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【SS1】ハイネの譚
第2話-哀れな子
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-老いた執事長視点-
ハイネ様の教育は彼女が物心付くのと同時に行われた。
食事の作法や挨拶は元より
喋り方から歩き方。
果ては比喩なしに息の仕方まで
四六時中 講師を付けてハイネ様を王妃にすべく"訓練"が行われた。
『こんな事も分からないでどうするハイネ!!』
『あなたはラグライア家の最後の希望なのよ!?もっと自覚を持ちなさい!!』
『四六時中 誰かに見られていると思え!!!周りには常に誰かがお前を見ていて僅かな隙でも見せれば付け入られて家の恥になるんだぞ!!』
幼いハイネ様が泣こうが叫ぼうが...公爵夫妻は
"お家の為" "あなたの為"と語り彼女を突き放した。
本当は自分の為でしかないであろうに...
私はラグライア家に奉公して40年になる。
無論仕えたこの家に愛着があるが、公爵夫妻の躾には愛情が存在しなかった。
まるで大道芸人が獣に芸を仕込む為に鞭打つ様に
彼女を"道具"としか見ていない事には思う所があった。
ハイネ様が食事中にスプーンを落とそう物なら容赦無く平手打ちが飛んでいた。
『なにをやっているんだハイネ!!!これが会食会だったらお前は笑い者だぞ!!!』
『うぇ…ひっぐっ…ごめんなさい…』
『"申し訳ございません"でしょう!?』
『申し訳…ございません…』
ハイネ様にとって家族との食事は見張られながら餌付けされているのと変わらなかった。
一挙手一投足に至るまで公爵夫妻は目を光らせ
粗相があれば体罰が振るわれ夫妻は感情を剥き出しに幼いハイネ様に感情をぶつけた。
公爵夫妻の教育は異常だ。
ハイネ様を後の王妃に据える事に一族存亡を賭けている為とは言え…ハイネ様にとってこの公爵邸は鳥籠よりも窮屈な牢獄だ。
卑しき生まれで独り者の私には理解出来ないが...
家名や家督とは…親子の情に勝る程 大切な物なのだろうか?
哀れな子…
私は身分を忘れハイネ様に同情した。
幾ら食うに困らず体は満たされても、その小さな体に宿る魂は満たされない。
空腹は愛があれば極限まで耐えられる。
現に大飢饉を迎えたアルテアでは飢えに苦しみながらも互いを励まし合い支え合う家族を何人も見て来た。
しかし心の飢えは…
どれだけ美食を頬ばろうと満たされない
どれだけ高価な宝石を身につけようと満たされない。
公爵夫妻はハイネ様をまるで人形でも作るかの様に無機質的に育てあげた。
彼女の自我を認めず 益々励めと叱咤した。
彼女と言う人間を否定し夫妻が望む人形とする為に、基本教養から作法、これから彼女が入る王立学園での立ち振る舞いから学友となる者も予め公爵夫妻によって決められていた。
そんな厳しい教育の中、ハイネ様が14歳になられる年に...幾度も顔を出した王家主催の社交界でリフェリオ王子の目にハイネ様が止まった。
この年は、異国の敵勢千騎程がアルテアに押し入り。その撃退の指揮を国王陛下の補佐をする形で戦果を挙げたリフェリオ殿下が、王子から正式に時期王位継承者である王太子に推薦された年だ。
なんでも...第二王子であるフェルリオ王子…初陣となる軍務中に失態を犯し、その事も決め手になったそうだ。
社交界に参加した貴族家の令嬢達は皆浮き足立った。
皆が皆、王位継承者に任命され次代のアルテア王となるに確約を得たリフェリオ王太子殿下にお目見得しようと近付く中、ハイネ様は何千回と練習した夫妻の工程に従っていた。
他の令嬢達は、殿下がうんざりする程に媚びて回り自身をアピールする中。
ハイネ様はただ何もせずその場に佇んでいた。
"何もしない"
それがハイネ様の取ったアピールだった。
ハイネ様は仕える家の息女であると言う建前を無しに見目麗しい女性に成長された。
彼女が乳飲み子だった頃から、今日に至る迄の成長を見て来た私だが、その成長ぶりには年甲斐も無く目を見張った。
彼女は齢14歳にして歳上の令嬢達を差し置く程の淑女に成長したのだ。
煌びやかなウラド山脈でしか採掘されないと言う希少な宝石を装飾した華やかなドレスは彼女が歩く度に光を放ち、彼女の存在感を引き立てた。
他の令嬢達が半ば過剰な迄に殿下にアプローチするのは、その場に居るだけで煌々と存在感を放つハイネ様を意識しての事だろう。
ハイネ様の素の美しさも然ることながら、このドレスはラグライア公爵家が今日の為にアルテア随一の職人に作らせた一級品のドレスだ。
その値段は公爵家と言えど気軽に支払える値段では無い。
ラグライア家は今日この日に全てを賭けていた。
なんとしても殿下のお見初めを頂戴し心を射止め、お近付きにならねばならない。
ハイネ様が受けた厳しい教育の数々はまさにこの日の為だけに行われて来たのだから...
それなのに何故ハイネ様は不動に動かないかと言うと...それは殿下が少々変わった癖を持った御方だからだ。
殿下は自身に媚び諂う者を嫌う。
王家と密接な関係を持つ公爵家は殿下の二面性を把握していた。
殿下は才覚に溢れた傑物だが…その事から尊大な性格が見受けられ他者を見下す性格であると。
一生懸命アプローチをする為に列を作る令嬢達に一見笑顔で応対する殿下であるが...その瞳の奥は笑っていないのを見逃さなかった。
「殿下!是非私と一曲踊って頂けませんか?」
「私、歌が得意と言う自負がございますの!」
『はは…ちょっと失礼…』
苦笑いしながら離席する殿下。
概ね、下心丸出しで自分に諂う令嬢達に嫌気が差したのだろう。
外の空気でも吸いに行こうとしたのかテラスの方向へ歩みだした殿下の目にとうとうハイネ様が止まった。
アルテアにとって高貴の証である白い髪に煌びやかなドレスを纏い何処か儚げな表情のハイネ様が。
彼女はラグライア公爵家が復権を祈願してその使命を託した最後の希望。
ラグライア家の最高傑作である人形だ。
髪型も
着る服も
喋る内容も…
入念 緻密 綿密に…公爵夫妻に叩き込まれた文字通り…比喩表現無しの操り人形。
全てはこの時の為。
ハイネ様は何千回と練習した最高質のカーテシーで目が合った殿下に一礼した。
『ご機嫌麗しゅうございます殿下。ラグライア公爵家のハイネでございます。』
『ラグライア嬢、696年に隣国サラバドで起きた大飢饉について貴女の意見を頂戴したい。』
殿下の会話は脈略がない。
自身に挨拶をするハイネ様に対していきなり飛び出た隣国の歴史に対する質問。
これは…殿下が人を値踏みする際に出すテストだ。
ハイネ様は試されている。
諂うだけが取り柄の令嬢達にはこのテストさえ受けさせては貰えない為、これだけでもハイネ様が殿下には特別に写っている現れだ。
だが…アルテアは他国の文化や歴史に触れる事をタブー視している。
隣国の歴史等、王立学園の授業でも習う事はない内容だ。
しかし…
『697年のサラバド大飢饉は起きるべくして起きた人災であると心得ております。サラバドは地質学的にも乾燥帯が多く後にアルテアが巻き込まれた異常気象が起こる前より、かの国は食糧難に喘いで来ました。当時のサラバド国王は国内の生産率を少しでもあげる為に乾燥に強いソルガム等の穀物生産を国を挙げて行うべきでしたが…睨み合いを続ける軍事大国に囲まれたサラバドは産業よりも軍拡に力を入れようとした結果、民は疲弊し挙句軍隊も弱体化しました。後のサラバド国王はその余りの無策ぶりから家臣団に反旗を起こされ王宮を追放されサラバド王政は崩壊…サラバドの荒野で野垂れたと聞きます。まさにサラバドにとってはロクな年では無かったと存じます…。』
