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遊園地でぇと 後編
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そんなこんなで、俺と四月はフードコートに到着する。
まだ時間が早い為、それなりに空いていた。
まずは、俺と四月の分の席を確保する。
「俺は決まってるから、先行ってきていいぞ。荷物見といてやるから」
「もう決まってる!? なんだかんだ如月くんもお腹空いてたんじゃ~ん!」
そう言いながら今度は脇腹をつついてくる四月。
いいからさっさと行けよ・・・。
「早よ行かないと売り切れるぞ」
「え? それはダメだよ。行ってくる」
俺のホラに簡単に引っかかって、急ぎ足で買いに行く四月。
四月がバカで助かる時はあるが、こんな調子で将来は大丈夫なのか? と不安も出てきたりする。
そんな事を思いながら、俺はスマホを操作する。
しばらくすると、四月が戻ってきた。
クレープ、たこ焼き、焼きそば。
これまた大量に買ってきたな。
甘い物にしょっぱいものってマジかよ・・・。
「すごいな・・・」
「でしょ!? この焼きそば500円なのに量が多いんだよ!」
いや、俺が言ったすごいはその意味じゃないからな?
焼きそばの量なんか知らないし、それが適量なんじゃないのか?
「俺行ってくるわ、荷物任せた」
「あいあいさー!」
敬礼をしながら俺にそう言ってくる四月を残し、俺は一直線にある店へ向かった。
それは、サンドイッチ屋さんだった。
サンドイッチが特別に好きって訳ではないが、1番安価で手取り早かったからだ。
無難に、卵とハムカツサンドかな。
その2つを俺は手に取った。
「私はコロッケサンドっ!」
すると、隣から聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
隣をみると、案の定四月だった。
「・・・荷物番はどうした?」
「大丈夫! 貴重品は持ってきた!」
そう言いながら、小型のバッグを俺に見せてくる四月。
確かに貴重品は持ってきているみたいだな、自分のをな。
「俺のは?」
「あっ・・・」
「・・・買っといてやるから、とっとと戻れ」
「あいあいさーっ!」
そのまま四月を帰らせて、俺は四月の分のサンドイッチもまとめて買った。
そのまま席へ戻ると四月がまだ食べずに待っていた。
「冷めるだろ? 先食べててもよかったのに」
「2人で揃って食べるの!」
「そうですかい」
「そうなのです」
「ほんじゃ、改めてまして」
「「いただきます」」
2人して合掌して、ご飯を食べ始める。
俺はタマゴサンドの封を開けて、黙々と食べ進める。
「美味しい~!」
「温まる~!」
「生きててよかった~!」
一口毎に、そんな事を言いながら食べてる四月。
感情表現がドストレートでバカ丸出しだが、とても美味しそうに食べるものだから、つい頬が緩んでしまう。
その後も黙々と食べすすめていると、四月の口の横にたこ焼きのソースが付いているのが見えた。
「おい四月、口にソース付いてるぞ」
「え? どこ!?」
「そこ」
「どこ!?」
「そっちじゃねーよ、逆だ逆」
「え~どこぉ・・・」
困惑している上原に、俺は余分に貰ったお手拭きを一枚開け、そのまま身を乗り出し四月に渡そうとした。
四月もそれに気がついたのか、そのお手拭きを取ろうとする・・・と思いきや、
「ん~」
目をつぶり、口を若干前に出すようにしてきた。
いや、拭けって事なんだろうけど、なんか色々とアカンくないか?
そんな風に躊躇していたが、四月が引く様子はない。
そもそも、自分のしている行為の破壊力に気がついていない。
俺は、そのまま四月の口元を拭いてあげる事にした。
「終わったぞ」
「うん、ありがとっ!」
とんだ羞恥プレイを食らったが、こいつはまったく気にしていない様子で残りのご飯を食べ始める。
ま、気にした方が負けか。
俺も、そのままご飯を食べ進めた。
「美味しかったね~!」
「まあ、それなりの味だったな」
「次はどこ行こうか?」
「決めてないけど、どこか行きたい所あるか?」
「ん~、コーヒーカップとか?」
「お前正気か・・・?」
食った後とか絶対吐くぞ?
