エレメンタルサーガ〜不撓無才の魔導剣士〜

アキタ

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第二十一話 水色アロハの吸血鬼

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「どうもです」

「あ、はいよろしくお願いします」

  オーレンはかしこまってディン、リアナと挨拶を交わす。

「伝えておいた待ち合わせ場所に来てみたらあんな事になってるんだもんなぁ。驚いちゃったよ。とりあえずここで話するのもなんだからついて来てくれる?」


 ーーーー


  ワイゼル支部。支部長室にて、ディンとリアナは会合の申し入れを承諾する。

  オーレンはまず、自己紹介から入った。昔は冒険者をしていて、ライドやリダズの旧友だと言う。

 旧大英雄の候補まではなっていたが、二人の実力を鑑みて自分が大英雄となる事は不相応だと思って辞退したらしい。それと、旧友の割にはあまり老けていない。詳しく聞くと吸血鬼に備わる魔族的特徴であると説明する。

  その後、モルオスの扱うリングの基本的概要が説明された。

 属性複合リングは最近開発されて間もない。王都きっての腕利きのリング職人の開発した最先端のリングであり、もちろん通常での入手はおろか軍隊でも難しい。

 一部の精鋭部隊ですら満足に普及がいってないリングである。それでも結局は質の高い個人の力を持たなければ力の外殻しか強化されずあの様に見た目以上の軽い技となると。あくまでも力を行使するに当たっての補助の役割に過ぎない。詳しい話を聞けば更に細かい話になるらしいがオーレンはまず使用しない為、あくまでも概要である。

  そして最後に本来二人も都へと十五の歳に行き、グランディア学園へと入学する予定だったと話がされる。だが、そうは事が運ばなかった。リアナは元より話が来ていたのを断ってディグル村に残っていたが、ディンは初耳だった。

 その原因、これまでの経緯や事情をディンとリアナは話す。

 それにホムラの事も。


 
「……リオルデさんからは少し話聞かせてもらっていたけど、そんなことがあったなんてね」

「はい、申し訳ありませんが我儘を言わせてもらったとは思っています」

「オレがした事だからリアナは謝る事ないよ」

「それでも、何とか間に合ったみたいだね。ディン君と同じ歳でうちの娘がいるんだけど。早く合わせてやりたかったよ」

「娘さんがいるんですか?」

 リアナは同年代の女子と聞いて目をキラキラさせて質問する。

「うん、居るよ。すっごく可愛いんだけどさ、いつからか突然グレちゃったよ。パパなんて嫌い! だとか、臭いから近寄んな! ってね……」

「と、突然ですか?」

「本当に突然だよ。いつも通りちょっかい出してわちゃわちゃ遊んだり。いつからか凄く嫌な顔されて辛かったよ……。

 後は、娘がお風呂先に入ってるからお邪魔して一緒にお風呂に入ろうとしたり。寝顔にキスしようとしたりしてただけだよ……」

 オーレンは涙を浮かべ、悲しみに浸る。この男は所謂バカ親である。

((あ、あぁ……))

  二人はオーレンの過干渉、間違えた愛情の形が娘に嫌われたのだと理解した。

「まあでも、とりあえず聞きたいことは一通り聞けたし、食事でもどう? そっちでまた色々話そうか? 娘の事とか? 娘の事とか!」

  急に明るく提案するオーレン。二人は昼前から食事しておらず、腹を空かせていた為オーレンの提案に乗じる。

 長々と話していたら割と時間も食っていた。二人は何も考えていなかった。



 ……それから、オーレンの娘エピソードが炸裂する事は言うまでもなかった。



 ーーーーーー


  翌朝、昼前頃か。リアナは協会のゲストルームで目が覚めた。ベットが二つ並ぶ部屋に朝方、気絶する様に倒れ込んだ二人。部屋を見渡すとディンの、姿が無い。

(早起きしたのかな)

 そう思いながら洗面台へと向かい、鏡向かいに自分の顔を見つめる。未だ、目が充血している……。バシャバシャと洗顔すると少し、楽になれた。

「ふぅ」

 と吐息を吐く。

  寝室に戻れば居ないと思っていたディンがベッドの下で伸びきっていた。無理もないかとリアナはブランケットを掛けて、一息つくとシャワールームへと向かった。

  覚えていることは、昨晩。オーレンの手配した夕食は普段食べているものよりも数段豪勢で、口にしたことの無いものまで並び、二人は歓喜する。
  「なにこれおいしい」「初めて食べた!」などとワクワクしていられたのは満腹になるまでであって、食事しながらもオーレンは口を止めることなくぺちゃくちゃ話していた。

 その後、オーレンの話に耳を傾けなければ待ち受ける惨劇からは逃れられたはずだった……。

  それから六時間、眠気眼にコクンコクンと相槌を打ちながら明け方まで、オーレンは娘であるヨルの成長の記録を徒然と語り明かした。

  後から話を聞いてみれば吸血鬼は夜に強く、眠る必要が無い。普段、寂しい夜を送っているのだろう。通常、吸血鬼と言う種族は日中活動が困難ととされているがオーレンはそれもほとんど無いらしい。それ故に二人は犠牲となった。

  今になっても疲れが残っている。おかげでヨルについては多少詳しくなれたのだが。それらを思い出してリアナはまた、温かいシャワーを浴びながら深い溜息をついたのであった。

(学校、面白いと良いなぁ……)

  シャワーから上がって着替えを済ませてもディンは寝ていた。その時ドアがコンコンとノックされる。ドアスコープを除くと昨日の使者が顔を覗かせている。
 
「おはようございます。ご気分は以下がでしょうか?」

  ドア越しの声にリアナはゆっくりとドアを開ける。
 
「おはようございます、問題ないですよ」

「それは良かったです。オーレン様が御二方と長らく話して居たもので気になっていたのですが。それと、遅くはなりましたが食事の準備をさせて頂きました。昨日と同じ所でお待ちしておりますがどうでしょうか?」

「ありがとうございます。折角なので頂かせてもらってもよろしいでしょうか?それでは、もう少ししたら向かいますね」

「わかりました、それでは失礼します」

 そう言って、素敵な笑みを返す。そして、足早に使者は戻っていった。


 ーーーー
 ディンを起こしたリアナは昨日食事した部屋へと向かい、遅めの朝食の並ぶテーブルの前に着く。

「おはよう、二人はよく眠れたかな? 僕は眠れませんでした!」

  オーレンは昼夜問わずにニコニコとしていて機嫌が良さそうだ。それに昨夜は、久しぶりにたくさん話せて更に上機嫌だ。

「ん、ふぁーあ。おはようございます。それなりに眠れました、多分」

  ディンはまだ眠気帯びた目を擦っている。
 
「それじゃあ、食べようか。いただきます」

 オーレンの掛け声に合わせ、二人は遅めの朝食を摂る。

  なんと、オーレンは今朝も話が有るらしい。

「それで、グランディア学園には行くつもりかい?」

「はい。まずはディオーネの冒険者協会本部に寄って、話を詳しく聞かせてもらおうと思っています。元からある程度の編入手続きは済んでいる筈ですし」

「ふーん。君達なら、グランディア学園通いながらでもすぐ冒険者階級を上げられるんじゃないかな。それと、ディン君はその刀をどうしたいんだい?」

「このまま、持っていこうと思ってるけど……。その冒険者協会次第かなぁ、って思ってます。出来ればリオルデの爺さんの希望を叶えてやりたい、ですかね」

  違和感は有りながらも珍しくディンは丁寧に話す。聞いてみれば、相手がそれなりの立場の人間でありと共に、父の旧友だと知る。だからディンなりにもあまり粗末な言葉では話してはいけないと自制している。

「昔、話に聞いたことはあるんだけど、結構厄介な妖刀みたいだね。それをまたリオルデさんはよく丸め込んだもんだよ」

 《妖刀なんぞでは無い! 魔焔刀じゃ!》

「どうしたリアナちゃん!?」

「わ、私じゃないです! この刀です!」

「う、うん、なるほど……」

  と言ってオーレンはホムラを注視する。

 《武器が口を聞いて驚いたか。無理もない》

  クハハハハと笑い、ご満悦なホムラ。どうやら人を驚かせる事に快感を覚えたらしい。

  今の声を耳にしたオーレンは少し真面目な顔つきで思考する。

「信じ難いけど、どうやら本当みたいだね。長い事生きてきたけど、こんな事は初めてだよ」

  そのままオーレンはホムラに数点質問をする。それは多少は知っている言い伝えについてが殆どであった。

  それと、焔の様に異名を持つ者も恐らく存在するらしい。焔はそれを兄弟みたいなものだと言っていた。この世界のどこかに存在するのだろう。焔よりも器用であればこの世界のどこかに潜んでいる可能性だって有り得る。

  オーレンは「面白くなってきたね」と満足気に納得していたようだ。もう一度世界各地を巡る力は有るのだが、無粋な事はしたくないらしい。ディンやリアナ、次の世代が担って欲しいと言っていた。

 元冒険者としても非常に好奇心が駆り立てられる話だが、今は今で自分にしか出来ないことをしていると自負しているオーレンは、意外としっかりとした真面目な男だった。

  ……ヨルへ対する異常な寵愛を除けば。
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