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学園生活、1年目 ~前期~
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しおりを挟む剣士系イケメンと遭遇イベントが終わった半月後。
私が学園に入って初の、月イチの講師を招いた特別授業を選ぶ日がやってきた。
週に一度ある選択授業だが、月に一度のタイミングで外部から講師を招いて特別授業を行う。これは2年次になっても同様にあるそうだ。
さて何にしようかな?とカリキュラム表をキャズと眺めていると、ディーナが寄ってきた。
「コズエ、決まってないなら私と一緒に騎士コースにトライしないか?」
「えっそれだけは無理」
「そうか?でも魔術師コースを選ぶとしても、体力はないといけないし、体力作りに一度行ってみてもいいと思うのだが」
「そうかなぁ・・・」
まぁ来年度の専門授業は絶対無理だろうけど。
それに月イチの騎士団から講師を招く日なんて無理ゲーでしょ。
と、キャズに視線を合わせるとゆっくり首を横に振っている。あ、これはヤバいやつだ。
「ディーナ?キャズが死んだ魚のような目をして首を振っているんだけど・・・?」
「ああ、前回キャズと一緒に受けたんだが、いつもより授業内容が少しハードだったからな」
「・・・スコシジャナイデス」
「ディーナ、キャズがこんなになるくらいなら私には絶対無理だと思うの」
あの元気いっぱい、将来は冒険者に!って言ってるキャズがこれなんだよ?無理でしょ。
しかも外部から講師なんでしょ?これはまず『気合いだー!』みたいな授業でしょ?死ねる。
しかしディーナは笑って首を振った。
「学園側もそこは考えたみたいで、今回は本人のレベルも考慮したものにするらしい。
そこで、騎士コースが志望ではない人にも参加してもらって、どうやっていこうか考えたいみたいだ。私もコズエに同じ特訓ができるなんて思ってないさ。
でも、コズエならいい意見を出してくれそうだから、一緒に授業を受けてほしいなと」
それだけ前回は死屍累々とした状態だったらしい。
マラソンを主にしたようだけど、立ち上がれない人が続出して講師が回復魔法をかけまくる事態になったとか…
キャズも自分で回復魔法かけたらしい。それでも立ちあがるのがやっとだったとか…
「学園内で行き倒れるとは思わなかったわ」
「そんなにキツかったんだ・・・」
「二度とやりたくないわ、騎士団式の訓練とか学生がやっちゃダメよねホントに」
「そうか?確かにハードだったが、すごく勉強になったんだが」
「そうね、ディーナみたいに騎士コース志望の生徒にはいい特訓かもしれないわね・・・」
疲れたようなキャズ。
キャズも冒険者志望ということで、自分なりに体力作りもしている。体育の授業もあるが、キャズはそこで上位の成績を収めているし。私?平均です。
ディーナの言うことも一理あるし、まぁ1回くらいならいいかなぁ。もやしっ子の私に合うレベルの授業にしてください。
「じゃあ今回はディーナに免じて騎士コースの特別授業にしてみようかな」
「そうか、助かる。ありがとうコズエ。
何か教えてほしい武器があったら、私が教えるからな」
「じゃあ私でもできそうなやつ考えてくれる?」
「うん、任せておいてくれ」
希望用紙を書いてディーナに預けた。
自分も担当教師に出しに行くから、と機嫌良く持って行ってくれた。うん、美人の笑顔はご馳走です。
「あんた大丈夫なの?」
「まぁ治癒魔法は自分でも使えるしなんとかなるかなって」
「終わり頃に見に行くわ、立てなくなったら困るもんね」
「ありがとうございますキャズ様」
「いいのよ、ディーナにお姫様抱っこされるよりはいいでしょ」
「なにそれ」
キャズが前回ヘロヘロになった時は、保健室までディーナがお姫様抱っこして連れて行ってくれたらしい。
「死ぬほど恥ずかしかったわ・・・ディーナって運動着になると『男装の麗人』みたいになるじゃない?
周りの女子達の目線がもう・・・」
「あーね・・・」
「平民だけじゃないのよ、特別授業って普段の選択授業と違って貴族も平民も一緒なのよ。
貴族のお嬢様達のあのキラキラした目がね?ディーナは全く気にしていなかったみたいなんだけど」
おそらく『宝塚のスター』みたいな感じだったのだろう。貴族のお嬢様は見目麗しいディーナに憧れを持っているのではないだろうか。
ディーナって背も高くてスタイルもスラっとしてて、麗しの騎士様、って感じになるのよね。
それは夢見がちなお嬢様には目の毒だったろう。
私も同じ轍を踏まないように気をつけよう…
********************
やって参りました、特別授業。
運動着に着替え、ディーナとやってくれば…
「ねぇ、女子って・・・」
「うん、私達だけだな」
物の見事に男子、男子、男子!!!
