婚約破棄を画策したのは悪役令嬢(私)です。

アリス

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第一章[婚約破棄と声高に叫ぶ愚者]

蛇神より受け継がれた邪眼【魅了眼】

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 「魅了眼…こんな人形みたいになるのか…。」
 「……。」
 「見ろよ、瞬き一つせず無言で壁側に突っ立ってるぞ」
 「ああ、王太子殿下は蛇神様の寵愛が深い事は知っていたが…こんな人形みたいにするとは……。やはり恐ろしいお力だ」
 「ああ、けど神のご加護がなければ人間からは消える。元々蛇神様のモノだからな」
……。

男性達の話が楽団の演奏の再開に紛れて聞こえてくる。

邪眼は強力である上通常王族全員に身に付けられる状態異常無効のアミュレットをも
そも、この状態異常無効アミュレット…人間が現状最も強力で効果のある物だが──それは蛇神の〝邪眼〟には効果はない。
当然である。神に人の作った物が敵う訳がない。
蛇神が持つ九つの邪眼…【魅了】【鑑定】【鮮血】【凍結】【灼熱】【麻痺】【猛毒】【結晶】【蘇生】
は、文字通り魔物が扱う状態異常攻撃の原型が“言葉を介する”原初の蛇…のちの〝蛇神様〟と成られる最初の頃は前者4つ以外はそこまで強力ではなかった。
それにも〝関わらず〟他を寄せ付けないほど〝最強〟の名を欲しいままに──況してや「神格化」されたのは殊更に他の魔物より聡明で寛大で寛容だった…からだろう。
蛇神様の邪眼から放たれる状態異常攻撃は今や【神威カムイ】。
同格の存在かみが顕れるか顕現しない限りは現状この邪眼を打ち破る方法は皆無である。
単なる「神」の好奇心から初代聖女──少女イブはその
原初の世界でとかく人間の数が少なかった…それはそのまま魔物と人間の間にが、強さの〝壁〟があった。魔法を扱えなかった原初の人間、魔法どころか状態異常攻撃をも使ってくる魔物…どちらが地上の〝強者〟だったのか火を見るより明らかだった。

【魅了眼】…如何なる対象をも魅了し、従えさえ〝恋の奴隷〟とする。精神攻撃の一種。魅了、洗脳、傀儡

【鑑定眼】…物や者の本質を捉え見据えつまびらかにする。鑑定、解析、分析、看破

【鮮血眼】…対象の全身あらゆる所から出血させる。その出血は使用者が解除するまで出血の状態異常を付与し続ける。対象が流した血の分使用者の傷やダメージが回復する。出血&体力吸収・魔力吸収

【凍結眼】…対象の意思・存在・遺伝子のNナノレベルまで凍結さえ永久凍土に閉じ込める。状態異常攻撃の一種。凍結と睡眠、衰弱、虚弱

【灼熱眼】…軽い火傷程度から対象を消し炭にする火力にまで発展する。如何なる対象モノも魂の一欠片すら塵と化す。火傷/延焼/燃焼/焼滅

【麻痺眼】…対象の意思は残し「行動」の全てを妨げる。状態異常攻撃の一種。麻痺、停滞、遅延

【猛毒眼】…対象に猛毒の状態異常を付与する。猛毒の範囲や威力、期間すら自由自在なこの邪眼は無慈悲に対象を猛毒に沈める。一度付与されたが最後、使用者から離れようとこの状態異常は解除されない。微毒(腹痛を催す程度)/食中毒(弱毒)/神経毒(中毒)/猛毒/

【結晶眼】…如何なる対象をも精神攻撃の一種「結晶化」を付与し、恒常的に未来永劫対象は使用者の望む結晶…路肩に転がる石ころから鉱石・魔鉱石・宝石・魔宝石…等々に形状変化させる。結晶化

【蘇生眼】…死後24時間以内なら例え肉の一欠片しか残っていなくとも完全に蘇生されら体力魔力を満タンにする。(※元は再生眼だったが神格化に伴って進化した)

