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真実の扉 ~歴史の裏側~
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しおりを挟むあれから数日後。
私はまた、王宮にいた。目的は、あの小部屋。
ネイサム・タロットワークの書斎だ。
あれから、あの手記をさらに見返して見たけれど、それ以上の記述は見つからなかった。
もう1枚、あの小部屋で見つけたメモ。
『この地へ辿り着いた遥かな未来の誰かへ。
願わくば、この手記を私の家族へ
───────ネイサム・タロットワーク』
このメモについても、これ以上の情報はない。
ただし、あの部屋の書物でまだ読めるものがあるかもしれない。
そう思った私は、もう一度あの部屋へ行くことを決めた。
…この手記も、あの引き出しに閉まっておくのが1番かもしれないしね。
「さて、1人でいいのかの、コーネリア」
「はい、危なくはないと思いますし。
というか、そもそも『祈りの鐘』の周りって警備は立たないんですか?」
「はて、どうだろうの、セバス」
「そうですね、いつもは誰かが巡回しているとは思いますが。今回は私が周りに人が来ないように、人払いをしておきますのでご安心ください」
ふむ、やっぱりいつもは歩哨が立つようだ。
ならば、あの時も交代時間だったのかな?そういうことにしておきましょうか。
私は、蓬琳で見つけたあの魔法陣が書かれたメモも持参した。もしかしたら、あれが何かわかる資料もあるかもしれない。
勇伯父さんも、最後まであれこれと帰還方法を調べていたとあの手記にも記述があった。
ならば、あの書斎には何かヒントがあってもおかしくない。
…ただ、もしも見つけたのだとしたら、何故伯父さんは帰らなかったのだろうか。
帰れなかった、のかな。マデインさんの為に。
私の脳裏に、シオンの顔が浮かんだ。
今の私なら、どっちを取るの?
チャリ、と胸元に落ちるペンダントに触れる。
夏至祭のコサージュについていたアクアマリン。シオンの瞳の色の宝石。私はこれをペンダントトップにしている。
…今度会う時は、これに気づいてくれるだろうか?
考え事をしながら、暖炉のある小部屋へ。
私は深呼吸して、照明魔法を使う。
ぐう…フリーフォールは…なんとかならんのか…
********************
足元にある、ランタンに照明魔法を入れて灯り代わりにする。あの時足元に置いて帰って良かったわ。
まずは、引き出しに手記をしまっておこう。
引き出しを開けようとしたその時、私は手記を取り落とした。
床にぶつかり、ページが開く。
「・・・なんで先に本を机におかなかったのよ私。
そりゃ落とすでしょ、全く、もう・・・」
小脇に挟んで開けようとしたのが間違いだった。
横着したのは自分だが、ついつい独り言が。
拾い上げるためにしゃがみこみ、ページを見たその時だ。
見慣れないページが、目に入ったのは。
「・・・ちょっと待って。こんなページ、あった?」
思わず声が出る。
何度も読み直したこの手記。こんなページなんてなかった。
信じられず、前後のページを確認する。
前後の数ページには覚えがある。
でも、このページには見覚えがない。
読み落とした?まさか、そんなことはない。
よくよく思い返せば、ここにはなにも書いていなかったはずだ。
挿絵があるでもなく、大幅にページの余白が空いているな、と思ったところが何ヶ所かあったはず。
「まさか、嘘、でしょ」
そのどれもに、また見慣れない書き込みがあった。
もしかして、これって、ここでしか読めないページなの?どうなってるのよこれ!
「あぶり出し?ブラックライト?
そんな謎解き要素入れなくていいっての、伯父さん・・・」
ああそうだ、伯父さんも父の血族だ。
何かにつけて、楽しいことが大好きだったっけ。
これくらいは『お楽しみ』として組み込んだのかしら?
