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デート 後編
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「七、大丈夫かい?」
「はい、もうだいぶ楽になりました」
「そっか、ごめんね。それとありがとうね!」
「・・・い、いえ」
六日の膝の上で頬を赤らめている四月と、それを見て微笑む先輩。
2人のやりとりについ頬が緩んでしまう。
「何ニヤけてんの? キモい」
「・・・本当どうしたんだよ」
そんな俺を、六日は一蹴してきた。
まったく、俺が何をしたんだって言いたくなるが、喧嘩になるのはもっとごめんなので放っておくことにする。
そんなこんなで、次はどんな行動を取るか考えている矢先だった。
今いるメンツの中で、1番の食いしん坊の腹が鳴る。
本当、前にどっかの誰かさんと一緒に来た時と同じ展開じゃねーか。
そうなると、次にソイツの取る行動は予想がつく。
「き、如月くんだよっ!」
ほらな、きたよ。責任転嫁。
絶対にくると思ったよ。
「俺が鳴らしたんなら、なんでお前がお腹抑えて顔真っ赤にしてんだ?」
「う、うっさい! お腹触ってると気持ちいいんだもん!」
「自分の肉付きがそんな気持ちいいのかデブ」
「あ~! デブって言った! デブって言った方がデブだし変態なんだからね!」
こうして俺と四月のプチ喧嘩が始まる。
そんな様子をみて、苦笑いする先輩と呆れている六日。
すると六日が、俺の首根っこを掴んで俺を無理やり遠くへ引きずっていく。
「ちょっ、六日!? 何すんだよ」
「何も分かってないバカなあんたにはお説教が必要でしょ?」
「は? なんだよそれ」
六の言っている言葉の意味が、イマイチ理解できないでいた。
しばらく歩いた所で、六日は俺から手を離す。
すると、鋭く俺を睨みつけてくる。
「七にデレデレし過ぎ、構い過ぎ、バカ、女ったらし」
「ただの八つ当たりじゃねーか」
「うるさい。でも、もう少し先輩の気持ちも考えなよ」
「先輩の、気持ち?」
六日にそう言われたが、その言葉の意味も分からないでいた。
先輩の気持ちを考えるとは何なのだろうか?
どう言う事なのだろうか?
「一は七の彼氏なの?」
「違うけど」
「七の彼氏は誰なの?」
「先輩だろ」
「つまりそういうこと」
「つまりどういうことだ?」
俺の返答を聞いて六日は、俯いてため息を零す。
そして、もう一度俺を見つめ睨みつけ、言葉を紡いだ。
「自分の彼女が他の男と仲良さそうに話してて良い気はしないのは分かるでしょ? ましてや、2人しか知らないような話とか思い出とかは、本当に今の場には要らないし必要ない情報。もっと気ぃ使えないわけ?」
六日はほぼ怒りの状態で俺に詰め寄ってくる。
だが、少なからず六日が七に妬いてると思った。
だからこんなにキレているんだと。
だが、そこを指摘した所でこの話が上手くまとまる訳はないのだが、俺もまだ若く、いきなり怒鳴りつけられた反動で頭に血が上っていた。
「そんなのただの六日の嫉妬だろ? たまたま俺と四月が仲良く話してたからって、ここまで露骨に態度変えるなよ」
「嫉妬じゃない!」
「嫉妬だろ」
お互い興奮していて収拾がついていない。
そんな俺達の様子をみて、先輩と四月が駆けつけてくる。
多少なり周りのお客さんの注目も集めてしまった。
「2人とも急にどうしたんだ?」
先輩のその問いに、俺と六日はお互い何も答えない。
お互いがお互いから視線を背ける。
そのまま理解しあえないまま、4人で行動を共にする。
お互い謝りもせず中途半端だった為、六日の隣にいるのが少し気まずく感じていた。
そうなると、俺が足を運ぶ先は自然と四月の隣にだった。
だが、それに続くように六日も俺の隣にやってくる。
それでも俺達の間に会話はない。
「気晴らしに、ここら辺でご飯にしないかい?」
先輩のその一言に、他の全員が賛同してご飯を食べる事になった。
フードコートに着き、最初に俺と六日が料理を買うことになった。
俺はパッと目についたカレーライスを食べる事にして列に並ぶ。
「私、カツカレーがいい!」
後ろから、喜びと期待で胸を膨らました様に弾んだ声音が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、そこには想像した通りの人物が立っていた。
