強面さまの溺愛様

こんこん

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一章

閑話

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「それじゃあ、それぞれの合格を祝して!カンパーイ!!」

乾杯、という声とともにグラスが掲げられ、カチンと高い音が室内に響く。

ロゼは選抜合格を祝してリリー、ローラと共に
部屋で乾杯をしていた。

「いやぁ、しっかしほんとにダメだと思ってたからさー、選抜受かってるなんてまだ信じられないよ」
「リリーは面接対策かなりギリギリから始めたからね。本番どうだったの?」
「いやもうやばいのなんのって。まず何聞かれてるか分かんない事ばっかりだったからね!」
「もう、自信を持って言うことじゃないでしょう。少しはロゼを見習ったらどうなの」
「まあ、私もリリーの事は言えませんよ。模擬討伐の出来も良いとは言えないものでしたし」

乾杯したグラスに口をつけながら、各々好きに話し始める。

「ロゼは自己評価が低い所があるから。受かったってことは、実力が正当に評価されたって事だよ」
「そうそう!……あ、そう言えばさ、今日の昼間通知書届けに来た人の中にロゼの配属先の人居たでしょ?あの人がロゼの対戦相手だったんだよね?どんな感じの人だったのよ」
「……もしかして、話を聞いていたんですか?」
「あはは、ごめんちょっと聞こえちゃってさ」

悪気は無いのだと言い、ベッドの上で胡座をかきながら笑うリリーを見ながら、ロゼは苦笑いをする。

「……うーん、優しそうな人ではありましたかね。あ、あと気になったのが……審査中の対戦では研ぎ澄まされた雰囲気があったと思うんですけど、今日の昼に会った時にはあまりそのようには感じませんでしたね。どちらかと言うと、まあ、……気が弱そうな感じでした」
「まあ、戦っている時と普段でスイッチのオンオフがあるっていう事なのかもね。結構話し込んでたけど、何を話していたの?」

質問からして、ローラも昼間ロゼとディノ=ラコッタが話しているのを見ていたらしい。
そんなに目立っていたのかと少し恥ずかしく思いながら、ロゼは話した時のことを思い出す。

「………………簡潔に言うと、ロードさんの事、ですかね」
「っえ!ゼルド=ロード!?」
「……聞きたいような、聞きたくないような……」

ゼルドの名を聞いてぎょっとするリリーの傍ら、ローラは嫌な予感がしたのか苦い顔をしてロゼから目を逸らす。

「え、え、どんな話だった訳?わざわざロゼに話しかけてきたんでしょ?」
「いや、ロゼから話しかけてたよね。それで向こうが凄くビックリしてて………………な、何の話をしてたの?」

とうとうローラも好奇心に負けてしまったらしい。ビクビクしながらも、身を乗り出しながらキラキラとした瞳で見つめてくる。

「う、うーんと…………まあ、すぱっと言うと」
「「言うと?」」
「ロードさんが……対人戦で怪我をした、私の心配をしてくれていたみたいで」

少し照れ臭そうに話すロゼ。その小さな身体からは、恋する乙女特有の、聞いている者(特に独り身)が悶えて叫びたくなるような雰囲気が滲み出ている。
だがしかし、そんな非常に分かりやすいロゼの様子に、質問をした二人が気付くことはなかった。

「………………しんぱい?」
「……あの魔王が、人を心配?」
「ちょ、ちょっと!リリー失礼ですよ!ロードさんは魔王なんかじゃないですし…………け、結構優しい人なんですから」

少し頬を染めながらそう呟くロゼ。

「………………へ、へー。シラナカッタ」
「………………………………想像したら逆に怖いかも」

想像して悪寒がしたのか、白い顔で腕を擦りながら後ずさるローラと、何故か片言になるリリーであった。







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