おいどうなっているんだこれは!!!
「ディーナさん?どういうことですか?」
「おかしいな、前回はあと2人いたんだが」
ふむ、と顎に指をあてて考え込むディーナ。
そんな姿もすごく絵になって格好いいけど!
すごい注目浴びちゃってますけど!!!
「おー、すげー珍しい奴がいるじゃん」
ぽん、と肩を叩かれて振り返るとケリー。
他にもクラスの男子生徒が10人くらい。ウチのクラスは騎士コースを志望する生徒多いのかも。
「大丈夫か?前はキャズがぶっ倒れてたぞ」
「それ聞いたわ・・・」
「ま、お前が倒れたら俺が抱えてやるから気にすんな。
無理すんじゃねーぞ?」
頭をくしゃ、と撫でるケリー。ここはキュンと来る所なのでしょうが、今私が思う事はそのぶっ倒れるイメージがどんどん現実になっている事しか考えられません。
参加者の半分は貴族生徒。
運動着もあちらはグレー、こちらはベージュを基調としたデザインとなっております。
キラキラした金髪が見えるので、どうやら王子様もおられる様子。そうすると側近とも言われるあのオリヴァーさんもいるでしょう。
ま、交流ないから気にしない。
自然とケリー達クラスメイトが私とディーナの盾になってくれている。優しいね。
「各員、整列!」
良く響く声が運動場に響く。
皆心得たものでサッと整列。私はディーナに連れられて慌てて合わせる。フッ、今日は私が一番のお荷物さ!
◇◇ ◇◇ ◇◇
俺の名はオリヴァー・ドラン。
王国の中でも『公爵』という高い身分を頂いている家の生まれだ。
兄がおり、自分は次男だ。それ故に将来は家を継ぐ訳ではなく、何かしら身を立てていかねばならないだろう。
この国の貴族は16の歳を迎えると、『学園』と呼ばれる学舎に入る。上位貴族である公爵子息である自分も例外ではなく、家庭教師達に教わる勉強の日々とはまた違い、充実した時間を過ごさせてもらっている。
学園では身分の差に関係なく、自身の将来に向けて学問や武芸に励む。同じ年齢の子息・子女が集まり、交流を深めて交友関係を築く…となっているがそれは建前だ。
だが月に一度ある特別授業では、その建前もなくなる。
この授業においては、貴族も平民も関係ない。
学園では貴族と平民は学ぶ学舎も別れており、交流は数える程しかないが。限られた学園生活で違う価値観を学ぶ事は今後重要な事である、と父上や兄上からも言われていた。実際に学園で日々を過ごすと、父上や兄上の言葉にも頷けるというものだ。
そして本日は平民から女子生徒が2人参加している。
前回はもう少し多かったが、かなり本格的な訓練をした。騎士団に属している俺がやっとついていける内容だったので、生徒にはかなりきつかったのではないだろうか。
貴族生徒、男子であってもかなり辛そうであったものだ。
「さて、今日はどうなるか」
「殿下、くれぐれも無理はしないでください」
「何を言ってるんだナル、俺を王子扱いしない授業なんてそうはないんだから、満喫させてくれたっていいだろう?」
殿下は幼い頃からの友だ。その為、殿下は俺を愛称の『ナル』と呼ぶ。
「それにナル、言葉遣いはどうした?」
「・・・すまない、カーク」
「そう、それでいいんだよ。外に出れば仕方ないが、学園内では俺達は対等だ。そうだろう?」
「ああ」
2人の約束事。いずれ俺は騎士としてカーク王子に仕える事が決まっている。側近となるよう幼い頃から育てられた。他にも側近候補として何人かいる。
だからこそ、この学園にいる間は『対等な友人関係』を築こうと決めた。貴族の子息達の間での暗黙の了解事だ。ここでの友情は今後の自分達の掛け替えのない財産になる、と繰り返し親から言われてきた。
だからカークは学園内では王族としてはかなり自由に振舞っている。家格の分け隔てなく話しかけ、疑問があれば率先して教師に質問し、自分の欲求を満たしている。
そんな姿は男女問わず好ましく映る様で、婚約者がいるとはいえ、カークに懸想する女子生徒も多いらしい。
…らしい、とは俺にはわからんが、他の友人の言だ。
「なあ、ディーナ嬢はまだしも、あの女の子大丈夫だと思うか?」
そこにエドワードがやってきた。
エドワード・サヴァン。サヴァン伯爵家の子息。
俺の友人の1人だ。いつも女子生徒に囲まれているが…
こいつは『女性は全て守るべきもの』と平気でのたまう男だ。そこに貴族平民の偏りは無いらしい。
サヴァン伯爵家には、ドラン公爵家から過去何度か輿入れしていることもあり、エドとはいとこ同士だ。
幼い頃から行き来があり、同年齢と言うことで気安い。
「クロフト嬢がいる。滅多な事はないだろう。
お前が介入するとややこしい事になるから手を出すな」
「ややこしい、なんてひどくねえか?
