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2人の噂
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今の時間は昼休みだ。
早めに昼食を食べ終え、俺は机に突っ張って眠っていた。
無駄な思考を排除して、1人の時間を過ごす。
たまにはこんな昼休みの過ごし方もいいだろう。
うん、悪くはないな。
「ちょっとちょっと、如月くん! これ見てよ!」
おい、1人の時間を過ごすって演出したばっかじゃねえか。
なんだ? むしろそれがお約束かなんかなんですかね?
俺の1人で過ごす時間は、ほんの数分で終わってしまった。
「あ~、可愛いよ可愛い」
「違うよ、そんなんじゃないし。ってかこっち見てないし!」
顔を見なくとも、今頃は膨れっ面でもかましてるんだろうな、とは思う。
渋々だが、上体を起こして四月を見る。
俺の予想通り、ミカン2つ入れてるんじゃないかってくらいの膨れっ面だった。
「はいはい。んで、何の用だ?」
「これっ!」
すると四月は、俺にスマホの画面を見せてきた。
そこには、四月の意中の先輩と四月が、2人で写っているツーショットの画像が映し出されていた。
ほう、もうそんな仲にまで進展してんのか。
「ほう、良かったじゃねーか」
「うん! それに見てここ! ここね、ここ!」
四月は画像を拡大させ、さらによく見せてくる。
だが、よく見てもただの制服しか写っていなかった。
こいつは一体、何を俺に教えたいのだろうか。
「制服しか写ってねーじゃん」
「そう! でもね、先輩と私の制服がくっついてるの」
「・・・はっ?」
「ゼロ距離!」
「・・・・・・」
いや、別に嫉妬とかしているわけじゃなくてだな。
普通にだ、普通に四月の言っている意味が分からなかった。
意味は分かるが、それでそこまでテンション上がるか? って話だ。
制服がくっついてゼロ距離とか、んなら俺は何回、四月とゼロ距離味わったと思ってんだ。
「羨ましい!?」
「いや、全然」
「如月くんって少し変わってるよね」
「は? 俺じゃなくて四月が変わってるんだからな?」
「私は正常だよ! 普通だよ! ノーマルだよ!」
「あーはいはい、分かった分かった」
俺はそんな感じで、適当にあしらう。
すると、四月は俺の前の席に座ってきた。
「なんだよ、居座るのかよ」
「昼休みなんだから別にいいじゃん! それと、如月くんにお願いがあるの!」
すると、四月は俺の机を叩きながら、そんな事を言ってきた。
なんだ? またどっか行こうとか、そんな話か。
「断るけど、一応聞いておこうか」
「如月くんに拒否権はないよ!」
「それが人にものを頼む態度かよ・・・」
「私と如月くんの仲じゃ~ん!」
そう言って俺の手を握ってくる四月。
そのセリフでこの行為されると、本当勘違いするからな。
俺もそうだが、周りの奴らも・・・。
ここ最近だが、クラスの男子からちょいちょい同じことを聞かれる。
『四月と付き合っているのか?』
答えはノーだ。
毎回、インターバル0秒で答えている。
今日も2人に聞かれ、否定したばっかりだと言うのに、昼休みに俺の教室にきてはしゃぐ四月。
制服0距離のどうでもいい報告も、周りから見たら、何かしら可愛い物や流行の物を見せているのだろうとか思うだろう。
そして、先程の発言に手を握る行為。
こんなん付き合ってますよって自分から言っているようなものだ。
実際は付き合ってないんだが。
四月と俺の関係性が仲が良いのかは分からないか、それなりに絡むと、こいつは人との距離が近くなる気がする。
他の男と絡んでる所をあまり見ないからなんとも言えないが、現にこうやって手を握ってきているし。
それが四月の女子としての計算なのか、はたまた天然ボケかまして素でやっているのか。おそらく後者だと思うが。
自覚がないと分かっているからこそ、その分破壊力も凄まじい。
「四月、お前近い・・・」
「え? そんな臭うかな・・・?」
そう言って、自分の制服の臭いを嗅ぎ出す四月。
まぁ、今の俺の一言で察してくれるはずがない事は分かっていたよ・・・。
「バカ、ちげぇよ」
「4限、体育だったからさ~」
「そんな事はどうでもいいんだけど、教室で手なんか握ってくるなよ」
「あれれ~!? 如月くんもしかして照れちゃってる~!?」
ニヤニヤして言ってくる四月を殴りたい気持ちを抑える。
正直、俺個人的には嫌ではないが、四月の事を考えるとよろしくない案件だ。
マジで俺達が付き合ってるって本格的な噂になれば、今まで順調にいっていた先輩との関係性も壊し兼ねない。
俺の焦りとは対照的に、四月はそんな事を気にしてる様子は全くなかった。
「うっせ。全然そんなんじゃねーからな」
「釣れないな~。でさでさ! またちょっとお菓子作りしたいから如月くんの家に行きたいの」
「またうちか? 自分の家でやれよ」
「感想とか聞きたいんだよ~。今度はちゃんとお財布持ってくもん!」
めんどくさいとは思ったが、逆にこれはチャンスだとも思った。
四月に、今の現状を伝えられるチャンスだ。
俺達が周りからカップルと思われていること、だからしばらく2人で話したりするのはやめようと。
「・・・わかった。後でメッセ飛ばしてくれ」
「了解であります!」
敬礼ポーズをしながらウインクしてくる四月を見ながら、俺は頭を悩ませているのだった。
・
家の鍵を開け入ろうとするが、その前に俺の横を通り過ぎて家の中に入る奴が1人。
「お邪魔しまーす!」
「家主より先に入るんじゃねぇよ」
「レディーファースト! そしてボーイセカンドだよ!」
「んな言葉聞いたことないし、レディーの反対はジェントルマンだからな」
そんな俺の言葉を聞かずして、四月はスーパーの袋を手に持ってキッチンへと向かっていった。
俺も、その後を気怠げについて行く。
全く遠慮なくキッチンに材料を広げて、調理を開始しようとしている。
まあ、そこら辺は気にはしていないが。冷蔵庫から飲み物を取り出しコップに注ぐ。
「四月、お前も何か飲むか?」
「いつもので!」
「はいよ」
俺はミルクティーをコップに注ぎ、四月に渡した。
飲み物を聞くと、何かとミルクティーと言ってきていたので、いつものと言われても分かった。
四月は自宅から持ってきたであろう、エプロンを身にまとい、普段は2本で結んでいる髪を後ろで1本にして結わいていた。
慣れた手つきで調理をしていく四月。
俺は一切手伝ったりはしない。
素人が割って入っても、作業スピードや精度が落ちるだけだろうしな。
のんびりとソファーに座ってネットサーフィンでもしてるか・・・っと思ったが、今日は俺としても四月に目的があった。
「なあ、四月」
「ん~? なにー?」
俺の方は一切見ず、手を動かしながら返事をしてくる。
こーゆー所、器用だよなこいつ。って感心している場合じゃない。
俺は言葉を続けた。
「最近の俺と四月の関係性って、周りからどう見られてるか知ってっか?」
「ううん、全然。ていうか何の話?」
「最近、やたらとお前と付き合ってるんじゃないかって疑いをかけられてんだよ」
「誰が?」
「だから、お前と俺だよ」
だが、その言葉を聞いても、四月は何も動揺する素振りは一切見せず、相変わらずいつものテンションで俺に話しかけてくる。
「カップルってなんだかドキドキするねっ!」
四月は、本当に何も分かっていない様子だった。
俺は少し、ピリついた雰囲気を出す為に、あえて冷たく言うようにした。
「バカ、俺とお前がカップルに見られるってなると、他でもないお前自身が都合悪くなるんだよ」
「へ? なんで?」
先程とは違い、今度は俺の方を見てくる四月。
だが、まだピンとはきていない様子で、キョトンとした表情をしていた。
「もし仮に先輩がお前に恋心を抱いていたとする。でも肝心のそのお前には恋人がいる。っとなると先輩は諦めるしかなくなるだろう?」
「奪い愛。いいと思います!」
「んな昼ドラみたいなのはやめろ。一般的な思考である話をしろ」
「うん・・・」
俺のピリついた雰囲気を感じとってくれたのか、次第に四月自身のテンションも下がっていくのが分かった。
「逆に、恋人がいる相手に積極的にアプローチをかけられても、軽い女だと思われる可能性が高い。先輩の事、本気なんだろ?」
「うん」
その返答に少し心が痛んだが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
俺は四月に対して、言葉を続ける。
「だから、そんな噂が立ってる以上、今日みたいに学校で2人で居たりするとまずいんだよ。本当に付き合ってるって思われかねない」
「・・・」
「それなりに噂になってるのは、この際しょうがない。俺ももっと危機感を持てばよかった、すまん。だから俺達がやるべき事は、これ以上、噂が大きくならないようにする事。理解したか?」
「・・・・・・」
四月は返事をしなかったが、その暗い表情が、しっかりと理解してくれたと教えてくれた。
「だから、もう学校で俺と絡むな。それは四月の為でもあるんだから」
「・・・わかった」
四月は力なくそう答える。
先輩と付き合いたいと本気で思ってるからこそ、その希望や願いが遠のいている現実を知って、受け止めきれていないのだろう。
だが、まだ遅くはない。
巻き返しはできるだろう。
お前の行動1つで何度だってやり直せるんだ。
落ち込む四月の隣まで行き、頭をポンと叩く。
「大丈夫だ。まだ間に合うからな」
「うん・・・」
そして四月はお菓子作りを再開させた。
「それと、俺ってクラスの連中からあまり良く思われていないから、四月自身の評価も下げない様にな」
元々友達が多いわけでもない、クラスでも陰キャラの俺だ。
だが、四月はカースト的にも上位にいる女の子。
そんな女の子が俺みたいな陰キャラと話してるだけで良く思わない輩もいる。
現に、心ない言葉をかけられた事が何度かある。
かけられたと言うよりは偶然聞いてしまったと言った方が正しいか。
俺と四月が人前で絡む事はデメリットはたくさんあってもメリットは何1つない。
恋愛相談なら、メッセージアプリでも通話でもする事ができる。
今後は、そっちの方向にシフトしていこう。
それが今できる俺としての最善策だった。
四月の、彼女の恋を実らせる為の。
このままでも別にいいんじゃないかって思う自分もいた。
このままなら、自分の都合の良い方向へ進むだろうと。
でも、俺はその道を選ばなかった。
自己犠牲でもなんでもいい。
とにかく今は、目の前の事に集中しよう。
そう、俺は決意するのだった。
早めに昼食を食べ終え、俺は机に突っ張って眠っていた。
無駄な思考を排除して、1人の時間を過ごす。
たまにはこんな昼休みの過ごし方もいいだろう。
うん、悪くはないな。
「ちょっとちょっと、如月くん! これ見てよ!」
おい、1人の時間を過ごすって演出したばっかじゃねえか。
なんだ? むしろそれがお約束かなんかなんですかね?
俺の1人で過ごす時間は、ほんの数分で終わってしまった。
「あ~、可愛いよ可愛い」
「違うよ、そんなんじゃないし。ってかこっち見てないし!」
顔を見なくとも、今頃は膨れっ面でもかましてるんだろうな、とは思う。
渋々だが、上体を起こして四月を見る。
俺の予想通り、ミカン2つ入れてるんじゃないかってくらいの膨れっ面だった。
「はいはい。んで、何の用だ?」
「これっ!」
すると四月は、俺にスマホの画面を見せてきた。
そこには、四月の意中の先輩と四月が、2人で写っているツーショットの画像が映し出されていた。
ほう、もうそんな仲にまで進展してんのか。
「ほう、良かったじゃねーか」
「うん! それに見てここ! ここね、ここ!」
四月は画像を拡大させ、さらによく見せてくる。
だが、よく見てもただの制服しか写っていなかった。
こいつは一体、何を俺に教えたいのだろうか。
「制服しか写ってねーじゃん」
「そう! でもね、先輩と私の制服がくっついてるの」
「・・・はっ?」
「ゼロ距離!」
「・・・・・・」
いや、別に嫉妬とかしているわけじゃなくてだな。
普通にだ、普通に四月の言っている意味が分からなかった。
意味は分かるが、それでそこまでテンション上がるか? って話だ。
制服がくっついてゼロ距離とか、んなら俺は何回、四月とゼロ距離味わったと思ってんだ。
「羨ましい!?」
「いや、全然」
「如月くんって少し変わってるよね」
「は? 俺じゃなくて四月が変わってるんだからな?」
「私は正常だよ! 普通だよ! ノーマルだよ!」
「あーはいはい、分かった分かった」
俺はそんな感じで、適当にあしらう。
すると、四月は俺の前の席に座ってきた。
「なんだよ、居座るのかよ」
「昼休みなんだから別にいいじゃん! それと、如月くんにお願いがあるの!」
すると、四月は俺の机を叩きながら、そんな事を言ってきた。
なんだ? またどっか行こうとか、そんな話か。
「断るけど、一応聞いておこうか」
「如月くんに拒否権はないよ!」
「それが人にものを頼む態度かよ・・・」
「私と如月くんの仲じゃ~ん!」
そう言って俺の手を握ってくる四月。
そのセリフでこの行為されると、本当勘違いするからな。
俺もそうだが、周りの奴らも・・・。
ここ最近だが、クラスの男子からちょいちょい同じことを聞かれる。
『四月と付き合っているのか?』
答えはノーだ。
毎回、インターバル0秒で答えている。
今日も2人に聞かれ、否定したばっかりだと言うのに、昼休みに俺の教室にきてはしゃぐ四月。
制服0距離のどうでもいい報告も、周りから見たら、何かしら可愛い物や流行の物を見せているのだろうとか思うだろう。
そして、先程の発言に手を握る行為。
こんなん付き合ってますよって自分から言っているようなものだ。
実際は付き合ってないんだが。
四月と俺の関係性が仲が良いのかは分からないか、それなりに絡むと、こいつは人との距離が近くなる気がする。
他の男と絡んでる所をあまり見ないからなんとも言えないが、現にこうやって手を握ってきているし。
それが四月の女子としての計算なのか、はたまた天然ボケかまして素でやっているのか。おそらく後者だと思うが。
自覚がないと分かっているからこそ、その分破壊力も凄まじい。
「四月、お前近い・・・」
「え? そんな臭うかな・・・?」
そう言って、自分の制服の臭いを嗅ぎ出す四月。
まぁ、今の俺の一言で察してくれるはずがない事は分かっていたよ・・・。
「バカ、ちげぇよ」
「4限、体育だったからさ~」
「そんな事はどうでもいいんだけど、教室で手なんか握ってくるなよ」
「あれれ~!? 如月くんもしかして照れちゃってる~!?」
ニヤニヤして言ってくる四月を殴りたい気持ちを抑える。
正直、俺個人的には嫌ではないが、四月の事を考えるとよろしくない案件だ。
マジで俺達が付き合ってるって本格的な噂になれば、今まで順調にいっていた先輩との関係性も壊し兼ねない。
俺の焦りとは対照的に、四月はそんな事を気にしてる様子は全くなかった。
「うっせ。全然そんなんじゃねーからな」
「釣れないな~。でさでさ! またちょっとお菓子作りしたいから如月くんの家に行きたいの」
「またうちか? 自分の家でやれよ」
「感想とか聞きたいんだよ~。今度はちゃんとお財布持ってくもん!」
めんどくさいとは思ったが、逆にこれはチャンスだとも思った。
四月に、今の現状を伝えられるチャンスだ。
俺達が周りからカップルと思われていること、だからしばらく2人で話したりするのはやめようと。
「・・・わかった。後でメッセ飛ばしてくれ」
「了解であります!」
敬礼ポーズをしながらウインクしてくる四月を見ながら、俺は頭を悩ませているのだった。
・
家の鍵を開け入ろうとするが、その前に俺の横を通り過ぎて家の中に入る奴が1人。
「お邪魔しまーす!」
「家主より先に入るんじゃねぇよ」
「レディーファースト! そしてボーイセカンドだよ!」
「んな言葉聞いたことないし、レディーの反対はジェントルマンだからな」
そんな俺の言葉を聞かずして、四月はスーパーの袋を手に持ってキッチンへと向かっていった。
俺も、その後を気怠げについて行く。
全く遠慮なくキッチンに材料を広げて、調理を開始しようとしている。
まあ、そこら辺は気にはしていないが。冷蔵庫から飲み物を取り出しコップに注ぐ。
「四月、お前も何か飲むか?」
「いつもので!」
「はいよ」
俺はミルクティーをコップに注ぎ、四月に渡した。
飲み物を聞くと、何かとミルクティーと言ってきていたので、いつものと言われても分かった。
四月は自宅から持ってきたであろう、エプロンを身にまとい、普段は2本で結んでいる髪を後ろで1本にして結わいていた。
慣れた手つきで調理をしていく四月。
俺は一切手伝ったりはしない。
素人が割って入っても、作業スピードや精度が落ちるだけだろうしな。
のんびりとソファーに座ってネットサーフィンでもしてるか・・・っと思ったが、今日は俺としても四月に目的があった。
「なあ、四月」
「ん~? なにー?」
俺の方は一切見ず、手を動かしながら返事をしてくる。
こーゆー所、器用だよなこいつ。って感心している場合じゃない。
俺は言葉を続けた。
「最近の俺と四月の関係性って、周りからどう見られてるか知ってっか?」
「ううん、全然。ていうか何の話?」
「最近、やたらとお前と付き合ってるんじゃないかって疑いをかけられてんだよ」
「誰が?」
「だから、お前と俺だよ」
だが、その言葉を聞いても、四月は何も動揺する素振りは一切見せず、相変わらずいつものテンションで俺に話しかけてくる。
「カップルってなんだかドキドキするねっ!」
四月は、本当に何も分かっていない様子だった。
俺は少し、ピリついた雰囲気を出す為に、あえて冷たく言うようにした。
「バカ、俺とお前がカップルに見られるってなると、他でもないお前自身が都合悪くなるんだよ」
「へ? なんで?」
先程とは違い、今度は俺の方を見てくる四月。
だが、まだピンとはきていない様子で、キョトンとした表情をしていた。
「もし仮に先輩がお前に恋心を抱いていたとする。でも肝心のそのお前には恋人がいる。っとなると先輩は諦めるしかなくなるだろう?」
「奪い愛。いいと思います!」
「んな昼ドラみたいなのはやめろ。一般的な思考である話をしろ」
「うん・・・」
俺のピリついた雰囲気を感じとってくれたのか、次第に四月自身のテンションも下がっていくのが分かった。
「逆に、恋人がいる相手に積極的にアプローチをかけられても、軽い女だと思われる可能性が高い。先輩の事、本気なんだろ?」
「うん」
その返答に少し心が痛んだが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
俺は四月に対して、言葉を続ける。
「だから、そんな噂が立ってる以上、今日みたいに学校で2人で居たりするとまずいんだよ。本当に付き合ってるって思われかねない」
「・・・」
「それなりに噂になってるのは、この際しょうがない。俺ももっと危機感を持てばよかった、すまん。だから俺達がやるべき事は、これ以上、噂が大きくならないようにする事。理解したか?」
「・・・・・・」
四月は返事をしなかったが、その暗い表情が、しっかりと理解してくれたと教えてくれた。
「だから、もう学校で俺と絡むな。それは四月の為でもあるんだから」
「・・・わかった」
四月は力なくそう答える。
先輩と付き合いたいと本気で思ってるからこそ、その希望や願いが遠のいている現実を知って、受け止めきれていないのだろう。
だが、まだ遅くはない。
巻き返しはできるだろう。
お前の行動1つで何度だってやり直せるんだ。
落ち込む四月の隣まで行き、頭をポンと叩く。
「大丈夫だ。まだ間に合うからな」
「うん・・・」
そして四月はお菓子作りを再開させた。
「それと、俺ってクラスの連中からあまり良く思われていないから、四月自身の評価も下げない様にな」
元々友達が多いわけでもない、クラスでも陰キャラの俺だ。
だが、四月はカースト的にも上位にいる女の子。
そんな女の子が俺みたいな陰キャラと話してるだけで良く思わない輩もいる。
現に、心ない言葉をかけられた事が何度かある。
かけられたと言うよりは偶然聞いてしまったと言った方が正しいか。
俺と四月が人前で絡む事はデメリットはたくさんあってもメリットは何1つない。
恋愛相談なら、メッセージアプリでも通話でもする事ができる。
今後は、そっちの方向にシフトしていこう。
それが今できる俺としての最善策だった。
四月の、彼女の恋を実らせる為の。
このままでも別にいいんじゃないかって思う自分もいた。
このままなら、自分の都合の良い方向へ進むだろうと。
でも、俺はその道を選ばなかった。
自己犠牲でもなんでもいい。
とにかく今は、目の前の事に集中しよう。
そう、俺は決意するのだった。
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