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3.意外と好き
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ちょうど、ふたりの呼び名が決まったその時に車は貴仁の家に到着した。
娘ちゃんは、娘ちゃんという少し変わった呼び名がどうにも気に入らないらしく、ふてくされながらぶつぶつ何か言っている。
「ほらほら、もう諦めて!それより娘ちゃん!着いたよ!ここが私と娘ちゃんの家だ!」
娘ちゃんは、貴仁の言葉に反応し、スマホから家の方に視線を移す。目の前には、二階建ての白い外装をした家があった。
「意外。じじい、言葉も見た目もなんか古くさいから、家もそんな感じだと思ってた」
「な!?あのさ、ずっと思ってたけど、娘ちゃんってなかなかというか、かなり辛辣じゃない?」
頬をフグのように膨らませて、いじける貴仁。
その様子が娘ちゃんからすると面白いらしくけらけらと笑っている。
「今頃気づいても、返品は受付けておりませんのでご了承くださいー」
娘ちゃんと名付けた時に貴仁が使った言葉を巧みにお返しされた。それも了承願い付き。
こうなってしまえば、もう貴仁に勝ち目は無い。
貴仁は、反論を諦め、一つため息をつくと、車のエンジンを切った。
「まあ、とりあえず、家入ろう」
「そうだね。ずっと車に乗ってたからお互いお腹もすけば、疲れもしてるしね」
貴仁は、娘ちゃんに「お腹もすけば」と言われて、ようやく自分たちが昼ごはんを食べていなかったことに気づいた。
腕時計を見ると時刻は13時半。
「あー、昼ごはん忘れてた!ごめん、娘ちゃん!すぐ何か用意するから!」
貴仁は早くお昼ごはんを準備しないとという一心で急いで車から降りた。その後に続いて娘ちゃんも車を降りる。
そして、2人はそのまま慌ただしく家の中に入っていった。
初めての家が興味深いのか、娘ちゃんは家の中をきょろきょろ見渡している。
「中も意外と綺麗ね。広いし」
「意外と、は余計なんだよなー。まあ、娘ちゃんは、あっちに座って待ってて!」
貴仁は、リビングにポツンとあるソファーを指さす。
「分かった」
娘ちゃんが言われるままにソファーに座ると、貴仁は、どこから持ってきたのか、大きな猫を娘ちゃんの膝に乗せた。
「はい、これ!」
「え、なにこれ」
膝の上で喉を鳴らすぽっちゃり体型の猫を変なものを見るような目で見つめる娘ちゃん。
「エキゾチックショートヘアのニャン五郎!」
「名前ダサい」
「ダサくない!」
「ダサい。ネーミングセンスの欠片もない」
「あー!それ、娘ちゃんにだけは言われたくない!」
じじいという直球すぎる呼び名をつける娘ちゃんにネーミングセンスを疑われるのは、何ともいただけない。
だからこそ、貴仁は負けじと否定し続けた。
「それに、このブサ猫、じじい似」
ニャン五郎を貴仁の顔に近づけて、交互に見比べ、クスクス笑う娘ちゃん。
「なにぃ!?ニャン五郎はブサ猫ではないし、私も……」
「でも、意外と好き」
にっこり笑う娘ちゃん。
意外と、付きではあるものの自分とニャン五郎を好きと言った娘ちゃんの言葉が余程嬉しかったのか、貴仁は顔を覆った。
「娘ちゃん、意外と嬉しい。ありがとう」
「別にじじいに言ったつもりはないから!」
少し照れくさそうに顔を背ける娘ちゃん。
こういうところは小学生なんだなと貴仁は思う。
「んじゃ、私は娘ちゃんのために何か作ってきますわ!何かご注文は?」
「それじゃあ、オムライスで」
「了解!任せろ!」
意外と。意外とだけど、それは紛れもない娘ちゃんの褒め言葉。綺麗も広いも好きも、全部全部褒め言葉。その褒め言葉が貴仁は、意外と、いや、凄く嬉しかった。
