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シーズン2
4 星に願いを 2
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アーウェンとレムナが別のテーブルに移ってしまい、残されたラクシュとディキシスは互いに無言で突っ立っていた。
ラクシュが星祭りに来るのは久しぶりだ。
ラドベルジュ王国の周辺では星祭の習慣がなく、アーウェンとここに住み始めて最初の夏に、クロッカスから聞いて参加するようになった。
ただ、三年ほどすると血飢えで極端に弱り始めたラクシュは夜でも出歩くのが辛くなってきたから、星祭りにも残念ながらいけなくなった。
見れば少し離れたテーブルで、アーウェンとレムナが、とても真剣な顔で願いを書き込んでいる。
アーウェンは、この星祭に尋常ならざる期待を抱いているようだ。
ラクシュが弱って祭りに参加できなくなってからは『すみません、願い札だけ書いてすぐに戻ります!』と言い、いつも大急ぎで帰って来た。
アーウェンがお祭りを楽しみたいなら、自分のことは気にせず羽を伸ばしてくれば良いとも勧めたが、彼は願い札だけで十分だという。
なんでも、半信半疑で書いた願いが、一年目と二年目は本当に叶ったらしいのだ。
そして三回目の願いはなかなか叶わなかったけれど、同じ願いを吊るし続けたらつい最近やっと叶ったと、出がけに嬉しそうに報告された。
今までどんなことを書いたのか、彼は一度も教えてくれないが、願いが叶ってアーウェンが嬉しいのならラクシュも嬉しく思う。
「……」
アーウェンから、テーブル上のまだ何も書いていない札へ視線を移し、ラクシュは思案にくれる。
実のところ、ラクシュは祭りに来るたびにこの紙片を買ったが、一度も願いを書けた事がなかった。
書きたいような気はするのに、自分が本当は何を書きたいのか、わからないのだ。
『あれが出来るようになりたい』とか、『こういう存在になりたい』とか。
ラクシュにできないことは沢山あるけれど、特にそれで他人を羨ましく思ったことはなかった。
――私の、なりたいもの、かぁ。
テーブルの向かいでは、母子連れが楽しそうに願いを書き込んでいた。
「おおきくなったら、お父さんみたいに、みんなを助けるお医者さんになりたい!」
元気そうな男の子は、得意そうに自分の書いた願いを読んで聞かせる。母親が嬉しそうに微笑み、母子は願いを吊るしに去っていった。
遠ざかる幸せそうな背中を眺め、ラクシュは再び紙片へ視線を落とした。
真っ白なはずの紙片は、色レンズのせいで微かに緑がかって見える。
――大きくなったら……。
吸血鬼の身体は、基本的に一生変わらない。髪や爪くらいは伸びるが、それだってとても遅い。あからさまな成長も老いもなく、数百年を生きた後に灰となって朽ちる。
――この身体が朽ちたあと、もし別のものになれるなら……。
ラクシュにとって『大きくなる』とは、そういうことになるのだろう。
ふと、隣にいるディキシスも、白紙を前に身動きすらせずにいるのに気づいた。
「ん?」
ペンが無いのかと思い、ポケットから取り出した万年筆を差し出すと、ディキシスは困惑顔で赤褐色の頭を振った。
「いや、ペンなら持っている。ただ……書けないんだ……」
そして彼は、願いを書き終わってアーウェンとテントへ向かうレムナへ、一瞬だけ視線を向けたあと、俯いて独り言のように呟いた。
「書きたいから紙を買ったのに、もし叶ってしまったら俺の目標は果たせなくなると思うとな……」
「そっか」
ラクシュは頷いて、万年筆を引っ込めた。
