恋愛相談から始まる恋物語

菜の花

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ケジメ

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次の日の朝、俺は起き上がり、身体をバキバキに鳴らしていた。

バキバキと鳴っている原因はここ、ソファーで寝ていたからだ。

意外と硬いんだよな、このソファー。

昨日の夜に、どこに寝るかの問題が出てきた。

女の子をソファーで寝かすわけにもいかないと俺は思っていた。

だが、ここは俺の家なので、当然四月のヤツは遠慮すると思ったが・・・。

「私はふかふかのベッド! 如月くんはここのソファー! 以上解散!」

「一応そのつもりだったけど・・・ここ俺の家だぞ?」

「れでぃーふぁーすと!」

「自分で言うな自分で」

こんな具合で遠慮のし合いにはならずして、俺はこの場所に寝ることが決定した。

元々ここで寝る予定だったから結果的には問題はないのだが、そこにたどりつくまでの過程で腑に落ちないコトがあり、しっくりこなかった。

んなコトをいつまでグチグチ言っていてもしょうがないので切り替えるコトにするが、起きてすぐに何やら香ばしいとは少し違った香りがしてくる。

それは間違いなく、キッチンの方から漂ってきている。

俺はもしやと思いキッチンの方へ向かうと、そこには案の定四月が料理をしていた。

「あ! 如月くんおはよー!」

「おはよー、ってか何やってるんだよお前・・・?」

「何って朝ごはん作ってるんだよ! ぶれいくふぁーすと!」

そう言いながら満面の笑みを見せてくれた四月。

昨日の泣いてる姿や落ち込みようが、嘘みたいに感じられた。

でも、きっと四月なりに俺に気を遣っての配慮なんだろうなと感じたが、その思考を妨げるかの如くその料理の匂いは、印象深いものだった。

美味しそうな匂いではないがマズそうな匂いでもない。

とても不思議な匂い。

焼いているのは普通の卵焼きなのだが、それからは想像もできないような匂いだった。

お菓子作りが上手い四月のコトだから、何か特別な味付けでもしてるのだろう。

四月の手作りクッキーの味を知っている為、お粗末なものではないだろうと思っていた。

「完成! 超絶可愛い大天使七ちゃん特製の手料理だよ!」

そう言ってテーブルの上に出されたのはら目玉焼きと玉子焼きとウィンナーだった。

目玉焼きは、片方は黄味が潰れていて焦げている。

卵焼きはなぜだか知らないが、少し黒ずんでいる。

ウィンナーは普通に焼けている気がした。

そして出された飲み物は、ホットミルクティーだった。

別に文句を言いたいわけではないが、朝はお茶とかじゃないか?

甘い飲み物で流し込める気がしないのだが・・・。

別にやってくれと頼んではいないものの、せっかくの四月の厚意を無駄にはしたくないので、とりあえずはいただくコトにする。

お菓子作りの続き腕前から見て、味は問題ないだろう。

「た~んとおたべ!」

「いただきます」

そう言って俺は、目の前の比較的綺麗に焼けていた目玉焼きを食べようと箸を伸ばす。

「あ、そっちは私の! こっちが如月くんの!」

そう言って四月が指差したのは、あえて避けた黄味が崩れて少し焦げている目玉焼きの方だった。

いや、普通こっちが俺じゃなのか?

「俺・・・こっち?」

「うん! そっち!」

満面の笑みでそう言われて反論する気も起きなく、俺は言われるがままに形の崩れた目玉焼きを食べるコトにした。

一口サイズに切り醤油をかけて、口の中へ放り込む。

その様子を作った張本人の四月は、ジト目で凝視していた。

味としてはなんだろうな・・・普通だった。

特別美味しいといったわけでもなく、かといってマズいわけでもない。

感想としては、本当に普通な味だった。

「どぉ? 美味しい?」

「普通」

「普通?」

「普通」

「・・・バカ」

俺の返答が気に食わなかったのか、四月は俺をバカ呼ばわりしてきた。

褒めたい気持ちは山々だったが、いかんせん普通だったから仕方ない。

あれだけ美味いクッキー作れるのに、なんでこんな普通なんだよと逆にツッコミたくもなった。

おつぎは普通のウィンナーを食べるコトに・・・。

そんなに大きくもないので一口でいただくが、俺の予想とは反して食感がぐにゃりと柔らかかった。

そう、ウィンナーは・・・。

「これ、ちゃんと焼けてない・・・」

そう、このウィンナーは半生の状態だった。

いや、本当四月の料理スキルどうした?

失恋のショックでおかしくなったのか?