女がいりゃあ、心配すんのは当たり前だろ?」
ひょい、と肩を竦めた。こいつはこういう奴だから、俺がどうこう言っても仕方あるまい。
だが、クラスメイトと思われる男子生徒がカバーしている様だからエドが割って入る事もないだろう。
本日の講師が来た。整列し、顔を見れば見知った顔の壮年の騎士だった。確かあの人は…
********************
整列、と言われて今日の講師さんのお話。
声を出して挨拶して、休めの姿勢で説明を聞く。
講師の騎士さんは私を見てウインク。何故に…?
「本日講師を務めるフリードリヒ・クレメンスである。前途有望な生徒の授業、非常に結構!ま、楽しんでいこうや」
あれ、割りとフランクな人だな。
最初の名乗りは騎士らしい感じだったけど、最後の一言を言った瞬間、それまでの態度を崩した感じ。
格好は騎士というより冒険者みたいなラフな格好だった。生成りのシャツに黒のズボン。その上に革鎧?うーん?私達もこれ付けるの?
軽い自己紹介の後は、ストレッチ。
その後は軽く運動場内をジョギング。
三週くらいを皆で並んで走る。
うん、これくらいなら私でも大丈夫。体育の授業でもやるもんね。ディーナも楽々走ってます。
「さて、組み分けするか」
走っている間に目星を付けたのか、生徒をグループ分けしだした。2人1組にさせ、各自革鎧と刃を潰してある剣を配られる。
「軽く運動だ。怪我すんなよ~」
その声で皆向かい合い、組手を始める。
ディーナの相手は私…ではなく、ケリー。
えーと、私は…?
何も配られずぽつん。講師さんが来い来い、と手招きをした。私は指示をもらうべく走る。
「お、よーく来たな」
「あの先生?私は何を?」
「お前さんは騎士志望じゃないだろう?
他の奴らは皆それなりに剣を持った事のある奴だけだったから、お前さんの相手はさせられんよ」
ですよねー?とはいえ、一応授業なのでね。
なにかやることないと、困るんですよ私。
そうすると、講師さんは私に違う武器を手渡した。
「つー事で、お前さんにはコレだ」
「え?・・・クロスボウ?」
「おー、よく知ってるな?さすが賢い」
それはクロスボウだった。見た目はゲームで見た事あるから、とは言えない。
私の手でも扱えるような大きさで、それほど重くもなかった。矢はセットされているが、安全装置がかかっているから大丈夫、と念を押される。
私がクロスボウを眺めている間に、講師さんは手早く的と矢を準備してくれた。万が一にも矢が変な所に飛んでいかないように風の結界まで。
私が探索魔法使えなかったら何してるかわからなかっただろう。それだけさらっと準備しちゃうんだから。
探索魔法という魔法は支援魔法の一種。
鑑定魔法が物体に対するものとしたら、探索魔法は自分の周囲を調べるための魔法。
学園に入る前に、危ない事のないようにとセバスさんに叩き込まれました。おかげで私は無詠唱で出来るまでになりました…
セバスさんの教え方はスパルタなので、大半の簡単な魔法は無詠唱、あるいは『鑑定魔法』、『探索魔法』など魔法固有名称を言うだけで発動できるまで鍛えられました…よかったんだよね、うん。
適性があると、熟練度次第でこういう事もできるらしいです。何回やらされたのかは皆さんのご想像におまかせします…
「弓でもいいんだがな、こっちの方が扱いやすいし、腕の力もそんなに要らない。とはいえ、お前さんの力だと・・・明日は筋肉痛かもしれんが」
「そ、そうかもしれません・・・」
「・・・もしかしたら身体強化の魔法が使えるか?そうするとかなり楽になるんだが」
「あ、えーと、できます」
「じゃあそれを使うといい。楽だろう」
許可をもらったから遠慮なく身体強化魔法をかける。うん、そしたら構えるのも楽かも。
とりあえずこの辺から、と的から3メートルの距離。
矢がなくなったら回収な、と言われて実践あるのみ!
