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第九章:図書館での殺人未遂事件
116 僕は強い男になりたい
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スタイズさんはティムさんからもう一つの包みを受け取ると、手際良く包みを剥ぎ取った。
中身はこちらも木製の剣で、長さは僕の身長より少し短いくらいのものだ。
彼の大きな身体だと、これぐらいが丁度良いのだろう。
片手で剣を持っているだけなのに、凄く様になっているのは、彼が元軍人だからなのだろうか。
彼の格好良い姿をもっと見たくなって、剣を構えてみてほしいと頼んでみたところ「ああ、いいよ」と、軽い感じで応えてくれたんだ。
するとスタイズさんは、僕とティムさんに背を向けて距離を取った。
居間は広いとはいえ、長い剣を扱うのだから、周りの物に当たらないように気を付けないといけないよね……
僕は彼の背中を見つめて、「その時」を待つ。
息を大きく吐く音が聞こえてきた。
その瞬間、空気がピリッと張り詰めたような気がした。
スタイズさんがゆっくりとした動きで僕たちの方に向き直ると、その表情はさっきまでの柔らかなものとは全く違うものに変わっていた。
視線は獲物を捉えた獣のように鋭く、唇を固く引き結んでいて、臨戦態勢に入っているようだ。
彼は両手で柄を握り、頭の右横まで上げて、剣先を前方に向ける。
それと同時に、両足を肩幅よりも少し広めに開き、左足を前にして、腰を下ろした。
……威圧感が凄い。
僅かな音を立てることすら許されない静寂の中で、眉ひとつ動かさず、冷徹な顔で睨まれる。
「一切の言い訳を許さない」と言わんばかりなその姿に、僕は息をするのも忘れてしまいそうになる。
もし僕が悪人ならば、怖さのあまりに、すぐに両膝をついて頭を下げて、謝罪と許しを請う言葉を口にするだろう。
しばらくの間、彼は剣を構えたままで動かなかった。
この後はどう動くのだろうか?
構えるだけ?
確かに「剣を構えているところを見たい」とは言ったけれど。
少しでいいから、剣を振っているところも見てみたいな……
お願い、スタイズさん……!
僕は両手を握って、祈るように彼のことを見つめる。
そして、僕の願いが届いたのか、彼が動いた……!!
彼は剣を勢い良く前方に突き出すと、続いて下から降り上げた。
剣先が唸るような音を立てて、空気を斬り裂く。
そして流れるように、腕を頭の上から力強く振り下ろし、剣先は床スレスレのところでピタリと止まった。
一切の無駄がない、力強く、しなやかな動き。
きっと、長年の鍛錬と実戦経験によるものなんだろう。
か、格好良い……!!!
彼の初めて見る姿に、胸の高鳴りが止まらない。
最後の一振りを終えた彼は、柄を握る手をお腹のあたりに動かして、剣先を上に向ける。
そして彼は目を閉じて、フーと息を吐きながら、構えを解いた。
「……とりあえず、こんな感じかな?」
彼の軽やかな声で、さっきまでの張り詰めた空気が、一気に穏やかなものへと戻った。
僕の身体から一気に力が抜けるのと同時に、凄いものを見せてもらった感動で、自然と笑みがこぼれてしまったんだ。
この感動を伝えたい!
そう思った僕は、スタイズさんの元に駆け寄った。
「スタイズさん! 凄く格好良かったです!! えっと、あの、構えている時の……キリっとした感じとか、剣を振る時の、その……ブワッとした感じが……!!」
次々と湧き上がる嬉しい気持ちを彼に伝えたいのに、興奮のあまり、言葉が出てこない。
とにかく、身振り手振りで凄く感動したことを伝えると、彼は満面の笑みで僕の頭をポンポンと撫でてくれたんだ。
「そこまで喜んでもらえるなんて、とても嬉しいよ。ありがとう、セルテ君」
少し照れているのか、眉を下げてはにかむ姿が微笑ましい。
真面目で、優しくて、穏やかで、時には強くて、怖いけれど、僕のことを大切にしてくれる人……
彼にとって僕は「小さくて頼りない子供」なんだろう。
そりゃまぁ、僕は彼の半分も生きていないし、子供なのはその通りなんだけど。
ただ守られるだけじゃなくて、彼の支えになって、対等な関係になりたいんだ。
その為には、心も身体も強くならないと……!!
「スタイズさん、僕も頑張って強い男になります! 剣術も教えて下さいね!」
「ああ。少しずつ身体を鍛えながら、剣術も覚えていこう。剣も扱える魔術士ってのは、凄そうだな!」
「はい!!」
そういえば、娯楽小説の中には「魔法剣士」と呼ばれる存在が登場するものがある。
剣に魔法を纏わせて斬りつけたり、魔法で自分や仲間の身体能力を強化させたり、魔法で相手を弱体化させてから戦ったりする。
確か数年後には「魔王」が誕生して、魔法でしか倒すことができない怪物が人間を襲うようになるらしい。
そして魔術士の僕は、そいつらと戦わないといけなくなる。
それまで訓練を頑張って、凄い魔法剣士になって、スタイズさんを守れるようになりたいんだ!
僕がそう言うと、スタイズさんは力強い笑顔で頷いてくれた。
「君だけに危険な戦いをさせるつもりはない。魔法を使えない私にも、魔道具での支援など、できることはあるはずだ。君のパートナーとして、私も一緒に戦うからな!」
優しいだけじゃなくて、僕に力を与えてくれる人……
彼の言葉が嬉しくて、顔が緩んでしまう。
これからもよろしくね、スタイズさん!!
