天使って言うな!

アリス

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プロローグ:案ずるな、上司(神)の許可は得ている。

ほうほう…女子高生とはそんなに素晴らしいものなのですか?!

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 「ほうほう…女子高生とはそんなに素晴らしいものなのですか?!」

と、そう宣ったのは、歌舞伎町の裏路地。

男達の欲望と煩悩が渦巻く繁華街の裏。伏魔殿──

そこにはいた。

あの後、酔い醒ましに深夜の散歩(?)飛行をした時にちらり、と見えた光景に吸い寄せられたのか…歌舞伎町の裏路地に降り立った天使──ラツィアは目の前のサラリーマンの男の心臓に。 

 「ぁ゛、ぁぁ゛…ッ…。」

 「…にしても、私はバカンス中に何で仕事をしてるのでしょう?」

答える者はいない。

裏路地はしん、と静まり返っていた。

このサラリーマン──煩悩を糧にする、“欲望の種”(天界にしかない植物で天界でしか育たない)が男の体内から微弱な神気を感じて降りた。

 「…取り敢えず、これはラミアに渡しますか…樹霊人ドリアドマニアのラミアなら、なんか識ってるかも。」

天界にあるこの欲望の種──もとい、“節制の実”は天界の土に成る種。

…その実は樹霊人の主食だったり、節制の効果が付与される秘薬や各種神聖武具になる。

◇〔節制の秘薬〕──天界限定の二日酔い覚まし。神にも天使にも効く。勿論聖獣や神獣にも。

◇[節制の神聖武具]──神力の消費を抑える。
最大節制の実10個で効果は80%の抑制になる。
因みにこれ以上はどうあっても変わらない。謎。

 「…なぜ地上に天界の植物が?しかも種──何ゆえ?」

答える者はやはりいない。

ずるり、と抜き出した“種”を懐から取り出した瓶に詰めて無限収納イベントリの中へ。

 「…か、は……っ。」

パタリ。

倒れた男を道の端に置いて、バサッと翼を広げる。

 「…んじゃ、再開!」

疑問は尽きないけど…まあ、ラミアに丸投げしよう。そうしよう!

え、天使なのに良いのかって…?

なんで。

私、バ・カ・ン・ス・中・!!

仕事はしない!絶対に!!

こういうのは勤務中の仲間に任せる!

そもそもあんだけ連日連夜働きづくなのだ。

節制の花は見た目赤いポインセチア…その花の下、茎の部分に鬼灯に似た実が花が咲いて十日頃に成る。
その実はライチのような味だが、見た目は洋梨。
中心に“欲望の種”がある。
サラリーマンが心臓に宿していたものだ。
その見た目は胡桃、味は苦い。漢方薬の苦いやつのような味がする。天界では風邪薬にもなる、この種。

“欲望の種”──それは天界や魔界の者にとってはさほど無害なものだが…人間にとっては害でしかない。
秘薬くらいならスポイトで一滴、コップ一杯の水に混ぜて使うなら十分二日酔い覚ましの効果は得られる。
…それ以上だと、反転して胃の中のものを吐いても気持ち悪さが1週間~1ヶ月は続く。

秘薬にしてなのだ。

“欲望の種”はもっと悪い。
これは──人間の欲望を糧にして育つ。

育った“種”は節制の花や実とはならず──欲望の罪花となり、より性質たちの悪いものとなる。

先ほどの男はあのまま放置していれば…地上に災いを招く“苗木”になる所だった。

欲望を糧にして育つ欲望の種は…男が寿命を迎えても無理矢理動かせる傀儡として、種に良いようにされる。

 「女子高生…変態?」

種はその人間の欲望を叶えようと人間を無理矢理動かす…そうすれば欲望えさがまた増えるから。

特に三大欲求──食欲、性欲、睡眠欲に連なるは叶えたら減る所か増えるもの。

種は好きなだけ養分を吸えて、宿主は享楽に、欲望に忠実になる。
…そのを破壊されて。

 「…。」

…どことなく麻薬に似ているかもしれない。

その強化版が“欲望の種”だ。

人間を堕落させ、人間を理性なき獣に変える──それが、なぜ?歌舞伎町に?地上にあるのか…さっぱりだ。

天界や魔界もそうだが…基本その界でしか育たない植物は地上に流れないようになっている。

天界では──魔界では──そんなに危険視される物じゃないものも人間にとっては種の絶滅に匹敵するものがかなりある。

故に筈なのだが──。

 「…ふぅ、ダメね…ラミア。」
 『はいはい…何?』
 「今、歌舞伎町で男の心臓に欲望の種を抜いたのだけど。」
 『………はあ?』
 「取り敢えず転送するわ」
高度100㎞の所を飛びながら淡青色の半透明なパネルを操作する。

 『………確かに欲望の種だわ。ラツィ、本当に?』
 「本当よ。私もびっくりよ!折角のバカンス気分が台無しよ!!」
 『私に言われても…いや、それよりラツィ、詳しく聞いても?』
 「ええ。実は……」

そこから事細かく話して聞かせた。

男が血走った目で煩悩を垂れ流している所に天界に満ちる神気を感じて降りてみたら、やっぱり欲望の種だったと。

そこまで話してラミアは念話越しに神妙な面持ちで頷いた。

 『…報告ありがとう、ラツィア。この事は大天使様にも伝えておくわ』
 「ん、任せた~」
 『はいはい』
そこで念話は終わった。
皆優秀だし、これで問題ない。
なぜどうしては他の同僚に任せる!

眼下に広がる人工の灯りと見上げれば手に届きそうな星々の煌めき…満天の月に照らされた2はラツィアを天使足らしめるものだろう。

青白い月が少女の容姿を照らす。

さらさらと風に煽られる黄金の髪は胸元までの長さ、切れ長の蒼い瞳は月に反射して神々しさを増す。

?天使の輪?──それなら、首元の黒いチョーカーになっている。

馬鹿みたいに頭の上に浮かせる天使が何処にいると言うのか。

天使の輪これは天使の存在意義アイデンティティーそのもの。
狙いやすい──頭上に置く馬鹿はいない。

天使ひとによっては肋骨に移したり、足首の骨に巻き付けたり、ブレスレットやネックレス…イヤリングやピアスにしたりもする。
…まあ、幻影魔法で皆好きなようにしている。
念話を可能にしているのも、この天使の輪のお陰だ。
まあ、天使の輪は天使なら大体必ず一つは持っているもの。
輪のままもできるが…その場合どこに保管するのかが問題だ。

 「うん、良い夜ね。」

眼下の人工の星と頭上の星…どちらも綺麗である。

静かな夜に天使が一人…実に優雅な一時だ。

風は穏やか。
静かな夜に少女の美貌に笑みが浮かぶ。

人の文明は見ているだけでとても楽しい素晴らしい娯楽だ。

最初、人は火を起こす事から始めた。

その原初の時をラツィアは知らないが…歴史として学んだ事はある。

人は“知恵”を得て“知識”を得て様々な道具を作った。
生活をより便利に、より快適にするために。

そうした人の努力を何よりも神は、天使は好む。

必死に足掻く彼らの姿が愛しくてたまらない…ラツィアの後見人である、幸運神もいつかの雑談で口にしていた。

だから、見守るのだと。

慈しみ、むやみやたらに幸運は授けないのだと。

ほんの僅かな幸運しか授けないのはそう言った理由がある。

人は弱い。

弱くて脆い…人から“努力”を奪っては彼らの尊厳を踏みにじる。

神は人を愛している。

勿論、それ以外の命も。

…ただ、変化しても変わらない彼らの在り方を神は慈しみ愛でている。

 「…そんなもの、私にはないけれど…まあ、仕事だし?人間の作る知識は面白いわ。それをる事は趣味でもあり、仕事でもある…ふふ、まさに天職ね!熾天使セラフィムは。」

…穏やかな夜に少しセンチメンタルになったようだ。

自身は休暇中。
なるべく“仕事”のことは考えないようにしよう……無理か。

くすり、と苦笑を零して流れる雲に腰掛けるように上空に留まる。

夏が始まる前の5月上旬、休暇中の熾天使が一人、明日の予定について思いを馳せるのだった───。
















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