 「ナンシー・バックレア、お前には偽証罪と王族や貴族に対する侮辱罪、不敬罪…それから当時婚約者がいたエドワードとアイネリーディン嬢の仲を割いて王家公爵家間に無用の不和と不利益をもたらした。──よってナンシー・バックレア…〝聖女〟として蛇神様の元へ一人行って赴いて貰おう。」
 「……ッ!?やっ、やったわぁ~~ッ!?!?私が聖女…世界一かわいい私が…ッ!聖女…ッ!!」
 「……。」

喜色満面でぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねる小さな子供のように喜びを露にするナンシー・バックレア「」男爵令嬢……哀れ。この後に訪れる人生は……いや、皆まで言うまいて…。

パーティーは始まったばかり。5分と経っていない。

出涸らしとの関係を絶ったからと言って“はい、さようなら”となるほど王太子夫妻とアイネリーディンの関係も浅いものじゃないし、この場に同じく招かれた未来のとしても……それはあまりにも寂しすぎる。

 「……聖女になれるのがわたくしそこまで良いものとは思えないのだけれど。…ナンシー嬢は随分と素晴らしいお頭アホなのかしらをしていらっしゃるのね?」
 「アイネ…きっと性癖が変態なのよ」
 「ベロニカ……あら?そのお腹…」
 「ええ。今4ヶ月ですの…彼、夫の」
 「お初にお目もじ致します。私はヘンリー、ヘンリー・アバートン伯爵令息です。ベロニカとの結婚式の際にも一度お会いしましたね、アイネリーディン嬢」

ベロニカ・エトワーシャ公爵令嬢とアイネリーディンの関係は従姉妹であり気の置けない親友のような…そんな仲である。

 「…硬い。硬い硬い硬いですわ、ヘンリー!」
夫の硬い挨拶にムッとするのはベロニカだ。18歳のベロニカと23歳のヘンリーが結婚し子まで授かって居たと言うのは…アイネリーディンは始め驚いたが、大切な身内の慶事にその花が綻んだような大輪の笑顔の花を咲かせた。
 「ベロニカ…おめでとう。本当によう御座いますわ」
 「!……ええ。ありがとうアイネ」
 「お祝いの言葉をありがとうございます、アイネリーディン嬢」
 「ヘンリー!」
 「どんなに親しい仲でも礼を欠かしてはいけませんよ?……ああ、むくれた顔もかわいいね。僕のベロニカは」
 「……ふぇ…っ?!ぇ、えっとぉ…~~ッ!?///」
ボン、と音がしそうなほど一気に顔どころか耳、デコルテまで真っ赤に染めたベロニカ…青髪を一つに纏め夫であるヘンリーの瞳の色…菫色のリボンで後頭部で結んだお団子ヘアー、キリッと猫のような曲線を描く瞳…ベロニカの瞳の色は黄水晶シトリン。目に鮮やかな青髪と黄水晶の瞳…加えて168㎝と小柄ながらも出る所は出てきゅっと括れた腰、安産型の丸みを帯びた桃尻…にはいつも男子の注目の的だった。

レッドルビー王立魔法学園は三部に別れており、6歳~12歳まで通う小等部、13歳~15歳まで通う中等部、16歳~18歳まで通う高等部の三部に別れ中等部からは高等部を卒業するまで学園生は基本寮生活である。

魔法科(普通科)、魔道具科(商業科)、魔術研究科(研究科)の3つで中等部までは皆等しく魔法科に在籍し、高等部に挙がる頃に大体これの内何れかに進路を決める。

エドワードは16歳。高等部一年生だが、その婚約者アイネリーディンは飛び級して今2月に卒業したばかりのベロニカの在籍していた〝魔術研究科〟に進み高等部三年に在籍している。

学園生活も残り僅か。来年の今頃は王宮に上がってエドワードの隣を王子妃として、また執務のパートナーとして側にいる筈だった──…まあ、王太子殿下が“代理で”国王陛下の言伝てで以て〝解消〟となった。
今後の事はアイネリーディン自身も分からない…いや、絵に描いたが──…本当に


