恋愛相談から始まる恋物語

菜の花

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デート 中編

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前では先輩と六日が、後ろで俺と四月が歩いていた。

組み合わせ的には違う気がしたが、人混みが多いかつ、俺と四月は今日の話を聞かされていないので場所が分からない。

そうなると、この並びでも不思議ではなかった。

先輩と六日、は何やら楽しそうに話をしていて、俺はその様子を後ろからただただ見ていた。

すると、俺の服が引っ張られた。

もしかしなくても、犯人は隣にいる四月だろう。

「なんだ?」

俺は、四月の方に顔は向けずに、言葉だけで反応した。

すると、四月は小さく言葉を零した。

「・・・なんで、さっきは庇ってくれたの?」

「庇う?」

「うん。手繋いだのは、私の勝手な判断だったのに」

その事か。

それは、はぐれたらめんどくさい案件になるのは、分かりきった事だ。

その配慮をしたことによって、四月が1人責められるのはおかしいだろと思った。

責められるのなら、俺だって責めろよって感じにな。

「別に、大した理由じゃない」

「ふ~ん。ば~か!」

「は?」

今の流れからの罵倒は、本当に意味が分からなかったが、何やら楽しそうにしているので、その笑顔に免じて許してあげる事にした。

しばらく歩みを進めていると、目の前に大きな建物がちらほら見えてきた。

それを見れば、目的の場所がどんな場所なのかは直ぐに分かった。

「遊園地かよ」

「何? 不満?」

「別にそうとは言ってないだろ?」

「語尾が気怠げだった」

「ソンナコトナイヨ?」

「なんで片言なの?」

まあ、遊園地自体は悪くもないし好きだが、流石にこの人混みの量がね・・・。

本当しんどいんだよ。

人の流れだけで酔いそうだからな。

「じゃあこれ、みんなの分ね」

先輩がそう言って、俺達に渡してきたのは入場する為に必要なチケットだった。

前回の動物園もそうだったが、本当この人は用意周到だなと感じた。

本来であれば、年下である俺らの役目なのだろうが、こういった気配りができる所が、モテる秘訣なんだろうなと。

四月が惚れた要素の1つなんだろうなと思った。

事前に先輩にチケットを買っておいて貰ったおかげで、すんなりと中に入ることができた。

そして、まずどこに向かおうかという話し合いになる。

「みんなはどこか行きたい所はあるかい?」

「あたしはどこでも」

「俺も特にないです」

「私は焼きそば食べたい!」

「まずはアトラクションの話だろうが、バカ」

相変わらず、食い物を欲するスタンスは変わらないのな。

それにせっかく遊園地に来て、一番最初にする事が焼きそば食べるってどうなんだ? と思わずツッコんでしまう。

「お腹が空くのは、人間のごく自然な欲求でしょ!? 悪いのは私じゃないもん!」

四月バカらしい、見事なまでの開き直りだが、やっぱりそんな四月を見て懐かしさを感じてしまう。

あの日のあの時にあの場所で、言った言葉は違えどニュアンスや雰囲気は似ている。

「相変わらずだなお前って」

「ふんだ! 如月くんが分からず屋なだけだもん!」

俺と四月が言い合いをしてる所に、俺の足を踏んづけながら六日が割って入ってきた。

普通に痛いからやめろよな?

「2人のよく分からないやり取り見る為にここにきたんじゃないから、そろそろ落ち着いてよ」

「六日はまず足踏むなよ」

「あんたはうっさい」

「・・・慈悲もクソもないのかよ」

朝から何故か不機嫌なお嬢様らん。

それとは対照的に、四月は明るかった。

まるで月と太陽の様な、正反対の位置付けのようだった。

結局、まずはコーヒーカップに乗ることになった。

いつの日か、四月と一緒に行った遊園地への取材旅を思い出す。

真ん中のハンドルを回せば回転速度が速くなることは、他でもない、四月から教わったことだった。

先輩が先に乗り込んで、次に四月が乗り込む。

その後に俺が乗り込もうとしたが、その前に六日が割って入ってきた。

前に教わったように、俺はハンドルを思いっきり回転させた。

終わってみて感じたことは、前に四月のきた遊園地のコーヒーカップの方が、速さも恐さもあった気がした。

元々、小さい子供向けに作られたようなもんだから、そこら辺は自重しているんだろうが、少し物足りなさも感じていた。

「前の時の方が恐くなかった?」

四月もそう感じたのか、俺に尋ねてきた。

4人も乗れば遠心力でどうにかなると思っていたが、そうでもなかったらしい。

逆に重すぎたのだろか?