しかし…公爵家は殿下の性格と他国に関心がある事を心得ていた。
中でも隣国サラバドとの国交と大陸屈指の技術力を持つデラガドに深い関心があると。
故にサラバドやデラガドの歴史や文化もハイネ様は既に頭に叩き込まれていたのだ。
ハイネ様は殿下が敢えて間違えて出したであろう年号を訂正した上で最良の答えを出した。
『よく勉強している様だな。私の質問に答えをくれた女性は君が初めてだ。』
殿下は握手を求めハイネ様に手を差し出した。
『ひっ…』
しかしハイネ様は殿下に差し出された手に怯え怯んでしまった。
男性に手を差し伸べられた経験は…自分が粗相をして父であるロドリス公爵閣下に腕を捕まれ折檻される時だけだったからだ。
『た、大変失礼致しました!御無礼をお許し下さ』
『ラグライア嬢。貴女は家族に虐げられて居るのか?』
『そ、その様な事は…』
『嘘が下手だな。貴女の目は私に助けを求めている。』
"終わった"
ハイネ様の脳裏にこの言葉が浮かんでいる事が表情から容易に伝わった。
自分が親から厳しい折檻を受け躾られている事。
それは即ち殿下の妃となる為に行われている事に他ならない。
つまり、目の前にいるこの女もまた"自分の妃になる為にと下心を孕んだ俗物"と殿下に気取られた事になる。
殿下は優秀だが合理主義で理想主義的な優しさは持ち合わせない人物だと古参の貴族家ならば誰もが知っている。
自身の目論見がバレた以上…望みはもうない。
ハイネ様は元より、私すらもそう思った。
しかし…
『貴女はか弱い。私は女だからと言って軟弱に甘んじる怠惰な人間を嫌う。私が最も侮蔑する者は…怠け者と臆病者だ。』
『……』
『だが…最初に言った通り。私の問いに答えてくれたのは君が初めてだ。』
『君がどう変わるか見てみたい』
そう言うと殿下はハイネ様の髪をそっと撫でた。
殿下のいきなりの行動に体を強ばらせるハイネ様だったが…殿下はハイネ様に言った。
『貴女を私の婚約者に迎えたい。同意してくれるね?』
突然の事で言葉を失うハイネ様。
私ですらも困惑した。あの流れから何故気難しい人物と噂される殿下が初対面のハイネ様に求婚なされたか…
しかしこれはハイネ様にとって願ってもいないチャンスだ。断る理由はない。
『わ、私如きで宜しければ…』
『謙るな…俺は自信に溢れた女が好きだ。後に王太子妃となるならば"私以上に優れた女等いない"と自他共に認める者であって貰わねば困る。』
ここで殿下の口調が変化した。
恐らくこれが殿下の本性…傲慢で尊大な素の顔なのだろう。
『お前は今の所、俺が知る誰よりも美しく賢い女だ。もう一度言う…今度は謙るな。俺の一番の女になれ』
『なります…』
一間も置かずハイネ様は即答した。
まるでハイネ様の中で何か心境に変化があったかの様に…光を失っていた彼女の瞳には何か情熱の様な灯火が宿った様であった。
ハイネ様がこの朗報を公爵夫妻に知らせると、思っても見なかった初対面での婚約者への推薦に浮き足立ち喜び勇んだ。
『流石我が娘だ!これでラグライア家は安泰だ!』
『あなたは自慢の娘よ!あぁ…よく頑張ったわね!』
普通に考えて…初対面で婚約者に推薦する殿下の不躾に何の疑問も抱かず、ただただ 自分達の首が繋がった事に安堵し涙を流して喜ぶ夫妻。
その姿に私は嫌悪感を抱いた。
かのアルテア創立の先駆者と呼ばれたラグライアの血はここまで衰え誇りすらも失い
残ったのは自己保身と目先の事しか見ていない愚鈍なハリボテの領主だけ…
しかしそんな心まで貧しくなった夫妻の泣いて喜ぶ姿を見てハイネ様は此処に久しく心からの笑みを浮かべて両親の肩を抱いて言った。
『私は殿下の…いいえ!アルテアで一番の女性になって見せます!見ていて下さいませ!ラグライア家もアルテアも!私が殿下と共に背負って見せます!』
ロドリス公爵の折檻に怯えていただけのハイネ様が胸を張り勇ましくそう宣言したのだ。
その宣言を聞いて夫妻は益々涙を流しハイネ様の膝に縋った。
どうやらハイネ様は…初めて自身を評価した殿下に
多少なり影響されてしまった様だ。
ハイネ様の瞳には少女には似つかわしくない程の情熱と愛が宿っている様に私には見えた。
私は…この職を辞する事にする。
この哀れな迄に純粋なハイネ様が
これから不幸になって行く姿を見るのは余りに忍びない。
私は聞いてしまったのだ。
殿下が近年側近として召し抱えたサイン侯爵との会話を。
『畏れながら出過ぎた事を申しますが…ラグライア公爵家はもはや落ち目。以前の様な権威はございますまい。何故今にしてラグライア公爵家のハイネ嬢を?』
『貴様はまだ俺をよく分かっていないなレイモンド。』
自分より一回り歳上のサイン侯爵を呼び捨てに素の傲慢な王太子として語る殿下。
『俺は婚姻に等興味はない。男としての機能は女より長い、子など幾らでも後から設けられる。あの娘を婚約者に推薦したのは世継ぎを急かす陛下を大人しくさせる為に過ぎん。あの娘が一番マシだったから取り敢えずの時間稼ぎとしたのだ。ラグライア公爵家の娘なら陛下も文句は言うまい。』
『……殿下の思慮深さには感服致しました!このサイン!殿下の様な聡明な君主に仕えられる事を誇りに思いますぞ!』
『ラグライア公爵の媚び寄りにもうんざりしていた所だ。飢饉の時代に何の功績も挙げられなかった約立たずが次代の王たる俺の寵愛を欲する等烏滸がましい。』
『では、あの宣誓遂行の許可を賜れますか?』
『焦るなレイモンド。ラグライアの家名等俺にとってはもはや取るに足らないが…ハイネにはまだ見込みがある。公爵家が最後の希望としてみっちり教育したと見受けられる…優秀な王太子妃に成りうる可能性がある限りは…ハイネは俺のモノだ。』
『ちっ…』
サイン侯爵は…王太子の目を盗み
虫が鳴くよりも小さく極小音で舌打ちを鳴らした。
サイン侯爵の目論見は…サインの名に益々箔を付ける事の他にラグライア公爵家の完全なる失墜だろう。
ラグライア公爵家は…サイン家を散々こき使って来た。
古くは公爵家の庭番から始まったのがサイン家の始まりだ。
煽てて…媚びて…擦り寄って…
公爵家にご機嫌伺いをしてお零れに預かり
そんな事を何十代も続けて蓄えた財産を元手に農業を始めとして勢力を伸ばし、今ではアルテアでも名うての貴族家として名を連ねているが…
先祖達が扱き使われて来た恨みをサイン家の人間が水に流す筈がない。
サイン侯爵の目的は…自身との政略結婚を袖にしたハイネ様を我がモノとする事…
今まで自分を扱き使って来た一族の娘を…自分の物とする事こそ…サイン家のもう1つの野望なのだ…。
仕えた家から養分を吸収し根こそぎ奪う…イナゴか寄生虫の様な貪欲さを持つ毒虫サイン家に目を付けられている以上…
このままハイネ様が殿下と結ばれる事は叶わないだろう。
ハイネ様の教育は彼女が物心付くのと同時に行われた。
食事の作法や挨拶は元より
喋り方から歩き方。
果ては比喩なしに息の仕方まで
四六時中 講師を付けてハイネ様を王妃にすべく"訓練"が行われた。
『こんな事も分からないでどうするハイネ!!』
『あなたはラグライア家の最後の希望なのよ!?もっと自覚を持ちなさい!!』
『四六時中 誰かに見られていると思え!!!周りには常に誰かがお前を見ていて僅かな隙でも見せれば付け入られて家の恥になるんだぞ!!』
幼いハイネ様が泣こうが叫ぼうが...公爵夫妻は
"お家の為" "あなたの為"と語り彼女を突き放した。
本当は自分の為でしかないであろうに...
