エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

文字の大きさ
10 / 22

第十話 ライドの秘密

しおりを挟む
 ディンの居る村の辺りに着いたのはいいんだけど……。
 
  魔物という魔物の存在が一際弱まっている気がするわね。どれだけ葬れば気が済むのよアイツは。

  それに、変な悪寒ってやつ? がするからいまいち歩みも進まなかったし……。途中変な力に身を調べられたような感覚がして気持ち悪いのよ。

  そうこうしてれば、早速爆音が轟いて……なんであの男がなんでここにいるわけ?

  しかもこのタイミングで。サプライズ登場する為に隠密行動していたのが功を奏したけど。

  それにしても本当ありえない、最悪の気分になったわ。折角色々持ち込んで完璧な術式も用意したのに。これからする事は結局協会では協力を仰ぐどころか、誰にも言えず仕舞いでバレるわけにもいかないし。私の使える術の中でも極めて上等な叡智の結晶がこれ以上協会なんぞに奪われる訳にもいかないわけよ。

  結局ここまで来て、結果的には口割らずに一人で寂しくやってきた私の苦労がまたあいつに邪魔されるってわけ?

  あいつのせいで無理矢理協会に所属されて……私の研究者人生はもう滅茶苦茶になったわ。あぁ、あと、リダズとかいう筋肉オヤジのせいね。

  一人で動けてるだけマシだけど、やりたくもない事やらされて勝手に評価される。それで怖い人たちに文句言われてって。どうしてこうなった……。悔やんでも悔やみきれないわ。
  こんなところまで来てあいつの姿を見たせいで何とか協会に一矢報いたい気持ちさえ燃え尽きそう……。

  今、私が唯一尽力しているのはディンだけなのに。それでも解放するにあたっては、全力を尽くしたけど完全完璧では無い。あとはディンがどう力を受け切れるかによるし。

  封印の術式は大きく分けて三段階用意したけど、不確定要素の発現する可能性が非常に高いし。それで、あいつまでいたら誤魔化しようがないじゃない。

  そうそう、まずはあいつよあいつ、ザンモール・クソバカヤロウだっけ? あいつ、私の邪魔をする天才かしら? ディンと接触までして、私の画策も協会側に先読みされていた訳? 何とかしたいわね……。協会の思惑かなにか知らないけど、流石大英雄って所なのかしら。

  情報は完全にシャットアウトしていたし、私は関連した事すら不用意に口外する様な真似をしたことも無い。誰か、思惑を読み解けるような能力者がいたり、なんてね。

  あら?

 でも、思ったよりあいつもバツが悪そうね。リアナに何か吹き込まれたのかしら。ふふふ。あの娘だけは何となく話も通じるし、あの憎き筋肉オヤジの娘らしいし。いくらあいつでも言い捲くられたのかしら?

  何話してるのかよく分からないけどディンは相変わらずだし、憎きザンモール・クソバカヤロウも困っている様子ね。

 ……って、え!?

 何アイツ。こっちを向いて何か喋った?結構離れている筈なのだけれど……。あー、凄い見られてる。睨み始めた気がする。……あの時みたいに変な力使われるのかしら。それに、 ディンとリアナも私がいることに気付いたみたいね。

  このまま隠れていても埒が明かないし、ディン達には悪いけどとりあえずは一時退散しましょう。アイツと私、相性が悪いのよ。



 ーーーーーー

  ……だが、ミザリーの逃亡も失敗に終わる。ザイモールはミザリーを捕らえていた。

「痛っ!! ちょっと!! 放してよ!!」

  叫び、解放を求めるミザリー。時すでに遅し。逃亡不可能。ザイモールの強大な力でミザリーの動きを雁字搦めに拘束する拘束魔法を誰にも気付かれることなく行使していた。

  少しでも動こうものなら激痛がミザリーを襲う。ザイモールが魔物に外傷を与えずに捕縛を行う際に使用する対魔用の神経系の魔法である。

  それは、神経への直接的な激痛を与える為一度拘束されれば痛覚を断ち切る他無い。故に諦めと絶望を与える。痛覚無効魔法を使えば何とかなるのだが、そこまでさせる訳もない。
 