ディキシスの言うことは、あまり理解できなかったが、何か複雑な事情がありそうだ。
そしてラクシュも、どうやら今年もまた真っ白な紙を網へ下げて終わることになりそうだ。
黙ってぼんやりと白い紙を眺めていると、不意にディキシスの低い声が聞えた。
「……街で聞いたが、貴女はもう十年近くここに住んでいるそうだな」
彼はアーウェンよりも長身で、すぐ横にいるラクシュは、首をかなり傾けて彼を見上げた。
「ん」
疑わしげな声と視線に、ラクシュは黙って頷いた。
「貴女は魔物でもないのにまるで歳をとらず、非常に手先も器用だと言う。徹底した菜食主義でなければ吸血鬼と疑う所だったと、幾人かから証言を聞いた」
「……昔。遺跡の、呪いにかかった……それで、わたし、歳をとらなくなった……」
俯き、ボソボソとラクシュは答えた。嘘は嫌いだったが、吸血鬼と知られるわけにはいかない。
殆どが地中に埋まっている古代遺跡は、未だに殆どが解明されていない。
凶暴なキメラや蟲に、理論も仕組みもわからぬ不思議な装置の数々など、遺跡には多くの謎が眠っている。
だから人々は、自分たちの理解できない代物を恐れつつも、都合よく利用するのだ。
『遺跡の呪い』と銘打ってする説明は、あまり詳しく聞くなと言う意味の隠語でもあった。
「……その言葉の意味を理解できぬほど野暮ではないが、無礼を承知で話を続けさせてくれ」
だが、ディキシスはあえて礼儀を無視するつもりのようだ。
「貴女がレムナをあっさりと荷台に放り込んだと聞き、どうしても気になった……話を聞いた時には、貴女が俺の探し相手かと思ったほどだ」
暗い夕陽色の瞳が、鋭くラクシュを眺めていた。
初対面のはずなのに、どこかで彼を見たことがあるような気がして、ラクシュは首をかしげる。
「ん? きみ……わたしと、会った?」
「白い髪のラクシュという女性に覚えはない。それにレムナを助けた貴女が、アイツのはずはない」
まるで自分に言い聞かせるように、ディキシスは顔をしかめて呟く。
「自分でも馬鹿げていると思う。だが、もし……」
日焼けした大きな手が、ラクシュのゴーグルへ伸ばされる。
しかし、無骨な指は革ベルトに触れるか触れないかの寸前で止まり、さっと離れた。
「……すまない。ゴーグルをとって貴女の顔を見れば人違いだと断言できると思ったが、今のはさすがに無礼すぎるな。許して欲しい」
「ん?」
ラクシュは困惑してディキシスを見上げた。。
故郷を出てから、ここまで旅をする途中に、数え切れないほど沢山の人と接触をした。
あの家に住み始めてからは、また滅多に外出はしなくなったけれど、人の出入りが激しいこの街でも、多数の顔を見知った。
ありったけの顔を思い出しても、この暗い目をした逞しい青年には覚えがないから。多分、人違いだと思う。
でも、そんなに気になって勝手にゴーグルをとろうとしたり、後で無礼だったと謝って止めるくらいなら、ラクシュに『顔を見せて』と一言頼んでくれればいいじゃないか。
ディキシスもあまり喋らないタイプのようだが、ラクシュよりはずっと普通に話せるのに、どうして大切なことをきちんと言わないのだろう。
「ゴーグル、取る? いいけど?」
ラクシュがゴーグルに手をかけた時だった。
突然、白い砂煙をたてて、広場の入り口から武装した騎馬隊の一団が駆け込んできた。
三十人近くはいる彼らは、武装も馬具も統一されておらず、協和国の臨時雇い兵の証に赤い腕章をつけていた。
ハーゼルランドには優秀な警備隊が揃っているものの、何しろ犯罪者の幸せな流刑地と呼ばれるような物騒な場所だ。
