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学園生活、1年目 ~夏季休暇~
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休暇に入り、学園に入学する前と同じような生活へと戻った。朝起きて食事の後、セバスさんとお勉強。
学園から休暇中に課題を出されているので、それを少しずつ片付けていく事にする。
午後は魔術研究所へ。
ゼクスさんがどうしても『ケアポーション』作って欲しいって言うのよね…
材料はどんどん出してくれるから、私としてはもう単なる作業なんだけど。
薬草もスタッフさんが刻んでくれるので、私がする事はかき混ぜるだけ…なんだけど。
「これ私がやる意味ってありますかね」
「いやいやいや、コズエ様が作らないとダメなんですよ」
「こんなの誰がやっても同じですって」
「違うんですよ!本当に違うんです!」
ものすごい勢いで反応された。
それでも納得しない私に、ポーションを差し出された。
飲めって事かな?ひと口飲んでみると…
「・・・なにこれ何味?」
「コズエ様、ポーションってのはこういうもんです」
「はっ?いやいや違うし」
「いやいやいやいや違うんです、コズエ様の作ってるポーションだけがあの味なんです!
俺達もなんであんな味になるのかポーション作り続けましたよ!?でもいくらやってもこの味なんですよ!」
ドンっ!と勢い込んでポーションの瓶を机に置くお弟子さん。
周りのお弟子さん達も『そうだそうだ』と頷く。
え…私ポーションってオロC味になるんだと思ってたわ…違ったのか。
もしかして私命名ケアポーションも、もしかして邪道なのでは。解毒薬にしてみたらドク○ーペッパーの味だけど、あれも違うの!?
「えっ・・・知らなかった・・・こういうもんだと思ってた」
「いやそれは僕らの方です」
「まさかポーションの味を変えられるなんて」
「しかも美味しいし!」
「ケアポーションヤバいっす」
知らないうちに『翼をさずけるドリンク』の虜になってる人がいる!もしかして解毒薬も…?と思ったらやっぱりいた。
別の研究室の人らしいのだが、病みつきになっている人がいるらしい。待ってそれお薬であって飲み物じゃないからね!
休暇中はいつでも来てください!と熱烈歓迎を受けた。
中身はオバチャンとはいえ、見た目少女の私は研究所では潤いのようだ。
研究所にも女性いるんだけどね。
「ゼクスさん・・・これって・・・」
「コズエ殿のポーションはもはや研究所の全員が飲んでますからなぁ」
「味違うの知らなかったんですよ。他の人が作ってもああいうもんだと思ってたんで」
「非常に旨いので助かりますなぁ。研究所で徹夜続きで倒れる者もいるのですが、あのケアポーションでしたか?アレを飲ませると一発で目覚めます」
「でもちゃんと休まないとダメですよ」
「アレを飲んだら次の日は休む、という決まりを作ってますので心配無用ですわ。しかしあれはコズエ殿の世界では回復薬とは違うんでしたなあ」
「滋養強壮のエナジードリンク、って事で売ってましたね。薬というか、その手前くらいでしょうか」
「ほほう、その効果でコズエ殿が作るとああなるんでしょうな。前にも言いましたが、魔法とはイメージが重要。魔力を流して作るポーションは、そのイメージが強く影響するのでしょう」
「なるほど・・・そう言われると納得します。
確かにそんなイメージで作ってましたから」
なるほどなるほど、魔法って思ってるよりイメージが重要なんだなぁ。ポーション他の人にあげるのとか気をつけよう。
********************
久しぶりのタロットワーク本邸へ。
エオリアさんが満面の笑みで出迎えてくれる。
「お待ちしておりましたわ、コズエ様」
「お久しぶりです、エオリアさん。
これ、スイーツなのでお茶請けに食べましょう」
「まぁ、嬉しいですわ。是非いただきましょう」
今日のエオリアさんは淡いブルーのドレス。
私もサマーワンピースにレースのボレロ。
お茶会なのだから、ドレスとは言わないまでもそれなりにオシャレしていかないとね。
貴族の集まりだともっとちゃんとしたドレス着なくちゃいけないんだろうけど、これは私とエオリアさんの個人的な集まり。ということでドレスコードはなしだ。
「可愛いスイーツですこと!これはコズエ様が考えたのですって?」
「向こうの世界にあったお菓子です。とはいえ、見かけだけで普通のシュークリームですけどね」
「それだけ、だなんて!とんでもないですわ!
