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本編【表】
第36話-ぶつかる想い
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-幼き日のライアン視点-
何日が過ぎただろう。
いや、何週間か?
俺は鍛錬も勉学の場にも姿を表さず自室に篭っていた。
食事も殆ど取らずベッドで寝たきりの状態だった。
この時俺は…何も考えていなかった。
何かを考えようとすれば自分の不甲斐なさしか頭に過ぎらないからだ。
俺はひたすら横になり天井を見詰めていた。
ある日…姉上が俺の部屋にやって来た。
いや…実は毎日寝たきりの俺の口にスープを流し込みに来ていたらしいが…全く覚えがない。
姉上はなんとか俺を外に引き摺り出そうとあの手この手で俺に話しかけて居たらしいが…それも全く覚えがない。
『ドゴンが貴方が何日も来ないから寂しがっているわよ?あの子は貴方を振り落とすのが日課なのに最近全然来ないからイライラしているみたい。久しぶりに振り落とされて来なさいよ。』
『・・・』
俺が無言を貫いて居ると扉からヒョコと顔を出し奴がやって来た。
『お邪魔しますよ~~っと』
シェーヌだ。
『何しに来た…俺を笑いに来たのか』
『俺のジョークで笑わせに来たんだよライアン。』
シェーヌは軽口を叩く。
普段から奴とは剣術稽古の時に顔を合わせていた。
歳は奴の方が上だが…グロードに指南を受け始めたのは俺の方が先…つまり兄弟子に辺る。
それなのに…シェーヌは俺の実力を上回る。
その事を奴自身も分かっている事が気に食わない…
俺は朝も晩も…必死に鍛錬を繰り返して剣を振る中で、奴は欠伸をしながら素振りの数を誤魔化して時間を潰す。
その態度が気に食わない…
そして…そんな奴に剣で敵わない事がもっと気に食わない…
シェーヌは…俺に出来ない事が出来る
俺より努力している訳でも無いのに…
そう…奴は天才だ。
戦士として天稟の才がある。
同門の剣士達は元より
師範であるグロードも…我が父上でさえも認める天性の才能が奴にはある。
それを認める事が許せなかった。
"生まれながらの才能"
そんなもの認めたくはない…
"力とは努力した者だけが得られる"
それだけが俺の心の拠り所の様に…俺は我武者羅に鍛錬に励んだ。
しかし…俺がシェーヌを超えられる事は遂に無かった。
108
俺とシェーヌが木剣を交えた模擬戦の数だ。
戦績は38勝70敗
稽古で顔を合わせる度に俺はシェーヌに挑んだ。
しかし…そんな俺をシェーヌは笑ってスカし
その殆どが敗北に終わった。
俺が僅かに勝った時ですら、奴は笑いながら拍手して俺の勝利を祝った。
ライバルに勝利を祝われる事…
それはまるで子供が大人に窘められる様で悔しかった。
剣術ではまだ劣る俺は…ならば戦士としての心意気で奴を越えようと思った…
しかしその結果…自らのエゴの為に子供が死んだ。
俺は…とことん戦士に向いていなかった。
父上も…俺なんかよりシェーヌが息子ならどれだけ良かったかと思っているだろう。
皆が皆シェーヌを称えた。
その名は王宮にも轟き"彼こそがアルテアの勇者だ"と口々に称され王にも賛美されたとか…
皆がシェーヌに憧れ
男達は奴を模範とし、女達は奴に熱い視線を送る。
一方俺は…
考えたくもない…
『帰れ…』
『いつまで腐っている気だライアン』
『黙れ…』
『嫌だね!!黙らせて見ろ!!』
『出ていけ!!!』
俺はベッドから飛び起きてシェーヌの胸倉に掴みかかった。
『ちょっとライアン!?』
姉上は俺を止めようとする。
しかし奴は顔色1つ変えず…
『追い出してみろ。俺は慰めの言葉なんか知らねぇが…お前をその惨めな引き籠もり生活から引っ張り出す事は出来る。』
