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第2章 少年の決め事
企み
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………
……………。
「……そう。
今回はこの女」
リヴの膝の上で、穏やかな表情でスヤスヤと眠るシュライカ。
リヴは誰かに返答するように、1人呟いた。
「……大丈夫。
大して強くないし、お前達を傷付けることはさせないから」
そう言って、リヴはシュライカの髪を撫でた。
金の糸のように紡がれる長い髪は、陽の光で更に輝きを放つ。
「……まさか。それはない」
リヴは目を細め、シュライカの手をそっと握った。
人差し指にはめられた太めの銀の指輪を、指で軽く転がす。
指輪には、緑の石が組み込まれていた。
「……俺には必要ないよ」
そう言って、リヴはフッと鼻で笑った。
薄っすらと口角を上げるその姿は、本当に笑ったのか怪しいぐらいだった。
風が吹いて、彼は空を見上げた。
無表情に見つめるその瞳は、空の青を吸い込んだように、深く色づいていた。
………
……………。
誰かに、頬を舐められている。
ペロペロと、温かい…これは……まさかリヴか?
そして……鼻息……!?
ゴフー……
「………はっ!なっ、なんだ!?」
「騒ぐな。みんなが驚く」
身体を起こして距離を置こうとすると、リヴの身体に頭をぶつけた。
痛くは無い、が、密着したことの方に焦る。
みんな、と言われて初めて、自分が数多くの牛達に囲まれていることに気づいた。
さっき舐めてきたのも、牛!?
恐らくさっき顔の前にいたであろう牛がまた顔を近づけてきて、大きな鼻を膨らませて強烈な息を吐いた。
そしてまた顔に近づき、私が顔を逸らすと頬を舌が這った。
熱くてヌルッとした感触がくすぐったい。
思わず、口を両手で抑えた。
「こ、こら!やめろよ、くすぐったい」
「シュラから俺の臭いがするんだと。
俺たちが番になったのか知りたいらしい」
「はぁ!?ちょっ、ちょっと……!」
グイッと頭で押されて、リヴの身体に押し付けられる。
すぐ上にリヴの顔があって、ドキッと心臓が高鳴った。
何よ牛と話してるみたいに平然と妙なこと言って……!
「つ、番って…!
違うから!
私は魔物の討伐に…!
って、ゴブリンは!?」
ふと先ほど人にやったように説明しようとして、それよりも大切なことを思い出してハッとする。
私がそもそもここに来たのは、ここに来る討伐対象に会うためだ。
会って……殺すためだ!
リヴを見上げると、目が合った。
「あいつは、シュラが寝てるうちに来て帰ったよ」
「っ!なんで起こさないんだ!!」
「……起こしたら、取り乱すだろ?
厄介事は作りたくない」
厄介事だと……?
危険を脅かしている討伐対象を殺すのが私の務めだ。
何故、そうも危険分子を庇うんだ。
やっぱりこいつは……そっち側の人間なのか?
「っ!あれは……!」
ふと馬の背に、一羽の鳥が止まっているのが見えた。
それは、普通の鳥じゃない。
黒い羽を主体に、緑と赤の羽を混じらせて、後頭部の羽は尾のように逆立っている。
ただならぬのは……額にある、こちらを見つめる眼球。
目が3つあったのだ。
魔物……!