でもこれ、気付かなかったらどうするつもりだったのか。
「なになに、って、これ・・・!」
それは、自分の遺産…形見についてだった。
全部で3つあり、それをこの小部屋に隠したらしい。
見つけられたなら、どうかそれを自分の家族へ渡してほしいと書かれていた。
何はともあれ、見つけてみないことにはなんとも言えない。
私は記述に従い、家探しを始めた。
1つ目は、メガネ。
確かに、私の記憶には伯父さんは眼鏡をかけていた気がする。
おそらくその眼鏡だろう。ケースにも日本語でロゴがある。
2つ目は、遺髪。
懐紙のような紙に包まれた、1束の黒髪。
父親も、白髪の少ないフッサフサだったっけ。
伯父さんも、あまり髪が少なくならない人だったのかもね。
「あった、3つ目、って・・・これ」
3つ目は、本棚の上部に置いてあった。
私は近くにあった脚立を引っ張り、登って手に取る。
それは小箱。
開けるとそこには、結婚指輪が入っていた。
「イニシャル・・・『R to I』。『涼子から勇』か・・・」
それは、勇伯父さんと、涼子伯母さんの結婚指輪。
ここに隠しておいたんだ。思い出…にしようとしたのかな。
脚立から降りる時、腕がぶつかったのか、一冊の本が落ちた。
あー…また戻すのに登るのね…?
見つけた結婚指輪の箱を机に起き、眺める。
…これ、『家族に』ってあるけど、向こうの世界の家族に渡して欲しいって事?
ど、どうやって渡すのよこれ。その前に戻れないと無理じゃない?
センチメンタルになった私だが、戻してあげたくてもこれは無理だ。だって私自身、どうやって向こうに戻るわけ?
それを探してここに来てるんですよ、私。
やれやれ、と思いながらもさっき落とした本の事を思い出した。拾ってこないとね。
本を拾い上げてなんとなくパラッと開いた。
─────それすらも、運命だったのかもしれない。
「え、何よこれ・・・『帰還術式』?」
紛れもなく、そこに書かれた文字は、『帰還術式』と書かれていた。
半信半疑で、その記載を読み進める。
この記載も、恐らく勇伯父さんのものだ。
それは、マデイン・タロットワークが、ネイサム・タロットワークに残した、最後の意志。
マデイン・タロットワークは、ネイサム・タロットワークの為に時間を費やし、『帰還術式』を組み上げたらしい。
彼女は死ぬ間際、彼にその『術式』を託した。───死ぬまで黙っていてごめんなさい、貴方はこれで元の世界に帰れるのよ、と。
『本当にごめんなさい、ネイサム。
愛する貴方を失いたくなかった、ずっと嘘をついていた。
この術を使えば、貴方は元の世界に帰れる。
・・・でも、側にいて欲しかった、帰って欲しくなかったの。
こんな最後の時になって渡す私をどうか許して』
マデインが逝ってからも、勇伯父さんはその術を使えなかった。けれど、手元に残しておくのも辛かった。
知己となった蓬琳の王に託し、『いつかこれを必要とする者が来るまで預かっていて欲しい』と言って、預けたそうだ。
その術式を刻んだ魔法陣が、そこに書いてあった。
「っ、これって皇妃様が持ってきたあの本の表紙にあったやつ!?」
私は持ってきたあの紙切れを広げる。
灯りの元で比べる。全く遜色ない、同じものがそこにあった。
これを、起動すれば、私は………還れる?
あとの記述には、この術式は生涯1度しか使えないこと。
術を起動するには、この部屋でなければならないこと。…補助する魔法がこの部屋にはかかっているそうだ。
起動するには、『心から帰りたい』と望むこと。
ごくり、と喉が鳴る。
還れる、んだ。
ただし、もう2度とここに来る事はないだろう。
色んな思いがせめぎ合う。
ゼクスさん、セバス、ターニャ、ライラ、別邸のみんな。
国王陛下、シュレリア、シリス殿下、エリーにカーク殿下、アリシアさん、みんな、みんな…!
シオン。
私を好きだと言ってくれた、優しい人。
ここで戻って、お別れを言いに行く?
このままはさすがに失礼じゃない?
…でも、シオンに会ったら私はどうするのだろう。
離れがたくなる。1度でも肌を重ねたら、戻れなくなる。では会うだけにする?…いや、聡い彼の事だ、絶対に気付かれる。
─────長く、悩んだ気がする。
ううん、初めから決まっていたのかもしれない。
目を閉じ、祈る。
どうか、どうか、どうか───────
«次作へ続く»
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