よし、やるぞー!射的みたいなもんよね!
クロスボウは割と使いやすく、最初は矢が明後日の方向に吹っ飛んで行くだけだったが、次第に的の端っこに当たるようになってきた。
ダーツ…にも近いけどやっぱり気分は射的よ。
しかし3メートルから5メートルになるとまた難しい…
矢が吹っ飛んで行っても、風の魔法に遮られてある程度飛ぶと落ちる。なのでホームランかましても安心です。
最初私のへっぽこっぷりを笑って見ていた講師さんは、ある程度私が扱いに慣れてくると皆の指導をしに行った。
ちょっと休憩がてら見ていると、1人1人に言葉を掛けて指導している。現役の騎士に指導されるなんて、こういう機会でも無ければ、騎士団に入ってもないんじゃないかしら。
私は騎士団のやり方を知らないけれど、きっと先輩騎士に指導を受けたりするんだよね。今日の講師さんは壮年の方で、かなり上位の騎士なんじゃなかろうか。
すると、皆も休憩タイムになったらしい。
ディーナとケリーが私の所へやってきた。
「大丈夫か、コズエ。一人にしてしまってすまないな」
「ううん、むしろ私がディーナの相手とか言われてもただ困るだけだからいいんだよ」
「確かにな。ディーナの相手できる奴なんか限られんじゃねぇの」
「ケリーこそ。かなりヒヤッとさせられた。
私もまだまだ未熟だな」
この二人を見ていると、お互い技量をわかってて褒め合っているみたいだ。ディーナもケリーもかなり強いんだろうな。だって周りの人と違ったもん、勢いが。
私が持っているクロスボウに興味があるらしく、ケリーは貸してくれよと言ってきた。
「興味あるの?」
「まぁな。一応ひと通り武器は扱えるようになりてぇし。つか、割と重いんだな。弓に比べりゃ楽かもしれないけど、コズエにはキツいんじゃないのか?」
持ち上げて構えると、さすがにケリーは見栄えがいい。クロスボウを構えて的に向かって試し打ち。
初見でもあっさりと的の中心に当たった。
フッ、これだからイケメンって奴はよぉ…
「あ、身体強化魔法かけてるから大丈夫」
「は?」
「え?」
「ん?」
素っ頓狂な返事をしたケリーとディーナ。
あれ、どうかした?と思って私も聞き返す。
二人ともぱちくりとして、私に詰め寄って小声で話す。
「おいコズエ、身体強化魔法なんていつ習ったんだよ」
「え?居候してる所の人にだけど?万が一の時に備えてって。なんかおかしい?」
「だからってなぁ、あっさりと使えるもんなのか?
支援魔法とはいえ、まだ俺達じゃ習ってないだろ」
「あー、まぁこれからやるんじゃないの?
私は身を守る為の護身術の一環として教わったものだからわからないけど・・・」
ディーナにしてみれば『あぁタロットワークだものな、それもあるな』なんて呟いている。ケリーには聞こえてないみたいだが、当のケリーは勘弁してくれよ、と頭を抑えてため息。
しかしディーナはあっさりと気にした様子もなく、私に笑いかけている。
「まぁいいじゃないか。コズエにその心得があるのなら、剣も振ってみるか?今ならそんなに重くもないだろう」
「え、そうかな」
「私がちゃんと見ているから、安心するといい」
ディーナのお墨付きならまぁいいか。
模擬剣を受け取ると、ずっしりと重い。それでも魔法のおかげか、構える事もできた。腕がぷるぷるします。
「こ、これ、構えてるだけでも腕の筋肉鍛えられるかもしれない」
「そうか?確かにこの剣は少し重いかもな、鉄製だし」
「ディーナの使う奴は違うの?」
「私の愛剣は鋼だからな、多少魔力付与もされているし、少しこれよりも軽いかもしれないな」
「そ、そうなんだ」
「コズエ、お前腕が震えてんぞ?大丈夫か」
「そ、そろそろ、限界・・・」
あれですよ、鉄アレイ持って、手を水平に…みたいなもんよ。最初はよくても、次第に私じゃ手がぷるぷるしてくる。身体強化かかってたって、元々の筋肉量がないんだからそこまでの差はない。
疲れたらこっそりヒールかけてますから…
水分を取り、しばしの休憩の後に、ディーナ達はまた模擬戦をするらしい。今度は貴族と平民混合で。ある程度の指示を出すと、講師さんはまた私の所へやってきた。
「おし、また距離伸ばすか」
「そろそろ当たる確率がゼロに近いんですけど先生」
「ん~?そしたら今度は照準魔法使ってみちゃどうなんだ?できるだろ」
「なんですかその魔法?知らないです」
「そこまで難しくないさ、教えてやるからやってみな」
この人…セバスさん並のスパルタ…!
