真壁優志は結婚に向いていない

ちょろぎ

文字の大きさ
6 / 21

結婚の予定

しおりを挟む

 定時で帰宅したら約束の時間まで全然余裕がある。
 軽くランニングをしてシャワーを浴びて真壁さん家に向かった。

 外はもう真っ暗で、俺はウェアじゃないのに真壁さんはすぐ気付く。
 あー、真壁さんの笑顔見たらホッとして体の力が抜けた。ずっと気を張っていたみたいだ。

「お疲れー。さ、乗って乗って」

 車で行くのか。確かにちょっと距離あるもんな。
 いつものように助手席に乗り込んだら真壁さんが顔を上げた。

「涼くん、お風呂入ってきた?」
「⋯?はい、ちょっと走ってきたんで」
「そっか⋯」
「⋯⋯?」
「いや、お風呂上がりかと思うとちょっと興奮した」

 落ち着け、変態さん。俺も男だから分かるけどさ、そういうのは思ってても本人に言っちゃ駄目なやつ。


 変態さ⋯じゃない真壁さんセレクトのイタリアンバルはオシャレで美味しくて大満足だった。

「お腹いっぱいだけどドルチェも美味しい~」

 少し濃いめのコーヒーも美味しい~。

 俺を見て微笑んでいる真壁さんをじっと見つめ返した。
 センター分けの、癖のない黒髪。
 綺麗なフェイスライン。
 いつも機嫌の良さそうな笑みを浮かべている。

「なぁに?涼くん」
「や、真壁さんて、こんなかっこよかったっけ?って、思っ て⋯」

 ⋯⋯馬鹿な質問をしてしまった。途中で我に返り、最後の方はごにょごにょしてた。
 でも本当にそう思っちゃったんだよ。この店の照明のせい?

「お陰で良い恋をさせてもらってますから」

 頬杖をついた真壁さんが淡く笑う。

「ひぇぇ!」

 バカップルみたいな事言い出したのは俺なのに、応酬されて今更恥ずかしくなった。

「涼くんもかっこいいし可愛いよ」
「⋯⋯ドウモアリガトウゴザイマス」

 おかしい。俺の気持ちは親愛で恋愛じゃないのに。何だこのむず痒い感じ。

 顔を覆った指の間からチラリと真壁を伺った。
 何度見ても微笑む真壁さんはかっこいい。





    大満足でイタリアンバルを出た後、真壁さんにドライブに誘われた。

「いつもは電車通勤だから、休みの日は少し走らせておきたいんだ」

 愛おしそうに愛車のハンドルを撫でながら言った。

「この近くに夜景が見られる所があるからそこに行こう」

 山の中腹にある駐車場に着き、車は静かにエンジンを止めた。
 等間隔で数台車が停まっている。

 二人で夜景を見に行くなんて特別な関係みたいだ。

 みたい、じゃない。少なくとも真壁さんの中では俺は特別な存在。
 ⋯⋯この恋人ごっこはいつまで続くんだろう。


「⋯真壁さんておいくつでしたっけ?」
「28だよ。4歳差だね」
「結婚の予定とかないんですか」
「涼くんと?」

 おいおい、誤解を招く聞き方しちゃったよ。

「違います。えーと、将来的に?」

「ないよ、そもそも結婚に向いてない。今から出会いを求めて付き合って、お相手の望む結婚式をあげて?乗りたくもないファミリーカーと家族の為に建てる一軒家。
僕の部屋はせいぜい一部屋。頑張って仕事しても趣味も我慢して、休日は家族サービスに勤しむ、子どもを育てる20年契約。無理でしょ」

 息継ぎしました?って位一気に言葉を吐いた。
 結婚に対するイメージ悪~。


「涼くんもでしょ?」

 確信めいた言葉を投げ掛けてくる。

「涼くん、結婚願望ないでしょ。そういう話、一切しないし」

「⋯だから、俺と付き合いたいんすか。都合のいい恋人になれるから」
「違う、涼くんは相性のいい恋人」

「もうこの話はおしまいね」
と唇を塞がれて何も言えなくなった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

つがいごっこ~4歳のときに番ったらしいアルファと30歳で再会しまして~

深山恐竜
BL
親が言うには、俺は4歳のときにうなじを噛まれたらしい。 子どもがたくさんいる遊び場で、気が付いたらそうなっていたとか。 うなじに残る小さな歯型。 これを得られたのは、正直かなりラッキーだった。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...