【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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本編【表】

第55話-王太子の真意とその後

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決闘騒動から2週間が経った。
この二週間で色々な事が変わった。

まずリフェリオ王太子が廃太子とされ王位継承権から除名された事。

セリア達の一件から成る権威乱用と暴行沙汰が明らかとなり、ハイネ嬢に対する流血沙汰も芋づる式で明らかとなった。その調査の結果で更に王宮騎士団を私物化し謀反の疑いまで掛けられた王太子は権威を剥奪され幽閉される身となった。

口を割ったのは…サイン侯爵配下の者だった。
概ね、落ち目になった王太子と共倒れになる事を恐れ、ゴマすり代わりに配下に密告を命じたのだろう。

王太子の野望は白日の元に晒された。
アルテア二大勢力であるフェレネス家の娘を王太子妃に据える事で取り込み自身の私兵を強化し

許嫁との婚礼に水を差した王政に不信感を抱くであろうファルカシオン家を王の傍から遠ざけ

武力を盾に政権交代を強行する目論見は破綻した。
王は事の全てを聞くとまだ安静が必要な王太子を呼び付け、淡々と廃嫡を宣言した。

アルテア創立以来、絶える事無く続いたソルガデス王政は現政権をもって終焉を迎えるこのとなるが…王に迷いは無かった。

王は世継ぎを取らず次代の王位継承者には御三家の中からいずれ指名すると宣言し、この事実は包み隠さずアルテア中に公表された。

未だ支持が厚いソルガデス王政の終焉に困惑する者が溢れた。

そして意外な事に王太子の処遇に嘆きの声をあげる民は決して少なくなかった。

クランツ王は昔も今も支持の厚い賢王であり。
リフェリオ元王太子も民からすれば本性を知らない分優秀で良き王太子として民には愛され期待されていたのだ。

そんなソルガデス王政が終わりを迎え
新たな王を迎える事に不安を覚える者も多い。

王家に次ぐ力を持ったラグライア公爵家は零落し…

次期王位継承者は御三家バーキン家のレジュナルド公爵が最有力候補と噂されているらしい。


元王太子の野望は潰えた。
彼の野望も…願いも…理想も…未来も…全て潰えた。


彼は今、王宮から南東にある古城の塔に幽閉されている。

しかし幽閉の理由はあくまで"謀反の兆し有り"として幽閉されており、罪人としてでは無く、謹慎を命じられた権威を持たない王族として、この塔に閉じ込められている。


元王太子は、出された食事も殆ど口にせずうわ言を繰り返している。


『リフェリオ…もういいのよ…貴方は頑張り過ぎたの…でもそうなる様にしたのは私とお父様よ…だからもういいの…時間は掛かるでしょうけど…お父様が御退位なされたら…その時はフェルリオと4人で普通の家族になりましょうね…。』


エミリア王女はあれだけの事を仕出かした元王太子の幽閉先に足繁く通い弟を励ました。



『………たんだ…』


蚊の鳴くような声で何かを呟く元王太子。


『なに?リフェリオ』


『全てを…注いだんだ…アルテアを救う為に…』


『そうね…貴方は本当によく頑張っていたわ。』


エミリア王女は彼を否定しない。
今、傷付いて虚ろな彼を叱っても意味が無いからだ。


『俺は……母さんみたいな人をアルテアから無くしたかった…』


『お母様みたいな人を…?』


『母さんは…フェルリオを身篭って出産し死んだ…俺は母さんを救いたくて異国の医学薬学に興味を持ったんだ…』


元王太子は何故自分が異国の技術に焦がれる様になったかを思い出し語った。


まだ幼かった頃、王立図書館の禁書の棚に忍び込み、母を救う術が無いかと、外の世界について記された書物を読み漁った。

術は…直ぐに見付かった。
イリス国の医術には難産による自然分娩が危うい母体に対して外科手術で胎児を取り出す術式があるそうだと。


腹を刃で切り裂き胎児を取り出す等…考えただけで死にそうな術式だが…イリスには痛みを消し去る魔法の様な草や、失った血を他者の血で代用する医術も確立されており、これらを用いれば出産による死亡リスクは10000分の1を下回るそうだ。

幼かった彼は叱られる事も億さず嬉しそうにその書物を見せ、両親にイリス国の医術を頼ろうと提案したが…


答えは拒絶だった。


母の拒絶だった。


母は全ては神の思し召しだと言い。


"私が出産で死ぬならそれが私の寿命なのよ"

母はそう言ってどれだけ懇願しようが異国の医術を拒んだ。


父はそれを止めなかった。
"母の気持ちを汲んでやりなさい"と…


妻の命が掛かっていると言うのに…父の声色は冷静そのものだった。


そして呆気なく母は死んだ。
イリスの医術を頼れば難なく救えた命だ…
イリスでは…出産で死ぬ女はほぼ居ない。


それなのにアルテアでは未だに出産は命懸けだ。
何故だ?何故母は死んだ?


アルテアが新しい技術を持とうとしないからだ

では異国の技術を頼れば良いだろう…何故拒む?


何の薬にもならない古い慣習に固執しているからだ…!!


幼き彼はこう考える様になり。 
アルテアの慣習を憎む様になった。
それと同時に母を死に至らしめた弟を恨む様になり
救えた命を見殺した父を心から信用出来なくなった。


彼は亡き母の墓標に誓った。


"アルテアの民が…悪しき慣習が故に死ぬ事を俺が止めて見せる"と…


"技術があれば救えた筈の命を救える様にする為に
アルテアを開国してみせる"…と


その全てをエミリア王女に吐露した。
王女は否定も肯定もせず黙って彼の無念に耳を傾けた。

涙に濡れる弟に胸を貸し背を叩いて慰めた。


『俺は救いたかった…母さんを…これから死ぬアルテアの民達を…』


王女は弟の含みある最後の言葉に違和感を覚えたが
今はただ…弟を強く抱き締めた。
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