「・・・お前、先輩と待ってたはずだろ?」
「先輩が先に選んできなよって!」
「そこは素直に受け取るんじゃなくて、一緒に待った方がポイント高いだろうが」
「・・・ハッ!」
「本当ポンコツだなお前・・・」
そんな感じで俺はシーフードカレーを頼んだ。
すると、隣で四月もシーフードカレーを頼んでいた。
理由を聞くと、なんだか美味しそうだったかららしい。
だからそういったポイントの高い行動は、俺にじゃなくて先輩にしろと何回も言ってるのにこいつは・・・。
頭の引き出しがないんじゃないかってくらい記憶力がないんだな。
俺と四月が席に戻ると、そこには既に六日が座っていて先輩の姿は見当たらなかった。
「先輩は?」
「ご飯選びに行ったよ」
「そうか」
「あんたと七に言いたい事あるんだけど」
そう言って六日は、俺と四月を交互に見る。
これは先程と同じ、六日が怒りを表している目だった。
それに今回の標的は俺と四月だった。
六日の雰囲気に気がついてるのか、四月は大人しくしている。
さすがは幼馴染といったところか。
「まず一、あんたは七の側にいないで。常にあたしの隣にいること。それと七も、先輩と行動して。さっきみたいに、一と一緒にどっか買いに行くとかダメだから」
「・・・分かった」
俯きながらそう言葉を零す四月。
一方的に投げつけられる言葉に、俺はイライラしていた。
なのでついつい言葉を荒げてしまう。
「それは六日の個人的な意見だろ。なんでそんなのに俺と四月が付き合わなきゃいけないんだ? そんな義理も義務はない」
「七と先輩が付き合ってる以上、2人の時間を優先するのは当たり前。ましてや、その関係を壊そうとするのはもっての他」
「別に俺は壊そうだなんて考えてない」
「結果的にはそうなりつつあるの」
「ふ、2人とも落ち着いてよ・・・」
俺と六日の言い合いを止めたのは四月だった。
四月は両目に涙を浮かべながら、仲裁してくれた。
それを見た俺も六日も更に気まずくなり、場の雰囲気はどんどん悪くなっていく
「六日、ごめん。私、全然気がつかなかった。だからありがとう」
「・・・分かってくれればいいよ」
2人はそう言って落ち着いていたが、俺だけは1人釈然としていなかった。
だが、ここで暗い雰囲気のままでは嫌だった為、今のこのいざこざは一旦忘れる事にしよう。
空気が悪ければ、本来楽しいはずの事も楽しめるはずがない。
先輩が戻ってくる頃には、俺たちは平然を装うことができていた。
だが、間違いなく溝は深まっていた。
別に俺の精神が壊れかけているわけでもない。
むしろ安定はしている。
それよりも今は、六日の嫉妬の方が俺のメンタルより荒れていると感じた。
その後も事ある毎に、六日が俺と四月をくっつけさせない様にあえて間に入ってきたり、話題の中に入ってくる。
そのことがいちいちめんどくさく感じ、俺は六日の思惑通り、四月と距離を置くことにした。
先輩と四月が仲良く話しながら歩くのを見つめながら、俺と六日も隣同士で歩く。
いつかの登校中の風景を感じさせる印象だった。
そして今は最後の乗り物、観覧車へと俺達は足を運んでいた。
高いところ苦手だが、最後くらいは別に良いだろうと思い賛同した。
その時は四月は不安げな表情を浮かべていた。
この中で俺が高いところが苦手なのを知ってるのは、四月だけだったからだ。
でも、俺自身が乗ると言ったから何も言ってこなかった。
「今日はやけに威圧的だったな」
観覧車に向かう途中で、俺は六日にそう呟いた。
「あんたと七がバカなだけ」
「六日の嫉妬も大概じゃないのか?」
「・・・これが嫉妬に見えてるんなら、あんたは自意識過剰だよ」
「え?」
俺は六日のその言葉を聞いて、思わず目を見開き立ち止まった。
だが、隣を歩く六日は足を止める事なくどんどんと進んでいく。
六日の言った言葉が、頭をぐるぐると駆け巡る。
今の俺では理解しきれないその言葉は、絡みつくように頭から離れなかった。
・
4人で一緒に観覧車に乗り込む。
先輩も四月も六日も、みんな段々と高くなっていくのに興奮して楽しんでいた。
そんな中、俺はただ1人だけ外の一点を見つめていた。
『嫉妬に見えてるんなら、あんたは自意識過剰だよ』
六日の言ったその言葉が、未だに引っかかっていた。
六日の今までの態度が、嫉妬でないならなんだと言うのだろうか?