「それは俺も思った。ちょっと物足りない感じがした」

「だよねだよね! 前回の方がもっとグルグルグル~ってしてたよね!」

迫力は劣るものの、それでも楽しかったのか四月は明るかった。

そしてそんな時に、後ろからど突かれてしまう。

犯人はまたしても六日だった。

ってか、本当朝からなんでそんな機嫌悪いんだよ。

「・・・痛いだろーが」

「後ろ詰まってるんだからはやく歩いてよ」

「言葉で言え言葉で」

「クズ」

「・・・本当、今日は容赦ねーのな」

俺は言われるがままに早足で出口へと向かった。

4人が集まり、始まったのは次に何の乗り物に乗るかだ。

俺と六日は相変わらずなんでもいいと答える。

四月も相変わらず食べ物の名前を挙げていた。

「次はジェットコースターとかどうかな?」

先輩が乗り物を指差して提案してきた。

それを見ると、なかなかに絶叫しそうな絶叫系だった。

四月は特に問題なさそうな表情をしていたが、案の定、四月のヤツは表情がぎこちないモノとなっていた。

「四月、お前アレ無理だろ?」

「・・・もち、いける!」

「全然もちって顔色してないからな?」

「絶叫しない絶叫系でしょ? 多分あれって・・・」

「いや、それなりに絶叫しそうな絶叫系だろ」

場の雰囲気を壊したくない気持ちは分かるが、変に頑張って体調を崩されたりしたら、そっちの方が心配になるからな。

あまり無理はして欲しくはなかった。

「七、絶叫系苦手なのかい?」

「いや、苦手って程でもないんですけど、心臓がふわっとする感覚があまり得意では・・・」

「・・・そうだったんだ。ごめんね、リサーチ不足で」

「い、いや! 先輩が乗りたいなら、私も乗ります!」

先輩が申し訳なさそうに呟くと、四月は先輩の為を思ってのことだろう、女を見せつけていた。

流石の先輩も、その返答には驚いていた様子だった。

正直俺も驚いていた。

「でも、得意じゃないだよね?」

「でも、先輩は好きなんですよね?」

「まあ、そうだね」

「好きな人の好きな事は、私も好きになりたいです!」

俺の目の前で、四月がまた1つ成長した姿を見せてきた。

自分の好きな事、好きな物を共有してくれる事は、付き合っていく上で大切な事だろう。

苦手な物に挑戦してもらうのは心苦しい気持ちはあるだろうが、それを言われて嬉しく思わないはずがないかった。

現に、先輩は頬を赤らめて驚いていた。

気がつくと四月は、俺が思っていた以上にちゃんと青春してて、先輩の彼女をやっていた。

「・・・気持ちは嬉しいけど、本当に大丈夫?」

「もちです!」

満面の笑みを浮かべ、両手でガッツポーズをする四月。

ここまで彼女にさせといて断るなんて、普通の彼氏ならしないだろう。

だから、例外なく先輩は四月の申し入れを受け入れた。

先輩と四月、俺と六日がそれぞれ隣同士になり、ジェットコースターに乗り込んだ。

せめてもの配慮として、俺と六日のペアが前に乗る事にした。

ゆっくりと上昇したら、頂点に着いた瞬間に一気に降下する。

その迫力よりも、すぐさま聞こえてきた四月の悲鳴の方が、よっぽど心臓に悪かった。









「ちょっと飲み物買ってくる」

先輩はそう言って、自販機か売店を探しに走っていってしまった。

四月は、ベンチに座る六日の膝の上で、顔色を真っ青にして休んでいた。

結局のところ、四月はジェットコースターの恐怖と心臓がフワッと浮く無重力の感覚に勝ることはできずに、体調を崩してしまった。

だが、そんな四月を見て、「やっぱりな」とか「バカだな」なんて感想は一切出てこなかった。

結果的にはダメだったけど、俺にとって今の四月は、最高にカッコいい女として写っていた。

「六日~、如月くんごめんねぇ・・・」

自分から言い出した事なのに、成し遂げられなくて申し訳なく思っているのだろうが、俺はもちろんそうだが、六日の表情を見ても、そんな風に思っていないのは一目瞭然だった。

