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本編【表】
第46話-王女の真意
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「お茶も良いですけど、極上酒の準備がございますので宜しかったらお一つ如何ですか♪」
『結構だ。』
息を揃えたかの様に同時に同じ台詞を繰り出す2人。
ライアンは勿論、普段お調子者で酒好きのシェーヌも侍女達の提案を断る。
臣下である2人の来訪を酒で迎える主等いない。
居るとしたなら…何か後ろめたい事がある故に酒で誤魔化そうとしている。もしくは酒に酔わせて判断力を奪おうとしている。
そのどちらかだ。
サイン侯爵が講じた罠はあからさまだった。
あからさまに媚びる侍女達の執拗なボディタッチ。
甘ったるい猫なで声に、しつこい位に薦めて来る酒。
"これは罠です"と立て看板が立てられた落とし穴を踏み抜く者は居ない。
もっとも"これが罠だ"と見抜ける者だけに限った話だが…
サイン侯爵は2人を過小評価していた。
未婚で元服したばかりの若造等、酒と女で丸め込めるに違いないと踏んで居た。
現にこの罠に第二王子はまんまと引っかかってしまった。
王太子が異国デラガドに留学していた時も、この方法を使って友好関係を結び、人脈作りに勤しんだ経験も持つ。
残念だが、大半の人間は欲に忠実だ。
人間の三大欲求の内の2つである"食欲"と"性欲"を駆使した接待を毅然と断れる者は少ない。
ましてや、今日の相手はたかが若造だ。
靡かない訳が無い。
そんな今までの成功から生まれた驕りが出た。
「私、強い殿方が好きですわ♪きゃっ…!凄い胸筋…♡服の下には一体どんな肉体があるのか拝見したいですわ~♡」
侍女達は強引な程にベタベタとライアンとシェーヌの体に触れる。
これではまるで娼婦だ。
『えいっ♪脱がせちゃえ!』
侍女達はライアンとシェーヌの服のボタンに手を掛けた。
『戯れも大概にして…っておい』
侍女を振りほどこうとするライアンだが、他の侍女達がライアンの腕を抱き込む様に抑える。
その際、胸を押し付ける事も忘れない。
「あぁ~ん!減る物じゃありませんしいいじゃありませんか!」
『そうだぜライアン!減るもんじゃないし裸位見せてやってもいいじゃないか!』
『シェーヌ…貴様!?』
気が付けばシェーヌはニタニタとした緩んだ表情で自身の服を脱がそうとする侍女達にされるがままでいた。
侍女達はニヤリと目配せした。
-ふふっ…やっぱりアルテア無類の剣士シェーヌ・フェレネスと言ってもただの発情したガキね…
-噂通りのお調子者みたいね。このまま下も脱がせてやって筆下ろししてやりなさいよ。王宮勤めの侍女複数人と乱交したなんて醜聞を握れば侯爵閣下から望むままに褒美が頂けるわ!
-じゃあ私はこっちの無口な方を貰おうかな♪つまらなそうな男だけど背が高くて顔は好みかも。
下劣な算段を孕んだ目配せで意思疎通する侍女達はまず、抵抗しないシェーヌのベルトに手を掛けた。
「アルテア随一の剣豪シェーヌ様は一体どんな立派な剣を隠しているのかしらぁ~♪」
ベルトを外し、留め具を外してファスナーを下ろす。
「さぁご対面♡…え?」
シェーヌの股ぐらからは鋭く尖った比喩表現無しの剣が顔を出した。
『どうだ?デカいだろ!』
ニヤニヤしながらズボンから取り出した剣を侍女に向けるシェーヌ。
「え…あっ…え?」
『未婚の伯爵家の令息を強姦しようとしたんだ。殺されても文句は言えんぞ~?』
シェーヌはそう言うと、握った剣をビュンと素振りして見せる。
「ひっ!!!!」
ちょっとやそっとの使い手が振るう素振りでは到底出せない空を切る猛音。
シェーヌ達を掴んでいた侍女達は尻もちを付きながら後退りした。
『これが王太子殿下の持て成しか?愚劣な余興はもう結構だ。退室願おう。』
ライアンがそう言うと侍女達はイソイソと退室して行った。
『お前ともあろう者が…一瞬籠絡され掛けたと疑ったぞ。』
『あの中に好みの女は居なかったからな~』
『……ならば好みの女なら応じたと?』
『当たり前だ。』
ドヤ顔で言うシェーヌ。
『威張って言う事か!見直し掛けたのに肩透かしな奴だ!』