考えたって、答えは一向に出てこなかった。
そして、そのまま何気なく下の様子を見ると、もうかなり高い所まできていたらしく、俺の心臓の動きは一気に早くなる。
俺はすぐに下を向くのをやめた。
正面を見つめて心を落ち着かせる。
「夕陽が綺麗だね」
「ほんとだ」
先輩のその発言に六日が同調している。
こっち側は完全に真逆になってるから見えないが、先輩達はきっと、オレンジ色に輝く夕陽を見ているに違いない。
俺はこの状況じゃ、下手に動く事も出来なかったので詰みだった。
「あんたもこっちの夕陽見てみなよ! すっごい綺麗だから!」
やや興奮気味の六日が、俺に向かってそう言ってきた。
俺の肩や腕を掴み、無理矢理にこちらを向かせようと身体を動かすが、それは俺にとっては地獄そのものだった。
六日はその事を知らないし、悪気はないのは分かっている。
それだから俺も変に手を出すことはできず、目を瞑るのが精一杯だった。
身体中のいろんな所から変な汗が出てきて止まらない。
だが、そんな時だった。
「だ、ダメ・・・!!!!!」
声を上げたのは四月だった。
その声と同時に、何者かによって握られる俺の手。
ゆっくりと目を開けると、目の前には心配そうな表情を浮かべながら、俺の手を優しく握る四月の姿があった。
先輩も六日も、わけが分からないといった様子で四月の行動を見ていた。
「き、如月くんは高い所苦手だから・・・無理させちゃダメ・・・揺らしちゃダメ、なの」
弱々しくも、はっきりと四月はみんなに聞こえるようにそう言った。
いつの日か感じた、温もりと感覚を思い出す。
あの時も四月は、俺の不安を取り除こうとしてくれた。
それが、四月 七という女の子の優しさなのだ。
でも、その優しさが、彼女の罪だった。
『・・・別れよう・・・七』
「はい、もうだいぶ楽になりました」
「そっか、ごめんね。それとありがとうね!」
「・・・い、いえ」
六日の膝の上で頬を赤らめている四月と、それを見て微笑む先輩。
2人のやりとりについ頬が緩んでしまう。
「何ニヤけてんの? キモい」
「・・・本当どうしたんだよ」
そんな俺を、六日は一蹴してきた。
まったく、俺が何をしたんだって言いたくなるが、喧嘩になるのはもっとごめんなので放っておくことにする。
そんなこんなで、次はどんな行動を取るか考えている矢先だった。
今いるメンツの中で、1番の食いしん坊の腹が鳴る。
本当、前にどっかの誰かさんと一緒に来た時と同じ展開じゃねーか。
そうなると、次にソイツの取る行動は予想がつく。
「き、如月くんだよっ!」
ほらな、きたよ。責任転嫁。
絶対にくると思ったよ。
「俺が鳴らしたんなら、なんでお前がお腹抑えて顔真っ赤にしてんだ?」
「う、うっさい! お腹触ってると気持ちいいんだもん!」
「自分の肉付きがそんな気持ちいいのかデブ」
「あ~! デブって言った! デブって言った方がデブだし変態なんだからね!」
こうして俺と四月のプチ喧嘩が始まる。
そんな様子をみて、苦笑いする先輩と呆れている六日。
すると六日が、俺の首根っこを掴んで俺を無理やり遠くへ引きずっていく。
「ちょっ、六日!? 何すんだよ」
「何も分かってないバカなあんたにはお説教が必要でしょ?」
「は? なんだよそれ」
六の言っている言葉の意味が、イマイチ理解できないでいた。
しばらく歩いた所で、六日は俺から手を離す。
すると、鋭く俺を睨みつけてくる。
「七にデレデレし過ぎ、構い過ぎ、バカ、女ったらし」
「ただの八つ当たりじゃねーか」
「うるさい。でも、もう少し先輩の気持ちも考えなよ」
「先輩の、気持ち?」
六日にそう言われたが、その言葉の意味も分からないでいた。
先輩の気持ちを考えるとは何なのだろうか?
