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儚い根拠
動く予感
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「珍しいね美優ちゃん。
俺のこと呼び出すなんて」
手を振って、指定された場所に来た。
それは、この街の中で一番リッチであろう大きいなホテル。
エントランスにあるソファーに座る森沢 美優は、俺の言葉に動じる気配もなく立ち上がった。
「悪いけど、俺今好きな人いるから、付き合えないよ?」
「そうでしょうね。
分かってて呼んだんですよ」
冗談のつもりで言った言葉を、そのまま受け取られる。
口調では余裕を演じているつもりだが、気が気じゃ無かった。
いつものカフェテリアに、愛華ちゃんは居なかった。
いつもいる時間に来たはずなのに、姿が見えなくて、とりあえず座っていると、京介たちが通りかかって、妙なことを言い出す。
森沢美優も、来てないと。
嫌な予感がよぎった時に、森沢からのライン。
『お話したいことがあります』
ただその一文だけだったが、俺の予感は外れたことがない。
森沢がこの前の強姦事件に関与しているのなら、今、このタイミングで話を必要としてくるのは……。
栄司と愛華ちゃんを引き裂く為の、何かしらのアクションが起こると。
分かってたのに、油断した。
愛華ちゃんはだいぶ俺に心を開いてくれてる
と思っていた。
何かあったら頼ってくれるだろうと、タカをくくった。
もし愛華ちゃんに何かあったら……俺の落ち度だ。
「で、話って、何?」
「ここではなんですので、部屋に行きましょう。
借りてる部屋があるので……」
「えー男と2人でホテルの一室はまずいんじゃないの?
いくらなんでも、俺がそんなにお人好しに見える?
了承得てるって、誤解しちゃうよ?」
茶化して見せるも、森沢はフッと笑うだけだった。
「大丈夫ですよ。
すでに秦さんも来てますし」
「愛華ちゃんが……?」
思わず、声が低くなる。
森沢は前に落ちて来た髪を耳にかけ直し、笑みを浮かべたまま先に歩き始める。
「部長、秦さんのこと好きですよね?
なら、一緒に来てくださいよ」
「……はいはい」
絞り出した強がりの声は、これが限界だった。
心臓が嫌な音を立てている。
けど、もし愛華ちゃんと栄司を引き離したいとしたら、また同じような…強姦事件を起こすのは避けるはずだ。
愛華ちゃんの精神崩壊を狙って、栄司を責める意味も込めてアレを起こしたのだろうが、結局のところ、2人はあの事件を乗り越えた。
もう一度同じ手を使ったとしてもメリットはないだろうし、顔も名前も割れている今警察への電話一本で解決する。
森沢が共犯なら尚更、今このまま通報しても……。
だが、愛華ちゃんに何か起きたのか、確認せずに通報するわけにもいかない。
ホテルの一室というだけで、疑ったところで裏付けは出来ていない。
直接、確認して……事によっては、当初の予定通りに……。
エレベーターを待っている間、森沢は振り向くことも無く、ただ黙ってボタンを見つめるだけだった。
いっそ、栄司に電話をかけるか?
確認のラインでも通すか?
いや、あいつは……。
ギュッと、手を握った。
肩に入った力を抜いて、小さく深呼吸する。
俺は俺が正しいと思うことをする。
それだけだ。
俺のこと呼び出すなんて」
手を振って、指定された場所に来た。
それは、この街の中で一番リッチであろう大きいなホテル。
エントランスにあるソファーに座る森沢 美優は、俺の言葉に動じる気配もなく立ち上がった。
「悪いけど、俺今好きな人いるから、付き合えないよ?」
「そうでしょうね。
分かってて呼んだんですよ」
冗談のつもりで言った言葉を、そのまま受け取られる。
口調では余裕を演じているつもりだが、気が気じゃ無かった。
いつものカフェテリアに、愛華ちゃんは居なかった。
いつもいる時間に来たはずなのに、姿が見えなくて、とりあえず座っていると、京介たちが通りかかって、妙なことを言い出す。
森沢美優も、来てないと。
嫌な予感がよぎった時に、森沢からのライン。
『お話したいことがあります』
ただその一文だけだったが、俺の予感は外れたことがない。
森沢がこの前の強姦事件に関与しているのなら、今、このタイミングで話を必要としてくるのは……。
栄司と愛華ちゃんを引き裂く為の、何かしらのアクションが起こると。
分かってたのに、油断した。
愛華ちゃんはだいぶ俺に心を開いてくれてる
と思っていた。
何かあったら頼ってくれるだろうと、タカをくくった。
もし愛華ちゃんに何かあったら……俺の落ち度だ。
「で、話って、何?」
「ここではなんですので、部屋に行きましょう。
借りてる部屋があるので……」
「えー男と2人でホテルの一室はまずいんじゃないの?
いくらなんでも、俺がそんなにお人好しに見える?
了承得てるって、誤解しちゃうよ?」
茶化して見せるも、森沢はフッと笑うだけだった。
「大丈夫ですよ。
すでに秦さんも来てますし」
「愛華ちゃんが……?」
思わず、声が低くなる。
森沢は前に落ちて来た髪を耳にかけ直し、笑みを浮かべたまま先に歩き始める。
「部長、秦さんのこと好きですよね?
なら、一緒に来てくださいよ」
「……はいはい」
絞り出した強がりの声は、これが限界だった。
心臓が嫌な音を立てている。
けど、もし愛華ちゃんと栄司を引き離したいとしたら、また同じような…強姦事件を起こすのは避けるはずだ。
愛華ちゃんの精神崩壊を狙って、栄司を責める意味も込めてアレを起こしたのだろうが、結局のところ、2人はあの事件を乗り越えた。
もう一度同じ手を使ったとしてもメリットはないだろうし、顔も名前も割れている今警察への電話一本で解決する。
森沢が共犯なら尚更、今このまま通報しても……。
だが、愛華ちゃんに何か起きたのか、確認せずに通報するわけにもいかない。
ホテルの一室というだけで、疑ったところで裏付けは出来ていない。
直接、確認して……事によっては、当初の予定通りに……。
エレベーターを待っている間、森沢は振り向くことも無く、ただ黙ってボタンを見つめるだけだった。
いっそ、栄司に電話をかけるか?
確認のラインでも通すか?
いや、あいつは……。
ギュッと、手を握った。
肩に入った力を抜いて、小さく深呼吸する。
俺は俺が正しいと思うことをする。
それだけだ。
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