『やってみろ、返り討ちにしてやる。』
『なら勝負だな?勝った方が正義だ!敗者は勝者の言う事を一つ聞く…構わないよなァ?』
『くだらん!』
『自信が無いのかよ?ライアンちゃん』
そう言って笑った。
『貴様!!』
俺はシェーヌに拳を振りかざした。
しかし振りかざした腕を捕まれ俺は投げ飛ばされた。
俺は窓を突き破って外に放り出された。
外の冷気を久しぶりに浴びた俺だが…体がフツフツと熱くなるのを感じた。
割れた窓ガラスから奴が出てくると雪に埋もれる俺を見てまた不敵に笑った。
『今日はいい天気だなァ?気温は5℃って所か?ポカポカ陽気だ!』
『ふざけるな!!!』
俺はシェーヌを殴り付けた。
渾身の一撃で…全体重を掛けて。
だが…
『良いパンチだ…!だけど俺には効かねぇ!!』
そう言って奴は拳を振るい、俺は顔面に食らった。
重い一撃に一瞬視界がグラついた。
『2人共やめて!!!』
姉上が制止するが俺ももう止まれなかった。
『このッ!!』
しかし俺も負けじと反撃した。
虚を付く為に殴ると見せかけて足元をすくいシェーヌを地面に押し倒した。
『バカにしやがって!!!』
俺は倒れ込んだ奴の顔面に肘打ちをした。
鼻を狙って攻撃するのは敵の戦意を喪失させる有効打だ。
しかし…
『あぁ…!正直今のお前を俺は軽蔑してる!!』
鼻血を流しながらもシェーヌはそう言って
マウントポジションを取っていた俺のみぞおちに蹴りを入れ、そのまま俺を蹴りあげた。
『ぐっ…』
『全部投げ出しやがって…てめぇふざけてんじゃねーぞ?』
『黙れ!!貴様に何が分かる!!』
シェーヌのみぞおちを殴り付ける。
『何も分かんねぇよ!!てめぇが誰にも相談しねーからなぁ!!!』
しかしシェーヌはものともせずに俺のみぞおちを殴り付ける。
『ぐぶっ…』
内蔵にダメージが入ったか…吐き気が込み上げて来るが…俺も気力だけで立ち上がった。
『お前には分かるまい…どんなに努力しても認められない虚しさが…』
『努力って誰かに評価して貰う為にするモンなのかよ?』
『アルテア中で称えられているお前には分からん…俺は辺境伯家の嫡男として…アルテアの華と称えられたセリアの許嫁として…相応の男にならなければならなかった……だが俺は結局何者にもなれなかった…俺は辺境伯家の後継者にも…セリアを守る許嫁にも相応しくない…俺は全てを放棄する。家督も…セリアも…』
『珍しく長々と喋るじゃねーかライアン…』
『相談しないから分からないとお前は言ったな?心の内を明かしたぞ…さぁ帰れシェーヌ』
『嫌だね!まだ勝者の権利を行使してないからな』
『なにを言って…』
『周りを見てみろ。宣言通りお前を外に出したぞ。つまり…俺様の勝ちだ』
『ぐっ…』
『戦士に二言はねぇよなライアン?勝った者が正義であり、敗者は勝者の如何なる命令にも一つ従う』
『何をしろと…』
『もう一度だけチャンスをやってくれ、お前自身に』
『どう言う意味だ…』
『俺は…お前を戦士として尊敬してるんだ…お前には俺に出来ない事が出来るからな』
『俺に出来て…お前に出来ない事…?』
『俺は…自分で言うのもなんだが敵を殺す事においては右に出る者はこのアルテアには居ないって自負がある…』
『だが俺はそれだけだ…敵を切る事でしか大事な物を守る術を知らない…だけどお前は違うだろライアン』
『何が…違うと言うんだ…』
『お前は…何かを守る為なら自分の身を呈して守り抜く強さがあるじゃねぇか…あの夜だって…お前は一人でウラドの山にセリアを探しに行ってくれた…。俺には出来なかった…何も出来なかった…だけどお前は違った』
『俺はお前のそんな底力を買ってるんだぜ…この失敗は取り返しが付かないが…お前が二度と同じ過ちを繰り返さないと俺は信じてるんだ』