『怒るなライアン!俺は女の好みにはうるさいんだ!ちょっとやそっとの女が来たって簡単にゃ…』
『もうよそう…不毛だ。それよりお前。そんな所に武器を隠し持っていたのか?殿下が俺達をどうにかしようとしていると疑って…』
『いいや。殿下と言えど王宮内でそんな大胆な真似は出来んだろう。セリアにも帯剣して王宮に来るのは王政への表立った反発に取られるから武器を持たずに来る様に言われてたんだが…剣は俺の一部…手足と同じで場所に応じて手放す訳にはいかないだろ?』
『馬鹿者が…見付からぬ様に股ぐらにしまっておけよ…』
『分かったから覗くなよ?エッチ!』
『誰が…!!』
そんなやり取りをしていると応接室の扉が開かれ、一人の女が入室して来た。
その女を見てライアン達はピタリと会話を止める。
先程の侍女達とは違い、上等なドレスに身を包んんだ一際美しい女だ。顔立ちも凛としていて高貴な印象を漂わせる。
『あのなぁ…色仕掛けなんてしたって無駄だぜ?さっさと出ていきなよネェちゃん!』
シェーヌは先程の侍女達ではダメと踏んで王太子が侍らせる一級の妾をけしかけて来たと踏み、シッシッと手をやる。
『ば、馬鹿者!!口を慎めシェーヌ!!』
しかしライアンは目の色を変えてライアンが窘めた。
『このお方は…エミリア王女様だ…』
『え!?あっ、マジ!?』
そう聞くとシェーヌも目の色を変えた。
『お初にお目に掛かります。ソルガデス王家の第一王女エミリアと申します。ライアンさんはお久方ぶりですわね。』
『エミリア王女様…ご無沙汰致しております。』
『あのぉ…知らずとは言え失礼な事言ってすみませんでしたぁ』
シェーヌは先程の無礼な発言を詫びる。
『なんだその謝り方は…』
ライアンはお喋りが苦手だが
シェーヌは時と場に応じた言葉遣いが苦手だ。
『そんなに萎縮されなくてもよろしくてよ。私は病弱故…王族としての公務も社交界にも顔を出していませんもの。知らなくても当たり前ですわ。どうぞお好きな様に振舞って下さいな。』
エミリアは悠然と落ち着き払った態度で語る。
『そっか!じゃあ遠慮なk…』
『"はい"だろ』
ライアンは王女の言葉をそのまま受け取りタメ口にまで至るシェーヌの口を塞ぐ。
『むごっ!!なにすんだライアン!!』
『お前の口の利き方がなってないからだ!!』
王女の面前で言い合い2人だが
そんな2人を見て王女はクスクスと口元を手で隠しながら上品に笑う。
『面白い人達ね。まるで兄弟喧嘩を見ているみたい。リフェリオとフェルリオがうんと小さい時もそんな風に喧嘩していたわ!』
『うっ…』
『なら俺がお兄ちゃんだな!なんせ俺はライアンより歳上だからな!』
ライアンは王女の言葉に気恥しさを覚えたが
シェーヌは王女の言葉に悪ノリした。
『貴方達は…いえ、攻のフェレネス家と守のファルカシオン家の者達は、水と油の様に見えて重なる事で互いの得手不得手を補えているのですね。こんなに互いに相性が良い一族は初めて見ましたわ。』
二人をまじまじと見詰めながら王女は語った。
『いきなり不躾でごめんなさいね。今日は王族としてでは無くリフェリオの姉として。弟が皆さんに迷惑を掛けてしまった事をお詫びしたくて参りましたの。』
『エミリア王女様が詫びる必要等ございません。』
ライアンはエミリア王女の人柄をよく知っている。
病気を理由に表舞台にはまず立たない人間だが
ファルカシオン家のライアンとフェレネス家のセリアが婚約を交わした際、両家当主と共に王宮に報告にあがった際にライアンはエミリア王女と話した事がある。
内容は他愛ない物だったが、僅か数分の会話でライアンの自分を過小評価する性格を見抜かれ、もっと自分に自信を持つ様に、そしてセリアを引っ張って行く様にとアドバイスされた。
彼女は良い意味で王族とは思えないほど気さくで、病弱な体だと言うのが嘘の様にバイタリティ溢れる女性だ。
自身の姉、アレクシアに似たモノを感じる。
そして彼女は誰に対しても優しい。
新米の侍女がエミリア王女の膝に紅茶を零す粗相をやらかした際には、自身が熱湯を被った事よりもまず侍女が火傷しなかったか気遣ったと言う逸話すらある位だ。
気高く 優しく 美しい
それがライアンの知るエミリア王女だ。
