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第十話 ライドの秘密
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ディンの居る村の辺りに着いたのはいいんだけど……。
魔物という魔物の存在が一際弱まっている気がするわね。どれだけ葬れば気が済むのよアイツは。
それに、変な悪寒ってやつ? がするからいまいち歩みも進まなかったし……。途中変な力に身を調べられたような感覚がして気持ち悪いのよ。
そうこうしてれば、早速爆音が轟いて……なんであの男がなんでここにいるわけ?
しかもこのタイミングで。サプライズ登場する為に隠密行動していたのが功を奏したけど。
それにしても本当ありえない、最悪の気分になったわ。折角色々持ち込んで完璧な術式も用意したのに。これからする事は結局協会では協力を仰ぐどころか、誰にも言えず仕舞いでバレるわけにもいかないし。私の使える術の中でも極めて上等な叡智の結晶がこれ以上協会なんぞに奪われる訳にもいかないわけよ。
結局ここまで来て、結果的には口割らずに一人で寂しくやってきた私の苦労がまたあいつに邪魔されるってわけ?
あいつのせいで無理矢理協会に所属されて……私の研究者人生はもう滅茶苦茶になったわ。あぁ、あと、リダズとかいう筋肉オヤジのせいね。
一人で動けてるだけマシだけど、やりたくもない事やらされて勝手に評価される。それで怖い人たちに文句言われてって。どうしてこうなった……。悔やんでも悔やみきれないわ。
こんなところまで来てあいつの姿を見たせいで何とか協会に一矢報いたい気持ちさえ燃え尽きそう……。
今、私が唯一尽力しているのはディンだけなのに。それでも解放するにあたっては、全力を尽くしたけど完全完璧では無い。あとはディンがどう力を受け切れるかによるし。
封印の術式は大きく分けて三段階用意したけど、不確定要素の発現する可能性が非常に高いし。それで、あいつまでいたら誤魔化しようがないじゃない。
そうそう、まずはあいつよあいつ、ザンモール・クソバカヤロウだっけ? あいつ、私の邪魔をする天才かしら? ディンと接触までして、私の画策も協会側に先読みされていた訳? 何とかしたいわね……。協会の思惑かなにか知らないけど、流石大英雄って所なのかしら。
情報は完全にシャットアウトしていたし、私は関連した事すら不用意に口外する様な真似をしたことも無い。誰か、思惑を読み解けるような能力者がいたり、なんてね。
あら?
でも、思ったよりあいつもバツが悪そうね。リアナに何か吹き込まれたのかしら。ふふふ。あの娘だけは何となく話も通じるし、あの憎き筋肉オヤジの娘らしいし。いくらあいつでも言い捲くられたのかしら?
何話してるのかよく分からないけどディンは相変わらずだし、憎きザンモール・クソバカヤロウも困っている様子ね。
……って、え!?
何アイツ。こっちを向いて何か喋った?結構離れている筈なのだけれど……。あー、凄い見られてる。睨み始めた気がする。……あの時みたいに変な力使われるのかしら。それに、 ディンとリアナも私がいることに気付いたみたいね。
このまま隠れていても埒が明かないし、ディン達には悪いけどとりあえずは一時退散しましょう。アイツと私、相性が悪いのよ。
ーーーーーー
……だが、ミザリーの逃亡も失敗に終わる。ザイモールはミザリーを捕らえていた。
「痛っ!! ちょっと!! 放してよ!!」
叫び、解放を求めるミザリー。時すでに遅し。逃亡不可能。ザイモールの強大な力でミザリーの動きを雁字搦めに拘束する拘束魔法を誰にも気付かれることなく行使していた。
少しでも動こうものなら激痛がミザリーを襲う。ザイモールが魔物に外傷を与えずに捕縛を行う際に使用する対魔用の神経系の魔法である。
それは、神経への直接的な激痛を与える為一度拘束されれば痛覚を断ち切る他無い。故に諦めと絶望を与える。痛覚無効魔法を使えば何とかなるのだが、そこまでさせる訳もない。
ミザリーはこれが三年前を含めて二度目の拘束であり、今回は即座に勘づいたが手遅れであった。
「さぁ、出ておいでよ。こそこそしてないでさ。僕が優しくしているうちにいう事聞いてくれないと困るな」
試しに拘束を弱めるザイモール。
「もう分かったわよ……」と小言を言い、隠れていたミザリーが姿を現す。
「ねぇ、いい加減学習した方がいいよ。君如きでは僕の目は欺けない」
「うるさいわね。なんでここに居るのよ」
ミザリーは小さな体躯に見合わない仰々しい睨みをザイモールへ向ける。
(何、今日、人に睨まれてばっかじゃん)
「僕は暇つぶしだよ。おまけにディン君が居たからする事がなくなっちゃった」