『だからもう一度だけ…自分にチャンスをやってくれ全てを諦めて放り出すなんて言うな…お前が消えちまったら…誰がセリアを守るんだよ』
『……!』
ライアンはハッと我に帰った。
自分の今している事は…ただの責任逃れに過ぎなかった事に気が付いた。
少女の死を目の当たりにして…自分が今まで気付かずに背負っていた責任の重さが恐ろしくなり…投げ出そうとしていた…。
セリアの事もだ。
俺は最低だ…本当にどうしようもない…
俺は今まで…自分の立場の重さに無自覚だった…。
何故、平民より大きな邸宅で暮らせているのか…
何故皆が子供の俺に敬称を付けて呼ぶのか…
歳上の兵士達が俺に頭を下げるのか…
それは…俺が何れ皆の命の"責任"を背負う貴族だからだ…
今まで…貴族として裕福な暮らしを享受しておいて…その責任が恐ろしくなり一度は投げ出そうとした…
なんて卑怯で…臆病者なんだ…
俺は…貴族として生まれた時点で逃げ出す事等許されないんだ…
不運な事に…今回死んだのは俺じゃなく守られるべき領民の少女だった…
この償いは…俺が生きている限りこの国の為に尽くす事でしか贖えない…
命ある限り
俺はこの使命を背負って生きよう。
例え誰かの身代わりになろうとも…自らの使命を全うし守りぬける様に尽くそう…
セリアの事も…
だが…俺にはセリアを幸せにする力は無い…
セリアの幸せを願う事しか出来ない…
神が託した神託の不幸とは…俺の事だ…。
俺の様な無能と夫婦になって…セリアが幸せになれる筈がない…
ならば…俺はセリアを幸せにする力ある男が現われるまでの繋ぎとなろう。
セリアが他の誰かを愛した時
俺はこの身を引こう…
それまで俺は…彼女の傍で飾りの婚約者として陰ながら彼女を守ろう…。
そう新たに心に誓い。
俺はセリアと距離を取った。
親交が深まれば…また俺の弱さが顔を出し
別れが辛くなってしまうから…
俺の弱さがセリアを不幸にする事を避ける為…
俺はセリアに背を向けた。
何日が過ぎただろう。
いや、何週間か?
俺は鍛錬も勉学の場にも姿を表さず自室に篭っていた。
食事も殆ど取らずベッドで寝たきりの状態だった。
この時俺は…何も考えていなかった。
何かを考えようとすれば自分の不甲斐なさしか頭に過ぎらないからだ。
俺はひたすら横になり天井を見詰めていた。
ある日…姉上が俺の部屋にやって来た。
いや…実は毎日寝たきりの俺の口にスープを流し込みに来ていたらしいが…全く覚えがない。
姉上はなんとか俺を外に引き摺り出そうとあの手この手で俺に話しかけて居たらしいが…それも全く覚えがない。
『ドゴンが貴方が何日も来ないから寂しがっているわよ?あの子は貴方を振り落とすのが日課なのに最近全然来ないからイライラしているみたい。久しぶりに振り落とされて来なさいよ。』
『・・・』
俺が無言を貫いて居ると扉からヒョコと顔を出し奴がやって来た。
『お邪魔しますよ~~っと』
シェーヌだ。
『何しに来た…俺を笑いに来たのか』
『俺のジョークで笑わせに来たんだよライアン。』
シェーヌは軽口を叩く。
普段から奴とは剣術稽古の時に顔を合わせていた。
歳は奴の方が上だが…グロードに指南を受け始めたのは俺の方が先…つまり兄弟子に辺る。
それなのに…シェーヌは俺の実力を上回る。
その事を奴自身も分かっている事が気に食わない…
俺は朝も晩も…必死に鍛錬を繰り返して剣を振る中で、奴は欠伸をしながら素振りの数を誤魔化して時間を潰す。
その態度が気に食わない…
そして…そんな奴に剣で敵わない事がもっと気に食わない…
シェーヌは…俺に出来ない事が出来る
俺より努力している訳でも無いのに…
そう…奴は天才だ。
戦士として天稟の才がある。
同門の剣士達は元より
師範であるグロードも…我が父上でさえも認める天性の才能が奴にはある。