「え? そんなはず・・・。れ、レンチンしよう!」

俺の言葉を確かめるように、四月も目の前のウィンナーを口に入れた。

そしてあっさりと負けを認め、レンチンという逃げ道に走った。

そして最後に少し黒ずんだ卵焼きだった。

けっして焦げているのではないが、なぜか黒ずんでいる。

「卵焼きは大丈夫! 先輩も美味しいって言ってくれたから!」

先輩のお墨付きとなれば、俺も安心して食べられそうだな。

四月のその言葉に、俺はすっかり油断していた。

 食べて咀嚼した瞬間に、口の中にとてつもない甘さが広がった。

この甘さは食べたコトがある。

この甘さの正体は、チョコレートだろう。

だが、卵焼きとチョコレートは、恐ろしいくらいにミスマッチになっていた。

「まっず・・・」

「え? 先輩は美味しいって言ってくれたよ?」

「先輩の味覚イカレてるんじゃないのか・・・? ってか、なんで卵焼きにチョコ入れてんだよ・・・」

俺は至極当然の質問をした。

卵焼きにチョコを入れる話なんか聞いたことはない。

砂糖を入れて少し甘く仕上げるのは聞いたことあるし食べたこともあるが、チョコは本当に初めてだった。

「先輩は卵焼き甘い方が好きらしくてね。だからチョコ入れれば甘くなるでしょ? それで作ったら先輩喜んでくれたよ! 今度は砂糖入れてみたら? ってアドバイスももらったの!」

「・・・・・・」

きっと先輩も同じコトを思ったが、自分の為を思って作ってくれた四月の厚意は素直に嬉しいと感じた。

でも、ここで変な反応をすれば、せっかく作ってくれた四月に悲しい思いをさせてしまう。

そう思って美味しいと言い、砂糖を入れた方がいいとそれとなくアドバイスをしたんだろう。

実に先輩らしい大人の対応だったが、四月はそれに気が付かず真に受けたってところか。

「正直に言ってね。どう思う?」

俺が気まずそうに何も言わなかったのが原因だろうが、四月が恐る恐るそんな事を言ってきた。

「・・・まずい」

俺は正直にそう答えた。

先輩ならもっと上手く立ち回れるだろうと思ったが、生憎と俺はそんなに頭もキレるわけじゃないし不器用だった。

そして、言った後に後悔をする。

いつもその繰り返しだった。

気がつくのが遅すぎるのだ。

案の定、俺のセリフを聞いて四月は俯いてしまった。

自分で落ち込ませといて、何もかける言葉が見つからないでいた。

ただひたすらに、沈黙が苦しかった。

「・・・先輩にも無理させちゃってたんだよね。バカだね、私・・・て」

沈黙を破ったのは四月だったが、その声音は弱々しいものだった。

その様子をただひたすらに聞いているだけで、俺は何も言えなかった。

「優しかったな、先輩は・・・」

「・・・でも、先輩の為を思って作ってくれたことには変わりないだろ? その気持ちは嬉しかったと先輩も思ってるはずだよ」

俺のその言葉に、四月は何も答えなかった。

ただ、俺がそれ以上手をつけない卵焼きをずっと見つめていた。

しばらくすると、四月はおもむろに立ち上がった。

そして、自分の荷物をまとめ出した。

急な出来事に俺は困惑していた。

四月を怒らせてしまったのだろうか?

傷ついている彼女を、またさらに傷つけてしまった。

「ありがとう、如月くん」

俺の不安や焦りとは裏腹に、四月は俺の想像していなかった言葉を口にした。

その言葉に意味が分からず、俺は頭上にクエスチョンマークを浮かべていたに違いない。

「ん・・・? 四月?」

「ちょっと先輩のところ、行ってくるね」

「先輩のところ?」

「うん。ちゃんと先輩に謝る。ケジメ、つけてくる」

そう言った四月の表情に、不安や焦りは感じられなかった。

何かを決心して、決意して覚悟を決めたような、そんな印象だった。

四月なりに自分の意思を持っての行動なら、俺が変に止めるのは可笑しな話だ。

なら、俺のすることは1つだった。

「行ってら」

そう言って、優しく見送ることだった。

俺が思ってた以上に、四月は弱いヤツでもなかったらしい。

四月は俺に軽く手を振ってから、玄関へと向かって行った。

それを俺は後ろから見守った。

「あ、如月くん」

「ん?どうした?」

靴を履き終えて玄関を出ようとした四月は、立ち止まって俺の名前を呼んできた。

「ちゃんとケジメをつけたら・・・そしたら次は・・・ちゃんと気持ちぶつけるからね。覚悟しといてね!」

四月は扉の方に向いたままそう言ってきた。

こりゃまた大胆な宣戦布告なことで。

そんな四月の言葉に、思わずニヤついてしまう。

「いいから行ってこい。話はそれからだ」

「うん。行ってきます」

そう言って四月は、今度こそ玄関を出て、先輩の元へと向かった。

きっともう彼女は大丈夫だ。

そう断言できる。

ならば、俺の次なる行動は1つだ。

未だ既読にならないトーク画面を見ながら、俺はそう思うのだった。
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