【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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【SS1】ハイネの譚

第13話-なりたかった自分

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-ハイネ視点-


あれから数日…
謹慎中の間、私は両親に文を送った。
フランセス男爵家のアルマ嬢に覚えのない告発をされ退学の危機にあると…

私の退学は即ち殿下との婚約の破綻を意味する
王立学園を退学になった王太子妃等…前代未聞だ。
殿下で無くたってそんな者を王太子妃に迎えようとは思わないだろう。


そして殿下との婚約破棄は…ラグライア家の滅亡を意味する。飢饉の折で愚策を講じた事で権威は衰え、主要産業であったユビター酒の造酒工場はサイン家に奪われている。殿下との婚約が成就しなければラグライア家の権威は失墜し、残された領土も維持出来なくなる。


私にとっては殿下に見捨てられる事…
両親にとってはラグライアの名が地に落ちる事が死ぬより恐ろしい事だ。


私も両親も…死に物狂いだった。
父はまだ交流がある高位貴族家達に協力を仰ごうと言う旨の手紙を送って来た…

正直…まどろっこしいと思った。
そんな事をしたって…"公爵家の地位を後ろ盾に口止めした"と周りに吹聴されるのがオチだ…。


私は紙にペンを走らせ…父に送る手紙を書いていた。


"完全なる問題の解決には中途半端な圧力では逆効果でしょう。この危機を脱する為にはアルマ・フランセスを秘密裏に殺すしか…"


え…?


私は書いている途中の手紙に誤字脱字が無いか見直していた際に自分が恐ろしい事を書こうとしていた事に気付いた…


"アルマ・フランセスを殺すしかない"


そう書こうとしたのだ…
私は咄嗟に自分が恐ろしくなり手紙を丸めて捨てた。


この行為が正しかったのか…それとも意気地が無かったのか…自分では分からない…私を第三者目線で見てくれる人はいないからだ。


彼女に消えて貰わなければ私の将来が終わると分かってはいるが…誰かを傷付ける度胸は私にはない


一体どうすれば…何をすれば正解なのだろう…私には分からなかった。



---------------------------------------

私の心配は杞憂に終わり翌日…謹慎は解かれた。
告発者であるアルマ・フランセスが告発に誤りがあり、やはりあの火傷は自分で負った物だと釈明したからだ。


"そんな馬鹿な話があるか"と誰もが疑ったが…本人がそう主張する以上、私の謹慎は解かれる事になる。

その後彼女は健康上の問題を理由に王立学園を自主退学した。

こんな不審な逃げ方をすれば…誰もが"公爵家のハイネが圧力を掛けて退学に追い込んだ"と思うだろう。


『アルマには然るべき償いをさせました。これで水に流してちょうだいね』

アルマの友人であるアレクシアが私に釘を刺しに来た

"このイザコザを理由にフランセス家に嫌がらせをするな"と…そう言っているのだ。


『然るべき償い…?私にあらぬ疑いを掛け疑念を残したまま退学して逃げる事が然るべき償いですって?』

聞けばアルマに私の濡れ衣を解く様に諭したのはアレクシアらしい。

"退学の危機から救ってやった"と言わんばかりのアレクシアに私は腹が立った。


『ハイネさん。アルマは被害者よ…誰かに貴女を貶める為の道具にされた被害者。貴女は学生を束ねるリーダーの如く振舞っておきながら下位貴族の生徒は眼中に無いって態度だったじゃない。その事に付け込まれたのは貴女の咎だと私は思います。』


『私の咎…?はい…?言われるがままその"誰か"とやらの言いなりで人に罪を着せた友人を正当化するおつもり?』


『アルマに罪が無かったとは言わないわ…だけど貴女が下位貴族の生徒にも頼られるだったなら…誰かに強要されても…アルマは真っ先に貴女に打ち明けたでしょうね…』


『くっ…』


痛い所を突かれた私は唇を噛み締めた…。
言われなくとも下位貴族を蔑ろにした私の咎は身に染みて分かって居るからだ…

数が多いだけの有象無象と交友を怠り…学園の質を下げる邪魔者とすら思い放置して来た結果がこの有様だ。


『まぁ…私も偉そうな事は言えないわ。友人でありながら彼女に罪を犯させてしまった。貴女の事も疑ってしまった。それは申し訳無く思っています。』

アレクシアが淡々と言葉を続ける中で私は彼女に疑問を投げた。

『どうして…ご友人を自主退学させてまで私を助けて下さったの…?貴女には嫌われていると思っていたのに』

『勘違いしないで…友人アルマに間違った道を歩ませない為です。今回の事件の首謀者が誰か…彼女は最後まで口を噤んで居ましたが…一度悪事に手を貸せば…その者に何度も利用され泥沼にハマるもの。』


『私は…貴女のやり方が嫌いです。身分が低いから…不出来だからと切り捨てる貴女のやり方には思いやりが無さ過ぎますもの。誰だって最初は不出来なものよ。それを正しい道に導くのが人の上に立つ者の役目じゃなくて?』


私は…アレクシアの説教にも似た批判に反論出来ずにいた…


だって正しいもの…


彼女は正しい…


私の態度は…傲慢そのものだった…


しかもその振る舞いは殿下からの借り物…
彼の様になりたくて…
自信が持てなくて弱かった過去の自分と決別したくて振舞っていた仮初の自分だ…


私はこの期に及んで…"誰か"が作ったハイネでしか無かった…


誰かの真似をして自分を強く見せようとしたって虚仮だ。

その点アレクシアは…自分と言う物を持っている。
身分の差や後に王族に加わる私に対しても彼女の態度は毅然としていた…。


殿下以外に…私を客観的に見てくれたのは彼女だけだ…


彼女みたいな友人がいたら…私は……きっと…もう少し…正しさと優しさを上手く両立出来たかも知れない


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