コズエ様、このお菓子、次の私のお茶会で出してもよろしいかしら?」
「ええ、構いませんよ!他の奥様達に見せびらかしちゃってくださいな」
うふふ、と二人で悪い笑み。
そう、私の考えた…というか地球産のスイーツは、こうして世の中に披露していっているのです…
主にエオリアさん主催のお茶会のスイーツとして。
アースランドのスイーツも、見た目はほとんど同じものなんだけど、とにかく甘い。ひたすら甘い。砂糖使いすぎじゃない?
地球のスイーツって、甘い事は甘いけど、それよりも見た目がキレイで可愛いスイーツじゃない?
それをマートンやセバスさんに話すと、見事に再現してくれちゃうのです!
ナポレオンパイが出来た時は私も歓喜でしたね!
だってあれ買ったら高いんだもの!ひと切れ、じゃなく全部自分のモノとか!食べきれないけどね!もちろん分けたけど!
マカロンもあったけど、地球ほどカラフルじゃない。それを言った今は、いろんな色を出そうとマートンはそれはもう頑張っています。7色まで来たからもういいって言ったんだけど限界まで挑戦します!ってまだ頑張ってます。
「そういえばコズエ様は、社交界デビューはよろしいのですか?」
「全然考えていませんよ?だって私の最終目的は元の世界に帰ることですからね。うっかりこちらで結婚して子供作る訳にはいきませんよ」
「あら・・・そうなんですの?」
「いつかいなくなる、って事を踏まえた上で理解してくれる男性とならいい関係になっても構いませんけど、こちらではそんな事できないでしょう?」
「そうですわね、平民の男性ならばそういった方もいるかもしれませんが、貴族となると子供を残す事に重きを置く方も珍しくありませんものね」
エオリアさんとも気心が知れてきて、こんな恋愛話もできるようになってきた。こんな話を始めてから、エオリアさんは私が本当に見かけ通りの年齢ではなく、自分と同年齢の女性だということが身に染みたようで。
今では社交界の黒い話も出てきます。リアルワイドショーの始まりです。
それにしても見た目、ふんわりはんなり上品なご婦人のエオリアさん。どうやってこんな腹黒い噂話ばっかり集めて来られるのかしら。その広げた扇子の後ろで、どんな微笑みを浮かべてらっしゃるの?ニコニコ美人にしか見えないんですけど。
「それにしましても、『貴族の奥方』といえば聞こえはいいのですけれど、中には自由奔放に夜を飛び回る蝶も多いんですのよ。
あまり派手に飛び回られる蝶にはそれとなく釘を刺してはいるのですけれど」
「そんなに、なんですか?」
「そこまで大半のご婦人が、という訳ではないんですのよ?
そうですわね、結婚なさってから数年後くらいの方が多いかしら。年季の入った方もいるにはいますけれど、そういった方は弁えていらっしゃるから」
「女性は30歳くらいからが一番そういった欲が高くなる、とも言いますからねえ。旦那様もお忙しくて寂しいのでしょうか。そう思うとなるほど、って思っちゃいます」
「そうなんですの?まぁ、そう聞くと納得してしまうお話もちらほら聞きますわね。
殿方にも困ったものですわ。目の前の蝶々1匹幸せにしてやれないのだなんて」
この手の話題、毎回出ます。
そんなに夜のお茶会は破廉恥なんですか?
こっそりやってください、こっそり。そういうのは人前にバレてはいけないものなんですから。
「私くらいの娘さん達はどうです?確か、15歳くらいで社交界デビューと同時に婚約話が盛り上がったりするんですよね?」
「まあっ♡興味がありますの?」
ずずい、と近寄ってきたエオリアさん。
え?いや、なんとなく振った話題がこうもヒットするだなんて・・・目が猛禽類みたいになってますよ?
ぱさり、と扇子を広げて口元を隠し、うふふと笑う。
「上級貴族であれば、社交界デビューを待たずとも、幼少の頃から婚約者を決められる事は多いですわね。
社交界デビューを持って正式に婚約を進める、という形が一般的ではないでしょうか」
「もう産まれた時から品定めされてるんですか?」
「ええ、そういった家柄の方々も多くいらしてよ。
とはいえ、皆様やはり王族と縁続きになる事を望みますから、現王子殿下達の婚約者が決まるまでは、婚約話も仮として進めていた家も多かったですわね」
そうよねえ、男であれば側近候補。女であれば正妃候補を目指しちゃうわよね。
とはいえ、第一王子殿下については他国の姫君と早々に婚約が決まっていた。その為、歳が近い良家の子息子女については、側近になるべく地盤を固めていったはず。
…いや、結果的にそれが今、プリンセス街道の渋滞引き起こしてるんだけども。
「学園に第二王子殿下がおりますでしょ?