手が足りなかったりする時もあり、こうして臨時で傭兵の部隊を作り、指名手配者や盗賊団の捕獲を命じる場合もある。
騎馬兵たちは広場を手中に収めようとでもするように、数騎づつに拡散して、人々の移動を止める。
ラクシュたちのいるテーブル脇にも、まだ若い男女が一人ずつ来た。
「こんばんはーっ! お楽しみ中に、失礼しまーすっ!」
代表らしき男が広場の出入り口を塞ぐ形で止まり、魔道具の拡声器を手にキンキンした大声を張り上げる。
三十代そこそこといった細身の男で、作り物みたいな大袈裟な笑顔と身振りは、傭兵というより大道芸人に向いていそうだ。
人々の迷惑そうな視線を一身に浴びながらも、ニコニコしながら陽気な声を張り上げる姿は、ますます大道芸人みたいに見えた。
「どうもどうも、吸血鬼討伐隊でーす!」
『吸血鬼』という単語が響いた途端、もう暑い季節になってきた広場中に、氷のような空気が走った。恋人を連れた男性たちは、自分の彼女を守るように抱きしめ、親たちもわが子を腕に抱えこむ。
アーウェンとレムナは網のところで足止めされているらしく、ラクシュの隣にいるのはディキシスだったから、当然ながら互いに近寄りもせず、そのまま突っ立っていた。
ただ、ディキシスは無愛想な表情をさらにきつく引き結んで、討伐兵たちを睨んでいる。
指令の男は周囲の反応を満足そうに見渡し、さらに声をはりあげた。
「ラドベルジュ王国の吸血鬼騒ぎ、御存じですよねー!? 連中がぁー、こっちの方に逃げたようだと通報があったんですよー! これから強制捜査に入りマース! 一人づつ身分証明のチェックを受けてくださーい!」
その声を合図に、討伐兵たちがいっせいに馬から降りる。
「さーさー、押さないで並んでくださいねーっ!」
人々は口々に不満を漏らしてはいたものの、吸血鬼が身近に隠れている危険よりは、楽しい祭りをちょっと邪魔された方がましだと思ったのだろう。
不安そうな表情を浮かべ、おとなしく兵たちの前に列を作りはじめた。
それに、討伐隊の調査は簡単な身分証のチェックで済むが、拒否した場合は危険分子と判断されて、その場で斬り殺すことさえも許されていた。
「ほら、アンタからだよ。その変なゴーグルとって顔見せて」
ラクシュの傍にきた女討伐兵が、きつい口調で言った。そこらの男性にひけをとらない筋骨逞しい女戦士は、皮手袋をした手を無愛想に突き出す。
「ん」
ラクシュは頷き、ゴーグルを額の上に押し上げた。現れた胡乱な赤い瞳へ、周囲の視線が注がれる。
「っ!!」
傍らでディキシスが息を呑み、その顔が見る間に青ざめていった。
「……ん?」
「お前……っ!!!!」
ラクシュの視界の隅で、ディキシスが剣の柄を握り、腰に吊るした鞘から、漆黒の刀身がわずかに見えた。
その瞬間。
「ああーーっ!! てめぇ! 鶏ガラスープで、ゲロ噴水しやがった女じゃねーか!!!」
素っ頓狂な大声に、ビクリとディキシスの動きが止まる。
ラクシュを指差して声を張り上げたのは、男の方の討伐兵だった。長身の女討伐兵は、怪訝な顔で同僚を振り返った。
「はぁ? ゲロ噴水って……何言ってんのよ」
「五年前、俺がこの街に滞在してた時だ! コイツに食堂でゲロぶっかけられたんだよ!」
男の討伐兵は、憤然とラクシュを睨みつけ、ブルブルと怒りに全身を震わせている。
「ん? ……あ」
ラクシュはようやく男のことを思い出し、ポンと手を叩いた。
五年前、知らずに飲んだ鶏がらスープで吐きまくった時に、隣のテーブルにいた客だった。
あの時はまだ、彼は二十歳そこそこの青少年だったから、記憶の中の顔となかなか一致しなかったのだ。
「ごめん……私、お肉、気持ち悪くなる……あのスープ、野菜だけ、言われたから……」