四月は吐かなくても、俺は吐きそうなのでここは拒否しておいた。
「じゃあどこ行くの?」
「待て、今見てるから」
すると、1つのアトラクションに目が入った。
よ し、ここにしよう。
「決めたぞ、向かうから付いてこい」
「どこいくの!?」
「それは秘密だ」
「なるほど~、サプライズって訳ね~!」
勝手に都合よく解釈してくれたので、乗っかっといておこう。
俺は今、四月を連れてお化け屋敷に向かっていた。
ここのお化け屋敷はミステリーハウスって名前で、見た目はお化け屋敷っぽくはないのだ。
それに四月のバカさ加減を合わせれば、疑われないだろう。
お化け屋敷が得意か不得意かは知らないが、絶叫系が無理ならお化け屋敷も無理だろうという、安易な考えだが、まぁいいだろう。
「ミステリーハウス?」
「うん。なんか推理的なやつだな」
「推理!? ふっふっふ~! 我が名は名探偵七! 見た目は子供! 素顔も子供! その名も、名探偵七!」
「いやなんで2回言ったし・・・」
相変わらず四月がバカでよかった。
何も疑われる事はなく、俺と四月はミステリーハウス内へ入る。
中は真っ暗で、入る時に渡された懐中電灯を使い進んでいくしかない。
「・・・ねぇ、これ本当に推理するやつなの?
真実はいつも1つのやつなの・・・?」
「すまん、言っている意味がさっぱりわからん」
俺と四月はそのまま歩みを進める。
今の所は、真っ暗な事と雰囲気が不気味って事くらいしかないな。
案外、大したもんじゃねーのか?
そんな事を思いながら進んでいくと・・・。
目の前には祠があり、そこにはお札が並んでいた。
「確か、このお札を持って最後に渡すとかなんとか言ってた気がするぞ」
「そうなんだ! じゃあ1枚もーらいっ!」
そう言って四月はお札を掴んだ。
すると、祠から青白い手が伸びてきて、四月の手を掴んだ。
とっさの事で、四月は声も上げずに硬直する。
「四月? お~い?」
「・・・・・・」
そのままフリーズして、動かなくなる四月。
しばらくすると、青白い手は四月の手を離す。
「・・・ここ、お化け屋敷じゃないの?」
「あ~、うん、そうかも」
四月の質問にサラッと答える俺。
すると四月は、俺の胸を何回も叩いてきた。
「なんでお化け屋敷なんかに連れてくるの!? 私がホラー苦手なの知っててこんな事したの!? バカ!
クズ! アンポンタン! 変態!」
「落ち着け、落ち着け。案外そんな怖くもないだろ?」
「私は怖いの・・・。私の気持ちも少しは考えてよ・・・」
「わ、わりぃ・・・」
それからはまあ・・・お察しの通り、四月の悲鳴が延々と続いていた。
俺の腕を掴みながらだから、爪とかめっちゃ食い込んで痛かったな~。
なんとか出口まで到達したが、四月は俺の腕を掴みながら泣いていて、遊園地探索続行は不可能だった。
近くのベンチに座り、四月を落ち着かせようとする。
「もう平気だから、そろそろ離してくれないか?」
「バカ・・・」
「悪かったよ。もうしないから」
「・・・変態」
俺が何を言っても、罵倒でしか返ってこなくなってしまった。
俺はそのまま、四月が立ち直るまで待つことにした。
お化け屋敷の恐怖を想像以上に引きずっていて、さっき前までの明るいテンションの四月は、その影すら残していなかった。
ベンチに座りながら、沈黙の時間だけがゆっくりと、だが確実に過ぎていく。
気がつくと、陽が傾き始めていた。
流石に今日のところは、もう帰った方が良いのかもな。
そう思い、未だ意気消沈気味の四月に声をかけた。
「四月、そろそろ帰るか」
「うん・・・」
そのまま立ち上がり、出口へと向かっていく。
相変わらず、俺達の間には会話は一切なかった。
流石にやり過ぎてしまったと反省はしているが、この状況で四月に何て声をかければいいのかが分からなかった。
嫌われてしまっただろうか?
そんな不安と焦りの波が、俺に押し寄せてくる。
そんな俺の気持ちとは真逆に、目の前に広がる夕焼けは面白くない程に綺麗だった。
「・・・綺麗だな・・・」
「ん? 私?」
「いや、夕陽がさ」
「あ、本当だね」
2人して足を止めて夕陽を見ていると、四月が俺の服の袖を2回ほど引っ張ってきた。
四月の方を向くと、先程までとは違い、いつも通りの明るい表情を浮かべている彼女の姿があった。
「最後にさ、観覧車乗らない?」
「観覧車か・・・分かった。いいよ」
「本当!? やったぁ! レッツゴーだよ!」
そのまま俺と四月は、観覧車へと向かった。
結構混んでそうなアトラクションだが、意外にもすんなりと乗る事が出来た。
はしゃぎながら乗り込む四月と、逆に心がざわざわと落ち着かない俺。
その理由は1つ、ただ単に高所恐怖症だからだ。
「おおー!! 高い高~い!」
子供をあやす勢いでそんな事を言ってる四月を目の前にして、俺の心臓は段々と激しく動いていく。
次第に下を向けない程の高さになっていく。
そんな俺の変化に気づいたのか、四月が声をかけてきた。
「如月くん、大丈夫? 顔色悪いけど」
「・・・もち・・・!」
「全然もち! って顔してないよ・・・?」
すると四月、何かを閃いたのか手をポンと叩いた。
すると、ニヤニヤしながら俺に言葉をかけてきた。
「もしかして~、高い所苦手なんじゃな~い~?」
サラッと当てられてしまって、返す言葉がない。
先程、俺はお化け屋敷が苦手な四月を連れて行き怖がらせてしまった。
まさか苦手だとは思わなかったが、そんな事があった手前、何かしてくるんじゃないかと思っていた。
「そんな如月くんには~・・・こうだっ!」
そう言って四月がしてきた行動に、驚きを隠せなかった。
揺らしたり、わざと下を見せようとするんじゃないかと思っていたが、その予想に反して、四月は俺の硬く握り締めていた手を握ってきたのだ。
その行動が、俺には全く理解できなかった。
「これで少しは落ち着くかな?」
なんなんだろうな。
こんな時に、ふとした時に予想外の行動をしてくるこの四月の事を・・・。
夕陽に照らされてる事も相まって、四月の笑顔が俺には眩し過ぎて直視する事が出来なかった。
嫌になるよ、本当に・・・。
意識しないようにして、心の奥底に閉じ込めようとした感情が湧いてきやがる。
どうしてなんだよ・・・。
どうしてお前は、こんなにもバカなんだよ・・・。
まだ時間が早い為、それなりに空いていた。
まずは、俺と四月の分の席を確保する。
「俺は決まってるから、先行ってきていいぞ。荷物見といてやるから」
「もう決まってる!? なんだかんだ如月くんもお腹空いてたんじゃ~ん!」
そう言いながら今度は脇腹をつついてくる四月。
いいからさっさと行けよ・・・。
「早よ行かないと売り切れるぞ」
「え? それはダメだよ。行ってくる」
俺のホラに簡単に引っかかって、急ぎ足で買いに行く四月。
四月がバカで助かる時はあるが、こんな調子で将来は大丈夫なのか? と不安も出てきたりする。
そんな事を思いながら、俺はスマホを操作する。
しばらくすると、四月が戻ってきた。
クレープ、たこ焼き、焼きそば。
これまた大量に買ってきたな。
甘い物にしょっぱいものってマジかよ・・・。
「すごいな・・・」
「でしょ!? この焼きそば500円なのに量が多いんだよ!」
いや、俺が言ったすごいはその意味じゃないからな?
焼きそばの量なんか知らないし、それが適量なんじゃないのか?
