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一章

〈地下牢と灯篭〉(2)

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 地下牢の牢屋は、一部屋一部屋が思っていたより広かった。

(小さな牢屋が沢山並んでいる刑務所の様な場所かと思っていたのだが。)

 真っ直ぐに石畳の廊下があり右側は石の壁、左側には一番手前に鉄の扉が1つ、奥に牢屋が3つある。

 まず、一番手前の鉄の扉に罠など無いか調べ、マリンにも確認をとる。

 分厚い鉄の扉を、ゆっくりと開く。

(4歳児には結構な重労働だ。)

 中にはしっかりと手入れをされているナイフや|情報収集(?)の為の禍々しい道具が収納されている。

(これ、どうやって使うかは考えたくないな。)

「うわ、はよ次行こう」

 しかし私は動かず、じっとそれらの内いくつかを眺める。

(しかしこれは、メスとして使えるな。)

 私は腐っても元外科医である。
 置いてある物が、医療器具として使えないか考えてしまう。

(これは、注射器として使えないかな…。)

「……あんさんそういう趣味あるん?」
「ん? いや? ……ああ、これって何に使うのかなぁって……」
「本当にそれ知りたいん?」
「えっ……いや~、いいです知りたく無いです」
「ほんならよろし……セス」
「何?」
「人をいじめたり、傷付けたりしたらあかんねんで」
「……そうだね、自分がされて嫌な事を誰かにしたら駄目だね」
「分かってるならいいんや、でも、自分の力に溺れて、不幸なるんやないで」
「うん、分かったよ」
「ほんまに分かっとるんかいな、4歳児やのに…」
「そうだね、でも失敗しそうになったら、マリンが教えてくれるでしょ」
「……そやな、その時はちゃんという事聞きくんやで~」
「は~い師匠、大丈夫ですよ~」
「ほんまに大丈夫なんかいな」

 私達は、物置を出て牢屋の方へと向かう。

 もちろん、姿と音を隠しながら。

 一番手前の牢屋は空だった。

 真ん中の牢屋にはボサボサの黒髪を生やした男が寝ている。

 一番奥の牢屋には…

「そこに誰かいるのかな?」
「!!」
「魔力を識別する目をもっとる、もしくは魔力そのものを感じ取る事が出来る」

(つまり、はっきり姿は見えていない……はず。)

「子供か? アランではないな」

 私は男の言葉を無視し、深呼吸をしてから彼を観察する。

「音がしない、という事は魔術師か」

 男は、牢屋の奥にいて、両腕を手枷で壁に繋がれている。

「ここは子供が遊びに来ていいところじゃぁないよ」

 髪は銀髪で腰まで伸びており、目には包帯がぐるぐると巻かれている。

「……」

 思い当たる人物はいた。
 母の話に出て来た人物だ。

「だんまりかい?」

 音魔法で声のトーンを低くする。

「貴方は、レオン・レナ・クリステル様ですね」
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