  ミザリーはこれが三年前を含めて二度目の拘束であり、今回は即座に勘づいたが手遅れであった。

「さぁ、出ておいでよ。こそこそしてないでさ。僕が優しくしているうちにいう事聞いてくれないと困るな」

  試しに拘束を弱めるザイモール。

  「もう分かったわよ……」と小言を言い、隠れていたミザリーが姿を現す。

「ねぇ、いい加減学習した方がいいよ。君如きでは僕の目は欺けない」

「うるさいわね。なんでここに居るのよ」

  ミザリーは小さな体躯に見合わない仰々しい睨みをザイモールへ向ける。

(何、今日、人に睨まれてばっかじゃん)

「僕は暇つぶしだよ。おまけにディン君が居たからする事がなくなっちゃった」

「なら、かまけていないで早く帰ったら良いじゃない」

「絶好の休息の機会を逃すわけにはいかないでしょ。それに、訳ありみたいだし……ねぇ? 僕だって力になってあげたいんだ」

  そう言ってザイモールはミザリーを一瞥する。

「はぁ、もうどうにでもして。どうせあんたには適わないわよ。ただこれからする事の邪魔はさせない。嗅ぎ回っているみたいだけど一体どこまで知ってるわけ?」

「君のしようとしている事は全部わかる。ただ、なぜこの子を選んだ? それにこの試みは非道である自覚があるのかい?」

「特別な理由よ。ディン・アラングルドはライド・アラングルドの残した子息なの。だから、ライドの才能がこの子にも眠っている、そう思ったのよ」

「何だと!? ライド・アラングルドの事を知らないお前が勝手な事するな!!」

「突然なんなのよ!?」

  ザイモールは激昂した。ザイモールは生前のライドとの親交があり、一時は師弟関係を組んでいた。
 
  故に、ライドの強さたる所以を知っていたのだ。

「ライドさんは……元々は魔法が使えない。あの人は精霊によって力を引き出している……!」

「それはどういうことだよ!?」

  ディンが驚嘆の声を上げる。自分自身が落ちこぼれなだけだと思っていた。ザイモールはライドに似た力を手掛かりに息子であるディンを探していたのだが、力が捻じ曲げられている為、目の前の少年がディンだと断定出来なかった。

 それに、ライドの息子ともなれば確実に恵まれた戦闘センスで直ぐに名を上げると勝手に思っていた節もある。リダズの娘も同様に思っていた。

 その二人の大英雄の子息が揃ってディオーネ王都に設立されているグランディア学園へと何時まで経っても来ないと思えばこんな事になっていたなんて、とザイモールは自身がもっと早くに気付いていればと悔やむ。

「すまない、君が……ディンだったなんてね……。君に知らせる前にライドさんがあの様な形になった事は済まないと思っている。もっと早くディンには会いに来るべきだったのかも知れない。

 それと、僕は残された君の為にもライドさんの歩んだ精霊との道を模索している。僕も、精霊で力を引き出してるなんて信じられなかったけどね」

「そうだったのか……。なら、オレはどうしたらいいんだよ!! 精霊とやらに言えばよかったっていうのかよ!?」

  ディンは一気に目の前が暗幕に塞がれた感覚にどんな感情でいればいいのか分からなくなる。

「断定は出来ない、でも、ディンにはライドさんのオードが色濃く継がれているね。恐らく、君も精霊との道を歩むことが正解だったのだろう」

  大英雄であるザイモールの正解という言葉がディンには重すぎた。尚更どうしたらいいのか分からなくなりそうになる。

(ここで、終わりか……。これで、終わりか……)

