異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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留学帰国後 〜王宮編〜

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「これっ、て」



ネイサム・タロットワーク。

それは、エル・エレミア王国の建国の祖、
タロットワーク一族の始祖、マデイン・タロットワークの伴侶たる男性の名だ。

そして、私と同じ、異世界人。

ぺたん、と力が抜けた。
ランタンを取り落としそうになるが、すんでの所でこらえる。

周りを見回せば、この小部屋はなんだか小さな書斎のように見えた。もしかしたら、ここはネイサム・タロットワークの書斎だったのかもしれない。

この城は、マデイン・タロットワークがこの国を興した時に建築したもののはず。だから、ネイサム・タロットワークもこの城で生涯を閉じたのだろう。
建国の女王の伴侶。王配として彼はどんな風に過ごしたのだろうか。ここはもしかしたら、彼の秘密基地だったのかも。



「ここが、『知識の部屋』、かあ」



きょろきょろ、と見渡せば、壁にくっ付くように設えられた書棚には色々な本が並んでいた。絵本から、図鑑。難しそうな魔法書もたくさん。

…できれば、ここは、このままにしておきたいな。
あまりたくさんの人に公開したくない。このままひっそり、知られないままの場所にしてやりたい。

そう思った私は、机の引き出しに入っていた本と、メモを手に取る。『私の家族へ』ってことは、これを子孫であるゼクスさんに渡せばいいのよね。
よし、戻ろうかな。………あれ、どうやって?



「えっ、嘘でしょ?私どうやって来たんだっけ!?」



慌てて周りを確認。すると、奥に大きな暖炉。



「・・・あーね、まあそういうことよね」



暖炉に入り、またあの印を探す。
照明魔法ライトをランタンから出し、ランタンは暖炉の外に置く。またここに来るかもしれないしね。

掌の上に出した照明魔法ライトをかざして調べれば、またも足元に魔法陣が現れる。あー…この感覚嫌だ…



********************



私はフリーフォール2回分を味わい、若干酔いながらもタロットワーク邸へ帰宅。もう書庫に行こうとは思わなかった。

セバスにゼクスさんが帰ってきたら教えて、と伝えて自分の部屋でちょっぴりお昼寝。そして夕方に帰宅したゼクスさんを迎え、私は今日あったことを話した。



「そのような事が・・・」

「はい。これがその本とメモです」

「・・・コーネリア、これが読めるのだな?」

「えっ?はい」

「・・・」

「あれっ?ゼクスさん?」

「いやこれは・・・古語ですぞ・・・?」

「えっ?古語?」



ひょい、と覗き込んだ。メモは普通に読めている。
ん?古語?こごってなに?昔の言葉って事よね?

でも私には、読める。ていうか、普通すぎて気づかなかった。
これ、日本語だ。異世界の言葉。…あれ?これってもしかしてこっちだと『古語』って呼ばれてたの!?



「えっ?あ、あれ?ごめんなさい、私普通に読んでました」

「いや、コーネリアは前から魔法文字も普通に読んでたからのう。今更って気持ちもあるのだが」

「あっいや、その、この文字、では普通に使われていた文字で」

「なんですと?・・・いや、でもそういう事か、始祖マデインの伴侶は異世界人でありましたな。そうか、王配ネイサムが教えた文字、という事か」

「まさか、ゼクスさん?タロットワークの魔術書にも『古語』が使われていたって言ってませんでした?」

「ああそうだが、これとは種類が違いそうですな。『古語』にも色々と種類がありまして。これは主に書物に見かけるものに似ておる」



何やら『古語』にはいくつか種類があって、ネイサム・タロットワークのメモにある文字は『解読不能』と種別される物にあたるらしい。哀れ日本語、解読不能とまで…

だがしかし、私には読める。そりゃそうだ、日本人だもの。
じゃあ私がメモってる文字、たまに日本語で書いてたけどもあれもなんか書いてるくらいに思われてたのか…?
セバスに聞いたら、何かの絵かと思っていたらしい。すみませんね、特徴的な字で…



「えっ?じゃあこっちの本の中身は?」

「ああ、こちらは読めそうですな。少々時間がかかりそうですが」

「なら、こちらはお預けします。・・・このメモは私が貰ってもいいですか?」

「構わんよ。・・・気になるかな?」

「はい、一応・・・」



私以外の人が書いた、日本語のメモ。
特にこれといった手がかりでは無いかもしれない。
でも、新たに発見した手がかりのひとつではある。

お守り替わり…というのもおかしいかな?