私はラグライア家に奉公して40年になる。
無論仕えたこの家に愛着があるが、公爵夫妻の躾には愛情が存在しなかった。
まるで大道芸人が獣に芸を仕込む為に鞭打つ様に
彼女を"道具"としか見ていない事には思う所があった。
ハイネ様が食事中にスプーンを落とそう物なら容赦無く平手打ちが飛んでいた。
『なにをやっているんだハイネ!!!これが会食会だったらお前は笑い者だぞ!!!』
『うぇ…ひっぐっ…ごめんなさい…』
『"申し訳ございません"でしょう!?』
『申し訳…ございません…』
ハイネ様にとって家族との食事は見張られながら餌付けされているのと変わらなかった。
一挙手一投足に至るまで公爵夫妻は目を光らせ
粗相があれば体罰が振るわれ夫妻は感情を剥き出しに幼いハイネ様に感情をぶつけた。
公爵夫妻の教育は異常だ。
ハイネ様を後の王妃に据える事に一族存亡を賭けている為とは言え…ハイネ様にとってこの公爵邸は鳥籠よりも窮屈な牢獄だ。
卑しき生まれで独り者の私には理解出来ないが...
家名や家督とは…親子の情に勝る程 大切な物なのだろうか?
哀れな子…
私は身分を忘れハイネ様に同情した。
幾ら食うに困らず体は満たされても、その小さな体に宿る魂は満たされない。
空腹は愛があれば極限まで耐えられる。
現に大飢饉を迎えたアルテアでは飢えに苦しみながらも互いを励まし合い支え合う家族を何人も見て来た。
しかし心の飢えは…
どれだけ美食を頬ばろうと満たされない
どれだけ高価な宝石を身につけようと満たされない。
公爵夫妻はハイネ様をまるで人形でも作るかの様に無機質的に育てあげた。
彼女の自我を認めず 益々励めと叱咤した。
彼女と言う人間を否定し夫妻が望む人形とする為に、基本教養から作法、これから彼女が入る王立学園での立ち振る舞いから学友となる者も予め公爵夫妻によって決められていた。
そんな厳しい教育の中、ハイネ様が14歳になられる年に...幾度も顔を出した王家主催の社交界でリフェリオ王子の目にハイネ様が止まった。
この年は、異国の敵勢千騎程がアルテアに押し入り。その撃退の指揮を国王陛下の補佐をする形で戦果を挙げたリフェリオ殿下が、王子から正式に時期王位継承者である王太子に推薦された年だ。
なんでも...第二王子であるフェルリオ王子…初陣となる軍務中に失態を犯し、その事も決め手になったそうだ。
社交界に参加した貴族家の令嬢達は皆浮き足立った。
皆が皆、王位継承者に任命され次代のアルテア王となるに確約を得たリフェリオ王太子殿下にお目見得しようと近付く中、ハイネ様は何千回と練習した夫妻の工程に従っていた。
他の令嬢達は、殿下がうんざりする程に媚びて回り自身をアピールする中。
ハイネ様はただ何もせずその場に佇んでいた。
"何もしない"
それがハイネ様の取ったアピールだった。
ハイネ様は仕える家の息女であると言う建前を無しに見目麗しい女性に成長された。
彼女が乳飲み子だった頃から、今日に至る迄の成長を見て来た私だが、その成長ぶりには年甲斐も無く目を見張った。
彼女は齢14歳にして歳上の令嬢達を差し置く程の淑女に成長したのだ。
煌びやかなウラド山脈でしか採掘されないと言う希少な宝石を装飾した華やかなドレスは彼女が歩く度に光を放ち、彼女の存在感を引き立てた。
他の令嬢達が半ば過剰な迄に殿下にアプローチするのは、その場に居るだけで煌々と存在感を放つハイネ様を意識しての事だろう。