「おお、後で聞いたさ! アンタ、吸血鬼みてーに見た目がいつまでも若いわりにゃ、血肉類がいっさいダメなんだってな。でもな、貰いゲロして彼女にフラレちまった俺は、とんだ迷惑……いてっ!!」
一気にまくし立てた男の後頭部を、女討伐兵が拳骨でぶん殴った。
「バカが。聞いてりゃ、この人は喰えないもんを間違って出されただけじゃないか。恨みごとなら、スープを出した奴に言いなよ」
「あの食堂、とっくに潰れてるんだよっ!!」
事件の後すぐに、ラクシュは血飢えで外出もできなくなったから、店が潰れたのは初耳だった。
ちなみに、ラクシュは知る由もなかったが、店が潰れたのは、スープ事件の悪評などではなく、店主が賭博で全財産をすったせいである。
「なら、潔く黙って忘れるんだね。あたし達が探すのは吸血鬼で、アンタの個人的な恨みの相手じゃないんだ」
女討伐兵はきっぱりと言い、ラクシュの取り出した居住権コインの年数をチェックする。
「十年前か。問題ないね。はい、次」
男はまだブツブツと口の中で文句を言っていたが、それ以上は同僚に反論しなかった。ディキシスのコインをチェックし、最近のものだと知るといくつか質問をしたが、すぐに開放した。
「……」
ラクシュはテーブルに置いたままだった紙片を取り、数歩離れてゴーグルを目元へひき下ろす。
アーウェンが近くにいない今、特に眩しいものはなかったけれど、代わりにとても胸が重苦しく、悲しい気分だった。
吸血鬼の討伐隊に会ったのは、これが初めてではなくて、そのたびなんとかやり過ごせていた。けれど、いつもこうして、とても悲しい気分になった。
ゴーグルの中で目を瞑ると、故郷の赤い沼と黒い森が浮かぶ。
ミルドレンティーヌをはじめ、共に暮らしてきた吸血鬼たちの顔も。
それから、とても沢山の……本当に沢山……数え切れないほどの……。
「ん……?」
ふと目をあけると、ディキシスが傍らにいて、ラクシュを見下ろしていた。その顔は蒼白を通り越すほど血の気が引き、真っ白だ。
「肉を受けつけないというのは、本当なんだな……?」
なぜか彼は、喉から搾り出すような震え声で確認してきた。
ラクシュは頷き、ボソボソと小声で説明する。
「うん。お肉、少しも食べられない……牛乳も、卵も……だから、アーウェンが野菜で、いっぱい美味しい物、作ってくれる……」
「そ、そうか……市場でそうした話も聞いていたが、単なる嗜好の菜食主義ではなく、体質の問題だったのか」
ディキシスが深いため息をつき、額に浮かんでいた汗をぬぐった。
「あんなに似ているなど……危うく、とんでもない人違いをするところだった」
「ん?」
「なんでもない。すまなかった……忘れてくれ」
ディキシスは手に持った願いの紙片をぐしゃぐしゃに握りつぶし、ポケットに突っ込んだ。
「あ」
ラクシュが思わず声をあげると、まだ少し青ざめた顔でディキシスは苦笑した。
「やはり、俺は書けない。……貴女はどうするんだ?」
「私……」
ラクシュは呟き、忙しくチェックをしている討伐兵を眺めた。
忌まわしい吸血鬼を見つけて殺そうと、懸命になっている彼らを、じっと眺める。
「私……なりたいもの……」
不意に、もうずっと昔から、ラクシュの奥で泥のように溶けているだけだった言葉が、ようやくしっかりした形になった。
――ああ、そうだ。大好きで、こうなれたら良いと思っていたものが、ちゃんとあった。
ラクシュは急いでしゃがみこみ、膝の上に置いた紙片へ万年筆を走らせる。そしてディキシスに見せた。
沢山の人に見てもらった願いは、いつか必ず叶うと聞いたから。
「……なんだ、それは?」
目を丸くしているディキシスを見上げ、ラクシュは初めて書きあげた願い事を、堂々と読み上げた。
「わたし、やさいに、なりたい」
ラクシュが星祭りに来るのは久しぶりだ。
ラドベルジュ王国の周辺では星祭の習慣がなく、アーウェンとここに住み始めて最初の夏に、クロッカスから聞いて参加するようになった。
ただ、三年ほどすると血飢えで極端に弱り始めたラクシュは夜でも出歩くのが辛くなってきたから、星祭りにも残念ながらいけなくなった。
見れば少し離れたテーブルで、アーウェンとレムナが、とても真剣な顔で願いを書き込んでいる。
アーウェンは、この星祭に尋常ならざる期待を抱いているようだ。
ラクシュが弱って祭りに参加できなくなってからは『すみません、願い札だけ書いてすぐに戻ります!』と言い、いつも大急ぎで帰って来た。
アーウェンがお祭りを楽しみたいなら、自分のことは気にせず羽を伸ばしてくれば良いとも勧めたが、彼は願い札だけで十分だという。
なんでも、半信半疑で書いた願いが、一年目と二年目は本当に叶ったらしいのだ。
そして三回目の願いはなかなか叶わなかったけれど、同じ願いを吊るし続けたらつい最近やっと叶ったと、出がけに嬉しそうに報告された。
今までどんなことを書いたのか、彼は一度も教えてくれないが、願いが叶ってアーウェンが嬉しいのならラクシュも嬉しく思う。
「……」
アーウェンから、テーブル上のまだ何も書いていない札へ視線を移し、ラクシュは思案にくれる。
実のところ、ラクシュは祭りに来るたびにこの紙片を買ったが、一度も願いを書けた事がなかった。
書きたいような気はするのに、自分が本当は何を書きたいのか、わからないのだ。
『あれが出来るようになりたい』とか、『こういう存在になりたい』とか。
ラクシュにできないことは沢山あるけれど、特にそれで他人を羨ましく思ったことはなかった。
――私の、なりたいもの、かぁ。
テーブルの向かいでは、母子連れが楽しそうに願いを書き込んでいた。
「おおきくなったら、お父さんみたいに、みんなを助けるお医者さんになりたい!」
元気そうな男の子は、得意そうに自分の書いた願いを読んで聞かせる。母親が嬉しそうに微笑み、母子は願いを吊るしに去っていった。
遠ざかる幸せそうな背中を眺め、ラクシュは再び紙片へ視線を落とした。
真っ白なはずの紙片は、色レンズのせいで微かに緑がかって見える。
――大きくなったら……。
吸血鬼の身体は、基本的に一生変わらない。髪や爪くらいは伸びるが、それだってとても遅い。あからさまな成長も老いもなく、数百年を生きた後に灰となって朽ちる。
――この身体が朽ちたあと、もし別のものになれるなら……。
ラクシュにとって『大きくなる』とは、そういうことになるのだろう。
ふと、隣にいるディキシスも、白紙を前に身動きすらせずにいるのに気づいた。
「ん?」
ペンが無いのかと思い、ポケットから取り出した万年筆を差し出すと、ディキシスは困惑顔で赤褐色の頭を振った。
「いや、ペンなら持っている。ただ……書けないんだ……」
そして彼は、願いを書き終わってアーウェンとテントへ向かうレムナへ、一瞬だけ視線を向けたあと、俯いて独り言のように呟いた。
「書きたいから紙を買ったのに、もし叶ってしまったら俺の目標は果たせなくなると思うとな……」
「そっか」
ラクシュは頷いて、万年筆を引っ込めた。
ディキシスの言うことは、あまり理解できなかったが、何か複雑な事情がありそうだ。
そしてラクシュも、どうやら今年もまた真っ白な紙を網へ下げて終わることになりそうだ。
黙ってぼんやりと白い紙を眺めていると、不意にディキシスの低い声が聞えた。