まさかの実地で魔法使わせるとか…!
まぁ理論の説明と、コツ、後は手ずから魔法を使ってもらえれば後は鑑定魔法の応用でやり方はわかる。
この方法はセバスさんにも延々やらされた。なので新しい魔法の覚え方はこうやっている。多分すごくデタラメな方法だと思うんだけどね。
「要は風魔法の応用みたいなもんだ。後はそれに探索魔法の情報を組み合わせて使う。
意識を集中したい一点に絞る感覚だな」
そうアドバイスを受ければ、イメージは掴みやすい。
イメージする事さえ可能であれば、私にとって魔法を構築するのはさほど難しくは無いものだ。
「『照準魔法』」
基本、攻撃魔法以外は魔法を構築する際の長い詠唱は必要ではない。
きちんとその魔法の構築、イメージさえできていれば誰にでも『魔法固有名称』を口にすれば魔法は発動する…とゼクスさんは言っていた。
なのでイメージという名の妄想力が激しい私は、大半の初級~中級レベルの魔法は無詠唱で使えるものが多い。
今回は初めて使う魔法だから、安全策を取ったけどね。
ストン、と軽い音を立てて的へ当たる矢。
えっ、さっきまでのノーコンっていったい…?
「上出来だ、お嬢」
「やりました! ・・・っていうか最初からこれ教えてもらってたらノーコン振りをお見せしなくてよかったのでは」
「それじゃ楽しくないだろう、俺が」
「まさかのそっち!?」
おいおい、とジト目になる私の頭をイイコイイコする講師の騎士さん。何この扱い。
すると、騎士さんは声をひそめて私に話しかける。
「ネタバレするとな、俺の妻の名は『アナスタシア・タロットワーク』というんだ。つまりゼクスレン殿の妹が妻だということだな」
「えっ?ゼクスさんの妹さん?」
「あぁ。だから、お嬢の事は妻から『全て』聞いている。ゼクスレン殿はご自分の弟妹に『重要案件』と言付けて話をしてきたからな」
ゼクスさんの妹さんの、旦那さんか。
ん?確か、上の妹さん、めっちゃ強くてプロポーズしてきた騎士さんに一騎打ち挑んだとか言ってなかったっけ?
つまり、この人が…?
「えっ?そうするともしかしたら先生、近衛騎士団の団長なのでは・・・?」
「あぁそうだ。今日は副官に任せてきた」
「それは・・・いいんですか?」
「なに、今回の授業で講師を、との申請書類に生徒の一覧があってね。そこにお嬢の名前があったから一度間近で見ておきたかったんだ。それを言ったらアナスタシアも残念がっていてね。学園に乗り込んでくるかという気迫だった」
やめて下さいそんな事。
大丈夫かな、受け入れの先生達の胃の調子が心配でならない。後で胃薬持って行ってあげようかな。私特製のポーションとか。
「ん?じゃあもしかしてさっきまでの魔法の無茶振りって」
「魔法の基礎はセバスチャンが見たんだろう?それにお嬢の魔法の素質は聞いているからな、あれくらいできるだろうと思ったんだ。想像通りの才能だな、騎士団に来るか?」
「いえ、体力的についてけないんで」
「はっはっは、騎士団の任務には支援部隊として魔術師に同行を頼む事もあるんだ。俺が出る時はお嬢を指名させてもらうとするかな?さっきの身体強化魔法の効果時間だって、一流どころに引けを取らないと思うぞ?」
「へっ?」
「ま、それはおいおいな。さて最後は俺が皆の相手をするとするか!お嬢は観戦でもするといい」
その後、とっても元気な先生(現役近衛騎士団長)は、生徒全員と模擬戦をし、ちぎっては投げ、ちぎっては投げを実践していました…
さすがにディーナを投げ飛ばす事はなかったけれど、王子様もケリーも吹っ飛ばされていた…まぁ相手は近衛騎士団長ですしね、問題ない…よね?
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