 「…詰まらない男でしたわね、第三王子は」
はぁ、と溜め息を吐いて退出を促され会場から連れ出される男爵令嬢を呆れた目で見送って…、彫像みたいに微動打にしない第三王子…あの様子だと足がパンパンになってもずっと大広間メインホールの壁で彫像のように立たされるだろう。
アイネリーディンとエドワードの婚約は一言に尽きる。
〝政略結婚〟。それ以外にない、子供の頃は今の阿保っぷりからは想像も付かない銀髪碧眼の“天使”のようなかわいい男の子だった……今では見る影もないけど。
あの頃は素直で可愛らしかった…、のに。
…時と言うのは残酷なものである。
何時からか尊大になった。
素直だった幼少期は微塵も見えずいつしか傲慢で我が儘。『ぼく』とかわいらしい一人称から『俺、俺様』とバカ殿全開に呼称し、王子予算から男爵令嬢のドレスや宝石、靴やアクセサリー代を出していた。或いは婚約者ではなくナンシー・バックレア男爵令嬢と意匠デザインを一揃いしオーダーメイド。婚約者にはここ7年ほどは一切贈り物もなければ手紙の一つすら返事は愚か書いてすらいない。
アイネリーディンが飛び級するほど優秀なの反比例するようにエドワードはどんどんと愚かさが露見していく…。
そんな中で決定的な証拠が露見してしまう。

…第三王子の私室でナンシー・バックレアと場面を影が天井から目撃、仲良く睦合っているところを護衛が、侍女が目撃・把握して…洗濯メイドがのシーツをエドワードの寝室から出て来た事に驚いて侍女長の元へ…。
そうしてエドワード第三王子の〝不貞〟が発覚したのは今日この場で第三王子が〝婚約破棄〟を口にするより3年も前の話である。
王立魔法学園は完全実力主義。如何なる王族も高位貴族も金や権力で卒業に必要な「単位」は買えない。
魔法学園はその危険性と重要度から毎年軍仕官学校から見張られている。そこには将来の国の〝影〟を目指す貴族子女や騎士…軍人を目指す貴族子女、商家の子女等々が“訓練”と称して魔法学園の生徒に特定の生徒──ナンシー・バックレア男爵令嬢のような問題児──を監視したり護衛したりしている。〝標的ターゲット 〟は入学初日仕官学校から直接郵送で関連資料が届く。
当然「本人」に知られたらその時点でアウトだし、家族の誰かに口外する事は硬く禁じられている。──話したらどうなるか…って?
当然仕官学校の合格の取り消し、奨学生として入ったならば罰金としてその日までに掛かった授業料の返金、入学金や遠征費用、寮費の返金・リフォーム代、仕官学校の学生服のクリーニング代及び返却と仕官学校から支給された武器(剣/槍/弓)の返却が義務付けられている。(平民は全面的に授業料無料)
…仕官学校もまた「完全実力主義」である。
魔法学園の学園生活は長いが、仕官学校は二年。入学出来るのは高等部を卒業する18歳から20歳までの間。
(通っている間は新兵並みの給与が月毎に支給される)卒業後は直ぐ国軍に新兵として仕官。…それが「魔法騎士団」なのか「王都守備隊」か「近衛騎士団」なのかは……その者の資質による。

標的にバレてはいけない、標的の事を誰かに口外してはいけない。

決して破ってはならない不文律ーーそれは当然アイネリーディンすらも彼等の〝訓練〟として監視見られていた。
…当然ナンシー・バックレア男爵令嬢にも監視する仕官学校の生徒が三人着いていた。
彼等間徴の卵や軍人見習いが見張られていた為早々に「王の耳」にまで届いていた。
……。

 「…それに気付かないのは百歩譲ってもいい、が。──王家の〝印〟が着いたドレスは……
 「…お兄様」
 「アイネ、俺はお前があれの為にどれだけ我慢し努力したかを知っている。…本当になんと愚かな事をしてくれた…エドワード許さん。末代まで祟ってやる…っ!」
 「お兄様…良いのです。もう終わった事ですわ」
 「おお、なんと優しいのだ!アイネは……!!」

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