どう言う事なのだろうか?
「一は七の彼氏なの?」
「違うけど」
「七の彼氏は誰なの?」
「先輩だろ」
「つまりそういうこと」
「つまりどういうことだ?」
俺の返答を聞いて六日は、俯いてため息を零す。
そして、もう一度俺を見つめ睨みつけ、言葉を紡いだ。
「自分の彼女が他の男と仲良さそうに話してて良い気はしないのは分かるでしょ? ましてや、2人しか知らないような話とか思い出とかは、本当に今の場には要らないし必要ない情報。もっと気ぃ使えないわけ?」
六日はほぼ怒りの状態で俺に詰め寄ってくる。
だが、少なからず六日が七に妬いてると思った。
だからこんなにキレているんだと。
だが、そこを指摘した所でこの話が上手くまとまる訳はないのだが、俺もまだ若く、いきなり怒鳴りつけられた反動で頭に血が上っていた。
「そんなのただの六日の嫉妬だろ? たまたま俺と四月が仲良く話してたからって、ここまで露骨に態度変えるなよ」
「嫉妬じゃない!」
「嫉妬だろ」
お互い興奮していて収拾がついていない。
そんな俺達の様子をみて、先輩と四月が駆けつけてくる。
多少なり周りのお客さんの注目も集めてしまった。
「2人とも急にどうしたんだ?」
先輩のその問いに、俺と六日はお互い何も答えない。
お互いがお互いから視線を背ける。
そのまま理解しあえないまま、4人で行動を共にする。
お互い謝りもせず中途半端だった為、六日の隣にいるのが少し気まずく感じていた。
そうなると、俺が足を運ぶ先は自然と四月の隣にだった。
だが、それに続くように六日も俺の隣にやってくる。
それでも俺達の間に会話はない。
「気晴らしに、ここら辺でご飯にしないかい?」
先輩のその一言に、他の全員が賛同してご飯を食べる事になった。
フードコートに着き、最初に俺と六日が料理を買うことになった。
俺はパッと目についたカレーライスを食べる事にして列に並ぶ。
「私、カツカレーがいい!」
後ろから、喜びと期待で胸を膨らました様に弾んだ声音が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、そこには想像した通りの人物が立っていた。
「・・・お前、先輩と待ってたはずだろ?」
「先輩が先に選んできなよって!」
「そこは素直に受け取るんじゃなくて、一緒に待った方がポイント高いだろうが」
「・・・ハッ!」
「本当ポンコツだなお前・・・」
そんな感じで俺はシーフードカレーを頼んだ。
すると、隣で四月もシーフードカレーを頼んでいた。
理由を聞くと、なんだか美味しそうだったかららしい。
だからそういったポイントの高い行動は、俺にじゃなくて先輩にしろと何回も言ってるのにこいつは・・・。
頭の引き出しがないんじゃないかってくらい記憶力がないんだな。
俺と四月が席に戻ると、そこには既に六日が座っていて先輩の姿は見当たらなかった。
「先輩は?」
「ご飯選びに行ったよ」
「そうか」
「あんたと七に言いたい事あるんだけど」
そう言って六日は、俺と四月を交互に見る。
これは先程と同じ、六日が怒りを表している目だった。
それに今回の標的は俺と四月だった。
六日の雰囲気に気がついてるのか、四月は大人しくしている。
さすがは幼馴染といったところか。
「まず一、あんたは七の側にいないで。常にあたしの隣にいること。それと七も、先輩と行動して。さっきみたいに、一と一緒にどっか買いに行くとかダメだから」
「・・・分かった」
俯きながらそう言葉を零す四月。
一方的に投げつけられる言葉に、俺はイライラしていた。
なのでついつい言葉を荒げてしまう。
「それは六日の個人的な意見だろ。なんでそんなのに俺と四月が付き合わなきゃいけないんだ? そんな義理も義務はない」
「七と先輩が付き合ってる以上、2人の時間を優先するのは当たり前。ましてや、その関係を壊そうとするのはもっての他」
「別に俺は壊そうだなんて考えてない」
「結果的にはそうなりつつあるの」
「ふ、2人とも落ち着いてよ・・・」
俺と六日の言い合いを止めたのは四月だった。
四月は両目に涙を浮かべながら、仲裁してくれた。
それを見た俺も六日も更に気まずくなり、場の雰囲気はどんどん悪くなっていく