「なら、かまけていないで早く帰ったら良いじゃない」
「絶好の休息の機会を逃すわけにはいかないでしょ。それに、訳ありみたいだし……ねぇ? 僕だって力になってあげたいんだ」
そう言ってザイモールはミザリーを一瞥する。
「はぁ、もうどうにでもして。どうせあんたには適わないわよ。ただこれからする事の邪魔はさせない。嗅ぎ回っているみたいだけど一体どこまで知ってるわけ?」
「君のしようとしている事は全部わかる。ただ、なぜこの子を選んだ? それにこの試みは非道である自覚があるのかい?」
「特別な理由よ。ディン・アラングルドはライド・アラングルドの残した子息なの。だから、ライドの才能がこの子にも眠っている、そう思ったのよ」
「何だと!? ライド・アラングルドの事を知らないお前が勝手な事するな!!」
「突然なんなのよ!?」
ザイモールは激昂した。ザイモールは生前のライドとの親交があり、一時は師弟関係を組んでいた。
故に、ライドの強さたる所以を知っていたのだ。
「ライドさんは……元々は魔法が使えない。あの人は精霊によって力を引き出している……!」
「それはどういうことだよ!?」
ディンが驚嘆の声を上げる。自分自身が落ちこぼれなだけだと思っていた。ザイモールはライドに似た力を手掛かりに息子であるディンを探していたのだが、力が捻じ曲げられている為、目の前の少年がディンだと断定出来なかった。
それに、ライドの息子ともなれば確実に恵まれた戦闘センスで直ぐに名を上げると勝手に思っていた節もある。リダズの娘も同様に思っていた。
その二人の大英雄の子息が揃ってディオーネ王都に設立されているグランディア学園へと何時まで経っても来ないと思えばこんな事になっていたなんて、とザイモールは自身がもっと早くに気付いていればと悔やむ。
「すまない、君が……ディンだったなんてね……。君に知らせる前にライドさんがあの様な形になった事は済まないと思っている。もっと早くディンには会いに来るべきだったのかも知れない。
それと、僕は残された君の為にもライドさんの歩んだ精霊との道を模索している。僕も、精霊で力を引き出してるなんて信じられなかったけどね」
「そうだったのか……。なら、オレはどうしたらいいんだよ!! 精霊とやらに言えばよかったっていうのかよ!?」
ディンは一気に目の前が暗幕に塞がれた感覚にどんな感情でいればいいのか分からなくなる。
「断定は出来ない、でも、ディンにはライドさんのオードが色濃く継がれているね。恐らく、君も精霊との道を歩むことが正解だったのだろう」
大英雄であるザイモールの正解という言葉がディンには重すぎた。尚更どうしたらいいのか分からなくなりそうになる。
(ここで、終わりか……。これで、終わりか……)
ディンら事の重きを理解するのが遅すぎた。どうにかした所で本来の道へ戻れるかザイモールにすら検討もつかない。
リアナは俯くディンを心配し、見つめていた。ミザリーは見ていられずに空を見つめる。
(いや違う……。これはチャンスかも知れない)
思考の方向転換する事に成功するディン。そして閃く。
「……ならさ、オレは精霊のそれも出来て、これがあんだよな。だったらよ、全部上手くいきゃ父ちゃんを超えられるって事か?」
「アハハハ! 面白いこと言うわねディン!」
「ディン?」
ミザリーは笑いが込み上げ笑ってしまった。リアナはただ単に現実が受け入れられずに意味不明発現の重ねがけに驚きが隠せない。だが、それがディンという少年である。
無謀にも己が力を信じ、定められた運命を切り裂くためにどんな壁にも立ち向かう不撓不屈の少年。
ここまで来て引き下がるわけにも行かない。最早、全て自分の力にすればいいだけの話だった。
「……それは、君が耐えられた先にある理想的な未来の話だね。何度も言うけど、君が力を手にするように耐えられるとは限らないんだよ。
力に飲まれればどうなる? 解放された力を無理に抑えても体が動かない未来の可能性だってあるだろうし、後ろ向きな発言で悪いけどこのままでもディン、君は強くなれるよ」
ザイモールはディンの覚悟を試す。この程度の発言、一蹴してくれないと困るのだ。
「それじゃここまでやってきた意味がねぇ!」
ドン!! と言わんばかりにディンはザイモールの繕った不安の言葉を一刀両断する。ミザリーは愉快な笑いが抑えられずにいた。
「私ね、ディンがこんな事で死んで欲しくないよ……」
リアナが目に涙を溜めて訴える。そして、ディンの裾を小さく掴んだ。
「リアナ、大丈夫だ。オレは絶対に失敗なんかしねぇ」
強い決意の表情から一変、リアナを安心させる為の笑みを浮かべるディン。
(それって俗に言う死亡フラグじゃ…?)
