悪役令嬢は令息になりました。

fuluri

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幼少期

セイル兄様の事情聴取です。

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その後、私たちは時間が許す限り家族の時間を楽しんだ。
セイル兄様は緊張からかあんまり喋らなかったし、お父様も何を喋れば良いのか分からないといった感じだったので、ほぼ私が喋り倒したんだけどね。
その間もずっと私たちを抱えてくれていたお父様の手が温かくて、私はずっと上機嫌だった。


――――――――――――――


そして、翌日。
はい。
私は今現在、ベッドの上に正座しております。
なぜかって?なぜなら……

「リュート、聞いてるの?」

「き、聞いてます!」

「全く……。それで、どうして僕にろくな説明もせずあんなことをしたの?」

セイル兄様に事情聴取をされている最中だからです。
どうやらセイル兄様は私が突然お父様に遠慮もなく話しかけたり手を繋いだりしたことを不審に思っていたようだ。

「それは…その~……」

「何?」

「えっと……セ、セイル兄様を喜ばせたかったんです!」

そう。セイル兄様に何も説明せずに作戦を実行に移した理由はその一言に尽きる。
私はセイル兄様を喜ばせたかったのだ。

「……喜ばせる?」

「は、はい。事前に話して協力していただくよりも、サプライズの方が喜びは大きいかと……嬉しくなかったですか?」

予想外にお父様とふれあえる機会が来る方が自分でそう仕向けるよりも嬉しいかと思ったんだけど、ダメだったんだろうか。
ちょっと不安になりながらセイル兄様を見上げる。
するとセイル兄様はうっ、と言葉に詰まり、ちょっと慌てたように弁解しだした。

「いや、リュートの気遣いはすごく嬉しかったよ、ありがとう。でも、次からは僕にも事前にきちんと話してね?突然だと驚くから」

「はい!分かりました!」

良かった、喜んでもらえていたみたいだね。
まあその場でいきなり視線で『セイル兄様も!』と協力を要請されたセイル兄様の身になって考えてみれば、確かに事前に話して欲しいよね。
ちょっと反省した。
……でも、黙ってた方がセイル兄様が喜ぶと判断したらまたやっちゃうかもね?

「…………」

おおっと、セイル兄様がこっちを|訝(いぶか)しげに見ている!
もしや最後に変なこと考えたのがバレたんだろうか。セイル兄様、エスパー?!
私は動揺を悟らせないようににこーっと笑顔でセイル兄様の顔を見返す。

「……まあ、いいか。それより、父上の仕事場に行く許可を得たけど、いつ行こうか?早めに決めて勉強とか剣術とかの予定を調節しないと」

「そうですね……お父様の方もいきなり行ったら迷惑でしょうし、三日後くらいはどうですか?」

「……うん、それなら調節も可能だね。それじゃあ、三日後に父上の仕事場へ行こう」

そうと決まれば、お父様に報告しておかないとね。
その手配はクラハに頼んで、私たちは剣術の稽古に向かう。
今日は剣術の稽古がメインの日なのだ。
セイル兄様はさすが攻略対象といったところか。
元から非常にハイスペックらしく、勉強も剣術も教えをぐんぐん吸収していく。
そして当然、攻略対象以上のハイスペックと言わしめたリュート様である私も、教えられたことを乾いたスポンジが水を吸うがごとく吸収していく。

いやーこの兄弟優秀すぎるでしょ。
つーか兄様ゲームでは剣術そんなに強くなかったよね?
まあ何でも出来るリュート様の兄なんだから剣術が出来るのも分かるんだけどね。

あと一、二年したら今教えてくれている騎士に余裕で勝てるようになりそうだ。
大体、セイル兄様はパワーが足りてないだけで、テクニックは今の時点でもう既にセイル兄様の方が少しだけど上回っているんじゃなかろうか。
……攻略対象すごいわー……。
この日は剣術でさんざん扱かれた後、計算の勉強をして終わった。


そして、次の日。
今日は礼儀作法とダンスのコンボである。
舞踏会での礼儀作法をやるらしいので、授業が合体したようなものだ。
私は今女性のステップで踊らされている。
クラハは『セイル兄様の相手役』なんて言っているけど、多分いつか私が女性に戻ることが出来た時のための練習だと思われる。
……クラハは私を男として育てていることに負い目を感じてるみたいだしね。

もちろん男側のステップも覚える。
私が男側をやっているときはセイル兄様が女性のステップで踊っている。
ま、私だけ女性側をやらせたらおかしいもんね。
そんな感じでこの日のレッスンは終了。

次の日はこの国の歴史や計算などの座学がメインだった。
へー、この国って結構長い歴史があるんだね。
この国の成り立ちには月が関係しているらしい。
……意味が分からないよ。月が関係してるって何?と思ってクラハに質問すると、神話を教えてくれた。

簡単に言うと、月の女神に恋した一人の男が、月の女神を巡った苦難を乗り越えた末に女神の寵愛を受けて結ばれ、四人の仲間と共に国を築き上げた。
そしてその男がこの国の王の一族の始まりであり、仲間の四人が四つの公爵家の始まりと言われている……というようなお話だ。

ふむ、なるほど。
興味深いけど、これ本当の話なのかな?
……まあ、ありがちなお話だよねー。その月の女神様が、この国の宗教の神様らしいし。
あ、この国は一神教なんだって。
神様かあ、私は前世の影響であんまり信じてないんだけど、本当にいたら面白いなあ。
……面白いなんて罰当たりか。


そんな感じで過ごしていると、あっという間にお父様に会いに行く日になった。お父様に会えるのは三日ぶりだ。
この三日、かなり忙しかったみたいで一回も家に帰ってきてくれなかったのだ。
お陰で会いたい気持ちが募っている。
……私はお父様に恋する乙女か!
と思うけれど、仕方がない。会いたいものは会いたいのだ。
それに、せっかくの機会だからね、お父様に会うついでにお城の中も見学してみたい。
お城なんて前世日本人の私には夢の場所なんだよ!
あー、楽しみだな~。
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