あの方にも婚約者さんはいますよね?どんな美人かと思いまして」
「カーク殿下ですわね。殿下の婚約者はエリザベス・ローザリア公爵令嬢と申しますの。ストロベリーブロンドに、ピンクトルマリン色の瞳をした美少女でしてよ?確か学園にも通われているはずですけれど、コズエ様はお見かけした事はありませんの?」
「うーん、私基本的に平民達の為の建物から出ませんし・・・」
ストロベリーブロンド…?というのはピンクが入った金髪?ってことかな。
私はあまり貴族生徒との関わりないからなぁ。メグに今度聞いてみようかな。
アリシアさんが乙女ゲーのヒロインならば、そのエリザベス嬢が悪役令嬢的な?
学園で巻き起こるイベント!スチル発生!?
…気をつけて見ておこう。気分はすっかりプレイヤーなのです。
歓談中、メイドさんがエオリアさんにお手紙を持ってきた。それを優雅な手付きで開けるエオリアさん。こういうちょっとした仕草がまた優雅なのよねえ。
読み終わると、私にそのまま手紙を差し出した。なに?
「お茶会のお誘い、ですか?」
「ええ、王妃様から是非にとのお誘いですわ」
「へえ」
「へえ、ではありませんわ。コズエ様もですわよ」
「はいっ!?」
「この間のナポレオンパイ、でしたかしら?王妃様のお茶会にお持ちしたら絶賛してましたの。それで学園が休暇になったら『必ず』連れてきて欲しいって」
「ちょっと無理ですよ!私マナーとかわかりませんし!」
「大丈夫ですわ、王妃様と私、コズエ様だけですから」
「いやいやいや心の準備とか」
「明日ですから、ドレスはこちらで準備しますわね。
気にしなくてもコズエ様のサイズは制服を作った時にもうバッチリ取ってありますから。
昨日ライラにサイズが変わってないか聞いたら、変化なしということですから、作っておいたドレスで大丈夫ですわね!」
「待って、作っておいたって何」
「こんな事もあろうかと、私、コズエ様用のドレスを何着か作っておきましたのよ!」
「こんな事、って計画通りじゃないですか!」
「ほほほほほ、このくらい淑女の嗜みですわ!
明日の手みやげスイーツは、このスワンシュークリームですわね!」
外堀は完全に埋まっていました。
私に対抗手段はない…内々のお茶会だからマナーはいらない、その代わり王妃様も自分も学生時代を思い出して、少し楽にしたいからお願い、と頼み込まれれば…
うう、休暇が休暇でなくなっていくよ…?
********************
翌日の天気はスカッと快晴。
私の気分は曇天ですけど、何か?
「おはようございます、コズエ様」
「ライラ裏切り者」
「コズエ様、これは避けては通れない道なのです」
「恨んでやる」
「私は良かれと思ってお受けしたのですが」
「どこが?王妃様のプライベートお茶会とか難易度高すぎるよ・・・」
「プライベートでしたからお受けしたんです。通常のお茶会ならばこの国の高位貴族がほとんど参ります。そんな中に出ていきたいですか?コズエ様」
「無理です」
「ですから、プライベートなんです。
前からお誘いは来ておりましたが、全て旦那様とエオリア様がお断りしております。せめて今回の王妃様とのお茶会さえ出ておけば、今後王妃様を差し置いて招待してくる方もいませんので」
「ライラさん、グッジョブです」
「お褒めに預かり光栄です」
ライラは美しいカーテシーで一礼。(学園で学びました)
私もなんとかこれだけできる。ダンス?そんなものマイムマイムくらいしか出来ません。頑張ればカチャーシーできるかもしれないけどね!
丸め込まれたような気もするが、お世話になっている代償とすれば仕方ないのか。
よし、1日だ、今日1日乗り越えよう。
マートンとセバスさん手作りのスワンシュークリームを持って、本邸へ。
ちなみにスワンシュークリームについては、セバスさんがお気に入りで自分で作らないと気が済まないらしい。マートンたじたじである。
本邸に着くと、さっそくお風呂から…
なぜお風呂から…?と思うのだが本日はエオリアさんプレゼンツなので、もう好きにさせることにしました。
髪も結い上げ、肌にはいい匂いのオイルをすり込み、綺麗なドレスを着せられる。ヒールの靴を履けば、即席お嬢様の出来上がりだ。
「見事ですわ、コズエ様!」
「サイズぴったりですね」
「私の見立てに狂いはありませんわね!