  ディンら事の重きを理解するのが遅すぎた。どうにかした所で本来の道へ戻れるかザイモールにすら検討もつかない。

  リアナは俯くディンを心配し、見つめていた。ミザリーは見ていられずに空を見つめる。

(いや違う……。これはチャンスかも知れない)

 思考の方向転換する事に成功するディン。そして閃く。

「……ならさ、オレは精霊のそれも出来て、これがあんだよな。だったらよ、全部上手くいきゃ父ちゃんを超えられるって事か?」

「アハハハ! 面白いこと言うわねディン!」

「ディン?」

  ミザリーは笑いが込み上げ笑ってしまった。リアナはただ単に現実が受け入れられずに意味不明発現の重ねがけに驚きが隠せない。だが、それがディンという少年である。

  無謀にも己が力を信じ、定められた運命を切り裂くためにどんな壁にも立ち向かう不撓不屈の少年。

  ここまで来て引き下がるわけにも行かない。最早、全て自分の力にすればいいだけの話だった。

「……それは、君が耐えられた先にある理想的な未来の話だね。何度も言うけど、君が力を手にするように耐えられるとは限らないんだよ。

 力に飲まれればどうなる? 解放された力を無理に抑えても体が動かない未来の可能性だってあるだろうし、後ろ向きな発言で悪いけどこのままでもディン、君は強くなれるよ」

 ザイモールはディンの覚悟を試す。この程度の発言、一蹴してくれないと困るのだ。

「それじゃここまでやってきた意味がねぇ!」

 ドン!! と言わんばかりにディンはザイモールの繕った不安の言葉を一刀両断する。ミザリーは愉快な笑いが抑えられずにいた。

「私ね、ディンがこんな事で死んで欲しくないよ……」

 リアナが目に涙を溜めて訴える。そして、ディンの裾を小さく掴んだ。

「リアナ、大丈夫だ。オレは絶対に失敗なんかしねぇ」

  強い決意の表情から一変、リアナを安心させる為の笑みを浮かべるディン。

(それって俗に言う死亡フラグじゃ…?)

  ザイモールは不徳にも思い、軽い溜息をつく。ディンの覚悟は見せてもらった、それならこちらもやれる事をやるまでだと思いを固める。

「それなら、僕にもやれる事は協力させてもらうよ。ミザリーにも成功する確証があるみたいだしね。失敗は許されないよ、ねぇミザリー?」

「私は初めから成功しか見えていないわ。貴方達よくもまあ笑わせてくれるわね」

「ほぅ、なら見せて貰うよ。君の本気をね」

 ザイモールはミザリーを睥睨する。今のミザリーは物怖じしない。悪魔に乗っ取られた時と同じスイッチが入りかけている。

「ディン、準備が出来ているなら直ぐにでも始められるわよ」

「オレもいつでも大丈夫だよ。このままの勢いやってくれた方が集中できそうだ」

「なら、直ぐに始めさせてもらうわ。ザイモール、あなたも協力してくれるなら百人力よ」

 ミザリーは自信に満ちた凛々しい顔でザイモールを見上げて言う。

「あまり買い被らないでくれるかな?僕は僕に出来ることをするまでさ」

  そして今、ディンの解放が始まろうとしていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

退く理由ある探索者

ソイラテ
ファンタジー
正面から挑んだ探索者は、だいたい帰ってこない。 東京にダンジョンが出現した世界。 危険度は低〜中、初心者向け――そう説明される場所でさえ、死者はゼロではなかった。 金は必要だ。 だが、死ぬつもりはない。 強くもなく、装備も足りない主人公が選んだのは、 勝つ方法ではなく、「退く理由」を積み上げること。 一本道を避け、引き返せる余地を残し、 生きて帰る確率を、ほんの少しだけ上げていく。 これは、無双しない探索者が、 現代日本のダンジョンで“生き残る”ための物語。

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...