それを認める事が許せなかった。
"生まれながらの才能"
そんなもの認めたくはない…
"力とは努力した者だけが得られる"
それだけが俺の心の拠り所の様に…俺は我武者羅に鍛錬に励んだ。
しかし…俺がシェーヌを超えられる事は遂に無かった。
108
俺とシェーヌが木剣を交えた模擬戦の数だ。
戦績は38勝70敗
稽古で顔を合わせる度に俺はシェーヌに挑んだ。
しかし…そんな俺をシェーヌは笑ってスカし
その殆どが敗北に終わった。
俺が僅かに勝った時ですら、奴は笑いながら拍手して俺の勝利を祝った。
ライバルに勝利を祝われる事…
それはまるで子供が大人に窘められる様で悔しかった。
剣術ではまだ劣る俺は…ならば戦士としての心意気で奴を越えようと思った…
しかしその結果…自らのエゴの為に子供が死んだ。
俺は…とことん戦士に向いていなかった。
父上も…俺なんかよりシェーヌが息子ならどれだけ良かったかと思っているだろう。
皆が皆シェーヌを称えた。
その名は王宮にも轟き"彼こそがアルテアの勇者だ"と口々に称され王にも賛美されたとか…
皆がシェーヌに憧れ
男達は奴を模範とし、女達は奴に熱い視線を送る。
一方俺は…
考えたくもない…
『帰れ…』
『いつまで腐っている気だライアン』
『黙れ…』
『嫌だね!!黙らせて見ろ!!』
『出ていけ!!!』
俺はベッドから飛び起きてシェーヌの胸倉に掴みかかった。
『ちょっとライアン!?』
姉上は俺を止めようとする。
しかし奴は顔色1つ変えず…
『追い出してみろ。俺は慰めの言葉なんか知らねぇが…お前をその惨めな引き籠もり生活から引っ張り出す事は出来る。』
『やってみろ、返り討ちにしてやる。』
『なら勝負だな?勝った方が正義だ!敗者は勝者の言う事を一つ聞く…構わないよなァ?』
『くだらん!』
『自信が無いのかよ?ライアンちゃん』
そう言って笑った。
『貴様!!』
俺はシェーヌに拳を振りかざした。
しかし振りかざした腕を捕まれ俺は投げ飛ばされた。
俺は窓を突き破って外に放り出された。
外の冷気を久しぶりに浴びた俺だが…体がフツフツと熱くなるのを感じた。
割れた窓ガラスから奴が出てくると雪に埋もれる俺を見てまた不敵に笑った。
『今日はいい天気だなァ?気温は5℃って所か?ポカポカ陽気だ!』
『ふざけるな!!!』
俺はシェーヌを殴り付けた。
渾身の一撃で…全体重を掛けて。
だが…
『良いパンチだ…!だけど俺には効かねぇ!!』
そう言って奴は拳を振るい、俺は顔面に食らった。
重い一撃に一瞬視界がグラついた。
『2人共やめて!!!』
姉上が制止するが俺ももう止まれなかった。
『このッ!!』
しかし俺も負けじと反撃した。
虚を付く為に殴ると見せかけて足元をすくいシェーヌを地面に押し倒した。
『バカにしやがって!!!』
俺は倒れ込んだ奴の顔面に肘打ちをした。
鼻を狙って攻撃するのは敵の戦意を喪失させる有効打だ。
しかし…
『あぁ…!正直今のお前を俺は軽蔑してる!!』
鼻血を流しながらもシェーヌはそう言って
マウントポジションを取っていた俺のみぞおちに蹴りを入れ、そのまま俺を蹴りあげた。
『ぐっ…』
『全部投げ出しやがって…てめぇふざけてんじゃねーぞ?』
『黙れ!!貴様に何が分かる!!』
シェーヌのみぞおちを殴り付ける。
『何も分かんねぇよ!!てめぇが誰にも相談しねーからなぁ!!!』
しかしシェーヌはものともせずに俺のみぞおちを殴り付ける。
『ぐぶっ…』
内蔵にダメージが入ったか…吐き気が込み上げて来るが…俺も気力だけで立ち上がった。
『お前には分かるまい…どんなに努力しても認められない虚しさが…』
『努力って誰かに評価して貰う為にするモンなのかよ?』