ハイネ様の素の美しさも然ることながら、このドレスはラグライア公爵家が今日の為にアルテア随一の職人に作らせた一級品のドレスだ。
その値段は公爵家と言えど気軽に支払える値段では無い。
ラグライア家は今日この日に全てを賭けていた。
なんとしても殿下のお見初めを頂戴し心を射止め、お近付きにならねばならない。
ハイネ様が受けた厳しい教育の数々はまさにこの日の為だけに行われて来たのだから...
それなのに何故ハイネ様は不動に動かないかと言うと...それは殿下が少々変わった癖を持った御方だからだ。
殿下は自身に媚び諂う者を嫌う。
王家と密接な関係を持つ公爵家は殿下の二面性を把握していた。
殿下は才覚に溢れた傑物だが…その事から尊大な性格が見受けられ他者を見下す性格であると。
一生懸命アプローチをする為に列を作る令嬢達に一見笑顔で応対する殿下であるが...その瞳の奥は笑っていないのを見逃さなかった。
「殿下!是非私と一曲踊って頂けませんか?」
「私、歌が得意と言う自負がございますの!」
『はは…ちょっと失礼…』
苦笑いしながら離席する殿下。
概ね、下心丸出しで自分に諂う令嬢達に嫌気が差したのだろう。
外の空気でも吸いに行こうとしたのかテラスの方向へ歩みだした殿下の目にとうとうハイネ様が止まった。
アルテアにとって高貴の証である白い髪に煌びやかなドレスを纏い何処か儚げな表情のハイネ様が。
彼女はラグライア公爵家が復権を祈願してその使命を託した最後の希望。
ラグライア家の最高傑作である人形だ。
髪型も
着る服も
喋る内容も…
入念 緻密 綿密に…公爵夫妻に叩き込まれた文字通り…比喩表現無しの操り人形。
全てはこの時の為。
ハイネ様は何千回と練習した最高質のカーテシーで目が合った殿下に一礼した。
『ご機嫌麗しゅうございます殿下。ラグライア公爵家のハイネでございます。』
『ラグライア嬢、696年に隣国サラバドで起きた大飢饉について貴女の意見を頂戴したい。』
殿下の会話は脈略がない。
自身に挨拶をするハイネ様に対していきなり飛び出た隣国の歴史に対する質問。
これは…殿下が人を値踏みする際に出すテストだ。
ハイネ様は試されている。
諂うだけが取り柄の令嬢達にはこのテストさえ受けさせては貰えない為、これだけでもハイネ様が殿下には特別に写っている現れだ。
だが…アルテアは他国の文化や歴史に触れる事をタブー視している。
隣国の歴史等、王立学園の授業でも習う事はない内容だ。
しかし…
『697年のサラバド大飢饉は起きるべくして起きた人災であると心得ております。サラバドは地質学的にも乾燥帯が多く後にアルテアが巻き込まれた異常気象が起こる前より、かの国は食糧難に喘いで来ました。当時のサラバド国王は国内の生産率を少しでもあげる為に乾燥に強いソルガム等の穀物生産を国を挙げて行うべきでしたが…睨み合いを続ける軍事大国に囲まれたサラバドは産業よりも軍拡に力を入れようとした結果、民は疲弊し挙句軍隊も弱体化しました。後のサラバド国王はその余りの無策ぶりから家臣団に反旗を起こされ王宮を追放されサラバド王政は崩壊…サラバドの荒野で野垂れたと聞きます。まさにサラバドにとってはロクな年では無かったと存じます…。』
しかし…公爵家は殿下の性格と他国に関心がある事を心得ていた。
