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プロローグ:道明寺万理と言う女
魔障の森で誰得チュートリアル☆~料理編~
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「…へぇ、メニューをタップしなくても料理ってできるようだね…ま、当たり前か」
旅先でも出来立てホカホカのご飯を食べたい…と言うか、干し肉とドライフルーツやかったいパンで食を満たそうとは思わない。
このコテージ(拠点)はフォトンバリアを張って、外敵の侵入を悉く弾いている一種の“聖域”と化している拠点の中でひたすら野菜と肉と調味料を魔方陣の上に置く。
タップした次の瞬間にチカッと光って材料は消え、代わりに指定した料理が皿に載った状態で湯気を立てながら鎮座している。
それを無言で見詰め無限収納へ。
……これを30回は繰り返し、“取り寄せ”た日本の食材も空になった所で。
「日々の食事は私自身で作ろう、兄さん…」
毎日のように連絡は取っていても、気軽に会えない距離──いきなり愛する人と引き裂かれ、遠距離恋愛する羽目になった邪神ヴァルバにはいつの日か必ずお返しをしなくてはいけない──無論、ナクアにも。
勝手に巻き込んだ──拉致った張本人を許せる筈がないだろう、万理は別に進んで異世界へと渡った理由ではないのだから。
「…兄さん、待っていて。必ず強くなって邪神とナクアを打ち破って帰るから…。」
こちらの1日は日本の3日…ああ、早く。早く──邪神とナクアを倒さなくては。
…このコテージの中ではナクアすらも覗けない強固な結界が施されている──当然姿どころか、声すらも届かないし見えない。
万理にとって──邪神も神も大差ない。
等しく敵だ。
あの場ではどうやったって勝てそうになかった──だから。素直に従った。までのこと。
異世界転移に憧れも夢もない──と言うか現状に満足していた万理にとっては傍迷惑以外のなにものでもない。
「邪神、ナクア…どちらも討つべし!討つべし!敵!敵!」
ダン、ダァーンッ!と大根を中華包丁で切り落とす。
今日はぶり大根に松茸のお吸い物、タコとキュウリの酢の物、醤油豆を予定している。
沢山作っても問題はない。
残りは冷凍庫…兄さんが好きに献立を組めばいい。
先に作った肉じゃがが冷凍庫に保管されているし。
兄さんが余計な料理をさせないための処置だ。
コンロは3つ口、フライパンや包丁…これらは全て“取り寄せ”に寄る地球産の物。魔力を代用してコンロも冷凍庫も稼働している。
2階建ての木造住宅──水回りは全て1階で済ませる。
2階は客間と物置だ…まあ、無限収納があるのでほとんど使っていない空室状態ではある、が。
床も天井も壁も木で出来ているコテージは…これだけで、貴族位(男爵位)を金で買えるほど。その価値は量り知れない…。
醤油豆──香川の郷土料理、甘辛く醤油と砂糖、鷹の爪を加え空豆を一晩炊いた(煮た)ものだ。
甘辛く美味しい。醤油の香りもほくほくの空豆の味も。
2口はコンロが埋まる中でキュウリと茹で蛸を切り分け、砂糖と塩、酢を適量に混ぜたものとワカメを加えボウル状で一つに和える。
「…よし、完成…!」
酢の物はわりと簡単に出来上がったので、冷蔵庫へ。
勿論、自宅の冷蔵庫へも。
…壁に掛けられた時計は丸型で、数字が大きく書かれた白地に黒色の数字が時計まわりに並ぶ…メモリも割り振られ、秒針がカチカチと流れていく…。
時刻は11:30…。
もうすぐで昼御飯に丁度良い時間だ。
日本では、兄が上手いことインフルエンザに罹って伏せっている、と連絡を入れてくれている。
…とてもじゃないが、1日2日で終わるような出張──邪神討伐ではない為なので…その内もっと良い言い訳を考える必要がある、が…。
現状は何も思い付かない。
まあ、最悪暫く行方不明となるだけだ。
死んだわけではないから…目的さえ果たせば五体満足で転移された日に戻れるし。
野菜を切って、肉を焼く…魚の臭みを取って大根とは別に煮て…最後に和える。
共に煮ると大根にぶりの臭みが移るし、荷崩れを起こす。
…それに大根とぶりでは適当な時間が異なるので…料理初心者は料理本片手にしっかりとキッチンタイマーを使って作ると失敗がなくていい。
「~♪~~♪♪…。」
鼻歌──いや、アカペラで某鋼の錬金術師の「again」を口ずさむ。
『おぉ~~、万理のagainか…うん、良いな…』
テレビ電話越しにそんな妹の様子を観察する。
1週間前、突如として目の前から消えた万理を助ける事も出来ず、何度もナクアへ恨み節を口にしていた翼は…ここ最近はだいぶ落ち着いたものだ。