足はどうです?ヒールは高くありませんかしら」
「こっちでは履いてませんけど、元々このくらいの高さのヒールは履きなれてるんで大丈夫ですよ」
ヒールの高さは7センチってとこかな。
私は9センチとか履いてたりしたから、そこまで大変ではない。でもプラットフォーム欲しいなぁ。こっちの靴ってそこまではないのかな。
「どうかしまして?」
「エオリアさん、女性のヒールって、みんなこういう作りですか?」
「そうですわね、何か違いまして?」
私は馬車で王城に向かいながら、プラットフォームの入ったパンプスの説明をした。
高いヒールを履くと、床からの高さで足首に負担がかかるものだが、それをつま先部分にも高さを付けることによって、負担を軽減すると。
ついでにソール部分にクッション性は付けられないのかなあ?
そう話をすると、キラリと目を光らせる。
「これはいい事を聞きましたわ!
コズエ様、このお話は王妃様と一緒にしましょう」
「え、はい・・・」
なぜ王妃様?この国で一番上は王妃様だからかな?許可取ったら製作もしやすくなるって事でOK?
学園から休暇中に課題を出されているので、それを少しずつ片付けていく事にする。
午後は魔術研究所へ。
ゼクスさんがどうしても『ケアポーション』作って欲しいって言うのよね…
材料はどんどん出してくれるから、私としてはもう単なる作業なんだけど。
薬草もスタッフさんが刻んでくれるので、私がする事はかき混ぜるだけ…なんだけど。
「これ私がやる意味ってありますかね」
「いやいやいや、コズエ様が作らないとダメなんですよ」
「こんなの誰がやっても同じですって」
「違うんですよ!本当に違うんです!」
ものすごい勢いで反応された。
それでも納得しない私に、ポーションを差し出された。
飲めって事かな?ひと口飲んでみると…
「・・・なにこれ何味?」
「コズエ様、ポーションってのはこういうもんです」
「はっ?いやいや違うし」
「いやいやいやいや違うんです、コズエ様の作ってるポーションだけがあの味なんです!
俺達もなんであんな味になるのかポーション作り続けましたよ!?でもいくらやってもこの味なんですよ!」
ドンっ!と勢い込んでポーションの瓶を机に置くお弟子さん。
周りのお弟子さん達も『そうだそうだ』と頷く。
え…私ポーションってオロC味になるんだと思ってたわ…違ったのか。
もしかして私命名ケアポーションも、もしかして邪道なのでは。解毒薬にしてみたらドク○ーペッパーの味だけど、あれも違うの!?
「えっ・・・知らなかった・・・こういうもんだと思ってた」
「いやそれは僕らの方です」
「まさかポーションの味を変えられるなんて」
「しかも美味しいし!」
「ケアポーションヤバいっす」
知らないうちに『翼をさずけるドリンク』の虜になってる人がいる!もしかして解毒薬も…?と思ったらやっぱりいた。
別の研究室の人らしいのだが、病みつきになっている人がいるらしい。待ってそれお薬であって飲み物じゃないからね!
休暇中はいつでも来てください!と熱烈歓迎を受けた。
中身はオバチャンとはいえ、見た目少女の私は研究所では潤いのようだ。
研究所にも女性いるんだけどね。
「ゼクスさん・・・これって・・・」
「コズエ殿のポーションはもはや研究所の全員が飲んでますからなぁ」
「味違うの知らなかったんですよ。他の人が作ってもああいうもんだと思ってたんで」
「非常に旨いので助かりますなぁ。研究所で徹夜続きで倒れる者もいるのですが、あのケアポーションでしたか?アレを飲ませると一発で目覚めます」
「でもちゃんと休まないとダメですよ」
「アレを飲んだら次の日は休む、という決まりを作ってますので心配無用ですわ。しかしあれはコズエ殿の世界では回復薬とは違うんでしたなあ」
「滋養強壮のエナジードリンク、って事で売ってましたね。薬というか、その手前くらいでしょうか」
「ほほう、その効果でコズエ殿が作るとああなるんでしょうな。前にも言いましたが、魔法とはイメージが重要。魔力を流して作るポーションは、そのイメージが強く影響するのでしょう」
「なるほど・・・そう言われると納得します。
確かにそんなイメージで作ってましたから」
なるほどなるほど、魔法って思ってるよりイメージが重要なんだなぁ。ポーション他の人にあげるのとか気をつけよう。
********************
久しぶりのタロットワーク本邸へ。
エオリアさんが満面の笑みで出迎えてくれる。
「お待ちしておりましたわ、コズエ様」
「お久しぶりです、エオリアさん。
これ、スイーツなのでお茶請けに食べましょう」
「まぁ、嬉しいですわ。是非いただきましょう」
今日のエオリアさんは淡いブルーのドレス。
私もサマーワンピースにレースのボレロ。
お茶会なのだから、ドレスとは言わないまでもそれなりにオシャレしていかないとね。
貴族の集まりだともっとちゃんとしたドレス着なくちゃいけないんだろうけど、これは私とエオリアさんの個人的な集まり。ということでドレスコードはなしだ。
「可愛いスイーツですこと!これはコズエ様が考えたのですって?」
「向こうの世界にあったお菓子です。とはいえ、見かけだけで普通のシュークリームですけどね」
「それだけ、だなんて!とんでもないですわ!
