかしら……)
相手はリーンハルトと仲良くしたいと思っているだけなのに、あの笑みを見ると逃げ出したくなる。リーンハルトもこのような気持ちで、アカデミー生活に耐えていたのだろうか。
「リーンハルト。良かったら二人きりで話さない?」
「申し訳ありませんが、こちらを陛下へお届けする途中でして……」
「少しだけでいいからさ。何もしないから」
(目が怖いわ……)
「急ぎますのでっ」
陛下に関する仕事を遮るなんてどうかしている。リーゼルは毅然とした態度で通りすぎようとした。
しかし、あろうことかパウルがリーゼルの腕を思い切り引っ張ったものだから、リーゼルはバランスを崩して、ワゴンを派手に倒してしまった。
ガシャンっと辺りに大きな音が響く。
「きゃっ!」
リーゼルは倒れたワゴンの心配をする暇も与えられないまま、目の前にあった部屋へと引きずり込まれる。
暗い部屋へと押し倒されると、その反動で粉っぽいものが辺りに舞う。どうやらここは、小麦粉などを保管しておく食料部屋のようだ。
このような場所に連れ込まれたら、誰にも気づいてもらえない
「リーンハルト。やっと二人きりになれたね」
じりじりと近寄ってくるパウルは、今まで以上に笑みが怖い。
「やめてください……」
「どうして俺から逃げたの? 食べられるのが怖かった?」
言っている意味がわからない。彼は皇帝を恐れて床を濡らすような草食獣人。そんなパウルに対して、食べられる危機を感じるはずがない。
「卿は、草食獣人では……」
「相変わらず純粋だねリーンハルト。『食べる』とは比喩表現だよ。本当の意味は――」
卑猥な言葉を耳打ちされて、リーゼルは青ざめた。女性の姿ならまだしも、男装している状況で男性から聞かされるような言葉ではなかったから。
いや、女性の姿であったとしても、受け入れられる言葉ではないが。
「私は男です!」
「俺たちの間に性別なんて必要ないだろう?」
(何言っているの。この人……)
リーゼルはやっと、彼に嫌な感情を持っていた理由がわかった。彼はリーンハルトに対して恋心を抱いている。それも、度を越した執着心で、このような乱暴な行為にまで及んでいる。
これはもう、言葉で説得できるような相手ではない。
(怖い……。誰か助けて……!)
パウルともみ合いになりながら必死に抵抗していると、急に食料部屋のドアが開いて、光が部屋へと差し込んできた。
「リーンハルト!」
「陛下……」
ドアを開けたのはディートリヒ。
彼は、執務室からここまで全力疾走してきたかのように息を切らせている。
ディートリヒは部屋の状況を目の当たりにすると、怒りに満ちた表情ですぐさまリーゼルとパウルを引き離した。
「貴様……。リーンハルトに何をしようとしていた!」
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