【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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本編【表】

第8話-謁見の間

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~王太子視点~


『陛下は何の御用と申されていた?』

「そ、それは…殿下御自身がお聞きになって下さい…」

『ふん…刺し詰め想像が付く。』


父である国王が俺を謁見の間に呼び付ける時は決まって俺に説教をする時だ。

父上は聡明な賢王と民に称えられ、俺も敬いはしているが…如何せん頭が古い。

やれしきたりだ

やれ文化を重んじろだの小言が多い懐古主義者だ。

父上から学ぶ事もあるが、基本的に俺と父上は意見が合わない。


俺の望みは純粋にアルテアの発展と永遠の繁栄だ。
その為なら古いしきたりを捨ててでも大国に迎合し外交ルートや技術を取り入れて近代化させねば他の国にあっと言う間に出し抜かれてしまう。


俺は留学を経た3年間で外の世界を知った。
外の文明を知った。


アルテアの文明レベルはこの広い大陸で覇権を握りつつある大国と比べれば100年遅れだ。


それを知れただけでも3年間の留学に意味はあったが、父上や家臣達は俺の留学に猛反対した。

その猛反対を押し切るのにどれだけ説得に苦労したものか…

頑固で古臭いアルテアの重鎮達を黙らせる事が出来たのは一重に俺が優秀な人物であったからだ。

父上は俺に条件を課した。


"サラバドの蛮族共が水を求めてアルテアの地に足を踏み入れるのを辞めさせてみよ さすればお前の望みを認めよう"と…


他の重鎮達もそれに納得した。
"たかが子供にそんな事出来るはずがない"

そう高を括っていたからだ。


俺はある策でサラバドの賊をアルテアから追い出す事に成功させた。


アルテア領土の僻地にある僅かな水源をサラバドとアルテアの国境境の土地に流したのだ。

水を求めアルテア領土を侵していたサラバドの野盗団首領と条件を交わして

その条件とは。
"お前らが生き残れるだけの水を分けてやるからサラバドの国境付近を根城としアルテアに入ろうとするサラバド人を討伐しろ"と言う条件だ。


野盗団の連中は自分たちさえ助かればそれでいいと言う考えの低俗な連中なのでこの条件を快諾した。


奴等は水を求めてアルテアを侵してはアルテア軍の兵士に追い立てられ、杯一杯分の水を得る為に命懸けの日々を送っていた。

その日々から楽して命を賭ける必要も無く自分たちの水が確保出来る。


低俗なサラバドの賊共は大喜びで提案に乗った。


こうして俺は父上や重鎮達が出した条件を果たしたのだ。


父上達は武力を持って賊を排除するとばかり考えていた様で俺の解決案に苦い顔をしたが約束は約束だ。


サラバドの賊共に与えた水源は極小規模の物で僅か2年で枯らしてしまったらしいが、後の事等 俺は知らない。

俺はただ、父上達から与えられた条件を果たしただけだ。

賊共との約束も反故にした訳ではない。
約束通り水源は与えた。
勝手に水源を枯らしまた干ばつに奴等が苦しもうが俺の知る所ではない。


俺は筋を通し 約束を守り 結果を出し続けて来た。


誰も俺のやる事にケチは付けさせない。


俺こそが次代のアルテア王なのだ。


今日、王に何を咎められても俺は俺の我を貫いて見せる。

俺はそう決意し謁見の間の扉を開いた。




◇◇◇◇◇


『何の用で呼ばれたか…分かっておるな?』


玉座に腰掛け厳格な口振りで、我が父でありアルテアの国王であるクランツ・ソルガデス王は問うた。

この謁見の間に他の家臣の面前で俺を呼び出すと言う事は、息子としてではなく、国王として家臣の一人である王太子の俺を叱る名目で呼びつけている。

だからこの部屋では、父と息子ではなく
王と家臣としての立場となるのだ。


『身に覚えがございません。陛下。』


嘘だ。
本当はどんな要件か察しを付けているが本当の事を言えば"悪いことと自覚していて行ったのか"と言う言葉の追撃に繋がる。

ここはしらばっくれるのが正しい選択だ。
それに俺が呼び出された理由の見当は1つや2つじゃない。

口走り薮から蛇を出しては損だ、下手な事は言わないに限る。口は災いの元だ。


『ラグライア公爵家のハイネ嬢との婚約を一方的に取り止めた件についてだ。公爵家の一門から苦情の文が山の様に届いておる。一体どう言うつもりなのだ?』


なるほど、やはり見当の1つが当たった。
ハイネとの婚約破棄の事か。


『陛下は仰いました、王とは全てにおいて優秀でなくてはならないと。その教えに従い王太子妃の資質にハイネは難ありと判断し断腸の思いで婚約破棄を決断致しました。』


『このタイミングでか?式の日取りを決め、招待客に文まで送って婚約破棄ではハイネ嬢にあんまりではないか』


『お言葉ですが…"王は心情を伏せ 時には公の為に厳しい決断をせよ"とご享受下さったのは陛下です。』


『ハイネ嬢を選んだのはお前だ。お前の目が狂っていたと?』


『ハイネ嬢は王太子妃としての第1条件である家柄と血筋、そして本人の教養においては申し分ありませんでした。故に私の婚約者に推薦しました。』

『が…しかしハイネ嬢を王宮入りさせると問題点が見つかったのです。彼女はよく言えば感受性豊か…悪く言えば感情的な女性で学生時代は王立学園で公爵家の名を後ろ盾に派閥を作り下位貴族家の子息達を虐げていたと言う報告を私の家臣から耳にしました。私が公務で城を空けるとあからさまに不機嫌になり侍女に八つ当たりし、時には酷い折檻をしておりました。これは実際に生活を共にしなければ分からなかった彼女の姿です。』