『アルテア中で称えられているお前には分からん…俺は辺境伯家の嫡男として…アルテアの華と称えられたセリアの許嫁として…相応の男にならなければならなかった……だが俺は結局何者にもなれなかった…俺は辺境伯家の後継者にも…セリアを守る許嫁にも相応しくない…俺は全てを放棄する。家督も…セリアも…』
『珍しく長々と喋るじゃねーかライアン…』
『相談しないから分からないとお前は言ったな?心の内を明かしたぞ…さぁ帰れシェーヌ』
『嫌だね!まだ勝者の権利を行使してないからな』
『なにを言って…』
『周りを見てみろ。宣言通りお前を外に出したぞ。つまり…俺様の勝ちだ』
『ぐっ…』
『戦士に二言はねぇよなライアン?勝った者が正義であり、敗者は勝者の如何なる命令にも一つ従う』
『何をしろと…』
『もう一度だけチャンスをやってくれ、お前自身に』
『どう言う意味だ…』
『俺は…お前を戦士として尊敬してるんだ…お前には俺に出来ない事が出来るからな』
『俺に出来て…お前に出来ない事…?』
『俺は…自分で言うのもなんだが敵を殺す事においては右に出る者はこのアルテアには居ないって自負がある…』
『だが俺はそれだけだ…敵を切る事でしか大事な物を守る術を知らない…だけどお前は違うだろライアン』
『何が…違うと言うんだ…』
『お前は…何かを守る為なら自分の身を呈して守り抜く強さがあるじゃねぇか…あの夜だって…お前は一人でウラドの山にセリアを探しに行ってくれた…。俺には出来なかった…何も出来なかった…だけどお前は違った』
『俺はお前のそんな底力を買ってるんだぜ…この失敗は取り返しが付かないが…お前が二度と同じ過ちを繰り返さないと俺は信じてるんだ』
『だからもう一度だけ…自分にチャンスをやってくれ全てを諦めて放り出すなんて言うな…お前が消えちまったら…誰がセリアを守るんだよ』
『……!』
ライアンはハッと我に帰った。
自分の今している事は…ただの責任逃れに過ぎなかった事に気が付いた。
少女の死を目の当たりにして…自分が今まで気付かずに背負っていた責任の重さが恐ろしくなり…投げ出そうとしていた…。
セリアの事もだ。
俺は最低だ…本当にどうしようもない…
俺は今まで…自分の立場の重さに無自覚だった…。
何故、平民より大きな邸宅で暮らせているのか…
何故皆が子供の俺に敬称を付けて呼ぶのか…
歳上の兵士達が俺に頭を下げるのか…
それは…俺が何れ皆の命の"責任"を背負う貴族だからだ…
今まで…貴族として裕福な暮らしを享受しておいて…その責任が恐ろしくなり一度は投げ出そうとした…
なんて卑怯で…臆病者なんだ…
俺は…貴族として生まれた時点で逃げ出す事等許されないんだ…
不運な事に…今回死んだのは俺じゃなく守られるべき領民の少女だった…
この償いは…俺が生きている限りこの国の為に尽くす事でしか贖えない…
命ある限り
俺はこの使命を背負って生きよう。
例え誰かの身代わりになろうとも…自らの使命を全うし守りぬける様に尽くそう…
セリアの事も…
だが…俺にはセリアを幸せにする力は無い…
セリアの幸せを願う事しか出来ない…
神が託した神託の不幸とは…俺の事だ…。
俺の様な無能と夫婦になって…セリアが幸せになれる筈がない…
ならば…俺はセリアを幸せにする力ある男が現われるまでの繋ぎとなろう。
セリアが他の誰かを愛した時
俺はこの身を引こう…
それまで俺は…彼女の傍で飾りの婚約者として陰ながら彼女を守ろう…。
そう新たに心に誓い。
俺はセリアと距離を取った。
親交が深まれば…また俺の弱さが顔を出し
別れが辛くなってしまうから…
俺の弱さがセリアを不幸にする事を避ける為…
俺はセリアに背を向けた。
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