獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

正月遊び※これは三巳が居た時の山のお正月です。

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 三巳的お正月の風物詩といえば、書き初めに羽子板に凧上げです。
 そういうイベント毎は三巳によって色々取り入れられ、進化してきました。
 けれど三巳の誤算がありました。
 それが凧上げです。
 山の民にとってタコと言えば蛸でしか無かったのです。
 結果蛸を浮かしてグルグル回すというよくわからないものになっていました。
 なので今、空を見上げると、回転する蛸足が、風車の様になって割と不気味です。
 三巳はそっと目線を逸らしました。

 「ウン。三巳は何も見なかった!」

 三巳は失敗を無かったことにしました。
 シオシオと自分に正直な尻尾を揺らした三巳は、羽子板片手に広場にいます。

 「さあ!三巳チャレンジに参加する猛者よ来ーい!」
 「ふっふっふ。今年もこの時が来た。
 毎年毎年やられているが、今年こそはその顔に墨を塗りたくってくれるわ!」
 「「「うおおおおお!!」」」

 三巳が呼び掛ければ腕に覚えのある山の民達が、こぞって列に並びました。

 「一番手はワシじゃあああ!」

 列の先頭に一早く人取っていたロウ村長が、両腕まくってバッキバキな筋肉をこれ見よがしに振りました。

 「はっはっはー。毎年毎年懲りぬのうお主も。
 だが三巳は手加減なんてしないぞ!今年も三巳の一人勝ちだ!」

 三巳も合わせて両腕まくって細くすべらかな肌をこれ見よがしに振りました。
 そして両者見合って……三巳が耳をピクリと動かした瞬間にロウ村長は持っていた羽根を打ちました。
 羽根は剛速球となって三巳の横を目掛けて飛んでいきます。

 「はっはっはー。甘い、甘いんだよっ。砂糖と蜂蜜を足して2で掛けた位に甘いんだよ!」
 
 けれど三巳はクルリと一回転をすると、その回転エネルギーを利用してロウ村長の横を目掛けて打ち返しました。
 打ち返された羽根は回転を伴ってドリルの様に一直線に飛んでいきます。

 「なんの!去年までのワシと思うなよ!」

 ロウ村長はその軌跡をしっかり確認し、それと同時に下から突き上げるように羽根を打ち返しました。

 「!?何!?」

 けれど回転エネルギーのかかった羽根は打ち返せても、同時にロウ村長の羽子板を木っ端微塵に粉砕してしまいました。

 「くっ!最高硬度の材木を使い、さらにネルビーに最強の強化魔法を施して貰った羽子板が……!」

 夢破れたロウ村長は、その場にガクリと膝をついて頭を抱えて悔しがりました。

 「ロウ村長の仇は俺が取る!」

 顔に立派なネズミ髭を書かれたロウ村長を痛ましげに見た二番手が躍り出ました。

 「おお!ロンじゃないかっ。もう怪我はすっかり良いみたいだな」
 「怪我したのは春先だからとっくに治っているよ。その節はありがとう」

 二番手として躍り出た元気な姿のロンに、三巳は嬉しそうに破顔しました。
 ロンも闘志を引っ込めてペコリと一礼。和やかな空気が流れました。

 「恩人でも勝負は勝負だ!」

 けれど瞬時に切り替えて、一礼姿勢で死角からの一撃を放ちました。
 羽根は無理な姿勢から放たれたとは思えない程しっかりと三巳の足元目掛けて飛んでいきます。

 「病み上がりでも手加減しないぞ!」

 死角から放たれた羽根を、三巳はしっかりと目で追っていました。タン!とバク転を決めると、逆さまになった状態から羽根を打ち返しました。
 羽根はきれいに弧を描いてロンの頭上目掛けて飛んでいきます。

 「わっはっは!こんなに軽い打ちやすい羽根なんてっ!?な、何!?眩しい!羽根が消えた!?」

 打ち返しやすい放射線を描く羽根に、余裕しゃくしゃくで構えたロンでしたが、羽根が太陽と重なり見えなくなってしまいました。
 ロンが探している間に羽根はポトリと足元に落下していました。

 「ふっふっふー♪太陽の位置を予め確認しておいたのさ!」

 そう、勝負は始まる前から始まっていたのです。
 三巳はあらかじめ太陽を背に待ち構えていたのです。

 「くっそー!!」

 ロンは地面を叩いて悔しがりました。その顔には新しくネズミの鼻が描かれていました。

 その後も後を絶たない挑戦者達が三巳に挑戦し続けましたが、結局誰も勝てずに顔を真っ黒に変えただけで終わってしまいました。

 そんな大人達の仁義なき闘いを尻目に、子供達は楽しく羽根つきで遊んでいました。
 リリもミナミ達に誘われて楽しんでいました。途中でネルビーが羽根を追いかけ回して違う遊びになっていたのはご愛嬌です。
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