ザイモールは不徳にも思い、軽い溜息をつく。ディンの覚悟は見せてもらった、それならこちらもやれる事をやるまでだと思いを固める。
「それなら、僕にもやれる事は協力させてもらうよ。ミザリーにも成功する確証があるみたいだしね。失敗は許されないよ、ねぇミザリー?」
「私は初めから成功しか見えていないわ。貴方達よくもまあ笑わせてくれるわね」
「ほぅ、なら見せて貰うよ。君の本気をね」
ザイモールはミザリーを睥睨する。今のミザリーは物怖じしない。悪魔に乗っ取られた時と同じスイッチが入りかけている。
「ディン、準備が出来ているなら直ぐにでも始められるわよ」
「オレもいつでも大丈夫だよ。このままの勢いやってくれた方が集中できそうだ」
「なら、直ぐに始めさせてもらうわ。ザイモール、あなたも協力してくれるなら百人力よ」
ミザリーは自信に満ちた凛々しい顔でザイモールを見上げて言う。
「あまり買い被らないでくれるかな?僕は僕に出来ることをするまでさ」
そして今、ディンの解放が始まろうとしていた。
魔物という魔物の存在が一際弱まっている気がするわね。どれだけ葬れば気が済むのよアイツは。
それに、変な悪寒ってやつ? がするからいまいち歩みも進まなかったし……。途中変な力に身を調べられたような感覚がして気持ち悪いのよ。
そうこうしてれば、早速爆音が轟いて……なんであの男がなんでここにいるわけ?
しかもこのタイミングで。サプライズ登場する為に隠密行動していたのが功を奏したけど。
それにしても本当ありえない、最悪の気分になったわ。折角色々持ち込んで完璧な術式も用意したのに。これからする事は結局協会では協力を仰ぐどころか、誰にも言えず仕舞いでバレるわけにもいかないし。私の使える術の中でも極めて上等な叡智の結晶がこれ以上協会なんぞに奪われる訳にもいかないわけよ。
結局ここまで来て、結果的には口割らずに一人で寂しくやってきた私の苦労がまたあいつに邪魔されるってわけ?
あいつのせいで無理矢理協会に所属されて……私の研究者人生はもう滅茶苦茶になったわ。あぁ、あと、リダズとかいう筋肉オヤジのせいね。
一人で動けてるだけマシだけど、やりたくもない事やらされて勝手に評価される。それで怖い人たちに文句言われてって。どうしてこうなった……。悔やんでも悔やみきれないわ。
こんなところまで来てあいつの姿を見たせいで何とか協会に一矢報いたい気持ちさえ燃え尽きそう……。
今、私が唯一尽力しているのはディンだけなのに。それでも解放するにあたっては、全力を尽くしたけど完全完璧では無い。あとはディンがどう力を受け切れるかによるし。
封印の術式は大きく分けて三段階用意したけど、不確定要素の発現する可能性が非常に高いし。それで、あいつまでいたら誤魔化しようがないじゃない。
そうそう、まずはあいつよあいつ、ザンモール・クソバカヤロウだっけ? あいつ、私の邪魔をする天才かしら? ディンと接触までして、私の画策も協会側に先読みされていた訳? 何とかしたいわね……。協会の思惑かなにか知らないけど、流石大英雄って所なのかしら。
情報は完全にシャットアウトしていたし、私は関連した事すら不用意に口外する様な真似をしたことも無い。誰か、思惑を読み解けるような能力者がいたり、なんてね。
あら?