話し終わった私達を見守っていたセバスが、私に一言。



「では、コーネリア様。夏至祭のドレス一式が届いていますので、袖を通していただけますか?」

「・・・・・・はい?」

「夏至祭のドレスができています」

「えっ!?そんなのいつ頼んだの!?」

「そうですね、2週間ほど前でしょうか?」

「私知らないけど!?」

「はい、ご用意したのはカイナス伯爵でございますので」

「えっ!?シオンさん?何で!?」

「はい、行きますよコーネリア様」
「ターニャ、お着替えの前にお風呂ですよ」

「えっ!?ターニャ!?ライラ!?お風呂!?」



両腕をガシッと捕まれ、ズルズルと引きずっていかれる私の体。
えっ、何でシオンさんが私のドレスを用意したの?夏至祭?そういえばあと2週間くらいだっけ?色々とあって忘れてましたけど!



「・・・何だか、娘を嫁に出す父親の気分だの」
「僭越ながら旦那様。私も同じ心持ちでございます」

「ひと時でもいい、コーネリアの心の支えとなってくれれば良いのだがな」
「それにはカイナス伯爵の覚悟に寄りますね。コーネリア様の心の氷を溶かすことができれば、ですが」



********************



お風呂で磨かれ、キレイになった状態で、仕立ての良いドレスが肌を滑る。しっとりと滑らかな生地は極上のシルク。白を基調として、アイスブルーのシフォンやレースで彩られたドレス。



「ああああああ高そう」

「何言ってるんですか、コーネリア様ったら。カイナス伯爵も高給取りですから、これくらい余裕ですよ」

「何でどうしてシオンさんが私にドレスなんて仕立ててきてるの!?しかも何でサイズぴったりなの!バストもウエストもジャストサイズ過ぎて怖い!」

「それは当たり前ですよ、こちらからコーネリア様のドレスサイズはきっちりお教えしましたから」

「はあーーー!?いつ!?」

「ほら、前にスコーンお持ち帰りした時ですよ?夏至祭のお話をしに、旦那様の所へいらしていたじゃないですか。その時ライラがカイナス伯爵にお渡ししてましたよね?」



あああああ!あの時の封筒!
お仕事の情報だと思ってたヤツ!確かにシオンさん『仕事じゃないけど秘密』って言ってたし!



「えっ、だから何でドレスを仕立ててくれたの?」

「ドレスだけじゃないですよ、ほら」
「コーネリア様、こちらにコサージュとアクセサリーが届いています」

「コサージュ?」



ドレスを着付けてもらい、振り返る。
テーブルの上にライラが用意したのは、揃いのパールで作られているネックレスとピアス。そして、コサージュ。

使われている色は、シオンさんの瞳の色。
ドレスに使われているアイスブルー。
そしてタロットワークを表す白と、金。

白と水色の花で作られたコサージュに、アイスブルーのアクアマリン。金色のリボンで彩られている。



「これ、って・・・」

「コーネリア様?夏至祭でエスコートをする、ということは女性が身につけるドレスやアクセサリー、コサージュの全てを用意するものなんですよ」

「私、てっきり、当日のエスコートの事だと思って」

「ふふふ、カイナス伯爵もわざと言わなかったんでしょうね。ライラに『コーネリア姫には驚かせたいから秘密で』って言ってたそうですから!」
「申し訳ございません、コーネリア様。でも、カイナス伯爵の目論見は成功ですね」



ああ、私今どんな顔をしているんだろう。
顔から湯気が出そう。私、こういうことだってわかってたらあんなにあっさりOKしてなかったわよ!

どうしてシオンさんも言わないのかな、もう!

帰ってきたらアナスタシアも、ドレスやコサージュを見て『とてもよく似合っているよ、姫』と蕩けるような微笑みをくれた。

ああ、当日どんな顔してシオンさんに会えばいいのか。
コサージュ、どこに付けよう。平気な顔して胸に飾るなんてできっこないんですけど!!!
だからって知らないふりして髪飾りにするには!面の皮厚くなれない!!!

その日の夜は動揺しすぎて寝付けなかった。
ずるい、シオンさん・・・

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