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【SS1】ハイネの譚
第17話-悪意
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あれから殿下は私と口を利いて下さらなくなった。
王宮内ですれ違っても社交辞令的な挨拶をしてそそくさと去って行ってしまう…
彼が始めた事業である港の開港と造船業に体いっぱいで私に構っていられないの言うのは分かる…
しかし…忙しいなら尚のこと私を頼りにして欲しかった。彼は事業とは別に王族としての公務も一人で行っている。
『何度も言っているだろうハイネ…暫くは王宮での暮らしに慣れる事に専念してそれから…』
私が仕事が欲しいと何度も詰め寄ると…殿下も流石にうんざりした表情を露わにした。
何度聞いても答えは同じ…
"なにもするな 王宮での暮らしに慣れろ"
私は自分の存在意義を見い出せず、遂感情を出してしまった。
『私は…そんなに頼りになりませんか!!なら…私は何の為にこの王宮に居るのでしょうか!!!』
やってしまった…
王宮の廊下を行き来する者たちの視線が一点に集まる。殿下も突然怒鳴り出した私を見てギョッとしていた。
『ハイネ…落ち着け』
殿下は冷静に私を諭した。
しかしその冷静さが辛かった…殿下の冷静さは私の立場が他人事故に冷静でいられるのだ。
後の王太子妃として王宮入りし、王宮に仕える者達は私がどの程度の器なのか常に見ている…
それなのに仕事を貰えず役割のない私は…カカシも良い所だ…そんな暮らしがどんなに肩身が狭いか殿下は分かっていない。
私は貴方の為に働きたい…それだけなのに
なぜ頑なに仕事を降って下さらないのかが理解出来なかった…その疑問に対する彼の言葉がいつもと変わらない返答だったのが今日の爆発の原因だ。
殿下は私に関心を無くしてしまわれたのだろうか…?
私が王立学園で期待に添える働きが出来なかったから?
それとも殿下の夢を聞いて共に努力すると即答出来なかったから?
「ねぇ…ハイネ様って日がな一日何をして過ごしているのかしら?」
「さぁ…?エミリア様とよく一緒に歓談なされてるお姿はよく見るけど」
「まぁ…エミリア様はお身体の事情があるから仕方ないにしても…ハイネ様は体も健やかなのに遊んで過ごしていると言うの?」
「王太子殿下がほうぼうを駆け回って公務に邁進している中でハイネ様は一日中王宮でお茶を引いていたらしいわ」
「殿下がお可哀想です…あれでは体を壊してしまいますわ…」
王宮内の侍女達の声が耳に入る。
聞こえるようにワザと言っているのか…しかし私が近付くと途端に目配せして散り散りに去って行く。
侍女達の話の内容では私の王宮内での評価は"怠け者の王太子妃"だそうだ。
私だって怠けている訳ではないのに…
殿下が不在の間は、己を高める為に勉学に打ち込んだり、殿下と話を合わせる為に異国デラガドの知識を深めたり…学生時代に配下に加えた子息子女達と文のやりとりを密にして結束を高めたり
出来ることは何だってしているつもりだ
それなのに…それなのに…
王宮内の従者達の私を見る目は日に日に冷たいものに変わって行った。
陰口や目配せは当たり前…
私に出す紅茶をワザと冷めた物にしたり
私のドレスの裾を偶然を装って踏み付ける侍女まで現れ出した。
私の専属侍女達の態度は特に酷かった…。
『今日もまた殿下はお一人で視察に向かわれましたね』
特にこのシーナは私に敵意…いや悪意を隠しもしない。私が気にしている事をわざわざ教えに来る。
エミリアお姉様の前では私を敬う様な態度で接するが…二人きりの時は遠慮無しに私の言われたくない事を口にしてくる…
『出過ぎた事ですが…殿下お1人に公務を丸投げするのは如何な物かと思います。』
『丸投げに等していません…殿下が私には何もするなと…』
『それってつまり…ハイネ様は殿下に認められていないと言う事じゃありませんか?』
『・・・』
シーナの言葉に私はなにも返せなかった…
自分でも薄々感じていた事を誰かに言われた事がショックだったからだ
『ハイネ様の様な方をなんと呼ぶかご存知ですか?お飾り婚約者ですよ』
『なっ…なんですって……』
『貴方はこの王宮に来て何の貢献も成されていない…まさにお飾りじゃないですか。』
『うるさい…』
『お飾りがお気に召さないならカカシが宜しいかしら?ただただそこにいるだけの存在であるハイネ様にはピッタリかと!』
『うるさい!!うるさい!!黙りなさい!!!!』
私は…気が付けばグラスを手に取りシーナに水をかけていた…。
するとシーナは額から水を滴らせながら一瞬ニヤリと笑うと…
『申し訳ございませんでした!!!!!』
突然床に手を付き大声で謝罪し始めた。
『は…?』
『御無礼をお許しください!!!どうか!!どうか!!!』
『ちょっと…辞めてよ…』
彼女の謝罪する大声に従者達が集まる…
これでは…私が悪者に見える
「公務もしない癖に侍女に折檻か…」
「学生時代も…気に入らない生徒に私刑を下していたらしいよ…」
「全く…全てにおいて完璧な殿下が何故あの様な方を婚約者とお認めになったのか…」
-やめて…やめてよ…
周囲の冷たい視線が私に刺さる…
辛い…苦しい…寂しい…
耐えられない……
私はこんなに頑張っているのに…
どうして邪魔ばかりするの…
私は周囲の視線に耐え切れなくなり、逃げる様にその場を後にした。
王宮内ですれ違っても社交辞令的な挨拶をしてそそくさと去って行ってしまう…
彼が始めた事業である港の開港と造船業に体いっぱいで私に構っていられないの言うのは分かる…
しかし…忙しいなら尚のこと私を頼りにして欲しかった。彼は事業とは別に王族としての公務も一人で行っている。
『何度も言っているだろうハイネ…暫くは王宮での暮らしに慣れる事に専念してそれから…』
私が仕事が欲しいと何度も詰め寄ると…殿下も流石にうんざりした表情を露わにした。
何度聞いても答えは同じ…
"なにもするな 王宮での暮らしに慣れろ"
私は自分の存在意義を見い出せず、遂感情を出してしまった。
『私は…そんなに頼りになりませんか!!なら…私は何の為にこの王宮に居るのでしょうか!!!』
やってしまった…
王宮の廊下を行き来する者たちの視線が一点に集まる。殿下も突然怒鳴り出した私を見てギョッとしていた。
『ハイネ…落ち着け』
殿下は冷静に私を諭した。
しかしその冷静さが辛かった…殿下の冷静さは私の立場が他人事故に冷静でいられるのだ。
後の王太子妃として王宮入りし、王宮に仕える者達は私がどの程度の器なのか常に見ている…
それなのに仕事を貰えず役割のない私は…カカシも良い所だ…そんな暮らしがどんなに肩身が狭いか殿下は分かっていない。
私は貴方の為に働きたい…それだけなのに
なぜ頑なに仕事を降って下さらないのかが理解出来なかった…その疑問に対する彼の言葉がいつもと変わらない返答だったのが今日の爆発の原因だ。
殿下は私に関心を無くしてしまわれたのだろうか…?
私が王立学園で期待に添える働きが出来なかったから?
それとも殿下の夢を聞いて共に努力すると即答出来なかったから?
「ねぇ…ハイネ様って日がな一日何をして過ごしているのかしら?」
「さぁ…?エミリア様とよく一緒に歓談なされてるお姿はよく見るけど」
「まぁ…エミリア様はお身体の事情があるから仕方ないにしても…ハイネ様は体も健やかなのに遊んで過ごしていると言うの?」
「王太子殿下がほうぼうを駆け回って公務に邁進している中でハイネ様は一日中王宮でお茶を引いていたらしいわ」
「殿下がお可哀想です…あれでは体を壊してしまいますわ…」
王宮内の侍女達の声が耳に入る。
聞こえるようにワザと言っているのか…しかし私が近付くと途端に目配せして散り散りに去って行く。
侍女達の話の内容では私の王宮内での評価は"怠け者の王太子妃"だそうだ。
私だって怠けている訳ではないのに…
殿下が不在の間は、己を高める為に勉学に打ち込んだり、殿下と話を合わせる為に異国デラガドの知識を深めたり…学生時代に配下に加えた子息子女達と文のやりとりを密にして結束を高めたり
出来ることは何だってしているつもりだ
それなのに…それなのに…
王宮内の従者達の私を見る目は日に日に冷たいものに変わって行った。
陰口や目配せは当たり前…
私に出す紅茶をワザと冷めた物にしたり
私のドレスの裾を偶然を装って踏み付ける侍女まで現れ出した。
私の専属侍女達の態度は特に酷かった…。
『今日もまた殿下はお一人で視察に向かわれましたね』
特にこのシーナは私に敵意…いや悪意を隠しもしない。私が気にしている事をわざわざ教えに来る。
エミリアお姉様の前では私を敬う様な態度で接するが…二人きりの時は遠慮無しに私の言われたくない事を口にしてくる…
『出過ぎた事ですが…殿下お1人に公務を丸投げするのは如何な物かと思います。』
『丸投げに等していません…殿下が私には何もするなと…』
『それってつまり…ハイネ様は殿下に認められていないと言う事じゃありませんか?』
『・・・』
シーナの言葉に私はなにも返せなかった…
自分でも薄々感じていた事を誰かに言われた事がショックだったからだ
『ハイネ様の様な方をなんと呼ぶかご存知ですか?お飾り婚約者ですよ』
『なっ…なんですって……』
『貴方はこの王宮に来て何の貢献も成されていない…まさにお飾りじゃないですか。』
『うるさい…』
『お飾りがお気に召さないならカカシが宜しいかしら?ただただそこにいるだけの存在であるハイネ様にはピッタリかと!』
『うるさい!!うるさい!!黙りなさい!!!!』
私は…気が付けばグラスを手に取りシーナに水をかけていた…。
するとシーナは額から水を滴らせながら一瞬ニヤリと笑うと…
『申し訳ございませんでした!!!!!』
突然床に手を付き大声で謝罪し始めた。
『は…?』
『御無礼をお許しください!!!どうか!!どうか!!!』
『ちょっと…辞めてよ…』
彼女の謝罪する大声に従者達が集まる…
これでは…私が悪者に見える
「公務もしない癖に侍女に折檻か…」
「学生時代も…気に入らない生徒に私刑を下していたらしいよ…」
「全く…全てにおいて完璧な殿下が何故あの様な方を婚約者とお認めになったのか…」
-やめて…やめてよ…
周囲の冷たい視線が私に刺さる…
辛い…苦しい…寂しい…
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私は周囲の視線に耐え切れなくなり、逃げる様にその場を後にした。
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