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鬼頭 彩萌(きとう あやめ)の場合(◇ホラー◇アクション)
鬼頭 彩萌(きとう あやめ)の場合(2/3)
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ジャンプして何匹かまとめて蹴り倒し、両手に持った合金製の日本刀で頭を貫く。
ここまでに何十匹かゾンビを倒した経験上、おでこの中心を深く突き刺せば、ゾンビが動かなくなることは分かっていた。
――ぱぱぱぱぱっ
――ぱぱぱぱぱっ
左右から寄ってくるゾンビの頭を打ち抜いて『竦み』を発生させ、時間を作ってから各個撃破。
あたしは周囲のゾンビ数十匹を殲滅したことを確認して、災害用ライフラインベンダー機能付きの自動販売機にあるオレンジ色のカバーを破って、中から取り出したスポーツドリンクをごくごくと飲んだ。
ペットボトルの水でゴーグルの血糊を洗い流して荒い息を吐く。
結構疲れたけど、ゆーちゃんの家までもう少しだ。
あたしはなんだかとっても楽しくなってしまって、深呼吸とストレッチで体をほぐした。
FPSより全然リアルで楽しいし、ここまでにゾンビから助けた人も数十人になる。
これが夢でなければ、あたし、表彰とかされちゃうかも。
途中、4WDの車でゾンビを轢き殺しまくってる人とか、笑いながら防犯ブザーでゾンビを集めて灯油をかけ、「ファイヤー!」と燃やしている人も見かけた。
たぶん楽しんでるのはあたしだけじゃない。
「……あははっ! ははっ! たのしー! なにこれっ!」
思わず叫んで走り出したあたしに、ゾンビがずるずると押し寄せる。
群がって来た何匹かのゾンビの首を日本刀で斬って落とし、BB弾を叩きこんだ。
それでも噛みつこうとする顎を体を沈めて躱す。
たたらを踏んだゾンビの顔面に、下から突き上げるような後ろ回し蹴りを叩きこんで、あたしはひるがえるスカートを押さえた。
日本刀の使い方も分かってきた。
刀身が首に触れた瞬間、手前に引くようにスライドさせて斬る。
突く場合は、刀身の反りに合わせて少し上方へと向けて突く。
こうして両サイドのゾンビをなで斬りにしながら、あたしは流れる汗を制服のリボンで拭いて、ゆーちゃんの家へと走った。
到着したゆーちゃんの家は、すごく静かだ。
外の状況が無ければここがゾンビに襲われているだなんて思えない。
あたしはちょっと戸惑って、一応呼び鈴を鳴らした。
返事は無いだろうと思っていたけど、意外にも返事はあった。
でもそれは、いつもの元気なゆーちゃんのママの「はーい」と言う声じゃなく、「ヴぁアァァぁァ……」と言う唸り声。
家の中でピンポーンと鳴るスピーカーに向かって、ゾンビが向かってゆく音だった。
居る。
やっぱりゾンビは居る。
門を抜けて玄関へ向かう。鍵のかかっていない玄関ドアを開け、あたしはそっとゆーちゃんの家に忍び込んだ。
玄関は案外薄暗い。体を低くしてゆっくり移動すしていると、キッチンの方から例のうなり声が聞こえてきた。
いくらゾンビだとは言え、あの明るいゆーちゃんのママを殺すのは忍びないと思って、そっと音をたてないようにダイニングキッチンの前を通り抜ける。
まだ聞こえてくる唸り声の方向を見ないようにしながら、あたしは2階のゆーちゃんの部屋へと向かった。
階段を上る。こう言うのって「勝手知ったる他人の家」って言うんだっけ?
何度も遊びに来ているから良く知っている家の中をあたしは迷わずに進んで、ゆーちゃんの部屋の前にたどり着いた。
そーっとドアノブを握って部屋のドアを開けようとしたけど、何か重いもので塞がれているようでドアはなかなか開かない。
それでも思いっきり押したら、ドアはそこに置いてあった学習机と一緒に「ぎぎっ」と軋んでゆっくりと開いた。
「……ゆーちゃーん。助けに来たよー」
下のゆーちゃんママに聞こえないようにそっと、あたしは声をかける。
でもゆーちゃんの返事は無かった。
さっきの怯えようだと、その辺に隠れてるんだろう。この部屋に隠れられそうな場所なんか1か所しかない。
あたしは「ゆーちゃーん」と声を掛けながら、クローゼットの扉を開いた。
――ざくっ
クローゼットが開くと同時に閃いたカッターナイフの刃が、あたしの太腿をえぐる。
1センチくらい突き刺さったその刃は、途中でパキンと折れて、床に落ちた。
「いっっっ!! ……痛っったぁいっ!!」
「え?」
両手で美術の時間に使うカッターを握りしめたゆーちゃんが、あたしの足元に転がる。あたしもそのまま押され、どんっと尻餅をついて、血の流れる太腿を押さえた。
「いぃぃ……いたぁい! なにすんのよ!」
「え? あ? あれ? あやめちゃん?」
「あやめちゃん? じゃないわよ!」
「ご……ごめん」
「ごめんじゃ……あぁ、まぁいいや。あたしもごめん」
「え?」
不思議そうにあたしを見上げるゆーちゃんを見たまま、背中に背負ったM-16の引き金を引く。
そこから発射された数十発のBB弾は、音も無くあたしの背後に迫っていた、恐ろしい顔のゆーちゃんママを打ち抜いた。
白い歯が剥き出しになった顎先を喉元から貫通して口の中へ。
そのゾンビは、どす黒い血を噴出しながら、仰向けに転がった。
太腿の傷が痛くて立ち上がれないあたしは、刃のない日本刀じゃなく、本当に刃のついているM-9でゾンビの頭を床に打ち付ける。
びくんと体を震わせたゾンビは、それきり動かなくなった。
「ゆーちゃん、ゆーちゃんママ……ごめんね」
銃剣を引き抜く。
とぷんとあふれる血。
ゆーちゃんは後ろからあたしに縋り付き、背中に顔を押し付けて震えていた。
ここまでに何十匹かゾンビを倒した経験上、おでこの中心を深く突き刺せば、ゾンビが動かなくなることは分かっていた。
――ぱぱぱぱぱっ
――ぱぱぱぱぱっ
左右から寄ってくるゾンビの頭を打ち抜いて『竦み』を発生させ、時間を作ってから各個撃破。
あたしは周囲のゾンビ数十匹を殲滅したことを確認して、災害用ライフラインベンダー機能付きの自動販売機にあるオレンジ色のカバーを破って、中から取り出したスポーツドリンクをごくごくと飲んだ。
ペットボトルの水でゴーグルの血糊を洗い流して荒い息を吐く。
結構疲れたけど、ゆーちゃんの家までもう少しだ。
あたしはなんだかとっても楽しくなってしまって、深呼吸とストレッチで体をほぐした。
FPSより全然リアルで楽しいし、ここまでにゾンビから助けた人も数十人になる。
これが夢でなければ、あたし、表彰とかされちゃうかも。
途中、4WDの車でゾンビを轢き殺しまくってる人とか、笑いながら防犯ブザーでゾンビを集めて灯油をかけ、「ファイヤー!」と燃やしている人も見かけた。
たぶん楽しんでるのはあたしだけじゃない。
「……あははっ! ははっ! たのしー! なにこれっ!」
思わず叫んで走り出したあたしに、ゾンビがずるずると押し寄せる。
群がって来た何匹かのゾンビの首を日本刀で斬って落とし、BB弾を叩きこんだ。
それでも噛みつこうとする顎を体を沈めて躱す。
たたらを踏んだゾンビの顔面に、下から突き上げるような後ろ回し蹴りを叩きこんで、あたしはひるがえるスカートを押さえた。
