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第34話 甘く疼く独占欲 ※
しおりを挟む夢のように熱く、激しかった時間は、いつしか静かな潮騒のように遠のいていた。
夜明け前、薄いカーテン越しに朝の光が静かに差し込む。
澪は、昨夜の熱をその身に抱えたまま、ゆっくりと目を開けた。
ぼんやりとした意識の奥で、リクに触れられた場所がじんわりと熱を持ち、甘い記憶が身体に蘇る。
「……ん、あ……」
自然とこぼれた吐息に自分でも驚いて、そっと口元を押さえる。
もぞりと身じろぐと、すぐ背中に、リクのあたたかなぬくもりがぴたりと重なった。
「おはよう、澪」
すぐ後ろから、リクの低い声が耳元に囁かれる。
寝起きのその声音は、普段よりも少しだけ掠れていて、とろけるように澪の鼓膜を震わせた。
リクの顔が首筋に寄せられ、肌に彼の吐息が触れるたび、胸の奥がじんわりと熱を帯びていく。
「……こうして、誰にも邪魔されずに澪と過ごせるなんて。ほんと、夢みたいだな」
澪はその言葉に、そっとリクの胸元へ頬を寄せる。
彼の力強い心音がすぐそばで聞こえるだけで、安心する。
この時間がずっと続けばいいのに、そんな想いがふわりと胸に浮かんだ。
*
午前中はゆっくり朝食をとり、散歩をしたり、湯に浸かったりしながら、二人だけの穏やかな時間を過ごした。
けれど、日が傾き、空が深い藍に染まり始めると——
夜が、訪れる。
キャンドルの灯りが、寝室の空気をやわらかく、そして甘く染めていた。
揺れる光が澪の肌の輪郭を縁取り、吐息と共に、静かに熱を孕ませていく。
リクの瞳は、昼間とは違う色を宿していた。
本能を滲ませながらも、どこまでも真剣で、澪のすべてを貪るように見つめる眼差し。
「今日は、上半身だけ……たっぷり時間をかけて、触れる」
その囁きだけで、澪の心臓が跳ねた。
「も、もう……昨日ので、いっぱいいっぱいだったのに……」
顔を赤くしながら訴えると、リクはふっと目を細め、わずかに眉を寄せた。
「……じゃあ、やめるか?」
「……だめ」
その瞬間、リクの喉が低く、甘く鳴った。
理性がぐらつく音が、澪にもはっきりと伝わってくる。
「……澪」
リクの手が、ゆっくりと澪の肌に触れた。
昨夜よりもさらに丁寧に、慎重に、熱を込めて。
指先が胸の輪郭をなぞり、ゆっくりと形を確かめるように動く。
掌が肌を滑るたびに、澪の体温がじわじわと上がっていく。
「んっ……あ、ぁ……っ」
抑えきれない声が、勝手に零れる。
触れられているのは上半身だけなのに、身体中が熱を帯びている。
澪の太ももをそっと撫でるリクの尻尾は、愛でるような優しさと、強い独占欲を同時に含んで揺れる。その微かな動きに、澪の身体はびくっと跳ねる。
この優しくも執拗な触れ合いは、リクの抑えきれない本能が、無意識に澪を貪りたがっている証拠だった。
「あっ……今日は、上半身だけって……っ」
「……コイツは、勝手に動くんだ」
リクの尻尾は離さないと言うように、澪の太ももをキュッと締め付ける。
「リクさん、……やだ……お願い……もっと……」
熱に浮かされた声で、澪がリクの手を掴み、下腹部へと導こうとする。
だが——
「……だめだ」
その手は、寸前で止められた。
リクの目が揺れ、唇が苦しげに震える。
「言っただろ? 今日は……上半身だけだ。それ以外は……明日まで我慢するんだ」
限界寸前の声だった。
苦しげな吐息が、リクの唇の端から漏れる。
「リクさん……そんなの、ずるいよ……」
澪は唇を尖らせて、わざと身を寄せる。
細い腕でリクの首を抱き、密着させた肌から熱を移すように、囁く。
「こんなに触れてくるのに、最後までしてくれないなんて……キスも、足りない……昨日みたいに、いっぱいして?」
「……澪っ……!」
リクの瞳に、獣の色が浮かんだ。
ぐっと抱きしめる力が強くなり、彼の荒い息が熱を孕んでぶつかってくる。
「そんな可愛い顔で、俺を煽らないでくれ……っ」
それでも、リクの手は決して離れない。
肌のぬくもりを離すまいと、澪の身体を独占したまま包み続けていた。
「……あ、んっ……リクさん……っ」
澪は何度も、甘く震えながら、リクの胸の中で息を上げる。
そのたびにリクの身体が、びくり、と反応した。
尖った耳が揺れ、隠された牙がうっすらと覗く。
もはやリクの理性の限界は、とっくに越えていた。
にもかかわらず、澪は無意識に、何度も、何度も、彼の理性を揺さぶり続ける。
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