「六日、ごめん。私、全然気がつかなかった。だからありがとう」
「・・・分かってくれればいいよ」
2人はそう言って落ち着いていたが、俺だけは1人釈然としていなかった。
だが、ここで暗い雰囲気のままでは嫌だった為、今のこのいざこざは一旦忘れる事にしよう。
空気が悪ければ、本来楽しいはずの事も楽しめるはずがない。
先輩が戻ってくる頃には、俺たちは平然を装うことができていた。
だが、間違いなく溝は深まっていた。
別に俺の精神が壊れかけているわけでもない。
むしろ安定はしている。
それよりも今は、六日の嫉妬の方が俺のメンタルより荒れていると感じた。
その後も事ある毎に、六日が俺と四月をくっつけさせない様にあえて間に入ってきたり、話題の中に入ってくる。
そのことがいちいちめんどくさく感じ、俺は六日の思惑通り、四月と距離を置くことにした。
先輩と四月が仲良く話しながら歩くのを見つめながら、俺と六日も隣同士で歩く。
いつかの登校中の風景を感じさせる印象だった。
そして今は最後の乗り物、観覧車へと俺達は足を運んでいた。
高いところ苦手だが、最後くらいは別に良いだろうと思い賛同した。
その時は四月は不安げな表情を浮かべていた。
この中で俺が高いところが苦手なのを知ってるのは、四月だけだったからだ。
でも、俺自身が乗ると言ったから何も言ってこなかった。
「今日はやけに威圧的だったな」
観覧車に向かう途中で、俺は六日にそう呟いた。
「あんたと七がバカなだけ」
「六日の嫉妬も大概じゃないのか?」
「・・・これが嫉妬に見えてるんなら、あんたは自意識過剰だよ」
「え?」
俺は六日のその言葉を聞いて、思わず目を見開き立ち止まった。
だが、隣を歩く六日は足を止める事なくどんどんと進んでいく。
六日の言った言葉が、頭をぐるぐると駆け巡る。
今の俺では理解しきれないその言葉は、絡みつくように頭から離れなかった。
・
4人で一緒に観覧車に乗り込む。
先輩も四月も六日も、みんな段々と高くなっていくのに興奮して楽しんでいた。
そんな中、俺はただ1人だけ外の一点を見つめていた。
『嫉妬に見えてるんなら、あんたは自意識過剰だよ』
六日の言ったその言葉が、未だに引っかかっていた。
六日の今までの態度が、嫉妬でないならなんだと言うのだろうか?
考えたって、答えは一向に出てこなかった。
そして、そのまま何気なく下の様子を見ると、もうかなり高い所まできていたらしく、俺の心臓の動きは一気に早くなる。
俺はすぐに下を向くのをやめた。
正面を見つめて心を落ち着かせる。
「夕陽が綺麗だね」
「ほんとだ」
先輩のその発言に六日が同調している。
こっち側は完全に真逆になってるから見えないが、先輩達はきっと、オレンジ色に輝く夕陽を見ているに違いない。
俺はこの状況じゃ、下手に動く事も出来なかったので詰みだった。
「あんたもこっちの夕陽見てみなよ! すっごい綺麗だから!」
やや興奮気味の六日が、俺に向かってそう言ってきた。
俺の肩や腕を掴み、無理矢理にこちらを向かせようと身体を動かすが、それは俺にとっては地獄そのものだった。
六日はその事を知らないし、悪気はないのは分かっている。
それだから俺も変に手を出すことはできず、目を瞑るのが精一杯だった。
身体中のいろんな所から変な汗が出てきて止まらない。
だが、そんな時だった。
「だ、ダメ・・・!!!!!」
声を上げたのは四月だった。
その声と同時に、何者かによって握られる俺の手。
ゆっくりと目を開けると、目の前には心配そうな表情を浮かべながら、俺の手を優しく握る四月の姿があった。
先輩も六日も、わけが分からないといった様子で四月の行動を見ていた。
「き、如月くんは高い所苦手だから・・・無理させちゃダメ・・・揺らしちゃダメ、なの」
弱々しくも、はっきりと四月はみんなに聞こえるようにそう言った。
いつの日か感じた、温もりと感覚を思い出す。
あの時も四月は、俺の不安を取り除こうとしてくれた。
それが、四月 七という女の子の優しさなのだ。
でも、その優しさが、彼女の罪だった。
『・・・別れよう・・・七』
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