「……街で聞いたが、貴女はもう十年近くここに住んでいるそうだな」
彼はアーウェンよりも長身で、すぐ横にいるラクシュは、首をかなり傾けて彼を見上げた。
「ん」
疑わしげな声と視線に、ラクシュは黙って頷いた。
「貴女は魔物でもないのにまるで歳をとらず、非常に手先も器用だと言う。徹底した菜食主義でなければ吸血鬼と疑う所だったと、幾人かから証言を聞いた」
「……昔。遺跡の、呪いにかかった……それで、わたし、歳をとらなくなった……」
俯き、ボソボソとラクシュは答えた。嘘は嫌いだったが、吸血鬼と知られるわけにはいかない。
殆どが地中に埋まっている古代遺跡は、未だに殆どが解明されていない。
凶暴なキメラや蟲に、理論も仕組みもわからぬ不思議な装置の数々など、遺跡には多くの謎が眠っている。
だから人々は、自分たちの理解できない代物を恐れつつも、都合よく利用するのだ。
『遺跡の呪い』と銘打ってする説明は、あまり詳しく聞くなと言う意味の隠語でもあった。
「……その言葉の意味を理解できぬほど野暮ではないが、無礼を承知で話を続けさせてくれ」
だが、ディキシスはあえて礼儀を無視するつもりのようだ。
「貴女がレムナをあっさりと荷台に放り込んだと聞き、どうしても気になった……話を聞いた時には、貴女が俺の探し相手かと思ったほどだ」
暗い夕陽色の瞳が、鋭くラクシュを眺めていた。
初対面のはずなのに、どこかで彼を見たことがあるような気がして、ラクシュは首をかしげる。
「ん? きみ……わたしと、会った?」
「白い髪のラクシュという女性に覚えはない。それにレムナを助けた貴女が、アイツのはずはない」
まるで自分に言い聞かせるように、ディキシスは顔をしかめて呟く。
「自分でも馬鹿げていると思う。だが、もし……」
日焼けした大きな手が、ラクシュのゴーグルへ伸ばされる。
しかし、無骨な指は革ベルトに触れるか触れないかの寸前で止まり、さっと離れた。
「……すまない。ゴーグルをとって貴女の顔を見れば人違いだと断言できると思ったが、今のはさすがに無礼すぎるな。許して欲しい」
「ん?」
ラクシュは困惑してディキシスを見上げた。。
故郷を出てから、ここまで旅をする途中に、数え切れないほど沢山の人と接触をした。
あの家に住み始めてからは、また滅多に外出はしなくなったけれど、人の出入りが激しいこの街でも、多数の顔を見知った。
ありったけの顔を思い出しても、この暗い目をした逞しい青年には覚えがないから。多分、人違いだと思う。
でも、そんなに気になって勝手にゴーグルをとろうとしたり、後で無礼だったと謝って止めるくらいなら、ラクシュに『顔を見せて』と一言頼んでくれればいいじゃないか。
ディキシスもあまり喋らないタイプのようだが、ラクシュよりはずっと普通に話せるのに、どうして大切なことをきちんと言わないのだろう。
「ゴーグル、取る? いいけど?」
ラクシュがゴーグルに手をかけた時だった。
突然、白い砂煙をたてて、広場の入り口から武装した騎馬隊の一団が駆け込んできた。
三十人近くはいる彼らは、武装も馬具も統一されておらず、協和国の臨時雇い兵の証に赤い腕章をつけていた。
ハーゼルランドには優秀な警備隊が揃っているものの、何しろ犯罪者の幸せな流刑地と呼ばれるような物騒な場所だ。
手が足りなかったりする時もあり、こうして臨時で傭兵の部隊を作り、指名手配者や盗賊団の捕獲を命じる場合もある。
騎馬兵たちは広場を手中に収めようとでもするように、数騎づつに拡散して、人々の移動を止める。
ラクシュたちのいるテーブル脇にも、まだ若い男女が一人ずつ来た。
