6 / 11
6話
~表~
しおりを挟む
時計を見ると朝の6時半だった。
今日は遅刻しないと踏んだおれは、一階に行き歯磨きをしてテーブルについた。まだ母しか起きておらず、テレビもついていなかった。
少し焦げたトーストをすばやく胃に流しこみ、自分の部屋にもどる。登校時間の7時半までのんびりするつもりだ。
外を見ると今日は異常なほどに太陽が照らしつけている。そう思っていながらSNSを開くと、おもむろに「桜木ヒロ」と検索してみた。やはり出てこない。
ぼんやり携帯を眺めているうちに家を出る時間になった。いつものとおり早足で登校する。
校門を過ぎたあたりで、サッカー部のヘトヘトな声が聞こえてくる。下駄箱でスリッパに履き替えていると後ろから「おはようございます!」とヒロが耳障りな声であいさつしてくる。
無視したおれにヒロは少しさみしそうにして階段の前でおれを待っていた。
走ってきたからだろうか。ヒロの頬に流れる汗が太陽に反射してきらめいてやがる。
二人でというより一方的に話をされていたおれは廊下の突き当たりにある1-3の教室にはいる。チョークのどこか懐かしい匂いがする。
今日の一限目は体育で種目はバスケットボール。最初はパスの練習だった。相手はヒロ。
「さぁ、僕にどんと投げてくださぁい!」
「行くぞー。」
そもそもやる気の無かったおれは、ハエでもとまるかのようなスピードでボールをパスした。
なんとなくヒロは顔で受け止めそうだったのでお腹の辺りに投げた。
「とんでもない豪速球ですね~」
どこがだよ。
「今度は僕もいきますよー?」
張り切っていたそいつの球は隣のコートへ飛んでいった。
「おい。」
「すいません!僕取ってきますので、もう一回お相手をしていただけますか?」
そう言ったヒロはダッシュでボールを追いかけるが、帰ってきた頃には先生が次の説明をし始めていた。
「くそ、僕がまともなパスをできていればもう少し練習出来たのに、、」
本当にくやしそうだった。そう、ヒロは常に本気だ。だが、勉強以外はからっきしできず体育や家庭科の授業ではいつも足をひっぱっていた。
その後、チームに別れて試合をすることになったが、ヒロとおれを合わせた五人チームができて試合を始めても、何人かいる同じチームのバスケットボール部のやつらがヒロにパスするはずもなかった。
運が良かったのか悪かったのか、ヒロのもとにボールが転がってきたが、そのボールはヒロなんか見向きもせず足の間をするりと抜けて行った。その後、三回戦ほどあったがおれたちのチームは常に四人で戦っているのと変わらなかった。
試合後、バスケットボール部のやつはヒロに聞こえるくらいの声で「あいつには絶対ボールを回すな。」とおれとヒロ以外の三人に言っていた。別におれはそもそも運動ができる方ではなかったので気にしなかったが、ヒロは聞こえていないフリをしてただ突っ立っていた。
残りのつまらない授業を受け終えいつものように塾へ向かう。だが、今日はヒロの「帰りましょう!」の声はホームルームが終わると同時にヒロが教室を飛び出して行ったので、聞くことはなかった。おれは別に気にすることはなかったが、その時だけは無性に気になってしまってヒロの後を追った。
ヒロはすでに汗びっしょりの体操服に着替えて、体育館でバスケットボールを用意し、壁に向かって一人でパスの練習をしていた。10mほどの距離だが、跳ね返ったボールがまともにヒロのもとに返ってくることがなかった。
何してんだ。
100投ほどしたころだろうか。おれは見ているだけなのになぜだかイライラを隠しきれなかった。
「どーせ、そんなのやっても変わんねーよ。」
別に言わなくたってよかった。だが、言わないとまだまだ相手のいないパスを続けそうだった。
しょんぼりするヒロの姿を思い浮かべたが、返ってきたのは予想外のことだった。
「諦めた時点でその人の負けです。だからこの前の模試も君は僕に負けたんです。“こんだけ勉強してもどーせあいつには勝てない。”そんなことをお思いになっていたのでしょう。」
図星をつかれたおれは、何も言い返すことができないでそいつがまだ何かを言っていたにも関わらず体育館を後にした。
塾についてもイライラとヒロの言葉が妙に頭について勉強に集中できなかったので、早目に家に帰りすぐさまベッドで眠りについた。