「七、最高にカッコよかったよ」

そう言って六日は、四月の頭を優しく撫でながら言葉を紡いだ。

そう言われた四月は照れたのか、頬を赤くしながらも右手でピースサインを作り俺たちに向けてきた。

「これが大天使ひまりちゃんの力だよ・・・!」

「一よりカッコよかったよ」

「おい、今この瞬間は俺は関係ないだろ・・・」

まあ、実際問題そうだから何も言えないが。

しばらくすると、先輩は水を買ってきて四月に手渡した。

四月の体調が少し良くなるまでは、休憩を取ることにした。

相変わらず四月は、六日の膝枕の上で休んでいた。

だが、先輩の姿が見当たらなかった。

少し辺りを見回すと、遠くの案内板の前に立っている姿が見えたので、俺もそこに向かった。

「次に行く場所でも考えてるんすか?」

「あ、如月くんか。いや、そういう訳でもないんだけどね・・・」

先輩はどこか苦しそうな表情を浮かべていた。

きっと、七が体調不良を起こした事を悔いているのだろう。

彼氏の立場なら、そう思うのは仕方がない事だとは思う。

立場が俺だったとしてもらそう思ったに違いない。

「別に、先輩が悪かった訳ではないと思いますけどね」

「・・・隠しきれてないか」

「むしろバレバレですかね」

先輩は困ったように笑いながら話を進めた

「七のあの言葉は嬉しかった。でも、こうなってしまったのは結局俺が許可したからなんだよ」

確かにそうかもしれないが、今先輩が取るべき行動は、悔やむ事でも自分を不甲斐なく思う事でもない。

四月の側にいて、頑張ったと褒めてあげる事だ。

「先輩が許可した事を否定すると、好きな事を共有したかった四月の考えも否定することになりますよ」

あの四月バカなりの考えや信念を持った行動は、いつも俺の想像を遥かに越えるが、それが間違っているとは思った事は一度もない。

バカでドジでマヌケでアホな四月でも、自分の貫くべき信念はしっかりと持っていて、それを先輩に否定して欲しくなかった。

「しっかりと愛されている証拠を、自ら手放そうとしないでくださいよ」

「・・・やはり如月くんは、七の事を良く理解しているんだね」

先輩はそう言って、俯いていた顔を上げて天を仰いだ。

表情は変わらず、憂いていて悲しげな表情だった。

「七と付き合って恋人同士になっても、キミから教えてもらう事が多いんだ」

「え・・・?」

「キミの言う通りだよ。ここで否定すれば、七の思いを踏みにじる事になる。でも、キミに言われるまで気がつかなかった」

普段の先輩からは想像出来ないような弱々しい声音で、俺に気持ちをぶつけてくる。

こんな先輩を見るのは初めてだった。

「恋は盲目って言うけれど、本当に視野が狭くなるよね。今の俺みたいにさ」

そう言った先輩は笑っていた。

乾いた笑い声を響かせていた。

どう見たって、無理に笑っているのは明白だった。

「僕も、そろそろ真剣に考えて覚悟を決めないとダメなんだよね。意思がブレブレ過ぎてさ」

今の話の流れからは、イマイチ理解できない内容の言葉を零す先輩。

そのセリフを言い終わると、俺の肩に手を置きながら先輩は笑ってこう言ってきた。

「戻ろっか!」

結局、先輩が何を考えて何を思っていたのかは分からない。

でも、良いことか悪いことの二択で考えた時に、良いことではないんじゃないかって気がした。

でも、そんな思考はすぐに捨てる。

先輩本人にしか分からない答えを1人で考えたって、結果が出るわけじゃない。

俺はすぐに気を取り直し、先輩と一緒に六日と四月の待つベンチへと向かっていった。
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