でも、思ったよりあいつもバツが悪そうね。リアナに何か吹き込まれたのかしら。ふふふ。あの娘だけは何となく話も通じるし、あの憎き筋肉オヤジの娘らしいし。いくらあいつでも言い捲くられたのかしら?
何話してるのかよく分からないけどディンは相変わらずだし、憎きザンモール・クソバカヤロウも困っている様子ね。
……って、え!?
何アイツ。こっちを向いて何か喋った?結構離れている筈なのだけれど……。あー、凄い見られてる。睨み始めた気がする。……あの時みたいに変な力使われるのかしら。それに、 ディンとリアナも私がいることに気付いたみたいね。
このまま隠れていても埒が明かないし、ディン達には悪いけどとりあえずは一時退散しましょう。アイツと私、相性が悪いのよ。
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……だが、ミザリーの逃亡も失敗に終わる。ザイモールはミザリーを捕らえていた。
「痛っ!! ちょっと!! 放してよ!!」
叫び、解放を求めるミザリー。時すでに遅し。逃亡不可能。ザイモールの強大な力でミザリーの動きを雁字搦めに拘束する拘束魔法を誰にも気付かれることなく行使していた。
少しでも動こうものなら激痛がミザリーを襲う。ザイモールが魔物に外傷を与えずに捕縛を行う際に使用する対魔用の神経系の魔法である。
それは、神経への直接的な激痛を与える為一度拘束されれば痛覚を断ち切る他無い。故に諦めと絶望を与える。痛覚無効魔法を使えば何とかなるのだが、そこまでさせる訳もない。
ミザリーはこれが三年前を含めて二度目の拘束であり、今回は即座に勘づいたが手遅れであった。
「さぁ、出ておいでよ。こそこそしてないでさ。僕が優しくしているうちにいう事聞いてくれないと困るな」
試しに拘束を弱めるザイモール。
「もう分かったわよ……」と小言を言い、隠れていたミザリーが姿を現す。
「ねぇ、いい加減学習した方がいいよ。君如きでは僕の目は欺けない」
「うるさいわね。なんでここに居るのよ」
ミザリーは小さな体躯に見合わない仰々しい睨みをザイモールへ向ける。
(何、今日、人に睨まれてばっかじゃん)
「僕は暇つぶしだよ。おまけにディン君が居たからする事がなくなっちゃった」
「なら、かまけていないで早く帰ったら良いじゃない」
「絶好の休息の機会を逃すわけにはいかないでしょ。それに、訳ありみたいだし……ねぇ? 僕だって力になってあげたいんだ」
そう言ってザイモールはミザリーを一瞥する。
「はぁ、もうどうにでもして。どうせあんたには適わないわよ。ただこれからする事の邪魔はさせない。嗅ぎ回っているみたいだけど一体どこまで知ってるわけ?」
「君のしようとしている事は全部わかる。ただ、なぜこの子を選んだ? それにこの試みは非道である自覚があるのかい?」
「特別な理由よ。ディン・アラングルドはライド・アラングルドの残した子息なの。だから、ライドの才能がこの子にも眠っている、そう思ったのよ」
「何だと!? ライド・アラングルドの事を知らないお前が勝手な事するな!!」
「突然なんなのよ!?」
ザイモールは激昂した。ザイモールは生前のライドとの親交があり、一時は師弟関係を組んでいた。
故に、ライドの強さたる所以を知っていたのだ。
「ライドさんは……元々は魔法が使えない。あの人は精霊によって力を引き出している……!」
「それはどういうことだよ!?」
ディンが驚嘆の声を上げる。自分自身が落ちこぼれなだけだと思っていた。ザイモールはライドに似た力を手掛かりに息子であるディンを探していたのだが、力が捻じ曲げられている為、目の前の少年がディンだと断定出来なかった。
それに、ライドの息子ともなれば確実に恵まれた戦闘センスで直ぐに名を上げると勝手に思っていた節もある。リダズの娘も同様に思っていた。
その二人の大英雄の子息が揃ってディオーネ王都に設立されているグランディア学園へと何時まで経っても来ないと思えばこんな事になっていたなんて、とザイモールは自身がもっと早くに気付いていればと悔やむ。
