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一章
〈町と海風〉(5)
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さて、色々吹っ切った私は兎に角叔父の体の状態を調べさせて貰った。
これは半ば無理矢理である。
「ほら、叔父……レオン! まず横なって!」
叔父の腕を引っ張る。
「ええ~、ちょっとまだ話が終わって……」
素が全開の私に、叔父が少し引いている。
(が、そんな事は気にしない。)
「それは寝ながらでも出来るでしょ!」
「はいはい……」
叔父がベットに横たわる。
「魔力抜いて」
「え~幾ら何でも……」
「抜け!」
「もうちょっと優しく……」
「いいから!」
「……」
叔父はしぶしぶといった感じで魔力を抜いた。
「左腕上がる?」
左腕は少し宙に浮くだけでほぼ動かない。
(全く、何年あの体制でいたんだ!)
私はリハビリの容量で腕を動かし、やり方を教えていく。
「骨が弱くなってる可能性があるから、あんまり激しく動かさないで、毎日少しずつ体を慣らしていって」
「う、うん分かった。え~とで、セスちゃん」
「なに? ……あ、うん分かった、とりあえず食事が必要だよね」
「セスちゃん?!」
「食料は……置いてるわけないか、置いてあっても腐ってるし……」
「セスちゃん、聞こえてる?!」
私はハッと意識を叔父の方に戻した。
「え~と、何?」
「戻ってきてくれて何よりだよ、あの、養子の件」
「却下」
即答である。
「へっ?!」
「たぶん、私の計画上、それは不味い」
「えっ、計画って?」
「あ、レオンも協力して貰うから」
「さらっと練りこまれてる?!」
「まあまあ、安全な後方的な役割だから」
私はにこやかに言う。
(安全かはわからないがな。)
「えーっと、安全じゃあないの?」
(あ、嘘かどうか分かるんだったな。)
「見方による。例えば王宮の中に居たとしても叔父に攫われる事だってある!」
「それは……確かに」
「あと、私の事はセスって呼んで」
「……え~とセス、その、あ、ありがとうね、色々と」
「すっごい今更だけど、まあいいや、というかこれ外してくれない?」
私は右腕にはまっている金の腕輪を指差す。
「でもそれ外したら帰っちゃうでしょ」
私は頭を抱えると、盛大にため息をついてから言った。
「……分かった、分かりました、お約束します、貴方がいいと言うまで貴方の側に居ます、はぁ……手、貸して」
「えっ、あ、はい」
叔父は最早タジタジである。
自分の小指を叔父の小指と絡め、懐かしい歌を日本語で歌う。
『指切り拳万嘘ついたら針千本飲~ます、指切った。』
「えっ、何、それ?」
「とある民族の、約束の時に使う呪文です。本当はもっと長いんですが、歌詞が怖いからか、現地では全ては歌われないんですよ」
「へ、へぇ~そうなんだ」
私はそっと小指を離すと、自分の小指の付け根が黒くなっている事に気がついた。
(もう、あんまり驚かないな。)
「機能しているみたいですね」
「……ホントだ」
「いいですか、食料を買いに行こうにもこの年齢の少女が町に出たら危険がありそうな事位私にだって分かるんです」
「まだそれ諦めてなかったのか……」
私は呆れて言う。
「レオン、貴方は飢え死にするつもりですか…」
「えっ、自分で行こうと思ってたし……」
「今の貴方はまず自分の体を大切にすべきです! 寝てて下さい! 私に甘やかされといて下さい!」
(そう言いつつ、結構くたびれているなぁ私!)