娘ちゃんは、娘ちゃんという少し変わった呼び名がどうにも気に入らないらしく、ふてくされながらぶつぶつ何か言っている。
「ほらほら、もう諦めて!それより娘ちゃん!着いたよ!ここが私と娘ちゃんの家だ!」
娘ちゃんは、貴仁の言葉に反応し、スマホから家の方に視線を移す。目の前には、二階建ての白い外装をした家があった。
「意外。じじい、言葉も見た目もなんか古くさいから、家もそんな感じだと思ってた」
「な!?あのさ、ずっと思ってたけど、娘ちゃんってなかなかというか、かなり辛辣じゃない?」
頬をフグのように膨らませて、いじける貴仁。
その様子が娘ちゃんからすると面白いらしくけらけらと笑っている。
「今頃気づいても、返品は受付けておりませんのでご了承くださいー」
娘ちゃんと名付けた時に貴仁が使った言葉を巧みにお返しされた。それも了承願い付き。
こうなってしまえば、もう貴仁に勝ち目は無い。
貴仁は、反論を諦め、一つため息をつくと、車のエンジンを切った。
「まあ、とりあえず、家入ろう」
「そうだね。ずっと車に乗ってたからお互いお腹もすけば、疲れもしてるしね」
貴仁は、娘ちゃんに「お腹もすけば」と言われて、ようやく自分たちが昼ごはんを食べていなかったことに気づいた。
腕時計を見ると時刻は13時半。
「あー、昼ごはん忘れてた!ごめん、娘ちゃん!すぐ何か用意するから!」
貴仁は早くお昼ごはんを準備しないとという一心で急いで車から降りた。その後に続いて娘ちゃんも車を降りる。
そして、2人はそのまま慌ただしく家の中に入っていった。
初めての家が興味深いのか、娘ちゃんは家の中をきょろきょろ見渡している。
「中も意外と綺麗ね。広いし」
「意外と、は余計なんだよなー。まあ、娘ちゃんは、あっちに座って待ってて!」
貴仁は、リビングにポツンとあるソファーを指さす。
「分かった」
娘ちゃんが言われるままにソファーに座ると、貴仁は、どこから持ってきたのか、大きな猫を娘ちゃんの膝に乗せた。
「はい、これ!」
「え、なにこれ」
膝の上で喉を鳴らすぽっちゃり体型の猫を変なものを見るような目で見つめる娘ちゃん。
「エキゾチックショートヘアのニャン五郎!」
「名前ダサい」
「ダサくない!」
「ダサい。ネーミングセンスの欠片もない」
「あー!それ、娘ちゃんにだけは言われたくない!」
じじいという直球すぎる呼び名をつける娘ちゃんにネーミングセンスを疑われるのは、何ともいただけない。
だからこそ、貴仁は負けじと否定し続けた。
「それに、このブサ猫、じじい似」
ニャン五郎を貴仁の顔に近づけて、交互に見比べ、クスクス笑う娘ちゃん。
「なにぃ!?ニャン五郎はブサ猫ではないし、私も……」
「でも、意外と好き」
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意外と、付きではあるものの自分とニャン五郎を好きと言った娘ちゃんの言葉が余程嬉しかったのか、貴仁は顔を覆った。
「娘ちゃん、意外と嬉しい。ありがとう」
「別にじじいに言ったつもりはないから!」
少し照れくさそうに顔を背ける娘ちゃん。
こういうところは小学生なんだなと貴仁は思う。
「んじゃ、私は娘ちゃんのために何か作ってきますわ!何かご注文は?」
「それじゃあ、オムライスで」
「了解!任せろ!」
意外と。意外とだけど、それは紛れもない娘ちゃんの褒め言葉。綺麗も広いも好きも、全部全部褒め言葉。その褒め言葉が貴仁は、意外と、いや、凄く嬉しかった。
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