『そうだ。悪いのは全部殿下だぜ王女様!どんな乳母があのナルシスト王子に育てたのか見てやりたい位だ!』
『黙れバカ!!!』
ライアンが再びシェーヌの口を塞ぐ。
『リフェリオもフェルリオも…父と私が教育したのよ。』
『あっ…』
流石のシェーヌも"しまった"とバツが悪そうな顔をした。
『リフェリオはまだ幼い頃に、フェルリオに至っては生まれた時に母と死別していて…母の愛を知らない二人は、乳母じゃなく家族である私達で育てようと父に進言しました。でも父は2人のどちらかを自分の跡継ぎにさせる為に、常に競わせる様に厳しく躾けていて…だからせめて私位は優しくしてあげないとと思っていたのだけど…甘やかし過ぎちゃったみたい…』
『いやその…』
『シェーヌ…貴様はもう一言も喋るな。たっぷり黙っていろ。』
『リフェリオは…前まであんな子では無かったのよ。1番に拘って負けず嫌いな所や誰かとすぐ競いたがる性格は前からあったけど…異国の地に留学してから、まるで人が変わったみたいな合理ばかりを重んじる性格になってしまって…』
『・・・』
ライアンはとても他人事の様に聞こえなかった。
あの王太子はまるで幼い頃の自分の様だ。
重役を背負わされるが為に生まれて
守るべき人が出来て
その責任に見合う人間になろうと力に固執し
他人と自分を比較して挫折し、結果一生忘れられてはならない罪を犯した。
自分の驕りが人を殺めた。
ライアンと王太子の違いは、その罪を自覚しているか
そして、守るべき人が今もまだいるかどうかだ。
ライアンには今も尚守るべきセリアと領民達がいる。
王太子はどうだろうか?
彼は何の為に戦っているのだろうか。
玉座の為?自分の思想の為?
少なくとも自分以外の誰かの為でない事は確かだ。
『結構だ。』
息を揃えたかの様に同時に同じ台詞を繰り出す2人。
ライアンは勿論、普段お調子者で酒好きのシェーヌも侍女達の提案を断る。
臣下である2人の来訪を酒で迎える主等いない。
居るとしたなら…何か後ろめたい事がある故に酒で誤魔化そうとしている。もしくは酒に酔わせて判断力を奪おうとしている。
そのどちらかだ。
サイン侯爵が講じた罠はあからさまだった。
あからさまに媚びる侍女達の執拗なボディタッチ。
甘ったるい猫なで声に、しつこい位に薦めて来る酒。
"これは罠です"と立て看板が立てられた落とし穴を踏み抜く者は居ない。
もっとも"これが罠だ"と見抜ける者だけに限った話だが…
サイン侯爵は2人を過小評価していた。
未婚で元服したばかりの若造等、酒と女で丸め込めるに違いないと踏んで居た。
現にこの罠に第二王子はまんまと引っかかってしまった。
王太子が異国デラガドに留学していた時も、この方法を使って友好関係を結び、人脈作りに勤しんだ経験も持つ。
残念だが、大半の人間は欲に忠実だ。
人間の三大欲求の内の2つである"食欲"と"性欲"を駆使した接待を毅然と断れる者は少ない。
ましてや、今日の相手はたかが若造だ。
靡かない訳が無い。
そんな今までの成功から生まれた驕りが出た。
「私、強い殿方が好きですわ♪きゃっ…!凄い胸筋…♡服の下には一体どんな肉体があるのか拝見したいですわ~♡」
侍女達は強引な程にベタベタとライアンとシェーヌの体に触れる。
これではまるで娼婦だ。
『えいっ♪脱がせちゃえ!』
侍女達はライアンとシェーヌの服のボタンに手を掛けた。
『戯れも大概にして…っておい』
侍女を振りほどこうとするライアンだが、他の侍女達がライアンの腕を抱き込む様に抑える。
その際、胸を押し付ける事も忘れない。
「あぁ~ん!減る物じゃありませんしいいじゃありませんか!」
『そうだぜライアン!減るもんじゃないし裸位見せてやってもいいじゃないか!』
『シェーヌ…貴様!?』
気が付けばシェーヌはニタニタとした緩んだ表情で自身の服を脱がそうとする侍女達にされるがままでいた。
侍女達はニヤリと目配せした。
-ふふっ…やっぱりアルテア無類の剣士シェーヌ・フェレネスと言ってもただの発情したガキね…
-噂通りのお調子者みたいね。このまま下も脱がせてやって筆下ろししてやりなさいよ。王宮勤めの侍女複数人と乱交したなんて醜聞を握れば侯爵閣下から望むままに褒美が頂けるわ!