私は、ちょっと投げやりになっている気がしたが、今はそんな細かい事は、置いておく事にした。
「……分かった、お言葉に甘えるよ」
「えっ?」
ちょっと拍子抜けである。
「貸して」
叔父は私の腕を掴むと、自分の指を噛み、血を一滴腕輪に垂らした。
金の腕輪はカシャンと音を立てて外れた。
「はい、これでおしまい、魔力は普通に使えるでしょ」
私の腕から外れた腕輪が床に転がる。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして、行き方は分かるかな?」
その後私は、町への道、通貨の価値、気を付ける事などを教わって家を出て、町に向かった。
これは半ば無理矢理である。
「ほら、叔父……レオン! まず横なって!」
叔父の腕を引っ張る。
「ええ~、ちょっとまだ話が終わって……」
素が全開の私に、叔父が少し引いている。
(が、そんな事は気にしない。)
「それは寝ながらでも出来るでしょ!」
「はいはい……」
叔父がベットに横たわる。
「魔力抜いて」
「え~幾ら何でも……」
「抜け!」
「もうちょっと優しく……」
「いいから!」
「……」
叔父はしぶしぶといった感じで魔力を抜いた。
「左腕上がる?」
左腕は少し宙に浮くだけでほぼ動かない。
(全く、何年あの体制でいたんだ!)
私はリハビリの容量で腕を動かし、やり方を教えていく。
「骨が弱くなってる可能性があるから、あんまり激しく動かさないで、毎日少しずつ体を慣らしていって」
「う、うん分かった。え~とで、セスちゃん」
「なに? ……あ、うん分かった、とりあえず食事が必要だよね」
「セスちゃん?!」
「食料は……置いてるわけないか、置いてあっても腐ってるし……」
「セスちゃん、聞こえてる?!」
私はハッと意識を叔父の方に戻した。
「え~と、何?」
「戻ってきてくれて何よりだよ、あの、養子の件」
「却下」
即答である。
「へっ?!」
「たぶん、私の計画上、それは不味い」
「えっ、計画って?」
「あ、レオンも協力して貰うから」
「さらっと練りこまれてる?!」
「まあまあ、安全な後方的な役割だから」
私はにこやかに言う。
(安全かはわからないがな。)
「えーっと、安全じゃあないの?」
(あ、嘘かどうか分かるんだったな。)
「見方による。例えば王宮の中に居たとしても叔父に攫われる事だってある!」
「それは……確かに」
「あと、私の事はセスって呼んで」
「……え~とセス、その、あ、ありがとうね、色々と」
「すっごい今更だけど、まあいいや、というかこれ外してくれない?」
私は右腕にはまっている金の腕輪を指差す。
「でもそれ外したら帰っちゃうでしょ」
私は頭を抱えると、盛大にため息をついてから言った。
「……分かった、分かりました、お約束します、貴方がいいと言うまで貴方の側に居ます、はぁ……手、貸して」
「えっ、あ、はい」
叔父は最早タジタジである。
自分の小指を叔父の小指と絡め、懐かしい歌を日本語で歌う。
『指切り拳万嘘ついたら針千本飲~ます、指切った。』
「えっ、何、それ?」
「とある民族の、約束の時に使う呪文です。本当はもっと長いんですが、歌詞が怖いからか、現地では全ては歌われないんですよ」
「へ、へぇ~そうなんだ」
私はそっと小指を離すと、自分の小指の付け根が黒くなっている事に気がついた。
(もう、あんまり驚かないな。)
「機能しているみたいですね」
「……ホントだ」
「いいですか、食料を買いに行こうにもこの年齢の少女が町に出たら危険がありそうな事位私にだって分かるんです」
「まだそれ諦めてなかったのか……」
私は呆れて言う。
「レオン、貴方は飢え死にするつもりですか…」
「えっ、自分で行こうと思ってたし……」
「今の貴方はまず自分の体を大切にすべきです! 寝てて下さい! 私に甘やかされといて下さい!」
(そう言いつつ、結構くたびれているなぁ私!)
私は、ちょっと投げやりになっている気がしたが、今はそんな細かい事は、置いておく事にした。
「……分かった、お言葉に甘えるよ」
「えっ?」
ちょっと拍子抜けである。
「貸して」
叔父は私の腕を掴むと、自分の指を噛み、血を一滴腕輪に垂らした。
金の腕輪はカシャンと音を立てて外れた。
「はい、これでおしまい、魔力は普通に使えるでしょ」
私の腕から外れた腕輪が床に転がる。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして、行き方は分かるかな?」
その後私は、町への道、通貨の価値、気を付ける事などを教わって家を出て、町に向かった。
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