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一章

〈地下牢と灯篭〉(3)

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 レオン・レナ・クリステルは父の弟、つまり私の叔父だ。
 彼には放浪癖があり、時々フラっと王宮に訪れるのだと母が言っていた。
 そして最近は見かけていないとも……

「おや? 声に微かに魔力が混じってるな、君は声を変えてるね」

(こやつ……やりおる。)

「でも、私の声が実際にどんな声かは分からない。そうですね?」
「……」

 私は相手に聞こえない様にマリンに話しかける。

「彼を知ってる?」
「知っとるで、レオンで間違いなさそうや……でもどうしてこんな所に……というか何でレオンって分かったんや?」
「父が、母の不倫を疑っているなら、不倫相手を探す筈だ」
「……」
「髪は銀髪、目は薄い紫、容姿は整っていて、王宮内にもふらっと入って来れる」
「なるほどな」
「でも大臣や、兵士の可能性も捨てきれない。だから吹っかけてみたんだけど…マリンがいたから意味無かったね」
「わてに、任しときい!」
「頼りにしてますぜ、師匠!」

(さて、レオンとやらを観察……というかあの体勢はきつそうだな。)

 レオンは石の床に座って、両手を挙げた状態から動けない。
 そしてこの国の気候は、日本とそんなに変わらない。
 今は秋、石の壁と石の床は冷たく徐々に体温を奪う。
 体の至る所に傷があり、血は止まっているが痛々しい。

(この状況下でよくもまああれだけ悠然としていられるな。)

「……」

 私は腐っても医者である。
 そして目の前の傷だらけの人を無視出来る程、適当に医師としてやってきた訳ではない。

(彼《レオン》に掛かっているのはおそらく冤罪、しかも私の存在が関わっている。)

 私は軽くため息を吐いてから、マリンに言った。

「マリン、この牢屋に入る事は出来る?」
「ん~ちょっと難しいかもしれへんな、異常な数のトラップやで」

 よくよく目を凝らしてみると、確かに10以上のトラップが仕掛けられていた。

「ちょっとこれは私でも難しいかな………マリン、君にある程度魔力を譲渡するから、このトラップ解く事って出来る?」
「……分からん、って開けて何する気やねん!」
「いや~まあまあ」
「いや~まあまあって……はあ、分かった、ほなやってみるわ」
「やった! ありがとうマリン師匠!」
「……」

(おっと、目の無いマリン師匠からじっとりとした視線を感じる…くわばらくわばら。)

 私はマリンに魔力を譲渡する。

「……ん? おおストップストップ、そんなんで大丈夫やで」
「おお、よかった。じゃあよろしくお願いします!」
「ほな、いくで」

 マリンが魔法を使ってトラップを解く。

(おお、ああやって解くのか、勉強になるな。)

 10分程して……

「おお、出来た……全部解けたで」
「うーむ凄い、ああやって解けばいいのか」
「ま、セスなら次からやれるやろ」
「う~ん、場合によるかな~、今度ちゃんと教えて~」
「分かったで、ほな、これから何するんや?」
「……まあ、見てて」

 そう言って私達は牢屋の中へ入った。
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