49 / 56
待ちに待った外出
(推定)恥ずかしがり屋の兄とのお買い物
しおりを挟む
沢山の人、活気のある雰囲気、様々な趣のあるお店、そして決めつけは広場に並んでいる屋台。
「夏だ! 海だ! 食べ物だーっ!! いぇーい!!!」
「…一応言っておくけど…今は夏じゃなくて春先だし、ここは大陸の真ん中だから海もないからね」
街に着いて早々、馬車を降り久しぶりの街の雰囲気に浮かれていると、レイ兄様が折角の雰囲気を台無しにしてくれた。
…あ、レイ兄様に友だちが出来ない理由がわかっちゃったわ。全然空気が読めないのね!
「こういうのはノリなのよ! 一つは合っているのだからそれでいいんだから! ふふふ、レイ兄様、友達は上辺だけだとかなんとか言ってたけど、本当はただ出来ないだけなんじゃないの? まあ、大丈夫よ、私も全く出来なかったから!」
「……ツッコミどころが多すぎるんだけど。うんやっぱ、アイシャは相変わらずだ」
これは…褒められているの? 貶されているの? いいえ、優しいレイ兄様が私を貶すなんて、そんなわけ…ない…わよね? そうよね??
「…褒め言葉として受け取っておくわ!」
私の返答を聞いて、レイ兄様は「プッ!」と吹き出したから、これは貶されていたとみて間違いないのかもしれない。
なんてこと、『優しい兄』という印象を『意地悪な兄』に変えないとだわ!
けれど、精神年齢的には私のほうが10歳も年上だから、一応ここは大人な私が許してあげることにする。
「あっ、レイ兄様! 見て見て! シルアが居るわ!」
あるお店の、ガラス越しに見える白い犬の人形を指すと、レイ兄様は他の何かを見つけたようで、顔をぎょっとさせる。
「ん? どうした――んん? え? ええ? …ねえアイシャ、僕の妹は分身の術が使えるんだっけ??」
レイ兄様は目を何回かぱちぱちさせ何かを試したようだけれど、特に何も収穫はなかったのか最終的には顔をきょとんとさせる。
「えっ? 急に変な……ああー! ええもちろんよ! 使えるわ! 分身の術! ウィステリアですもの!」
「……」
レイ兄様が変なことを言う時は、全て推測でしかないけれど、大体何かを試しているときだ。
つまり私は今、何かを試されているに違いない――と考えた私は、慌てて話を合わせる。
「ウィステリアは全能の神じゃないって……それよりアイシャ、あそこ見て」
レイ兄様が指したのは、先程私が指していた方向と同じで、その先にはシルアの人形ががある。
「ええ! シルアね! でもあれは単にシルアに似ている人形であって、分身ではないわよ?」
あ、私を試していたわけではなかったのね…でも変だわ。レイ兄様もそのくらい分かっているはずなのだけど。あっ、それとも、あの人形が気に入ったのかしら? ふふふっ、やっぱりレイ兄様はまだ子供ね!
「…もういいや。多分気のせいだから」
「? どうして? 気に入ったのなら買えばいいのに…」
はっ! 男の子だから恥ずかしいのね!? もうレイ兄様ったら、それならそうと言ってくれればよかったのに!
「いやそもそも僕は――」
「皆のもの、あのお店に直行よ!!」
近くに潜んでいるであろう護衛にも向けて、片腕を上げ勢いよく叫べば、各方面から「おー!!」という声が返ってきた。いつも親切にしてくれてお菓子をくれる人たちの声だ。
「…アイシャ、なにか勘違いしているようだけど僕は――ああもうわかった! ついて行くって!」
レイ兄様は言葉か続く度に冷たくなっていく護衛達の視線に耐えかねたのか、最後の方はかなりやけになっていた。が、まあ照れ隠しであろう。
…うん?? そう言えば今日も極力目立たないようにしようと思っていたのに、早速目立っちゃってる…?
◇◇◇
「まあお嬢様、お目が高い! そちらは当店自慢の商品でございます!」
…
「ああなんと! お嬢様が今ご覧になっているのは当店一高価なものではないですか! 流石です!」
うわーお、なんというか、その…すごくすごいわ…
店に入った途端、店員の勘なのかなんなのか、物凄く丁寧に接客された。そして言わずもがな、こういうことに一切慣れていない私は目が回っているところだ。
でも、勘だけでここまで丁寧に接客してくれるものなのかしら? 服はレイ兄様も私も一番質素なものを選んでいるし、裕福な家の子供には見えるとしても、この店員の態度の原因にはならないと思うんだけど…来店客全員にこういう態度っていうわけないわよね?
考えられるのは、元々私の顔を誰かが知っていて、私が公爵令嬢だと気づいたか…それとも、あらかじめ知っていた…? どうして?
………まさか。まさかまさかまさか! いやでも、まだ推測の域よ…ここはちょっと探りを入れれば良いわ…
「ねえあなた、聞きたいことがあるのだけど」
「はい! なんなりとお申し付けください!」
「じゃあ単刀直入に聞くわ。…私が来る前に誰か来たかしら? そうね、例えば…公爵家の人、とか?」
「!? な、なぜそのようなことをお聞きに?」
私の質問を聞くなり店員は不自然に視線をそらし、だらだらと額に汗を浮かべ始める。
…当たりだったみたいね。
はあ…なんでここまでするのかしら、お父様…!!
「夏だ! 海だ! 食べ物だーっ!! いぇーい!!!」
「…一応言っておくけど…今は夏じゃなくて春先だし、ここは大陸の真ん中だから海もないからね」
街に着いて早々、馬車を降り久しぶりの街の雰囲気に浮かれていると、レイ兄様が折角の雰囲気を台無しにしてくれた。
…あ、レイ兄様に友だちが出来ない理由がわかっちゃったわ。全然空気が読めないのね!
「こういうのはノリなのよ! 一つは合っているのだからそれでいいんだから! ふふふ、レイ兄様、友達は上辺だけだとかなんとか言ってたけど、本当はただ出来ないだけなんじゃないの? まあ、大丈夫よ、私も全く出来なかったから!」
「……ツッコミどころが多すぎるんだけど。うんやっぱ、アイシャは相変わらずだ」
これは…褒められているの? 貶されているの? いいえ、優しいレイ兄様が私を貶すなんて、そんなわけ…ない…わよね? そうよね??
「…褒め言葉として受け取っておくわ!」
私の返答を聞いて、レイ兄様は「プッ!」と吹き出したから、これは貶されていたとみて間違いないのかもしれない。
なんてこと、『優しい兄』という印象を『意地悪な兄』に変えないとだわ!
けれど、精神年齢的には私のほうが10歳も年上だから、一応ここは大人な私が許してあげることにする。
「あっ、レイ兄様! 見て見て! シルアが居るわ!」
あるお店の、ガラス越しに見える白い犬の人形を指すと、レイ兄様は他の何かを見つけたようで、顔をぎょっとさせる。
「ん? どうした――んん? え? ええ? …ねえアイシャ、僕の妹は分身の術が使えるんだっけ??」
レイ兄様は目を何回かぱちぱちさせ何かを試したようだけれど、特に何も収穫はなかったのか最終的には顔をきょとんとさせる。
「えっ? 急に変な……ああー! ええもちろんよ! 使えるわ! 分身の術! ウィステリアですもの!」
「……」
レイ兄様が変なことを言う時は、全て推測でしかないけれど、大体何かを試しているときだ。
つまり私は今、何かを試されているに違いない――と考えた私は、慌てて話を合わせる。
「ウィステリアは全能の神じゃないって……それよりアイシャ、あそこ見て」
レイ兄様が指したのは、先程私が指していた方向と同じで、その先にはシルアの人形ががある。
「ええ! シルアね! でもあれは単にシルアに似ている人形であって、分身ではないわよ?」
あ、私を試していたわけではなかったのね…でも変だわ。レイ兄様もそのくらい分かっているはずなのだけど。あっ、それとも、あの人形が気に入ったのかしら? ふふふっ、やっぱりレイ兄様はまだ子供ね!
「…もういいや。多分気のせいだから」
「? どうして? 気に入ったのなら買えばいいのに…」
はっ! 男の子だから恥ずかしいのね!? もうレイ兄様ったら、それならそうと言ってくれればよかったのに!
「いやそもそも僕は――」
「皆のもの、あのお店に直行よ!!」
近くに潜んでいるであろう護衛にも向けて、片腕を上げ勢いよく叫べば、各方面から「おー!!」という声が返ってきた。いつも親切にしてくれてお菓子をくれる人たちの声だ。
「…アイシャ、なにか勘違いしているようだけど僕は――ああもうわかった! ついて行くって!」
レイ兄様は言葉か続く度に冷たくなっていく護衛達の視線に耐えかねたのか、最後の方はかなりやけになっていた。が、まあ照れ隠しであろう。
…うん?? そう言えば今日も極力目立たないようにしようと思っていたのに、早速目立っちゃってる…?
◇◇◇
「まあお嬢様、お目が高い! そちらは当店自慢の商品でございます!」
…
「ああなんと! お嬢様が今ご覧になっているのは当店一高価なものではないですか! 流石です!」
うわーお、なんというか、その…すごくすごいわ…
店に入った途端、店員の勘なのかなんなのか、物凄く丁寧に接客された。そして言わずもがな、こういうことに一切慣れていない私は目が回っているところだ。
でも、勘だけでここまで丁寧に接客してくれるものなのかしら? 服はレイ兄様も私も一番質素なものを選んでいるし、裕福な家の子供には見えるとしても、この店員の態度の原因にはならないと思うんだけど…来店客全員にこういう態度っていうわけないわよね?
考えられるのは、元々私の顔を誰かが知っていて、私が公爵令嬢だと気づいたか…それとも、あらかじめ知っていた…? どうして?
………まさか。まさかまさかまさか! いやでも、まだ推測の域よ…ここはちょっと探りを入れれば良いわ…
「ねえあなた、聞きたいことがあるのだけど」
「はい! なんなりとお申し付けください!」
「じゃあ単刀直入に聞くわ。…私が来る前に誰か来たかしら? そうね、例えば…公爵家の人、とか?」
「!? な、なぜそのようなことをお聞きに?」
私の質問を聞くなり店員は不自然に視線をそらし、だらだらと額に汗を浮かべ始める。
…当たりだったみたいね。
はあ…なんでここまでするのかしら、お父様…!!
1
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
神々の寵愛者って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~
結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』
『小さいな』
『…やっと…逢えた』
『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』
『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』
地球とは別の世界、異世界“パレス”。
ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。
しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。
神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。
その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。
しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。
原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。
その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。
生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。
初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。
阿鼻叫喚のパレスの神界。
次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。
これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。
家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待!
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
小説家になろう様でも連載中です。
第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます!
よろしくお願い致します( . .)"
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる