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キミに溺れる
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『お昼はご飯持って屋上に来て』
朝一からそう水無月から連絡があった。
一緒に昼を食べようって事だと思うが、過去に何回かは四月発信で3人で一緒に食べた事はあったが、水無月から誘われた事はなかった。
今回はなぜ四月発信ではなく水無月からだったのかが疑問に思ったが、それは行けば分かる事だろうと思い、俺はスマホをカバンにしまった。
授業中にふと、窓の外を見ると別のクラスが体育の授業を受けていた。
そこには元気にはしゃぐ四月の姿があった。
周りの生徒達と仲よさそうにボールを投げあっている。
1人、1人、また1人とどんどん四月の元へと人が集まってくる。
なんだかんだ言いながら四月はクラスの人気者なんだなって再認識した。
俺とは正反対のその姿に、思わず目を背けてしまった。
朝っぱらからこんなネガティブな思考を巡らせて、ため息しか出てこなかった。
「バカバカしい・・・」
自分に向けたのか、はたまた他人に向けた言葉なのかは分からないが、そんな毒のある言葉をつい呟いてしまった。
俺はそんな思考を忘れる為に授業に集中し直す。
もうそろそろテストを控えてるから気を引き締めないとな。
俺は置いてあったシャーペンを手に持ち、ノートにスラスラと字を書き始めた。
・
4限目の授業が終わり、俺は登校途中に買っておいたパンの入った袋を持って1人、屋上へと向かった。
錆びた扉を少し力を入れて押して開けると、まだ2人は到着していない様子だった。
俺はいつも座っているベンチに腰をかけ、パンを取り出して袋を開封して食べていく。
買ったパンはカレーパンとコッペパンだ。
食に対してそこまで執着がない為、こんな安上がりな物で十分だった。
1人黙々と食べていると、屋上の扉が開かれた。
やっと来たかと思い扉の方へ向くと、そこには四月の姿が見当たらなかった。
代わりにいたのは、連絡で呼び出した水無月だった。
「遅いかったな」
「ちょっとお花摘んでたから」
「あっそ」
俺はそんな気のない返事をして、パンを食べるのを再開した。
それを見て、水無月を持参していたお弁当箱を開けていただきますと言って食べ始めた。
しばらくしてから、俺は気になった事を水無月に聞くことにした。
「そういや、四月は一緒じゃないのか?」
「・・・七は先輩と一緒にご飯だよ」
水無月は淡々とそう答えた。
だが、俺にとっては多少なり響くボディーブローを食らった感覚だった。
ますます順調にいっている2人。
それは四月にとって良い事で、望んでいた事で、俺もそうなるように協力していて。
「聞いたのはあんただからね。あたしは悪くないからね」
「別に、俺は至って冷静だ」
「食べ終わったパンの袋食べてる人が何言ってるの?」
「へ・・・?」
水無月に指摘され気がついたが、俺は確か指摘通り、食べ終わったパンの袋をかじっていた。
俺は水無月に返す言葉を失い、何事もなかったかのように振舞って、もう1つのパンの袋を開けて食べ始める。
「まあ、あんたの気持ち、分からなくもないよ」
すると、不意に水無月がそんな言葉を零してきた。
その言葉に俺は水無月をつい見てしまった。
その表情はどこか悲しそうで・・・。
「好きな人に振り向いてもらえない辛さは、あたしも分かるから」
「・・・・・・」
「苦しくて、モヤモヤして、悲しくて、切ないよね」
水無月のその言葉に俺は胸が締め付けられる様な痛みを感じた。
改めて言葉にされて自覚させられると、なんかこう・・・精神的にくるものがある。
心がドス黒い感情で埋め尽くされる感覚。
その気持ちはもう、自分1人では抑えられない程にまで大きくなっていた。
「・・・けど、それを自分1人でどうする事もできないって、本当子供だよな、俺って」
力なく、そんな言葉を零す。
自分の感情をまともにコントロール出来ない。
ましてや、この気持ちを抑え込むのにどれだけ水無月に助けられてきたか。
自分で何とかできると強がっていても、結局は隣にはいつも水無月がいた。
なんて無様で滑稽なんだろうか。
「別に、子供でいいんじゃない?」
俺が俯きながら発したその言葉を水無月は否定してきた。
俺は再度、水無月を見つめた。
「あたし達って、まだ高校生じゃん? 身体的にも精神的にも、法律的にもまだ子供なんだよ」
「・・・・・・」
「だからさ、あんたは今の自分の事は子供みたいで許せないみたいに思ってるかもしれないけど、あたしはそうは思わないよ」
俺は何も言わず、ただひたすらに水無月を見つめていた。
その言葉に、その瞳に吸い込まれるように。
「だからさ、子供でいいじゃん」
「・・・けど、こんな子供じみた性格めんどくさいだろ。周りにはもっと大人びた奴らはたくさんいる」
「その人達だって、大人びてるだけで大人じゃないよ。ちょっとした事で感情が荒だって、すぐに目の前が見えなくなるような、そんなめんどくさい子供だと思うよ」
「・・・全員が全員、そうじゃないだろ」
「そうかもね。けどさ、そんな理由で自分を追い詰める必要はないって思うよ」
水無月はやっぱり強いな。
俺には到底思えない事を、言えない事を平気で言ってきやがる。
そんな水無月が羨ましく思う。
「・・・水無月はさ・・・めんどくさいとは思わないのか? 俺のこと」
「バカだとは思うけど、めんどくさいとは思ってないよ」
「・・・本当か?」
「めんどくさいとか思ってたら、あんたの感情の制御装置なんて役目、請け負ってないし」
「・・・ありがとう」
「何いきなり? 気持ち悪い」
「そりゃねぇだろ・・・」
前までは何かと反発していた気がする。
だが、今日に関してはそんな感情は湧いてこなかった。
弱音を吐く俺に、かけてくれる水無月の言葉が嬉しかった。心地よかった。
「きっとこれからも辛い事、あるよ。悲しい事だってあるよ。でも、その道をあんたは選んだから、覚悟しなよ」
先程までとは違い、今度は俺の心に重く突き刺さってくる言葉を言われた。
だが、やはり水無月はそれてだけでは終わらなかった。
「でも、苦しかったら和らげてあげる。悲しかったら笑わせてあげる。切なかったら側にいてあげる」
俺をまっすぐ見つめて優しく微笑みながらそう言う水無月。
俺は、内側から溢れ出る思いが止められなかった。
「なんでそこまですんだよ・・・」
俺は俯きながらそう言葉を零す。
何度も問いかけた言葉、そして何度も回答を貰った言葉。
その答えは毎回変わらない。
そう、今日だってきっとそうだ。
『だからいつも言ってるじゃん。七の為だから』
きっと水無月はそう言ってくる。
本当に友達想いの水無月は最高にかっこいいよな。
爪の垢でも煎じて俺に飲ませてくれよ。
すると、水無月は俺の頬に優しく触れてきた。
触れた手が冷たくて温かかった。
「一の為だよ」
水無月のその言葉に俺は言葉を失った。
不意に下の名前で呼ばれた事あるが、今まで散々四月の為だと言って言っていた水無月が、俺の為だと言ってきた。
俺が言って欲しい言葉を・・・言って欲しいタイミングで言ってくれるんだろうか。
俺はその事がまた嬉しくて涙が止められなかった。
すると、水無月は俺のおでこに自分のおでこをくっつけてきた。
「泣き虫!」
笑いながらそう呟く。
別に泣きたくて泣いたわけじゃない。
むしろ泣かせてるのは水無月だからな。
「・・・泣かせてんのはお前だろ」
俺はせめてもの思いで水無月にそう抗議する。
本当に、性別間違えてるんじゃないかってくらい水無月はカッコよかった。
「そうだね、悪いのはあたしだね。じゃあ・・・」
『責任、とるよ』
そう言って水無月は俺の頬にソッと優しく口づけをしてきた。
俺はその行為に驚き頬を染めた。
流石の水無月も恥ずかしかったのか頬を染めていた。
俺とは視線を一切合わせてくれない。
「いきなり何すんだよ・・・」
「・・・泣き止むおまじない」
「へ?」
「ほら、泣き止んだでしょ?」
水無月にそう言われ気がつくと、俺の瞳からはもう涙は出ていなかった。
本当に最後までカッコいいな水無月は。
俺は、照れくさそうに笑う彼女の表情に惹かれていく。
いつの日か彼女に言われた言葉。
『あたしに、溺れて』
きっと俺は段々と堕ちかけているのだろうと、そう感じた。
朝一からそう水無月から連絡があった。
一緒に昼を食べようって事だと思うが、過去に何回かは四月発信で3人で一緒に食べた事はあったが、水無月から誘われた事はなかった。
今回はなぜ四月発信ではなく水無月からだったのかが疑問に思ったが、それは行けば分かる事だろうと思い、俺はスマホをカバンにしまった。
授業中にふと、窓の外を見ると別のクラスが体育の授業を受けていた。
そこには元気にはしゃぐ四月の姿があった。
周りの生徒達と仲よさそうにボールを投げあっている。
1人、1人、また1人とどんどん四月の元へと人が集まってくる。
なんだかんだ言いながら四月はクラスの人気者なんだなって再認識した。
俺とは正反対のその姿に、思わず目を背けてしまった。
朝っぱらからこんなネガティブな思考を巡らせて、ため息しか出てこなかった。
「バカバカしい・・・」
自分に向けたのか、はたまた他人に向けた言葉なのかは分からないが、そんな毒のある言葉をつい呟いてしまった。
俺はそんな思考を忘れる為に授業に集中し直す。
もうそろそろテストを控えてるから気を引き締めないとな。
俺は置いてあったシャーペンを手に持ち、ノートにスラスラと字を書き始めた。
・
4限目の授業が終わり、俺は登校途中に買っておいたパンの入った袋を持って1人、屋上へと向かった。
錆びた扉を少し力を入れて押して開けると、まだ2人は到着していない様子だった。
俺はいつも座っているベンチに腰をかけ、パンを取り出して袋を開封して食べていく。
買ったパンはカレーパンとコッペパンだ。
食に対してそこまで執着がない為、こんな安上がりな物で十分だった。
1人黙々と食べていると、屋上の扉が開かれた。
やっと来たかと思い扉の方へ向くと、そこには四月の姿が見当たらなかった。
代わりにいたのは、連絡で呼び出した水無月だった。
「遅いかったな」
「ちょっとお花摘んでたから」
「あっそ」
俺はそんな気のない返事をして、パンを食べるのを再開した。
それを見て、水無月を持参していたお弁当箱を開けていただきますと言って食べ始めた。
しばらくしてから、俺は気になった事を水無月に聞くことにした。
「そういや、四月は一緒じゃないのか?」
「・・・七は先輩と一緒にご飯だよ」
水無月は淡々とそう答えた。
だが、俺にとっては多少なり響くボディーブローを食らった感覚だった。
ますます順調にいっている2人。
それは四月にとって良い事で、望んでいた事で、俺もそうなるように協力していて。
「聞いたのはあんただからね。あたしは悪くないからね」
「別に、俺は至って冷静だ」
「食べ終わったパンの袋食べてる人が何言ってるの?」
「へ・・・?」
水無月に指摘され気がついたが、俺は確か指摘通り、食べ終わったパンの袋をかじっていた。
俺は水無月に返す言葉を失い、何事もなかったかのように振舞って、もう1つのパンの袋を開けて食べ始める。
「まあ、あんたの気持ち、分からなくもないよ」
すると、不意に水無月がそんな言葉を零してきた。
その言葉に俺は水無月をつい見てしまった。
その表情はどこか悲しそうで・・・。
「好きな人に振り向いてもらえない辛さは、あたしも分かるから」
「・・・・・・」
「苦しくて、モヤモヤして、悲しくて、切ないよね」
水無月のその言葉に俺は胸が締め付けられる様な痛みを感じた。
改めて言葉にされて自覚させられると、なんかこう・・・精神的にくるものがある。
心がドス黒い感情で埋め尽くされる感覚。
その気持ちはもう、自分1人では抑えられない程にまで大きくなっていた。
「・・・けど、それを自分1人でどうする事もできないって、本当子供だよな、俺って」
力なく、そんな言葉を零す。
自分の感情をまともにコントロール出来ない。
ましてや、この気持ちを抑え込むのにどれだけ水無月に助けられてきたか。
自分で何とかできると強がっていても、結局は隣にはいつも水無月がいた。
なんて無様で滑稽なんだろうか。
「別に、子供でいいんじゃない?」
俺が俯きながら発したその言葉を水無月は否定してきた。
俺は再度、水無月を見つめた。
「あたし達って、まだ高校生じゃん? 身体的にも精神的にも、法律的にもまだ子供なんだよ」
「・・・・・・」
「だからさ、あんたは今の自分の事は子供みたいで許せないみたいに思ってるかもしれないけど、あたしはそうは思わないよ」
俺は何も言わず、ただひたすらに水無月を見つめていた。
その言葉に、その瞳に吸い込まれるように。
「だからさ、子供でいいじゃん」
「・・・けど、こんな子供じみた性格めんどくさいだろ。周りにはもっと大人びた奴らはたくさんいる」
「その人達だって、大人びてるだけで大人じゃないよ。ちょっとした事で感情が荒だって、すぐに目の前が見えなくなるような、そんなめんどくさい子供だと思うよ」
「・・・全員が全員、そうじゃないだろ」
「そうかもね。けどさ、そんな理由で自分を追い詰める必要はないって思うよ」
水無月はやっぱり強いな。
俺には到底思えない事を、言えない事を平気で言ってきやがる。
そんな水無月が羨ましく思う。
「・・・水無月はさ・・・めんどくさいとは思わないのか? 俺のこと」
「バカだとは思うけど、めんどくさいとは思ってないよ」
「・・・本当か?」
「めんどくさいとか思ってたら、あんたの感情の制御装置なんて役目、請け負ってないし」
「・・・ありがとう」
「何いきなり? 気持ち悪い」
「そりゃねぇだろ・・・」
前までは何かと反発していた気がする。
だが、今日に関してはそんな感情は湧いてこなかった。
弱音を吐く俺に、かけてくれる水無月の言葉が嬉しかった。心地よかった。
「きっとこれからも辛い事、あるよ。悲しい事だってあるよ。でも、その道をあんたは選んだから、覚悟しなよ」
先程までとは違い、今度は俺の心に重く突き刺さってくる言葉を言われた。
だが、やはり水無月はそれてだけでは終わらなかった。
「でも、苦しかったら和らげてあげる。悲しかったら笑わせてあげる。切なかったら側にいてあげる」
俺をまっすぐ見つめて優しく微笑みながらそう言う水無月。
俺は、内側から溢れ出る思いが止められなかった。
「なんでそこまですんだよ・・・」
俺は俯きながらそう言葉を零す。
何度も問いかけた言葉、そして何度も回答を貰った言葉。
その答えは毎回変わらない。
そう、今日だってきっとそうだ。
『だからいつも言ってるじゃん。七の為だから』
きっと水無月はそう言ってくる。
本当に友達想いの水無月は最高にかっこいいよな。
爪の垢でも煎じて俺に飲ませてくれよ。
すると、水無月は俺の頬に優しく触れてきた。
触れた手が冷たくて温かかった。
「一の為だよ」
水無月のその言葉に俺は言葉を失った。
不意に下の名前で呼ばれた事あるが、今まで散々四月の為だと言って言っていた水無月が、俺の為だと言ってきた。
俺が言って欲しい言葉を・・・言って欲しいタイミングで言ってくれるんだろうか。
俺はその事がまた嬉しくて涙が止められなかった。
すると、水無月は俺のおでこに自分のおでこをくっつけてきた。
「泣き虫!」
笑いながらそう呟く。
別に泣きたくて泣いたわけじゃない。
むしろ泣かせてるのは水無月だからな。
「・・・泣かせてんのはお前だろ」
俺はせめてもの思いで水無月にそう抗議する。
本当に、性別間違えてるんじゃないかってくらい水無月はカッコよかった。
「そうだね、悪いのはあたしだね。じゃあ・・・」
『責任、とるよ』
そう言って水無月は俺の頬にソッと優しく口づけをしてきた。
俺はその行為に驚き頬を染めた。
流石の水無月も恥ずかしかったのか頬を染めていた。
俺とは視線を一切合わせてくれない。
「いきなり何すんだよ・・・」
「・・・泣き止むおまじない」
「へ?」
「ほら、泣き止んだでしょ?」
水無月にそう言われ気がつくと、俺の瞳からはもう涙は出ていなかった。
本当に最後までカッコいいな水無月は。
俺は、照れくさそうに笑う彼女の表情に惹かれていく。
いつの日か彼女に言われた言葉。
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きっと俺は段々と堕ちかけているのだろうと、そう感じた。
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