「俺行ってくるわ、荷物任せた」
「あいあいさー!」
敬礼をしながら俺にそう言ってくる四月を残し、俺は一直線にある店へ向かった。
それは、サンドイッチ屋さんだった。
サンドイッチが特別に好きって訳ではないが、1番安価で手取り早かったからだ。
無難に、卵とハムカツサンドかな。
その2つを俺は手に取った。
「私はコロッケサンドっ!」
すると、隣から聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
隣をみると、案の定四月だった。
「・・・荷物番はどうした?」
「大丈夫! 貴重品は持ってきた!」
そう言いながら、小型のバッグを俺に見せてくる四月。
確かに貴重品は持ってきているみたいだな、自分のをな。
「俺のは?」
「あっ・・・」
「・・・買っといてやるから、とっとと戻れ」
「あいあいさーっ!」
そのまま四月を帰らせて、俺は四月の分のサンドイッチもまとめて買った。
そのまま席へ戻ると四月がまだ食べずに待っていた。
「冷めるだろ? 先食べててもよかったのに」
「2人で揃って食べるの!」
「そうですかい」
「そうなのです」
「ほんじゃ、改めてまして」
「「いただきます」」
2人して合掌して、ご飯を食べ始める。
俺はタマゴサンドの封を開けて、黙々と食べ進める。
「美味しい~!」
「温まる~!」
「生きててよかった~!」
一口毎に、そんな事を言いながら食べてる四月。
感情表現がドストレートでバカ丸出しだが、とても美味しそうに食べるものだから、つい頬が緩んでしまう。
その後も黙々と食べすすめていると、四月の口の横にたこ焼きのソースが付いているのが見えた。
「おい四月、口にソース付いてるぞ」
「え? どこ!?」
「そこ」
「どこ!?」
「そっちじゃねーよ、逆だ逆」
「え~どこぉ・・・」
困惑している上原に、俺は余分に貰ったお手拭きを一枚開け、そのまま身を乗り出し四月に渡そうとした。
四月もそれに気がついたのか、そのお手拭きを取ろうとする・・・と思いきや、
「ん~」
目をつぶり、口を若干前に出すようにしてきた。
いや、拭けって事なんだろうけど、なんか色々とアカンくないか?
そんな風に躊躇していたが、四月が引く様子はない。
そもそも、自分のしている行為の破壊力に気がついていない。
俺は、そのまま四月の口元を拭いてあげる事にした。
「終わったぞ」
「うん、ありがとっ!」
とんだ羞恥プレイを食らったが、こいつはまったく気にしていない様子で残りのご飯を食べ始める。
ま、気にした方が負けか。
俺も、そのままご飯を食べ進めた。
「美味しかったね~!」
「まあ、それなりの味だったな」
「次はどこ行こうか?」
「決めてないけど、どこか行きたい所あるか?」
「ん~、コーヒーカップとか?」
「お前正気か・・・?」
食った後とか絶対吐くぞ?
四月は吐かなくても、俺は吐きそうなのでここは拒否しておいた。
「じゃあどこ行くの?」
「待て、今見てるから」
すると、1つのアトラクションに目が入った。
よ し、ここにしよう。
「決めたぞ、向かうから付いてこい」
「どこいくの!?」
「それは秘密だ」
「なるほど~、サプライズって訳ね~!」
勝手に都合よく解釈してくれたので、乗っかっといておこう。
俺は今、四月を連れてお化け屋敷に向かっていた。
ここのお化け屋敷はミステリーハウスって名前で、見た目はお化け屋敷っぽくはないのだ。
それに四月のバカさ加減を合わせれば、疑われないだろう。
お化け屋敷が得意か不得意かは知らないが、絶叫系が無理ならお化け屋敷も無理だろうという、安易な考えだが、まぁいいだろう。
「ミステリーハウス?」
「うん。なんか推理的なやつだな」
「推理!? ふっふっふ~! 我が名は名探偵七! 見た目は子供! 素顔も子供! その名も、名探偵七!」
「いやなんで2回言ったし・・・」
相変わらず四月がバカでよかった。
何も疑われる事はなく、俺と四月はミステリーハウス内へ入る。
中は真っ暗で、入る時に渡された懐中電灯を使い進んでいくしかない。
「・・・ねぇ、これ本当に推理するやつなの?
真実はいつも1つのやつなの・・・?」
「すまん、言っている意味がさっぱりわからん」
俺と四月はそのまま歩みを進める。
今の所は、真っ暗な事と雰囲気が不気味って事くらいしかないな。
案外、大したもんじゃねーのか?
そんな事を思いながら進んでいくと・・・。
目の前には祠があり、そこにはお札が並んでいた。
「確か、このお札を持って最後に渡すとかなんとか言ってた気がするぞ」
「そうなんだ! じゃあ1枚もーらいっ!」
そう言って四月はお札を掴んだ。
すると、祠から青白い手が伸びてきて、四月の手を掴んだ。
とっさの事で、四月は声も上げずに硬直する。
「四月? お~い?」
「・・・・・・」
そのままフリーズして、動かなくなる四月。
しばらくすると、青白い手は四月の手を離す。
「・・・ここ、お化け屋敷じゃないの?」
「あ~、うん、そうかも」
四月の質問にサラッと答える俺。
すると四月は、俺の胸を何回も叩いてきた。
「なんでお化け屋敷なんかに連れてくるの!? 私がホラー苦手なの知っててこんな事したの!? バカ!
