【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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【SS1】ハイネの譚

第12話-孤立無援

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-ハイネ視点-


おかしい…
最近…周りの生徒達の私を見る目が明らかにおかしい…

下位貴族生徒達は私を親の仇であるかの様な目で睨む
高位貴族生徒達の態度も…何故かよそよそしく感じた…。


「来たぞ…ハイネだ…」

「しっ…目を合わせるな…折檻されるぞ…」

「フランセス男爵令嬢は目が合っただけで手に酷い火傷を負わされたらしいぞ…」

「酷い女だ…あんな女が後の王太子妃だなんて…」


私の耳に言われのない中傷が入った…。
私が男爵家令嬢に火傷を負わせた…?
そもそも…フランセス令嬢は…ファルカシオン家のアレクシアの学友だ…


私は、下手に敵を増やすまいと彼女アレクシアにも彼女の友人達にも近付かなかった…


『シャリア…みんな私をなんて言ってるの…?』


流石の私もこの件は皆がどう思っているか気にした
事実無根の噂が広まっては困る…


『ハイネ…様……幾ら下位貴族達の指導の為とは言え…虐待は許される事ではありません…』


『虐待ですって…?』


『ひっ…も、申し訳ございません…出過ぎた事を…』


シャリアは私に怯え切っていた…この噂を盲信している様だ……


『しかしハイネ様…幾ら後の王太子妃となる貴女様でも…国教の教えに背く様な…おぞましい折檻は許される事ではありません…』


リティシアも私の表情をチラチラ伺いながら批判して来た…。


国教の教えに背く様な…?

おぞましい折檻…?


何の話だか全く分からない…
私は…折檻なんてした事ない……

直接行動に出たのだって…マチルダに水を掛けたあの時だけだ…


一体…何がどうなって居るの…


「ラグライアさん…ちょっと」


私の思考は一人の教師によって遮られた。



---------------------------


『ラグライアさん…アルマ・フランセスさんから貴女に対する重大な告発が有りました…』

『は……』


学長室に呼び出された私は戦慄した。
怯えた目で私を見る手に包帯を巻いたフランセス嬢に、私を睨みながら彼女に付き添うアレクシア…

これではまるで裁判で…私は被告人だ…

『フランセスさん…先程の話をもう一度して頂けますか?』

学長は彼女を気遣う様に言う。
彼女が被害者だと信じて疑っていないからだ。

『彼女に…ラグライア令嬢に折檻を受けました…』

火傷した手を摩りながら彼女は言った。

『ふ、ふざけないで!!!』

私は根も葉もない言い掛かりに憤慨した
私が怒鳴ると…フランセス令嬢は小さく悲鳴をあげ、アレクシアの肩に隠れた。


『ラグライアさん…落ち着いて…まずは座りなさい。…さぁ』

学長は冷静に…しかし依然彼女の証言を疑わない口振りで私を諭した。

『くっ…』


私は言われるがまま座るが…冷静ではいられなかった…やってもいない暴行事件の犯人にされ…誰もその証言を疑いすらしないのだ…


『ラグライアさん…彼女の発言に反論はありますか?』

『私は…折檻なんて…火傷なんてさせていませんっ!!』


私は学長の問いに即答した。


『じゃあアルマが嘘をついたって言うの?私がしつこく問い詰めるまで…アルマは自分で火傷したと言っていたのよ!?…わざわざ貴女を貶める為に嘘をつく理由がないじゃない!!』


アレクシアが横槍を入れて来た。
まさか…彼女が火傷の嘘をでっちあげさせた…?