『そんな女が王太子妃に相応しい訳がない。私は彼女を愛していましたが…全ては祖国アルテアの為、民の為、私情を捨てて彼女との婚約を破棄したのです。』


『そこの者。王太子の話は誠か?』


王は部屋の隅に控えていた侍女に真偽を問う。
実の息子であろうが話は鵜呑みにしないのだ。


「はい…誠でございます…私はハイネ様とは同級の学年で王立学園に籍を置いた男爵家の生まれですが、下位貴族家をいつも下に見ており気に食わない生徒には私刑を下しておられました。髪を切り落としたり…衣服を引き裂いたり…王宮入りされてからも下位貴族家の侍女達に酷い扱いで私自身も暴言や水を頭から浴びせられた事があります…」

他に控えていた侍従・侍女達も問いかけられた侍女の言葉を肯定する様に小さく頷く姿を見て真実であると悟った王は小さく唸り、何かを考える様に目線を俺から逸らした。


『あのハイネ嬢にそんな一面があったとは信じ難い。』


王は未だ疑いの目を晴らさない。
ラグライア家はアルテア最古参の貴族なだけにその娘であるハイネの事はかなり信用していた様だ。


『陛下。恐れながら発言の許可を賜りたく存じます。』


王が半信半疑の中、一人の男が声をあげた。


『サイン侯爵、申してみよ』


俺の忠実な家臣であるレイモンド・サイン侯爵だ。


『はっ、我がサイン家は当家がまだ農商に過ぎなかった先々代の時代からラグライア公爵家に仕えて参りました。公爵家はアルテアが始まってより王家と共にアルテアを開拓した由緒ある名家で在らせられましたが…昨今の異常気象による飢饉にて豹変されました。』

『飢饉による財力低下はどの貴族家も同様である中、公爵家は傘下の家々から財産を没収し公爵家の地位を守る為に他の貴族が力を付けぬ様に様々な悪政を成した事は陛下もご存知の事でしょう。』


『言い方に悪意があるぞサイン侯爵よ。あれは貴族達の資産を統括して民に食糧を配給しアルテア国全体で飢饉を乗り越える為の苦肉の策だったと儂は捉えている。』


『誠の良主ならば困難な時こそ奪うのではなく与えるべきであったと私めは心得ております。現に配給が優先的に行われたのは公爵家の領地とラグライア家の取り巻きであった高位貴族家の領地に偏り、下位貴族達が統治する小さな町や村々には充分な配給が送れず、子供が餓死したと私に訴えた領民がおり私は大変胸を痛めました……ラグライア家が己の地位を守る為に下位貴族達の財産を私物化しなければ救えた筈の命です……故に我がサイン家がラグライア家の傘下から離反し王太子殿下にお仕えする道を歩んだのも、一重に王太子殿下の民を思う崇高なお考えと、ラグライア家の保身の為の愚策に耐えかねたからなのです。』


『サイン侯爵…何が言いたい?』


『無礼を承知でハッキリと申しますと、今のラグライア家には過去にアルテアを繁栄に導いた様な以前の様な力も公爵家としての品格もないと言う事でございます。』


『その娘であるハイネ様も同様でございます。無論その様な者がこれからアルテアを背負って立たれる殿下の妃に相応しい筈もございません。』


「そうだ!!」
「よく言った!!」
「ハイネ様を婚約破棄にした殿下は間違っておられません!!」


周りの侍従・侍女達がサイン侯爵に同調し婚約破棄した王太子に賛同する声をあげた。

その様子は謁見の間で大声をあげる無礼を

その事が本来従者として有り得ない不心得であると言うことを忘れてしまう程の熱量が篭っていた。

これは真に、この王宮に勤める者達からハイネ嬢が嫌われていると言う事の現れだろう。


『皆の者、分かったから静まれ』


王が静止すると謁見の間に静寂が戻る。


『ハイネ嬢に些か問題があった事は承知した。だが問題は他にある。それはお前とハイネ嬢との結婚式の日取りを定め、それを伝える文をアルテア中の貴族に伝えた事だ。』


『王家が一度宣言した事を取り辞めれば、それは威厳を損なう事に繋がる。さぁ、どうする?』


王はまるで試練を与えるかの様に王太子に問う。
すると王太子は待ってましたと言わんばかりに


『御安心を陛下。王太子妃に相応しい者を既に見付け、推薦しております。』


『ほう。随分準備が早いな…まぁよい、してその者は誰だ?』


『はっ、国教であるアルテルシオン教会の聖騎士団を率いる伯爵家の娘…セリア・フェレネスでございます。』

『ややっ!流石殿下は御目の付け所が違う!!陛下!!セリア嬢は"アルテアの華"と渾名される程 アルテアの女性として模範的な御方ですぞ!』

サインがすかさず俺の援護に出る。

「セリア様なら安心だわ!」
「女性なら誰でも憧れるお方ですわ!」
「セリア様はまさしく王太子妃になるべく生まれた女性です!」


侍女達も口々に喜びの声をあげる。



『・・・』


しかし王は周りの反応に反して暫く口を紡いだ。
そして数秒が経って口を開いた。


『すまんが…王太子を除いて席を外してくれ』


周りの者達は王の異変に気付き足早に謁見の間を退室すると…

王の顔つきが変わった。



『リフェリオ…お前 なにを考えておるのだ?』
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