クズ! アンポンタン! 変態!」
「落ち着け、落ち着け。案外そんな怖くもないだろ?」
「私は怖いの・・・。私の気持ちも少しは考えてよ・・・」
「わ、わりぃ・・・」
それからはまあ・・・お察しの通り、四月の悲鳴が延々と続いていた。
俺の腕を掴みながらだから、爪とかめっちゃ食い込んで痛かったな~。
なんとか出口まで到達したが、四月は俺の腕を掴みながら泣いていて、遊園地探索続行は不可能だった。
近くのベンチに座り、四月を落ち着かせようとする。
「もう平気だから、そろそろ離してくれないか?」
「バカ・・・」
「悪かったよ。もうしないから」
「・・・変態」
俺が何を言っても、罵倒でしか返ってこなくなってしまった。
俺はそのまま、四月が立ち直るまで待つことにした。
お化け屋敷の恐怖を想像以上に引きずっていて、さっき前までの明るいテンションの四月は、その影すら残していなかった。
ベンチに座りながら、沈黙の時間だけがゆっくりと、だが確実に過ぎていく。
気がつくと、陽が傾き始めていた。
流石に今日のところは、もう帰った方が良いのかもな。
そう思い、未だ意気消沈気味の四月に声をかけた。
「四月、そろそろ帰るか」
「うん・・・」
そのまま立ち上がり、出口へと向かっていく。
相変わらず、俺達の間には会話は一切なかった。
流石にやり過ぎてしまったと反省はしているが、この状況で四月に何て声をかければいいのかが分からなかった。
嫌われてしまっただろうか?
そんな不安と焦りの波が、俺に押し寄せてくる。
そんな俺の気持ちとは真逆に、目の前に広がる夕焼けは面白くない程に綺麗だった。
「・・・綺麗だな・・・」
「ん? 私?」
「いや、夕陽がさ」
「あ、本当だね」
2人して足を止めて夕陽を見ていると、四月が俺の服の袖を2回ほど引っ張ってきた。
四月の方を向くと、先程までとは違い、いつも通りの明るい表情を浮かべている彼女の姿があった。
「最後にさ、観覧車乗らない?」
「観覧車か・・・分かった。いいよ」
「本当!? やったぁ! レッツゴーだよ!」
そのまま俺と四月は、観覧車へと向かった。
結構混んでそうなアトラクションだが、意外にもすんなりと乗る事が出来た。
はしゃぎながら乗り込む四月と、逆に心がざわざわと落ち着かない俺。
その理由は1つ、ただ単に高所恐怖症だからだ。
「おおー!! 高い高~い!」
子供をあやす勢いでそんな事を言ってる四月を目の前にして、俺の心臓は段々と激しく動いていく。
次第に下を向けない程の高さになっていく。
そんな俺の変化に気づいたのか、四月が声をかけてきた。
「如月くん、大丈夫? 顔色悪いけど」
「・・・もち・・・!」
「全然もち! って顔してないよ・・・?」
すると四月、何かを閃いたのか手をポンと叩いた。
すると、ニヤニヤしながら俺に言葉をかけてきた。
「もしかして~、高い所苦手なんじゃな~い~?」
サラッと当てられてしまって、返す言葉がない。
先程、俺はお化け屋敷が苦手な四月を連れて行き怖がらせてしまった。
まさか苦手だとは思わなかったが、そんな事があった手前、何かしてくるんじゃないかと思っていた。
「そんな如月くんには~・・・こうだっ!」
そう言って四月がしてきた行動に、驚きを隠せなかった。
揺らしたり、わざと下を見せようとするんじゃないかと思っていたが、その予想に反して、四月は俺の硬く握り締めていた手を握ってきたのだ。
その行動が、俺には全く理解できなかった。
「これで少しは落ち着くかな?」
なんなんだろうな。
こんな時に、ふとした時に予想外の行動をしてくるこの四月の事を・・・。
夕陽に照らされてる事も相まって、四月の笑顔が俺には眩し過ぎて直視する事が出来なかった。
嫌になるよ、本当に・・・。
意識しないようにして、心の奥底に閉じ込めようとした感情が湧いてきやがる。
どうしてなんだよ・・・。
どうしてお前は、こんなにもバカなんだよ・・・。
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