「こんばんはーっ! お楽しみ中に、失礼しまーすっ!」
代表らしき男が広場の出入り口を塞ぐ形で止まり、魔道具の拡声器を手にキンキンした大声を張り上げる。
三十代そこそこといった細身の男で、作り物みたいな大袈裟な笑顔と身振りは、傭兵というより大道芸人に向いていそうだ。
人々の迷惑そうな視線を一身に浴びながらも、ニコニコしながら陽気な声を張り上げる姿は、ますます大道芸人みたいに見えた。
「どうもどうも、吸血鬼討伐隊でーす!」
『吸血鬼』という単語が響いた途端、もう暑い季節になってきた広場中に、氷のような空気が走った。恋人を連れた男性たちは、自分の彼女を守るように抱きしめ、親たちもわが子を腕に抱えこむ。
アーウェンとレムナは網のところで足止めされているらしく、ラクシュの隣にいるのはディキシスだったから、当然ながら互いに近寄りもせず、そのまま突っ立っていた。
ただ、ディキシスは無愛想な表情をさらにきつく引き結んで、討伐兵たちを睨んでいる。
指令の男は周囲の反応を満足そうに見渡し、さらに声をはりあげた。
「ラドベルジュ王国の吸血鬼騒ぎ、御存じですよねー!? 連中がぁー、こっちの方に逃げたようだと通報があったんですよー! これから強制捜査に入りマース! 一人づつ身分証明のチェックを受けてくださーい!」
その声を合図に、討伐兵たちがいっせいに馬から降りる。
「さーさー、押さないで並んでくださいねーっ!」
人々は口々に不満を漏らしてはいたものの、吸血鬼が身近に隠れている危険よりは、楽しい祭りをちょっと邪魔された方がましだと思ったのだろう。
不安そうな表情を浮かべ、おとなしく兵たちの前に列を作りはじめた。
それに、討伐隊の調査は簡単な身分証のチェックで済むが、拒否した場合は危険分子と判断されて、その場で斬り殺すことさえも許されていた。
「ほら、アンタからだよ。その変なゴーグルとって顔見せて」
ラクシュの傍にきた女討伐兵が、きつい口調で言った。そこらの男性にひけをとらない筋骨逞しい女戦士は、皮手袋をした手を無愛想に突き出す。
「ん」
ラクシュは頷き、ゴーグルを額の上に押し上げた。現れた胡乱な赤い瞳へ、周囲の視線が注がれる。
「っ!!」
傍らでディキシスが息を呑み、その顔が見る間に青ざめていった。
「……ん?」
「お前……っ!!!!」
ラクシュの視界の隅で、ディキシスが剣の柄を握り、腰に吊るした鞘から、漆黒の刀身がわずかに見えた。
その瞬間。
「ああーーっ!! てめぇ! 鶏ガラスープで、ゲロ噴水しやがった女じゃねーか!!!」
素っ頓狂な大声に、ビクリとディキシスの動きが止まる。
ラクシュを指差して声を張り上げたのは、男の方の討伐兵だった。長身の女討伐兵は、怪訝な顔で同僚を振り返った。
「はぁ? ゲロ噴水って……何言ってんのよ」
「五年前、俺がこの街に滞在してた時だ! コイツに食堂でゲロぶっかけられたんだよ!」
男の討伐兵は、憤然とラクシュを睨みつけ、ブルブルと怒りに全身を震わせている。
「ん? ……あ」
ラクシュはようやく男のことを思い出し、ポンと手を叩いた。
五年前、知らずに飲んだ鶏がらスープで吐きまくった時に、隣のテーブルにいた客だった。
あの時はまだ、彼は二十歳そこそこの青少年だったから、記憶の中の顔となかなか一致しなかったのだ。
「ごめん……私、お肉、気持ち悪くなる……あのスープ、野菜だけ、言われたから……」
「おお、後で聞いたさ! アンタ、吸血鬼みてーに見た目がいつまでも若いわりにゃ、血肉類がいっさいダメなんだってな。でもな、貰いゲロして彼女にフラレちまった俺は、とんだ迷惑……いてっ!!」