-じゃあ私はこっちの無口な方を貰おうかな♪つまらなそうな男だけど背が高くて顔は好みかも。
下劣な算段を孕んだ目配せで意思疎通する侍女達はまず、抵抗しないシェーヌのベルトに手を掛けた。
「アルテア随一の剣豪シェーヌ様は一体どんな立派な剣を隠しているのかしらぁ~♪」
ベルトを外し、留め具を外してファスナーを下ろす。
「さぁご対面♡…え?」
シェーヌの股ぐらからは鋭く尖った比喩表現無しの剣が顔を出した。
『どうだ?デカいだろ!』
ニヤニヤしながらズボンから取り出した剣を侍女に向けるシェーヌ。
「え…あっ…え?」
『未婚の伯爵家の令息を強姦しようとしたんだ。殺されても文句は言えんぞ~?』
シェーヌはそう言うと、握った剣をビュンと素振りして見せる。
「ひっ!!!!」
ちょっとやそっとの使い手が振るう素振りでは到底出せない空を切る猛音。
シェーヌ達を掴んでいた侍女達は尻もちを付きながら後退りした。
『これが王太子殿下の持て成しか?愚劣な余興はもう結構だ。退室願おう。』
ライアンがそう言うと侍女達はイソイソと退室して行った。
『お前ともあろう者が…一瞬籠絡され掛けたと疑ったぞ。』
『あの中に好みの女は居なかったからな~』
『……ならば好みの女なら応じたと?』
『当たり前だ。』
ドヤ顔で言うシェーヌ。
『威張って言う事か!見直し掛けたのに肩透かしな奴だ!』
『怒るなライアン!俺は女の好みにはうるさいんだ!ちょっとやそっとの女が来たって簡単にゃ…』
『もうよそう…不毛だ。それよりお前。そんな所に武器を隠し持っていたのか?殿下が俺達をどうにかしようとしていると疑って…』
『いいや。殿下と言えど王宮内でそんな大胆な真似は出来んだろう。セリアにも帯剣して王宮に来るのは王政への表立った反発に取られるから武器を持たずに来る様に言われてたんだが…剣は俺の一部…手足と同じで場所に応じて手放す訳にはいかないだろ?』
『馬鹿者が…見付からぬ様に股ぐらにしまっておけよ…』
『分かったから覗くなよ?エッチ!』
『誰が…!!』
そんなやり取りをしていると応接室の扉が開かれ、一人の女が入室して来た。
その女を見てライアン達はピタリと会話を止める。
先程の侍女達とは違い、上等なドレスに身を包んんだ一際美しい女だ。顔立ちも凛としていて高貴な印象を漂わせる。
『あのなぁ…色仕掛けなんてしたって無駄だぜ?さっさと出ていきなよネェちゃん!』
シェーヌは先程の侍女達ではダメと踏んで王太子が侍らせる一級の妾をけしかけて来たと踏み、シッシッと手をやる。
『ば、馬鹿者!!口を慎めシェーヌ!!』
しかしライアンは目の色を変えてライアンが窘めた。
『このお方は…エミリア王女様だ…』
『え!?あっ、マジ!?』
そう聞くとシェーヌも目の色を変えた。
『お初にお目に掛かります。ソルガデス王家の第一王女エミリアと申します。ライアンさんはお久方ぶりですわね。』
『エミリア王女様…ご無沙汰致しております。』
『あのぉ…知らずとは言え失礼な事言ってすみませんでしたぁ』
シェーヌは先程の無礼な発言を詫びる。
『なんだその謝り方は…』
ライアンはお喋りが苦手だが
シェーヌは時と場に応じた言葉遣いが苦手だ。
『そんなに萎縮されなくてもよろしくてよ。私は病弱故…王族としての公務も社交界にも顔を出していませんもの。知らなくても当たり前ですわ。どうぞお好きな様に振舞って下さいな。』
エミリアは悠然と落ち着き払った態度で語る。
『そっか!じゃあ遠慮なk…』
『"はい"だろ』
ライアンは王女の言葉をそのまま受け取りタメ口にまで至るシェーヌの口を塞ぐ。
『むごっ!!なにすんだライアン!!』
『お前の口の利き方がなってないからだ!!』
王女の面前で言い合い2人だが
