エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

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第一話 ミザリーとの出会い

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ーーー始まりは五年前に遡るーーー

 突如、夜を照らす眩しい光に世界は包まれた。

 奇跡の大地と呼ばれる、ルブルドシエルにて。大英雄達による戦いが終わりを迎えた。


 天空へと聳え立つアルケーの塔。その上にルブルドシエルが位置すると言われているが生半可な力の持ち主では確かめようがない。

  一説によれば入口で規制管理している者がいる。
 いつ建造されたモノなのか、現代に於けるオーバーテクノロジーである高層構造等、謎が大いに残る塔故に情報も遮断されている。

 天空に大きく構えるが、膨大な力によって姿を眩ませているのではないか、存在自体が伝説と言われている聖域。

 その時、ルブルドシエルより極めて輝く光源が打ち消され、世界へ厄災として降り掛かる。

  伝説の存在、大魔王の力が解き放たれた。それは邪悪な因子を纏い、メテオとなり、世界を破壊する。

 大英雄の決死の捕縛、大精霊の力をもってしても、大魔王の完全なる封印に失敗した。

 メテオは強大な力となって、邪悪を振り撒く。各地に降り注ぎ甚大な被害を齎す。
 
 世界は絶望に包まれた。


 奇跡の大地の聖なる力を借りても、まだ足りなかった。大魔王の死力を尽くして世界に撒かれた邪悪な因子。

 直後、悪しき力に反応するかの様、聖域に眠る力が目覚める。それは眩く、ゆっくりと形を成していく。

 絶望の直後の事。混乱の中、残る者は縋る思いで光を見つめた。

 光が生成を為すと、そこには女神の姿があった。

「私の力を世界に託します……」

 何かを言い終えると、世界に鮮やかな空色が一斉に広がる。

 それは陣を作り上げ、女神は光の粒子となって消えて雨を降らせた。世界は女神の力を捧げられた生命の雨に呼応するように輝きを放つ。

  女神の力が込められた光の雨は世界を包む絶望を洗い流した。雨の後には神秘的で、仄かな光が世界に少しの間広がっていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

  なんて事、誰だって知ってる。
 
 大事なことは伏せられた、生まれたばかりの歴史。

  詳しく話を知る者は検討もつかない。

  もしオレにも力があれば、大英雄の1人くらい助けられたんじゃないか。

  大英雄ライドの息子で有りながら、情報すらまともに手に入らない。そう思うディンにはまだ、力が足りなかった。

  ディグル地方、ディグル村2人の英雄。ライド、リダズ、共に世界に認められた大英雄である。

  ライドは稀代の魔導剣士と名を馳せていた。

  リダズは聖拳闘士として、拳闘士の頂点に今も尚君臨している。

  そのうちライドがディンの父親であり、5年前から帰って来ていない。生きている可能性はあるらしい。

  だが、それ以上の情報は望んでも与えられる事はなかった。

  ただ今はその「らしい」と言う可能性に希望を抱くことしか出来ない自分が不甲斐ないと、ディグルの森でディンは己を鍛え抜いていた、ある日の事ーー。


 ーーーー

  ディンは十四の歳になって間もない頃、いつもの様に鍛錬をしていると、森で怪しい人影を捉えた。

  自分より体が小さい。子供か? 足元まで伸びる外套を羽織っていても分かる。線が細い。ディンは一人で森の奥へと向かって行く子供と思われる人影を上から木を軽やかに渡りながら追った。

  少しすると森の奥まで来た。この先にある洞穴になっている所の魔物はこの辺の魔物よりも動きが良く、ディンは洞穴の中の魔物に手を焼いている。洞穴内、全ての魔物を討滅できていなかった。まずは声を掛けてみる。

「おーい、そこのちっさいの! 奥に行くって言うなら危ないからやめておいた方がいいぜ」

「ひゃあっ!? びっくりした!! もう、驚かさないでよ……!」

  呪術師であるミザリーは背後からの声に驚きの声を上げ、振り返る。高い木の枝に立ち、幹に手をついてもたれ掛かる少年を見た。

(うーん、子供? こんな森の深くに……?)

  珍しいわね、と首を傾げるミザリー。

「聞こえてるか? 奥は危ないからお前みたいなチビにはまだ早いと思うぞ?」

  ディンは再度忠告する。

「あら? そうかしら。 私はこう見えてもオ・ト・ナ、なの。まぁ、ボクには少し早いかもね?」

「そんなチビなのに大人!? 小人族か!? それと、オレをガキ扱いすんなよ! オレは何度も奥に居る魔物倒した事あるんだからな!」

「へぇ~、口だけじゃないなら連れて行ってあげてもいいのよ? そして、私の目の前で魔物を倒してみなさいよ。私はここの一番強いのに用事があるのよ」

  ミザリーは大人気なく発破をかける。その言葉に少年の表情が少し曇る。

「一番強いのはやめておいた方がいいと思うぜ?あいつはオレでも歯が立たなかった。……もしかして、お前結構強いのか? 倒せるって言うなら倒す所見せてくれよ!」

  高い木の上からヒュッと飛び降りるディン。衝撃を完璧に否し、軽やかに着地する。

「だ~め~よ。私の研究は私だけのモノなの。人に見られちゃ一人でやっている意味が無くなるの、よっ」

 ミザリーはディンの額を人差し指で軽く弾く。「うおっ」とディンは反応をする。

「研究って何だよ、ケチくせー。うちのババアみてえだな」
 
  額をポリポリと掻くディンは口を尖らせた。そしてミザリーの顔色が変わった。

「……っ! どこがババアなのよ!! 良いわ、着いてきたいなら着いてきて見なさいよ。 大口叩いてるあんたみたいなのは実際に目の当たりにすれば驚いて腰抜かすのよ。そんでママの所へ帰って泣き付くのよ。怖かったよーってね」

  クスクス、と楽しい妄想を繰り広げるミザリー。

「そういう意味じゃ無いんだけど……。まあいいや、オレは腰抜ける程ひ弱じゃないぜ」

「ふーん」と相槌を打つミザリーは歩みを進める。

  ディンは「本当はお前が怖がったりしてな」と茶化し、ミザリーについて行く。
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