中でも隣国サラバドとの国交と大陸屈指の技術力を持つデラガドに深い関心があると。
故にサラバドやデラガドの歴史や文化もハイネ様は既に頭に叩き込まれていたのだ。
ハイネ様は殿下が敢えて間違えて出したであろう年号を訂正した上で最良の答えを出した。
『よく勉強している様だな。私の質問に答えをくれた女性は君が初めてだ。』
殿下は握手を求めハイネ様に手を差し出した。
『ひっ…』
しかしハイネ様は殿下に差し出された手に怯え怯んでしまった。
男性に手を差し伸べられた経験は…自分が粗相をして父であるロドリス公爵閣下に腕を捕まれ折檻される時だけだったからだ。
『た、大変失礼致しました!御無礼をお許し下さ』
『ラグライア嬢。貴女は家族に虐げられて居るのか?』
『そ、その様な事は…』
『嘘が下手だな。貴女の目は私に助けを求めている。』
"終わった"
ハイネ様の脳裏にこの言葉が浮かんでいる事が表情から容易に伝わった。
自分が親から厳しい折檻を受け躾られている事。
それは即ち殿下の妃となる為に行われている事に他ならない。
つまり、目の前にいるこの女もまた"自分の妃になる為にと下心を孕んだ俗物"と殿下に気取られた事になる。
殿下は優秀だが合理主義で理想主義的な優しさは持ち合わせない人物だと古参の貴族家ならば誰もが知っている。
自身の目論見がバレた以上…望みはもうない。
ハイネ様は元より、私すらもそう思った。
しかし…
『貴女はか弱い。私は女だからと言って軟弱に甘んじる怠惰な人間を嫌う。私が最も侮蔑する者は…怠け者と臆病者だ。』
『……』
『だが…最初に言った通り。私の問いに答えてくれたのは君が初めてだ。』
『君がどう変わるか見てみたい』
そう言うと殿下はハイネ様の髪をそっと撫でた。
殿下のいきなりの行動に体を強ばらせるハイネ様だったが…殿下はハイネ様に言った。
『貴女を私の婚約者に迎えたい。同意してくれるね?』
突然の事で言葉を失うハイネ様。
私ですらも困惑した。あの流れから何故気難しい人物と噂される殿下が初対面のハイネ様に求婚なされたか…
しかしこれはハイネ様にとって願ってもいないチャンスだ。断る理由はない。
『わ、私如きで宜しければ…』
『謙るな…俺は自信に溢れた女が好きだ。後に王太子妃となるならば"私以上に優れた女等いない"と自他共に認める者であって貰わねば困る。』
ここで殿下の口調が変化した。
恐らくこれが殿下の本性…傲慢で尊大な素の顔なのだろう。
『お前は今の所、俺が知る誰よりも美しく賢い女だ。もう一度言う…今度は謙るな。俺の一番の女になれ』
『なります…』
一間も置かずハイネ様は即答した。
まるでハイネ様の中で何か心境に変化があったかの様に…光を失っていた彼女の瞳には何か情熱の様な灯火が宿った様であった。
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『流石我が娘だ!これでラグライア家は安泰だ!』
『あなたは自慢の娘よ!あぁ…よく頑張ったわね!』
普通に考えて…初対面で婚約者に推薦する殿下の不躾に何の疑問も抱かず、ただただ 自分達の首が繋がった事に安堵し涙を流して喜ぶ夫妻。
その姿に私は嫌悪感を抱いた。
かのアルテア創立の先駆者と呼ばれたラグライアの血はここまで衰え誇りすらも失い
残ったのは自己保身と目先の事しか見ていない愚鈍なハリボテの領主だけ…