今日は遅刻しないと踏んだおれは、一階に行き歯磨きをしてテーブルについた。まだ母しか起きておらず、テレビもついていなかった。
少し焦げたトーストをすばやく胃に流しこみ、自分の部屋にもどる。登校時間の7時半までのんびりするつもりだ。
外を見ると今日は異常なほどに太陽が照らしつけている。そう思っていながらSNSを開くと、おもむろに「桜木ヒロ」と検索してみた。やはり出てこない。
ぼんやり携帯を眺めているうちに家を出る時間になった。いつものとおり早足で登校する。
校門を過ぎたあたりで、サッカー部のヘトヘトな声が聞こえてくる。下駄箱でスリッパに履き替えていると後ろから「おはようございます!」とヒロが耳障りな声であいさつしてくる。
無視したおれにヒロは少しさみしそうにして階段の前でおれを待っていた。
走ってきたからだろうか。ヒロの頬に流れる汗が太陽に反射してきらめいてやがる。
二人でというより一方的に話をされていたおれは廊下の突き当たりにある1-3の教室にはいる。チョークのどこか懐かしい匂いがする。
今日の一限目は体育で種目はバスケットボール。最初はパスの練習だった。相手はヒロ。
「さぁ、僕にどんと投げてくださぁい!」
「行くぞー。」
そもそもやる気の無かったおれは、ハエでもとまるかのようなスピードでボールをパスした。
なんとなくヒロは顔で受け止めそうだったのでお腹の辺りに投げた。
「とんでもない豪速球ですね~」
どこがだよ。
「今度は僕もいきますよー?」
張り切っていたそいつの球は隣のコートへ飛んでいった。
「おい。」
「すいません!僕取ってきますので、もう一回お相手をしていただけますか?」
そう言ったヒロはダッシュでボールを追いかけるが、帰ってきた頃には先生が次の説明をし始めていた。
「くそ、僕がまともなパスをできていればもう少し練習出来たのに、、」
本当にくやしそうだった。そう、ヒロは常に本気だ。だが、勉強以外はからっきしできず体育や家庭科の授業ではいつも足をひっぱっていた。
その後、チームに別れて試合をすることになったが、ヒロとおれを合わせた五人チームができて試合を始めても、何人かいる同じチームのバスケットボール部のやつらがヒロにパスするはずもなかった。
運が良かったのか悪かったのか、ヒロのもとにボールが転がってきたが、そのボールはヒロなんか見向きもせず足の間をするりと抜けて行った。その後、三回戦ほどあったがおれたちのチームは常に四人で戦っているのと変わらなかった。
試合後、バスケットボール部のやつはヒロに聞こえるくらいの声で「あいつには絶対ボールを回すな。」とおれとヒロ以外の三人に言っていた。別におれはそもそも運動ができる方ではなかったので気にしなかったが、ヒロは聞こえていないフリをしてただ突っ立っていた。
残りのつまらない授業を受け終えいつものように塾へ向かう。だが、今日はヒロの「帰りましょう!」の声はホームルームが終わると同時にヒロが教室を飛び出して行ったので、聞くことはなかった。おれは別に気にすることはなかったが、その時だけは無性に気になってしまってヒロの後を追った。
ヒロはすでに汗びっしょりの体操服に着替えて、体育館でバスケットボールを用意し、壁に向かって一人でパスの練習をしていた。10mほどの距離だが、跳ね返ったボールがまともにヒロのもとに返ってくることがなかった。
何してんだ。
100投ほどしたころだろうか。おれは見ているだけなのになぜだかイライラを隠しきれなかった。
「どーせ、そんなのやっても変わんねーよ。」
別に言わなくたってよかった。だが、言わないとまだまだ相手のいないパスを続けそうだった。
しょんぼりするヒロの姿を思い浮かべたが、返ってきたのは予想外のことだった。
「諦めた時点でその人の負けです。だからこの前の模試も君は僕に負けたんです。“こんだけ勉強してもどーせあいつには勝てない。”そんなことをお思いになっていたのでしょう。」
図星をつかれたおれは、何も言い返すことができないでそいつがまだ何かを言っていたにも関わらず体育館を後にした。
塾についてもイライラとヒロの言葉が妙に頭について勉強に集中できなかったので、早目に家に帰りすぐさまベッドで眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる