天使って言うな!

アリス

文字の大きさ
2 / 7
プロローグ:案ずるな、上司(神)の許可は得ている。

六本木ヒルズの最上階って、安いのね。

しおりを挟む
 「…あら?六本木ヒルズの最上階って、安いのね。」

それが、彼女がこの不動産屋に来て発した言葉である。

 「さ、左様ですか…如何なさいますか?買われます?」

 「ええ。ここにするわ」

普段使わない言葉を使うほどに彼は動揺していた。

見た目15、6歳にしか見えないこの目の前の“女性”はこれでも成人していると言う。
提示された運転免許証にはばっちりと“20歳”である、と彼女の生年月日が記されていた。
 「ちょうど空いてて良かったわ。」
 「そ、そうですね…」
(そんなわけねぇだろ!)
 「なにか?」
 「…いえ。私どももカーバニー様には感謝しておりますので。」
(本当、あの成金ジジイ、清々したわっ!ラツィア様マジ天使!)
20台前半のこの青年はこの六本木支部を任せられた若手エース。
を問答無用で追い出して、あっさりと警察に引き渡して新たに今購入したのが目の前の白ワンピースの少女にしか見えない女性──ラツィア・カーバニーの鮮やかな手腕で以てキャッシュで購入手続きを済ませたのだから。
久々の大口契約である。
 「早速住まわれるので?」
 「ええ。改装は私が自分でやるわ。」
 「DIY、ですか。意外ですね」
 「あら、どうして?」
小首を傾げる姿も可憐で愛らしい…ああ、結婚していなければ、この目の前の“女性”とお近づきになりたい。是非とも。
 「…いえ。カーバニー様はとても華奢な身体なので…トンカチとかはあまり持たれるイメージが付かない、と言いますか…その…カーバニー様?ち、近いですよ…?」
 「ふふ、気のせいよ。…それで?」
 「か、カーバニー様…っ!?」
あと少しで手が触れる──瞬間にくるりと反転して必要な書類に署名&拉印して青年が掴み損ねた手に書類を手渡す。
 「はい、これでいいでしょ?」
 「……カーバニー様っ!」
 「ふふ、はダメよ?青田さん」
 「…っ、確かに承りました。お支払いは」
 「キャッシュで。」
 ポン、と置かれた札束の数を数えながらチラチラとラツィアに目を向ける青年は自分と同年代の女性にからかわれたのだ、と察してほんの少し恨みがましい、おわよくば…なんてほんのり肉欲を秘めたような瞳でラツィアを見詰める。
 「ふふ、何かしら?」
 「…っ、何でもありませんっ」
 (…って、子供か!俺は…俺は本当にどうしたと言うんだ?愛する妻がいると言うのに…どうしてこのラツィア様が気になるんだ…?)
妻帯者の青年を大いに惑わしながらも、滞りなく手続きは済んだ。
 「じゃあ、また。」
 「ええ。お待ちしております」
(…なんだ、このやり取りは。そもそも“また”なんてそんなのは早々ない…解約か、他に移る時以外……また、どこかで会えないかな?)

 「…青田さん?どうかしました?」
 「…はっ!?い、いや…何でもない…さっきの方が随分と綺麗な人だったからな」
 「ああ…確かに。お前の好きなタイプだったもんな金髪&碧眼の美少女」
 「そうだな…本当に綺麗な人だった」
 「おいおい…お前、不倫は辞めろよな?確かまだ新婚だろう。」
後少しで手が彼女の胸に触れる所だった──とそこまで思い出して下腹部が硬くなっていることに気づいた。
 「…トイレ行ってくる」
 「…おぅ」
何も言わず見送った桑田。
デキル男である。
察したのだ。
魅惑的な顧客に惚れたな、と。
まあ、近年稀に見ぬ美貌だが…妻子ある身で二十歳のお嬢さんに懸想するのはどうかと思うぞ?俺は。

桑田は思った。

 「…まぁ、いいか」

桑田、35歳、中肉中背、そこそこに整った中年…10も離れた年齢の女性に食指は動かない。

しかも高級マンションの最上階…一括購入するようなどこぞの“令嬢”のような、女性は。
彼のストライクゾーンは同世代の女性一択!!
話や年代あるあるが通じない女性は疲れる!とは、彼の言葉。

 「…小切手ででも2億はびっくりだわ」
 「それな」

…?
先ほどは“手付け金”だ。
その手付け金──2000万円──はもう金庫の奥に大事に仕舞われている。
勿論、やたらと0の数が多い小切手も。

件の部屋は必要な家具家電付きの部屋。
和室1、洋室2部屋(内1つリビング)。

の成金野郎は、見栄と態度“だけ”がでかかった。

…奴は賃貸であの部屋を借りていた。
なのに、んだ。
最悪だろ?
その上横領・密輸・詐欺・麻薬密売…とその脂ぎった相貌に似合いの悪事が露見され、御用となった。
ドラマかと思った。
それを初見で見抜いたお嬢さん…半端ないって!!
その洞察力と行動力に痺れる、憧れるぅ!!





 「ふぅ…これぞ六億ドルの夜景ね」

六本木ヒルズの最上階で眼下を眺める。

時刻は夜9時…見える景色は地上の星──もとい、人工の灯り。
きらきらと輝くは、建ち並ぶビルの照明。
鉄とコンクリートで出来たビル
遠くでは高速道路や車道に車とバイクが先を急ぐ。
ちらほらと見えるのは、家路を急ぐ人々に混じってこれから飲みに繰り出す人やこれから仕事の人──皆、様々な目的を持って通りを歩いている。

静寂だけがこの最上階の部屋に満ちる…。

 「…休暇の夜はこうして、家呑みが一番よ♪
…皆のお土産も買わないと行けないし…よし。通販出来るものは明日にでも済ませてしまいましょ!!」

台無しである。

折角の優雅な痺れる一時もその言葉で台無しである。
情緒も何もない。
折角のヒルズの最上階からの夜景…台無しである。
ワイングラスの深紅色カーマインも淀んだ気がする。

こうして、一人晩酌をするのはいつぶりか…。

もう片手で数えられるくらいしか、一人ではいない。

加えて幸運神ネイア様の下で下宿してからは、一歩管轄外に出ると“”が降ってきた。

 「…父さん母さん…5歳頃までの記憶しかないな…どんな人だったのだろう…覚えてないや。」

その年頃までは普通に両親と暮らしていた。

温かな母の腕の中いつも笑っていた…気がする。もう、曖昧で覚えていないけれど。

──熾天使セラフィムラツィアの〝体質〟は後天的なものだ。
元から不幸そうではない。
5歳を機に急に

この辺りは陰謀の匂いがする。
…未だに判明していない謎。

兎に角──そんな優しい両親の命を犠牲にラツィアの身に“不幸”は封じられた。

その辺りはよく分からないが──後天的に発現した“体質”はとても凄まじく、ラツィアを起点に天界所か地上にも影響を及ぼす程だった──と、ラツィアは伝え聞いている。
そんな子供の頃から一連のは内々に処理され、未だ調査を続行中…よく分からない。
それが、ラツィアにとってどのくらい重要なのか…両親の命を犠牲に薄められた不幸と言う名のはこの地上に来てからすっかりと成りを潜めている──と言うか、ぱったりとなくなっている。
…まるで靄が晴れたみたいに。唐突に。
 「…う~ん、分かんない!取り敢えず飲もう!!話はそれからだ?!」

空にワイングラスを掲げてロゼを揺らす。

摘まみはチーズ3品。
スモークチーズ…豚と山羊、羊の乳でそれぞれ作られたチーズはどれも味も匂いも違う。

 「…にしてもおかしなおっさんだったわね、あいつ」

口に放り香りと味を堪能。

一人の時間をワイン片手にチーズや生ハムを摘まむ。

実に優雅な休暇の夜、である。

むづかしい事は考えない!
私は長期休暇バカンス中だ!!

問題があってもそれは…他部署の天使の仕事。
休暇中のには一切関係無い。
問題があっても丸投げ!
…直接被害でも被らない限りは。

………。

…………ない、よね…?







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

『【朗報】ボッチの僕、実は世界一の財閥の御曹司だった。〜18年の庶民修行を終えた瞬間、美少女11人が「専属秘書」として溺愛してくる件〜』

まさき
青春
「あんたみたいなボッチ、一生底辺のまま卒業ね」 ​学園の女王、高飛車な生徒会長、そして冷徹な美少女たち……。 天涯孤独でボッチな僕、佐藤(※苗字のみ使用)は、彼女たちからゴミを見るような目で見られ、虐げられる日々を送っていた。 ​だが、彼らには決して言えない秘密があった。 それは、僕が世界一の資産を誇る**『世界最強財閥』の唯一の跡継ぎであること。 そして、18歳になるまで一切の援助を受けずに生き抜く【庶民修行】**の最中であること。 ​そして運命の誕生日、午前0時。 修行終了を告げる通知がスマホに届いた瞬間、僕の世界は一変する。 ​「おめでとうございます、お坊ちゃま。これより『11人の専属秘書候補』による、真の主従関係を開始いたします」 ​昨日まで僕を蔑んでいた学園の美少女たちが、手のひらを返して膝をつく。 彼女たちの正体は、財閥が僕のために選りすぐった、愛が重すぎるエリート秘書たちだった――。 ​「ずっとおそばでお仕えしたかったんです……」 「昨日までの暴言は、修行を完遂させるための演技。今日からは全身全霊で甘やかさせていただきますね?」 ​24時間体制の過保護な奉仕、競い合うような求愛、そして財力による圧倒的なざまぁ。 ボッチだった僕の日常は、11人の美女たちに全肯定され、溺愛し尽くされる甘すぎる生活へと塗り替えられていく。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

処理中です...