【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

文字の大きさ
78 / 81
【SS1】ハイネの譚

第17話-悪意

しおりを挟む
あれから殿下は私と口を利いて下さらなくなった。

王宮内ですれ違っても社交辞令的な挨拶をしてそそくさと去って行ってしまう…

彼が始めた事業である港の開港と造船業に体いっぱいで私に構っていられないの言うのは分かる…   

しかし…忙しいなら尚のこと私を頼りにして欲しかった。彼は事業とは別に王族としての公務も一人で行っている。


『何度も言っているだろうハイネ…暫くは王宮での暮らしに慣れる事に専念してそれから…』


私が仕事が欲しいと何度も詰め寄ると…殿下も流石にうんざりした表情を露わにした。


何度聞いても答えは同じ…


"なにもするな 王宮での暮らしに慣れろ"
私は自分の存在意義を見い出せず、遂感情を出してしまった。


『私は…そんなに頼りになりませんか!!なら…私は何の為にこの王宮に居るのでしょうか!!!』


やってしまった…


王宮の廊下を行き来する者たちの視線が一点に集まる。殿下も突然怒鳴り出した私を見てギョッとしていた。



『ハイネ…落ち着け』


殿下は冷静に私を諭した。
しかしその冷静さが辛かった…殿下の冷静さは私の立場が他人事故に冷静でいられるのだ。


後の王太子妃として王宮入りし、王宮に仕える者達は私がどの程度の器なのか常に見ている…
 
それなのに仕事を貰えず役割のない私は…カカシも良い所だ…そんな暮らしがどんなに肩身が狭いか殿下は分かっていない。


私は貴方の為に働きたい…それだけなのに
なぜ頑なに仕事を降って下さらないのかが理解出来なかった…その疑問に対する彼の言葉がいつもと変わらない返答だったのが今日の爆発の原因だ。


殿下は私に関心を無くしてしまわれたのだろうか…?


私が王立学園で期待に添える働きが出来なかったから?

それとも殿下の夢を聞いて共に努力すると即答出来なかったから?


「ねぇ…ハイネ様って日がな一日何をして過ごしているのかしら?」


「さぁ…?エミリア様とよく一緒に歓談なされてるお姿はよく見るけど」


「まぁ…エミリア様はお身体の事情があるから仕方ないにしても…ハイネ様は体も健やかなのに遊んで過ごしていると言うの?」


「王太子殿下がほうぼうを駆け回って公務に邁進している中でハイネ様は一日中王宮でお茶を引いていたらしいわ」


「殿下がお可哀想です…あれでは体を壊してしまいますわ…」


王宮内の侍女達の声が耳に入る。
聞こえるようにワザと言っているのか…しかし私が近付くと途端に目配せして散り散りに去って行く。


侍女達の話の内容では私の王宮内での評価は"怠け者の王太子妃"だそうだ。


私だって怠けている訳ではないのに…


殿下が不在の間は、己を高める為に勉学に打ち込んだり、殿下と話を合わせる為に異国デラガドの知識を深めたり…学生時代に配下に加えた子息子女達と文のやりとりを密にして結束を高めたり


出来ることは何だってしているつもりだ


それなのに…それなのに…


王宮内の従者達の私を見る目は日に日に冷たいものに変わって行った。


陰口や目配せは当たり前…
私に出す紅茶をワザと冷めた物にしたり
私のドレスの裾を偶然を装って踏み付ける侍女まで現れ出した。


私の専属侍女達の態度は特に酷かった…。


『今日もまた殿下はお一人で視察に向かわれましたね』

特にこのシーナは私に敵意…いや悪意を隠しもしない。私が気にしている事をわざわざ教えに来る。


エミリアお姉様の前では私を敬う様な態度で接するが…二人きりの時は遠慮無しに私の言われたくない事を口にしてくる…


『出過ぎた事ですが…殿下お1人に公務を丸投げするのは如何な物かと思います。』


『丸投げに等していません…殿下が私には何もするなと…』


『それってつまり…ハイネ様は殿下に認められていないと言う事じゃありませんか?』


『・・・』


シーナの言葉に私はなにも返せなかった…
自分でも薄々感じていた事を誰かに言われた事がショックだったからだ


『ハイネ様の様な方をなんと呼ぶかご存知ですか?ですよ』


『なっ…なんですって……』


『貴方はこの王宮に来て何の貢献も成されていない…まさにお飾りじゃないですか。』


『うるさい…』


『お飾りがお気に召さないならカカシが宜しいかしら?ただであるハイネ様にはピッタリかと!』


『うるさい!!うるさい!!黙りなさい!!!!』


私は…気が付けばグラスを手に取りシーナに水をかけていた…。


するとシーナは額から水を滴らせながら一瞬ニヤリと笑うと…


『申し訳ございませんでした!!!!!』


突然床に手を付き大声で謝罪し始めた。


『は…?』


『御無礼をお許しください!!!どうか!!どうか!!!』


『ちょっと…辞めてよ…』


彼女の謝罪する大声に従者達が集まる…
これでは…私が悪者に見える


「公務もしない癖に侍女に折檻か…」

「学生時代も…気に入らない生徒に私刑を下していたらしいよ…」

「全く…全てにおいて完璧な殿下が何故あの様な方を婚約者とお認めになったのか…」



-やめて…やめてよ…


周囲の冷たい視線が私に刺さる…
辛い…苦しい…寂しい…


耐えられない……



私はこんなに頑張っているのに…
どうして邪魔ばかりするの…


私は周囲の視線に耐え切れなくなり、逃げる様にその場を後にした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません

しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」 ――それは私を縛る呪いの言葉だった。 家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。 痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。 でも、、そんな私、私じゃない!! ―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。 「私の人生に、おかえりなさい。」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません

綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」 婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。 だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。 伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。 彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。 婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。 彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。 真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。 事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。 しかし、リラは知らない。 アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。 そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。 彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。 王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。 捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。 宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――? ※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。 物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。

まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました

菱沼あゆ
ファンタジー
 妹の婚約者を狙う悪女だと罵られ、国を追い出された王女フェリシア。  残忍で好色だと評判のトレラント王のもとに嫁ぐことになるが。  何故か、輿入れの荷物の中には、勇者の剣が入っていた。  後宮にも入れず、魔王を倒しに行くことになったフェリシアは――。 (小説家になろうでも掲載しています)

処理中です...