中身はこちらも木製の剣で、長さは僕の身長より少し短いくらいのものだ。
彼の大きな身体だと、これぐらいが丁度良いのだろう。
片手で剣を持っているだけなのに、凄く様になっているのは、彼が元軍人だからなのだろうか。
彼の格好良い姿をもっと見たくなって、剣を構えてみてほしいと頼んでみたところ「ああ、いいよ」と、軽い感じで応えてくれたんだ。
するとスタイズさんは、僕とティムさんに背を向けて距離を取った。
居間は広いとはいえ、長い剣を扱うのだから、周りの物に当たらないように気を付けないといけないよね……
僕は彼の背中を見つめて、「その時」を待つ。
息を大きく吐く音が聞こえてきた。
その瞬間、空気がピリッと張り詰めたような気がした。
スタイズさんがゆっくりとした動きで僕たちの方に向き直ると、その表情はさっきまでの柔らかなものとは全く違うものに変わっていた。
視線は獲物を捉えた獣のように鋭く、唇を固く引き結んでいて、臨戦態勢に入っているようだ。
彼は両手で柄を握り、頭の右横まで上げて、剣先を前方に向ける。
それと同時に、両足を肩幅よりも少し広めに開き、左足を前にして、腰を下ろした。
……威圧感が凄い。
僅かな音を立てることすら許されない静寂の中で、眉ひとつ動かさず、冷徹な顔で睨まれる。
「一切の言い訳を許さない」と言わんばかりなその姿に、僕は息をするのも忘れてしまいそうになる。
もし僕が悪人ならば、怖さのあまりに、すぐに両膝をついて頭を下げて、謝罪と許しを請う言葉を口にするだろう。
しばらくの間、彼は剣を構えたままで動かなかった。
この後はどう動くのだろうか?
構えるだけ?
確かに「剣を構えているところを見たい」とは言ったけれど。
少しでいいから、剣を振っているところも見てみたいな……
お願い、スタイズさん……!
僕は両手を握って、祈るように彼のことを見つめる。
そして、僕の願いが届いたのか、彼が動いた……!!
彼は剣を勢い良く前方に突き出すと、続いて下から降り上げた。
剣先が唸るような音を立てて、空気を斬り裂く。
そして流れるように、腕を頭の上から力強く振り下ろし、剣先は床スレスレのところでピタリと止まった。
一切の無駄がない、力強く、しなやかな動き。
きっと、長年の鍛錬と実戦経験によるものなんだろう。
か、格好良い……!!!
彼の初めて見る姿に、胸の高鳴りが止まらない。
最後の一振りを終えた彼は、柄を握る手をお腹のあたりに動かして、剣先を上に向ける。
そして彼は目を閉じて、フーと息を吐きながら、構えを解いた。
「……とりあえず、こんな感じかな?」
彼の軽やかな声で、さっきまでの張り詰めた空気が、一気に穏やかなものへと戻った。
僕の身体から一気に力が抜けるのと同時に、凄いものを見せてもらった感動で、自然と笑みがこぼれてしまったんだ。
この感動を伝えたい!
そう思った僕は、スタイズさんの元に駆け寄った。
「スタイズさん! 凄く格好良かったです!! えっと、あの、構えている時の……キリっとした感じとか、剣を振る時の、その……ブワッとした感じが……!!」
次々と湧き上がる嬉しい気持ちを彼に伝えたいのに、興奮のあまり、言葉が出てこない。
とにかく、身振り手振りで凄く感動したことを伝えると、彼は満面の笑みで僕の頭をポンポンと撫でてくれたんだ。
「そこまで喜んでもらえるなんて、とても嬉しいよ。ありがとう、セルテ君」
少し照れているのか、眉を下げてはにかむ姿が微笑ましい。
真面目で、優しくて、穏やかで、時には強くて、怖いけれど、僕のことを大切にしてくれる人……
彼にとって僕は「小さくて頼りない子供」なんだろう。
そりゃまぁ、僕は彼の半分も生きていないし、子供なのはその通りなんだけど。
ただ守られるだけじゃなくて、彼の支えになって、対等な関係になりたいんだ。
その為には、心も身体も強くならないと……!!
「スタイズさん、僕も頑張って強い男になります! 剣術も教えて下さいね!」
「ああ。少しずつ身体を鍛えながら、剣術も覚えていこう。剣も扱える魔術士ってのは、凄そうだな!」
「はい!!」
そういえば、娯楽小説の中には「魔法剣士」と呼ばれる存在が登場するものがある。
剣に魔法を纏わせて斬りつけたり、魔法で自分や仲間の身体能力を強化させたり、魔法で相手を弱体化させてから戦ったりする。
確か数年後には「魔王」が誕生して、魔法でしか倒すことができない怪物が人間を襲うようになるらしい。
そして魔術士の僕は、そいつらと戦わないといけなくなる。
それまで訓練を頑張って、凄い魔法剣士になって、スタイズさんを守れるようになりたいんだ!
僕がそう言うと、スタイズさんは力強い笑顔で頷いてくれた。
「君だけに危険な戦いをさせるつもりはない。魔法を使えない私にも、魔道具での支援など、できることはあるはずだ。君のパートナーとして、私も一緒に戦うからな!」
優しいだけじゃなくて、僕に力を与えてくれる人……
彼の言葉が嬉しくて、顔が緩んでしまう。
これからもよろしくね、スタイズさん!!
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