いや…道理がない…
彼女は派閥争いに無関心を貫いて来たし…高位貴族生徒とも下位貴族生徒とも分け隔て無く接して居たのを知っている…。

私に靡かなかった性格からも…誰かの差し金でこんな嘘をでっちあげる事はしないだろう…


そもそもそんな事したって彼女に益がない…


彼女はただ…友人であるフランセス令嬢の言葉を鵜呑みにしているだけだろう…


ならば誰が…一体なんでこんな嘘を……


『いいこと!?今度もし私の友人にこんな事をしてみなさい…公爵家令嬢だろうが殿下の婚約者だろうがぶっ潰してやるから!!!』


アレクシアの言葉は…私がフランセス令嬢を火傷させたと信じて疑わない勢いだった。

その事に…私の感情は爆発した。


『やってないって言ってるでしょ!!!!私は火傷なんかさせてない!!!!!』


椅子はひっくり返り…私は自分で意識出来るほど頭に血が上っている事を自覚した…

頭が熱い…顔が熱い…

やってもいない事で責め立てられた事も理由だが
自身の潔白が証明しえない事が余計に腹立たしかった…


"やってない証明"等しようがない…
所謂"悪魔の証明"と言うものだ…


誰も自身が悪魔でないと証明出来ない様に
やっていない証明等出来ない…


ただ被害者が私を名指しにしただけで犯人扱いだ…
私はその理不尽が許せなかった…


私の激昂にフランセス令嬢は怯えてアレクシアの後ろに隠れた。


先程まで私を"ぶっ潰す"と息巻いていたアレクシアさえも…私の激昂に驚愕の表情で狼狽していた。


『ラグライアさん…落ち着きなさい…』


学長の冷めた態度の静止で我に帰る…
感情を出したって何も状況は変わらない…寧ろ立場が危うくなると言うのに…


『ラグライアさん、貴女がサイン令嬢にサロンで水をかけたと言う話も聞き及んでいます。この話も貴女は否定なさいますか?』

『それは………事実です…しかしそれは彼女がサロンで飲酒し学園内の風紀を乱していたからで…』

『サイン令嬢が飲酒…?初耳ですが確かにそれは校則違反です……しかし何故貴女は学園側に報告せず私刑に走ったのですか?』

『それは……』

『当てて差し上げましょう…"王太子妃になる者として力を示そうとした"……違いますか?』


『・・・』


学長の指摘は正にその通りだった…
私は王太子妃になる者として教師に言い付けるよりも自分の力で制そうとした…。


『今回の件も…その示威行為が行き過ぎてしまった結果なのでは?』


『ち、違います!!!私は…誰に対しても暴力を奮った事はありません!!!』


『この件は徹底的に調査します。一先ずラグライアさん…貴女は調査が済むまで自室にて無期限の謹慎処分とします。』

『そんな…』


調査ってなによ…
精々が生徒達に聞き取り調査をするだけでしょ…
全員が口裏を合わせていたら…私が悪者にされるだけじゃない…


『許さない…』


私はフランセス令嬢をひと睨みして学長室を後にした…何の思惑があってこんなデマを吐いたか分からないけど…どんな手を使っても事実を明らかにさせてやると言う意を込めた睨みだった。


彼女はアレクシアに隠れながらブルブルと震えて居た。


学長室の外で待ってくれていたのは…シャリアとリティシアだけだった…いつも金魚のフンの様に張り付いていた者達の姿は無かった…


『ハイネ様…如何でしたか…?』

恐る恐る私の表情を伺いながら聞いてくるシャリア。


『調査の間…謹慎処分を受ける事になりましたわ…』

『そうですか…』

シャリアとリティシアは驚きもしなかった。
まるで"あれだけの事をすれば当然だ"と言わんばかりの態度だった…


『シャリア…リティシア…私を信じて下さる…?』

『えっと…』

『ハイネ様は…やっていないと…?』

『ラグライアの名に誓ってもいい…やってないわ…』

『な、なるほど…』

『分かりました…』


私が家名に誓いを立てて潔白を主張しても
彼女達からは気の無い返事しか帰って来なかった…

私が今まで築いて来たと思い込んでいた信頼とは…この程度の物だったのだろうか…

二人の私に対する評価は"こいつならやりかねない"
その程度だったのだと思い知らされる…

殿下に習い、自分より力劣る者の評価や批判に価値は無いと振舞っていた私の驕りが招いた結果がコレだ…


何故私は殿下の様にできないのだろう…
何がまだ足りないと言うのだろう…


私は力ない足取りで自室に向かった…


--------------------------------

-アレクシア視点-


『アルマ…貴女を信じて良いのよね?』

私はアルマを問い詰めていた。
ハイネが犯人と疑って居なかった私だが…ハイネが感情を剥き出しにして潔白を主張した事が気掛かりだったからだ。


『ど、どう言う意味…?』

『私…これでも色んな人達と付き合って来たから嘘を言ってるか本当の事を言ってるかは分かるつもりよ…嘘吐きには…独特のサインがあるから』

『ひ、ひどいわ…アレクシア…私を疑うの…?』


『アルマ…ただ私の目を見て信じて良いって言って頂戴。そうしたら私は貴女を信じる。』


『う、嘘なんか言ってないわ…だって考えて見て?…私がラグライア令嬢を貶めてどんな得があるって言うの…?』


私の経験上、嘘を吐く人間は…自分の嘘や悪事がバレそうになった時、冷静に次の嘘を吐く…

予め問い詰められた時の次の嘘が頭に用意されているから冷静でいられる。

一方無実の人間は大抵が感情を剥き出しにする。

突然、身に覚えのない罪を着せられて穏やかでいられる人間等いない、驚き、不安になり、怒りさえ覚える…


自身の潔白をムキになって訴える。


アルマには…嘘吐きのサインが出ていた…。
何より私の目を見れて居ない彼女を見て嘘を確信した。


『アルマ…誰の差し金で彼女を訴えたの?』

『え…誰って…なにを…』

『このまま彼女が退学処分になって万が一、嘘がバレたら…貴女は公爵家令嬢に虚偽の容疑を掛けた事になるわよ…そうなる前に本当の事を話しなさい…貴女の為に』


私がそう言うと…アルマは膝から崩れ泣き出した…。
私とした事が…無実の人に向かって酷い事を言ってしまった…今からでも間違いが正される事を願う。

アルマの為にもだ…誰の命令かは分からないが…人を貶める為にアルマを火傷させる様な人間に付き従っていたって彼女が幸せになれる筈がないのだから…


私は彼女の肩を抱きながら真実を話す様に諭した。
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