そんな2人を見て王女はクスクスと口元を手で隠しながら上品に笑う。
『面白い人達ね。まるで兄弟喧嘩を見ているみたい。リフェリオとフェルリオがうんと小さい時もそんな風に喧嘩していたわ!』
『うっ…』
『なら俺がお兄ちゃんだな!なんせ俺はライアンより歳上だからな!』
ライアンは王女の言葉に気恥しさを覚えたが
シェーヌは王女の言葉に悪ノリした。
『貴方達は…いえ、攻のフェレネス家と守のファルカシオン家の者達は、水と油の様に見えて重なる事で互いの得手不得手を補えているのですね。こんなに互いに相性が良い一族は初めて見ましたわ。』
二人をまじまじと見詰めながら王女は語った。
『いきなり不躾でごめんなさいね。今日は王族としてでは無くリフェリオの姉として。弟が皆さんに迷惑を掛けてしまった事をお詫びしたくて参りましたの。』
『エミリア王女様が詫びる必要等ございません。』
ライアンはエミリア王女の人柄をよく知っている。
病気を理由に表舞台にはまず立たない人間だが
ファルカシオン家のライアンとフェレネス家のセリアが婚約を交わした際、両家当主と共に王宮に報告にあがった際にライアンはエミリア王女と話した事がある。
内容は他愛ない物だったが、僅か数分の会話でライアンの自分を過小評価する性格を見抜かれ、もっと自分に自信を持つ様に、そしてセリアを引っ張って行く様にとアドバイスされた。
彼女は良い意味で王族とは思えないほど気さくで、病弱な体だと言うのが嘘の様にバイタリティ溢れる女性だ。
自身の姉、アレクシアに似たモノを感じる。
そして彼女は誰に対しても優しい。
新米の侍女がエミリア王女の膝に紅茶を零す粗相をやらかした際には、自身が熱湯を被った事よりもまず侍女が火傷しなかったか気遣ったと言う逸話すらある位だ。
気高く 優しく 美しい
それがライアンの知るエミリア王女だ。
『そうだ。悪いのは全部殿下だぜ王女様!どんな乳母があのナルシスト王子に育てたのか見てやりたい位だ!』
『黙れバカ!!!』
ライアンが再びシェーヌの口を塞ぐ。
『リフェリオもフェルリオも…父と私が教育したのよ。』
『あっ…』
流石のシェーヌも"しまった"とバツが悪そうな顔をした。
『リフェリオはまだ幼い頃に、フェルリオに至っては生まれた時に母と死別していて…母の愛を知らない二人は、乳母じゃなく家族である私達で育てようと父に進言しました。でも父は2人のどちらかを自分の跡継ぎにさせる為に、常に競わせる様に厳しく躾けていて…だからせめて私位は優しくしてあげないとと思っていたのだけど…甘やかし過ぎちゃったみたい…』
『いやその…』
『シェーヌ…貴様はもう一言も喋るな。たっぷり黙っていろ。』
『リフェリオは…前まであんな子では無かったのよ。1番に拘って負けず嫌いな所や誰かとすぐ競いたがる性格は前からあったけど…異国の地に留学してから、まるで人が変わったみたいな合理ばかりを重んじる性格になってしまって…』
『・・・』
ライアンはとても他人事の様に聞こえなかった。
あの王太子はまるで幼い頃の自分の様だ。
重役を背負わされるが為に生まれて
守るべき人が出来て
その責任に見合う人間になろうと力に固執し
他人と自分を比較して挫折し、結果一生忘れられてはならない罪を犯した。
自分の驕りが人を殺めた。
ライアンと王太子の違いは、その罪を自覚しているか
そして、守るべき人が今もまだいるかどうかだ。
ライアンには今も尚守るべきセリアと領民達がいる。
王太子はどうだろうか?
彼は何の為に戦っているのだろうか。
玉座の為?自分の思想の為?
少なくとも自分以外の誰かの為でない事は確かだ。
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