「すまない、君が……ディンだったなんてね……。君に知らせる前にライドさんがあの様な形になった事は済まないと思っている。もっと早くディンには会いに来るべきだったのかも知れない。
それと、僕は残された君の為にもライドさんの歩んだ精霊との道を模索している。僕も、精霊で力を引き出してるなんて信じられなかったけどね」
「そうだったのか……。なら、オレはどうしたらいいんだよ!! 精霊とやらに言えばよかったっていうのかよ!?」
ディンは一気に目の前が暗幕に塞がれた感覚にどんな感情でいればいいのか分からなくなる。
「断定は出来ない、でも、ディンにはライドさんのオードが色濃く継がれているね。恐らく、君も精霊との道を歩むことが正解だったのだろう」
大英雄であるザイモールの正解という言葉がディンには重すぎた。尚更どうしたらいいのか分からなくなりそうになる。
(ここで、終わりか……。これで、終わりか……)
ディンら事の重きを理解するのが遅すぎた。どうにかした所で本来の道へ戻れるかザイモールにすら検討もつかない。
リアナは俯くディンを心配し、見つめていた。ミザリーは見ていられずに空を見つめる。
(いや違う……。これはチャンスかも知れない)
思考の方向転換する事に成功するディン。そして閃く。
「……ならさ、オレは精霊のそれも出来て、これがあんだよな。だったらよ、全部上手くいきゃ父ちゃんを超えられるって事か?」
「アハハハ! 面白いこと言うわねディン!」
「ディン?」
ミザリーは笑いが込み上げ笑ってしまった。リアナはただ単に現実が受け入れられずに意味不明発現の重ねがけに驚きが隠せない。だが、それがディンという少年である。
無謀にも己が力を信じ、定められた運命を切り裂くためにどんな壁にも立ち向かう不撓不屈の少年。
ここまで来て引き下がるわけにも行かない。最早、全て自分の力にすればいいだけの話だった。
「……それは、君が耐えられた先にある理想的な未来の話だね。何度も言うけど、君が力を手にするように耐えられるとは限らないんだよ。
力に飲まれればどうなる? 解放された力を無理に抑えても体が動かない未来の可能性だってあるだろうし、後ろ向きな発言で悪いけどこのままでもディン、君は強くなれるよ」
ザイモールはディンの覚悟を試す。この程度の発言、一蹴してくれないと困るのだ。
「それじゃここまでやってきた意味がねぇ!」
ドン!! と言わんばかりにディンはザイモールの繕った不安の言葉を一刀両断する。ミザリーは愉快な笑いが抑えられずにいた。
「私ね、ディンがこんな事で死んで欲しくないよ……」
リアナが目に涙を溜めて訴える。そして、ディンの裾を小さく掴んだ。
「リアナ、大丈夫だ。オレは絶対に失敗なんかしねぇ」
強い決意の表情から一変、リアナを安心させる為の笑みを浮かべるディン。
(それって俗に言う死亡フラグじゃ…?)
ザイモールは不徳にも思い、軽い溜息をつく。ディンの覚悟は見せてもらった、それならこちらもやれる事をやるまでだと思いを固める。
「それなら、僕にもやれる事は協力させてもらうよ。ミザリーにも成功する確証があるみたいだしね。失敗は許されないよ、ねぇミザリー?」
「私は初めから成功しか見えていないわ。貴方達よくもまあ笑わせてくれるわね」
「ほぅ、なら見せて貰うよ。君の本気をね」
ザイモールはミザリーを睥睨する。今のミザリーは物怖じしない。悪魔に乗っ取られた時と同じスイッチが入りかけている。
「ディン、準備が出来ているなら直ぐにでも始められるわよ」
「オレもいつでも大丈夫だよ。このままの勢いやってくれた方が集中できそうだ」
「なら、直ぐに始めさせてもらうわ。ザイモール、あなたも協力してくれるなら百人力よ」
ミザリーは自信に満ちた凛々しい顔でザイモールを見上げて言う。
「あまり買い被らないでくれるかな?僕は僕に出来ることをするまでさ」
そして今、ディンの解放が始まろうとしていた。
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