しかしそんな心まで貧しくなった夫妻の泣いて喜ぶ姿を見てハイネ様は此処に久しく心からの笑みを浮かべて両親の肩を抱いて言った。
『私は殿下の…いいえ!アルテアで一番の女性になって見せます!見ていて下さいませ!ラグライア家もアルテアも!私が殿下と共に背負って見せます!』
ロドリス公爵の折檻に怯えていただけのハイネ様が胸を張り勇ましくそう宣言したのだ。
その宣言を聞いて夫妻は益々涙を流しハイネ様の膝に縋った。
どうやらハイネ様は…初めて自身を評価した殿下に
多少なり影響されてしまった様だ。
ハイネ様の瞳には少女には似つかわしくない程の情熱と愛が宿っている様に私には見えた。
私は…この職を辞する事にする。
この哀れな迄に純粋なハイネ様が
これから不幸になって行く姿を見るのは余りに忍びない。
私は聞いてしまったのだ。
殿下が近年側近として召し抱えたサイン侯爵との会話を。
『畏れながら出過ぎた事を申しますが…ラグライア公爵家はもはや落ち目。以前の様な権威はございますまい。何故今にしてラグライア公爵家のハイネ嬢を?』
『貴様はまだ俺をよく分かっていないなレイモンド。』
自分より一回り歳上のサイン侯爵を呼び捨てに素の傲慢な王太子として語る殿下。
『俺は婚姻に等興味はない。男としての機能は女より長い、子など幾らでも後から設けられる。あの娘を婚約者に推薦したのは世継ぎを急かす陛下を大人しくさせる為に過ぎん。あの娘が一番マシだったから取り敢えずの時間稼ぎとしたのだ。ラグライア公爵家の娘なら陛下も文句は言うまい。』
『……殿下の思慮深さには感服致しました!このサイン!殿下の様な聡明な君主に仕えられる事を誇りに思いますぞ!』
『ラグライア公爵の媚び寄りにもうんざりしていた所だ。飢饉の時代に何の功績も挙げられなかった約立たずが次代の王たる俺の寵愛を欲する等烏滸がましい。』
『では、あの宣誓遂行の許可を賜れますか?』
『焦るなレイモンド。ラグライアの家名等俺にとってはもはや取るに足らないが…ハイネにはまだ見込みがある。公爵家が最後の希望としてみっちり教育したと見受けられる…優秀な王太子妃に成りうる可能性がある限りは…ハイネは俺のモノだ。』
『ちっ…』
サイン侯爵は…王太子の目を盗み
虫が鳴くよりも小さく極小音で舌打ちを鳴らした。
サイン侯爵の目論見は…サインの名に益々箔を付ける事の他にラグライア公爵家の完全なる失墜だろう。
ラグライア公爵家は…サイン家を散々こき使って来た。
古くは公爵家の庭番から始まったのがサイン家の始まりだ。
煽てて…媚びて…擦り寄って…
公爵家にご機嫌伺いをしてお零れに預かり
そんな事を何十代も続けて蓄えた財産を元手に農業を始めとして勢力を伸ばし、今ではアルテアでも名うての貴族家として名を連ねているが…
先祖達が扱き使われて来た恨みをサイン家の人間が水に流す筈がない。
サイン侯爵の目的は…自身との政略結婚を袖にしたハイネ様を我がモノとする事…
今まで自分を扱き使って来た一族の娘を…自分の物とする事こそ…サイン家のもう1つの野望なのだ…。
仕えた家から養分を吸収し根こそぎ奪う…イナゴか寄生虫の様な貪欲さを持つ毒虫サイン家に目を付けられている以上…
このままハイネ様が殿下と結ばれる事は叶わないだろう。
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