一気にまくし立てた男の後頭部を、女討伐兵が拳骨でぶん殴った。
「バカが。聞いてりゃ、この人は喰えないもんを間違って出されただけじゃないか。恨みごとなら、スープを出した奴に言いなよ」
「あの食堂、とっくに潰れてるんだよっ!!」
事件の後すぐに、ラクシュは血飢えで外出もできなくなったから、店が潰れたのは初耳だった。
ちなみに、ラクシュは知る由もなかったが、店が潰れたのは、スープ事件の悪評などではなく、店主が賭博で全財産をすったせいである。
「なら、潔く黙って忘れるんだね。あたし達が探すのは吸血鬼で、アンタの個人的な恨みの相手じゃないんだ」
女討伐兵はきっぱりと言い、ラクシュの取り出した居住権コインの年数をチェックする。
「十年前か。問題ないね。はい、次」
男はまだブツブツと口の中で文句を言っていたが、それ以上は同僚に反論しなかった。ディキシスのコインをチェックし、最近のものだと知るといくつか質問をしたが、すぐに開放した。
「……」
ラクシュはテーブルに置いたままだった紙片を取り、数歩離れてゴーグルを目元へひき下ろす。
アーウェンが近くにいない今、特に眩しいものはなかったけれど、代わりにとても胸が重苦しく、悲しい気分だった。
吸血鬼の討伐隊に会ったのは、これが初めてではなくて、そのたびなんとかやり過ごせていた。けれど、いつもこうして、とても悲しい気分になった。
ゴーグルの中で目を瞑ると、故郷の赤い沼と黒い森が浮かぶ。
ミルドレンティーヌをはじめ、共に暮らしてきた吸血鬼たちの顔も。
それから、とても沢山の……本当に沢山……数え切れないほどの……。
「ん……?」
ふと目をあけると、ディキシスが傍らにいて、ラクシュを見下ろしていた。その顔は蒼白を通り越すほど血の気が引き、真っ白だ。
「肉を受けつけないというのは、本当なんだな……?」
なぜか彼は、喉から搾り出すような震え声で確認してきた。
ラクシュは頷き、ボソボソと小声で説明する。
「うん。お肉、少しも食べられない……牛乳も、卵も……だから、アーウェンが野菜で、いっぱい美味しい物、作ってくれる……」
「そ、そうか……市場でそうした話も聞いていたが、単なる嗜好の菜食主義ではなく、体質の問題だったのか」
ディキシスが深いため息をつき、額に浮かんでいた汗をぬぐった。
「あんなに似ているなど……危うく、とんでもない人違いをするところだった」
「ん?」
「なんでもない。すまなかった……忘れてくれ」
ディキシスは手に持った願いの紙片をぐしゃぐしゃに握りつぶし、ポケットに突っ込んだ。
「あ」
ラクシュが思わず声をあげると、まだ少し青ざめた顔でディキシスは苦笑した。
「やはり、俺は書けない。……貴女はどうするんだ?」
「私……」
ラクシュは呟き、忙しくチェックをしている討伐兵を眺めた。
忌まわしい吸血鬼を見つけて殺そうと、懸命になっている彼らを、じっと眺める。
「私……なりたいもの……」
不意に、もうずっと昔から、ラクシュの奥で泥のように溶けているだけだった言葉が、ようやくしっかりした形になった。
――ああ、そうだ。大好きで、こうなれたら良いと思っていたものが、ちゃんとあった。
ラクシュは急いでしゃがみこみ、膝の上に置いた紙片へ万年筆を走らせる。そしてディキシスに見せた。
沢山の人に見てもらった願いは、いつか必ず叶うと聞いたから。
「……なんだ、それは?」
目を丸くしているディキシスを見上げ、ラクシュは初めて書きあげた願い事を、堂々と読み上げた。
「わたし、やさいに、なりたい」
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