エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

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第九話 読み解けない男、読みを外す

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急に少女が会話を切った。

「へぇ、お嬢さんはどうしてそう思う訳?」

「私の父がディオーネの協会本部に務めていますから」

 なぜか自信有り気に言い切る少女。急に面白くないな、とザイモールは少し意地悪をしてやろうと思った。

「……って自信あり気に言われてもねぇ? 僕もこんな感じだけど中々偉いのよ? 金の悪魔だ何だとかのって変な通り名付けられたりしてるけど、ザイモール・カルナバロウって大英雄の名前は聞いた事有るかな? その僕より偉い人が黙って見過ごせるとは思わないんだけど」

  愛想のない笑顔で何も知らない少女を優しく問い質した気になるザイモール。そんなザイモールからして少女に興味は無い。

  それと、ザイモールより偉いのは大英雄である冒険者協会本部長リダズのみでありザイモールの発言はそのリダズの事を明らかに示唆している。

(まぁ、そんな偶然ないだろう)

「へぇ、あなたがザイモールさんなんですね。さっき隠し秘めたオードもそうですし、常時魔力オードの操作までして自分の力を欺く理由はそういうことなんですね」

「おや? なんのことかな。僕の力なんてこんなもんだよ?」

(おっと、これは良くない流れになってきたぞ?)

  ヘラヘラしながら適当に流すザイモールにリアナは言った。

「私の父はリダズ・ヴィザラムと言います。聞いた事あるでしょうか?ディオーネ冒険者協会本部長のリダズ・ヴィザラムです。自己紹介遅れましたが、私はそのリダズの娘のリアナ・ヴィザラムと言います。ザイモール・カルナバロウさん、この度はお初お目にかかれて非常に光栄です」

  してやったりとリアナはザイモールへと可憐な笑みを浮かべてみせる。

(うわぁ、引いちゃったよ。たぶん、本物のリアナ嬢だ……)

  ザイモールは今までの粗相を振り返り少しヒヤリとする。そもそも魔物も弱い訳でもないのにこの辺りをほっつき歩いてる二人が普通の子供である訳がなかったと気づくのが遅かった。この男はいつでもどこでも自分より劣っている存在に対して興味がないとなれば無下に扱いすぎなのだ。

  大英雄の中でも公になってはいないが階級のようなものは何となく形成されている。ザイモールは大英雄ではあるがその中ではまだ新参者であった。

  その中でも八年前の魔王との大戦争にて、魔導剣士ライドと共に大いなる活躍をしたと言われるリダズ。それを間近で見ていたザイモールは、今でも底知れないリダズの実力に頭が上がらないところがある。その上、直属の上司であるリダズの娘となるとザイモールとしてはやり難いところがある。

  それにこのリアナもザイモールに対して直感で適当を言ったわけではない。確信を持ってザイモールの詐称を暴いたのは分かっていたがミザリーの事といい、またもやとんだハズレくじだった。

「あぁ……あぁ、はいはい。あのー、リダズさんの所のお嬢さんでしたか。いつもリダズさんにはお世話になっていて、勿論リアナさんのお話も聞かせて頂いています。それと、どうか私めの先程までのご無礼を許してくれたりしませんか?」

  ザイモールはこれでもかと掌をグルッと返した。

  リダズは娘を溺愛している。ザイモールは既に散々しつこくリアナに関しての話は聞かされていた。 今回の指令の際も「ディグル村のリアナをよろしく頼むと。どのように成長しているか見てきてくれ。何か欲しい物とか分かったら教えろ」と言われている。そんな風に言われたら只の村娘みたいに聞こえるじゃないか、と今になってザイモールはリダズを責める。

  リダズは激務でもないが、立場上ディオーネの都を離れる事が非常に難しい。都からここディグル村へも普通に移動するだけでも数日はかかるだろう。
 
  その為暫く帰郷出来ずにいるリダズは”リアナは元気でやっていた”、とそんな些細な報告でさえ今か今かと楽しみに待っている。それなのに失敬な態度をとったなど話が耳に入ってしまえばリダズの逆鱗に触れ、激怒するのは火を見るより明らかである。

  「ふぅーん」とリアナは考えを巡らせザイモールを観察する。その途端にわざとらしく手を捏ね繰り回し、「如何様でございますか?」と疑わしい笑みを浮かべ始めるザイモール。

「ディンはこのザイモールさんをどう思うの?」

「えっ、オレ? この人も協力してくれるって言うんだし良い人なんじゃないの? それに大英雄ってすごいもんな」

  遊び心と言うものがないディンはすっかり他人事に感じていた。何を聞いてたんだか、とリアナの溜め息が聞こえる。そんなディンに面白みを求めるのは酷な話ある。

「そうそう、僕はこの事を仕事として協会に連絡しなければ行けない義務があります。でも、ディン君に協力すると言っているんだから、協力するとすれば元よりどうにかするつもりです」

  ディンに同調し、ニッコリと自分を売るザイモールにも多少は考えがある。

「えっ、そうだったんですか? それならそうと早く言って下さいよ」

 ディンじゃ駄目だ、話にならない。とリアナも白々しくわざとらしい笑みを浮かべながらザイモールに抵抗した。

「やっぱり良い人なんだな! 良かったよ」

  二人の入り組む淀んだ思惑には一切気付かずに 一人で幸せそうに笑うディン。

「んー、でも、僕が居ても結局は君次第だろうね。前に聞いたそのアイテムとやらの理論が合っていれば、僕はミザリーの補助が出来るってだけかな」

「そんな感じなのか、だとしてもオレの事は心配しなくていいよ」

「そう言ってくれると助かるよ。それじゃ、ミザリーはいつ頃来るか分かるかい?」

「わからないな。前に連絡があった時からすればもう着いていてもいい頃なんだけど」

「ははは、じゃあ何か退っ引きならない不都合でもあったのかなぁ?」

  何か知っている様に言うザイモールは人気の無い雑木林に首だけを回して問いかけた。
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