まあ、それでも最愛の人を目の前で掻っ浚われたのだ──恨んで当然だろう。
機嫌良くアカペラで歌いながら昼食作りは佳境に入るのだった…。
……。
旅先でも出来立てホカホカのご飯を食べたい…と言うか、干し肉とドライフルーツやかったいパンで食を満たそうとは思わない。
このコテージ(拠点)はフォトンバリアを張って、外敵の侵入を悉く弾いている一種の“聖域”と化している拠点の中でひたすら野菜と肉と調味料を魔方陣の上に置く。
タップした次の瞬間にチカッと光って材料は消え、代わりに指定した料理が皿に載った状態で湯気を立てながら鎮座している。
それを無言で見詰め無限収納へ。
……これを30回は繰り返し、“取り寄せ”た日本の食材も空になった所で。
「日々の食事は私自身で作ろう、兄さん…」
毎日のように連絡は取っていても、気軽に会えない距離──いきなり愛する人と引き裂かれ、遠距離恋愛する羽目になった邪神ヴァルバにはいつの日か必ずお返しをしなくてはいけない──無論、ナクアにも。
勝手に巻き込んだ──拉致った張本人を許せる筈がないだろう、万理は別に進んで異世界へと渡った理由ではないのだから。
「…兄さん、待っていて。必ず強くなって邪神とナクアを打ち破って帰るから…。」
こちらの1日は日本の3日…ああ、早く。早く──邪神とナクアを倒さなくては。
…このコテージの中ではナクアすらも覗けない強固な結界が施されている──当然姿どころか、声すらも届かないし見えない。
万理にとって──邪神も神も大差ない。
等しく敵だ。
あの場ではどうやったって勝てそうになかった──だから。素直に従った。までのこと。
異世界転移に憧れも夢もない──と言うか現状に満足していた万理にとっては傍迷惑以外のなにものでもない。
「邪神、ナクア…どちらも討つべし!討つべし!敵!敵!」
ダン、ダァーンッ!と大根を中華包丁で切り落とす。
今日はぶり大根に松茸のお吸い物、タコとキュウリの酢の物、醤油豆を予定している。
沢山作っても問題はない。
残りは冷凍庫…兄さんが好きに献立を組めばいい。
先に作った肉じゃがが冷凍庫に保管されているし。
兄さんが余計な料理をさせないための処置だ。
コンロは3つ口、フライパンや包丁…これらは全て“取り寄せ”に寄る地球産の物。魔力を代用してコンロも冷凍庫も稼働している。
2階建ての木造住宅──水回りは全て1階で済ませる。
2階は客間と物置だ…まあ、無限収納があるのでほとんど使っていない空室状態ではある、が。
床も天井も壁も木で出来ているコテージは…これだけで、貴族位(男爵位)を金で買えるほど。その価値は量り知れない…。
醤油豆──香川の郷土料理、甘辛く醤油と砂糖、鷹の爪を加え空豆を一晩炊いた(煮た)ものだ。
甘辛く美味しい。醤油の香りもほくほくの空豆の味も。
2口はコンロが埋まる中でキュウリと茹で蛸を切り分け、砂糖と塩、酢を適量に混ぜたものとワカメを加えボウル状で一つに和える。
「…よし、完成…!」
酢の物はわりと簡単に出来上がったので、冷蔵庫へ。
勿論、自宅の冷蔵庫へも。
…壁に掛けられた時計は丸型で、数字が大きく書かれた白地に黒色の数字が時計まわりに並ぶ…メモリも割り振られ、秒針がカチカチと流れていく…。
時刻は11:30…。
もうすぐで昼御飯に丁度良い時間だ。
日本では、兄が上手いことインフルエンザに罹って伏せっている、と連絡を入れてくれている。
…とてもじゃないが、1日2日で終わるような出張──邪神討伐ではない為なので…その内もっと良い言い訳を考える必要がある、が…。
現状は何も思い付かない。
まあ、最悪暫く行方不明となるだけだ。
死んだわけではないから…目的さえ果たせば五体満足で転移された日に戻れるし。
野菜を切って、肉を焼く…魚の臭みを取って大根とは別に煮て…最後に和える。
共に煮ると大根にぶりの臭みが移るし、荷崩れを起こす。
…それに大根とぶりでは適当な時間が異なるので…料理初心者は料理本片手にしっかりとキッチンタイマーを使って作ると失敗がなくていい。
「~♪~~♪♪…。」
鼻歌──いや、アカペラで某鋼の錬金術師の「again」を口ずさむ。
『おぉ~~、万理のagainか…うん、良いな…』
テレビ電話越しにそんな妹の様子を観察する。
1週間前、突如として目の前から消えた万理を助ける事も出来ず、何度もナクアへ恨み節を口にしていた翼は…ここ最近はだいぶ落ち着いたものだ。
まあ、それでも最愛の人を目の前で掻っ浚われたのだ──恨んで当然だろう。
機嫌良くアカペラで歌いながら昼食作りは佳境に入るのだった…。
……。
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