日本刀の使い方も分かってきた。
刀身が首に触れた瞬間、手前に引くようにスライドさせて斬る。
突く場合は、刀身の反りに合わせて少し上方へと向けて突く。
こうして両サイドのゾンビをなで斬りにしながら、あたしは流れる汗を制服のリボンで拭いて、ゆーちゃんの家へと走った。
到着したゆーちゃんの家は、すごく静かだ。
外の状況が無ければここがゾンビに襲われているだなんて思えない。
あたしはちょっと戸惑って、一応呼び鈴を鳴らした。
返事は無いだろうと思っていたけど、意外にも返事はあった。
でもそれは、いつもの元気なゆーちゃんのママの「はーい」と言う声じゃなく、「ヴぁアァァぁァ……」と言う唸り声。
家の中でピンポーンと鳴るスピーカーに向かって、ゾンビが向かってゆく音だった。
居る。
やっぱりゾンビは居る。
門を抜けて玄関へ向かう。鍵のかかっていない玄関ドアを開け、あたしはそっとゆーちゃんの家に忍び込んだ。
玄関は案外薄暗い。体を低くしてゆっくり移動すしていると、キッチンの方から例のうなり声が聞こえてきた。
いくらゾンビだとは言え、あの明るいゆーちゃんのママを殺すのは忍びないと思って、そっと音をたてないようにダイニングキッチンの前を通り抜ける。
まだ聞こえてくる唸り声の方向を見ないようにしながら、あたしは2階のゆーちゃんの部屋へと向かった。
階段を上る。こう言うのって「勝手知ったる他人の家」って言うんだっけ?
何度も遊びに来ているから良く知っている家の中をあたしは迷わずに進んで、ゆーちゃんの部屋の前にたどり着いた。
そーっとドアノブを握って部屋のドアを開けようとしたけど、何か重いもので塞がれているようでドアはなかなか開かない。
それでも思いっきり押したら、ドアはそこに置いてあった学習机と一緒に「ぎぎっ」と軋んでゆっくりと開いた。
「……ゆーちゃーん。助けに来たよー」
下のゆーちゃんママに聞こえないようにそっと、あたしは声をかける。
でもゆーちゃんの返事は無かった。
さっきの怯えようだと、その辺に隠れてるんだろう。この部屋に隠れられそうな場所なんか1か所しかない。
あたしは「ゆーちゃーん」と声を掛けながら、クローゼットの扉を開いた。
――ざくっ
クローゼットが開くと同時に閃いたカッターナイフの刃が、あたしの太腿をえぐる。
1センチくらい突き刺さったその刃は、途中でパキンと折れて、床に落ちた。
「いっっっ!! ……痛っったぁいっ!!」
「え?」
両手で美術の時間に使うカッターを握りしめたゆーちゃんが、あたしの足元に転がる。あたしもそのまま押され、どんっと尻餅をついて、血の流れる太腿を押さえた。
「いぃぃ……いたぁい! なにすんのよ!」
「え? あ? あれ? あやめちゃん?」
「あやめちゃん? じゃないわよ!」
「ご……ごめん」
「ごめんじゃ……あぁ、まぁいいや。あたしもごめん」
「え?」
不思議そうにあたしを見上げるゆーちゃんを見たまま、背中に背負ったM-16の引き金を引く。
そこから発射された数十発のBB弾は、音も無くあたしの背後に迫っていた、恐ろしい顔のゆーちゃんママを打ち抜いた。
白い歯が剥き出しになった顎先を喉元から貫通して口の中へ。
そのゾンビは、どす黒い血を噴出しながら、仰向けに転がった。
太腿の傷が痛くて立ち上がれないあたしは、刃のない日本刀じゃなく、本当に刃のついているM-9でゾンビの頭を床に打ち付ける。
びくんと体を震わせたゾンビは、それきり動かなくなった。
「ゆーちゃん、ゆーちゃんママ……ごめんね」
銃剣を引き抜く。
とぷんとあふれる血。
ゆーちゃんは後ろからあたしに縋り付き、背中に顔を押し付けて震えていた。
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