「!止せ!」
私の視線と思考に気づいたのか、リヴは声を上げた。
それよりも早く、私の身体は魔物に反応して、前へ駆け出していた。
リヴの手は、届かなかった。
「来い!ギリアン!」
後ろ手に手のひらを広げると、魔剣ギリアンは手に吸い付いた。
「ギァー!」
魔物がこちらに向かって叫ぶ。
牛が、ドタドタと四方へ走り出した。
「はぁあっ!!」
「っ!」
こちらに向かって滑空した魔物に、身体を回転させて剣を振るう。
宙を浮いた魔物は、真っ二つに裂けた。
反転した反動で、リヴの顔が見えた。
口を開けたまま、目を丸くして、立ち尽くしている。
その瞳に映る感情が、珍しく見て取れた。
それを見て、内心安堵する。
こいつも、人並みの感情があるのか。
それはそうか。
魔物が襲って来た時に感じるものは、誰だって同じだ。
こいつもそうして、己の感情に支配されて身動きが取れないでいる。
リヴに浮かぶ感情…それは、恐怖。
……………。
「……そう。
今回はこの女」
リヴの膝の上で、穏やかな表情でスヤスヤと眠るシュライカ。
リヴは誰かに返答するように、1人呟いた。
「……大丈夫。
大して強くないし、お前達を傷付けることはさせないから」
そう言って、リヴはシュライカの髪を撫でた。
金の糸のように紡がれる長い髪は、陽の光で更に輝きを放つ。
「……まさか。それはない」
リヴは目を細め、シュライカの手をそっと握った。
人差し指にはめられた太めの銀の指輪を、指で軽く転がす。
指輪には、緑の石が組み込まれていた。
「……俺には必要ないよ」
そう言って、リヴはフッと鼻で笑った。
薄っすらと口角を上げるその姿は、本当に笑ったのか怪しいぐらいだった。
風が吹いて、彼は空を見上げた。
無表情に見つめるその瞳は、空の青を吸い込んだように、深く色づいていた。
………
……………。
誰かに、頬を舐められている。
ペロペロと、温かい…これは……まさかリヴか?
そして……鼻息……!?
ゴフー……
「………はっ!なっ、なんだ!?」
「騒ぐな。みんなが驚く」
身体を起こして距離を置こうとすると、リヴの身体に頭をぶつけた。
痛くは無い、が、密着したことの方に焦る。
みんな、と言われて初めて、自分が数多くの牛達に囲まれていることに気づいた。
さっき舐めてきたのも、牛!?
恐らくさっき顔の前にいたであろう牛がまた顔を近づけてきて、大きな鼻を膨らませて強烈な息を吐いた。
そしてまた顔に近づき、私が顔を逸らすと頬を舌が這った。
熱くてヌルッとした感触がくすぐったい。
思わず、口を両手で抑えた。
「こ、こら!やめろよ、くすぐったい」
「シュラから俺の臭いがするんだと。
俺たちが番になったのか知りたいらしい」
「はぁ!?ちょっ、ちょっと……!」
グイッと頭で押されて、リヴの身体に押し付けられる。
すぐ上にリヴの顔があって、ドキッと心臓が高鳴った。
何よ牛と話してるみたいに平然と妙なこと言って……!
「つ、番って…!
違うから!
私は魔物の討伐に…!
って、ゴブリンは!?」
ふと先ほど人にやったように説明しようとして、それよりも大切なことを思い出してハッとする。
私がそもそもここに来たのは、ここに来る討伐対象に会うためだ。
会って……殺すためだ!
リヴを見上げると、目が合った。
「あいつは、シュラが寝てるうちに来て帰ったよ」
「っ!なんで起こさないんだ!!」
「……起こしたら、取り乱すだろ?
厄介事は作りたくない」
厄介事だと……?
危険を脅かしている討伐対象を殺すのが私の務めだ。
何故、そうも危険分子を庇うんだ。
やっぱりこいつは……そっち側の人間なのか?
「っ!あれは……!」
ふと馬の背に、一羽の鳥が止まっているのが見えた。
それは、普通の鳥じゃない。
黒い羽を主体に、緑と赤の羽を混じらせて、後頭部の羽は尾のように逆立っている。
ただならぬのは……額にある、こちらを見つめる眼球。
目が3つあったのだ。
魔物……!
「!止せ!」
私の視線と思考に気づいたのか、リヴは声を上げた。
それよりも早く、私の身体は魔物に反応して、前へ駆け出していた。
リヴの手は、届かなかった。
「来い!ギリアン!」
後ろ手に手のひらを広げると、魔剣ギリアンは手に吸い付いた。
「ギァー!」
魔物がこちらに向かって叫ぶ。
牛が、ドタドタと四方へ走り出した。
「はぁあっ!!」
「っ!」
こちらに向かって滑空した魔物に、身体を回転させて剣を振るう。
宙を浮いた魔物は、真っ二つに裂けた。
反転した反動で、リヴの顔が見えた。
口を開けたまま、目を丸くして、立ち尽くしている。
その瞳に映る感情が、珍しく見て取れた。
それを見て、内心安堵する。
こいつも、人並みの感情があるのか。
それはそうか。
魔物が襲って来た時に感じるものは、誰だって同じだ。
こいつもそうして、己の感情に支配されて身動きが取れないでいる。
リヴに浮かぶ感情…それは、恐怖。
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