コズエ様、このお菓子、次の私のお茶会で出してもよろしいかしら?」
「ええ、構いませんよ!他の奥様達に見せびらかしちゃってくださいな」
うふふ、と二人で悪い笑み。
そう、私の考えた…というか地球産のスイーツは、こうして世の中に披露していっているのです…
主にエオリアさん主催のお茶会のスイーツとして。
アースランドのスイーツも、見た目はほとんど同じものなんだけど、とにかく甘い。ひたすら甘い。砂糖使いすぎじゃない?
地球のスイーツって、甘い事は甘いけど、それよりも見た目がキレイで可愛いスイーツじゃない?
それをマートンやセバスさんに話すと、見事に再現してくれちゃうのです!
ナポレオンパイが出来た時は私も歓喜でしたね!
だってあれ買ったら高いんだもの!ひと切れ、じゃなく全部自分のモノとか!食べきれないけどね!もちろん分けたけど!
マカロンもあったけど、地球ほどカラフルじゃない。それを言った今は、いろんな色を出そうとマートンはそれはもう頑張っています。7色まで来たからもういいって言ったんだけど限界まで挑戦します!ってまだ頑張ってます。
「そういえばコズエ様は、社交界デビューはよろしいのですか?」
「全然考えていませんよ?だって私の最終目的は元の世界に帰ることですからね。うっかりこちらで結婚して子供作る訳にはいきませんよ」
「あら・・・そうなんですの?」
「いつかいなくなる、って事を踏まえた上で理解してくれる男性とならいい関係になっても構いませんけど、こちらではそんな事できないでしょう?」
「そうですわね、平民の男性ならばそういった方もいるかもしれませんが、貴族となると子供を残す事に重きを置く方も珍しくありませんものね」
エオリアさんとも気心が知れてきて、こんな恋愛話もできるようになってきた。こんな話を始めてから、エオリアさんは私が本当に見かけ通りの年齢ではなく、自分と同年齢の女性だということが身に染みたようで。
今では社交界の黒い話も出てきます。リアルワイドショーの始まりです。
それにしても見た目、ふんわりはんなり上品なご婦人のエオリアさん。どうやってこんな腹黒い噂話ばっかり集めて来られるのかしら。その広げた扇子の後ろで、どんな微笑みを浮かべてらっしゃるの?ニコニコ美人にしか見えないんですけど。
「それにしましても、『貴族の奥方』といえば聞こえはいいのですけれど、中には自由奔放に夜を飛び回る蝶も多いんですのよ。
あまり派手に飛び回られる蝶にはそれとなく釘を刺してはいるのですけれど」
「そんなに、なんですか?」
「そこまで大半のご婦人が、という訳ではないんですのよ?
そうですわね、結婚なさってから数年後くらいの方が多いかしら。年季の入った方もいるにはいますけれど、そういった方は弁えていらっしゃるから」
「女性は30歳くらいからが一番そういった欲が高くなる、とも言いますからねえ。旦那様もお忙しくて寂しいのでしょうか。そう思うとなるほど、って思っちゃいます」
「そうなんですの?まぁ、そう聞くと納得してしまうお話もちらほら聞きますわね。
殿方にも困ったものですわ。目の前の蝶々1匹幸せにしてやれないのだなんて」
この手の話題、毎回出ます。
そんなに夜のお茶会は破廉恥なんですか?
こっそりやってください、こっそり。そういうのは人前にバレてはいけないものなんですから。
「私くらいの娘さん達はどうです?確か、15歳くらいで社交界デビューと同時に婚約話が盛り上がったりするんですよね?」
「まあっ♡興味がありますの?」
ずずい、と近寄ってきたエオリアさん。
え?いや、なんとなく振った話題がこうもヒットするだなんて・・・目が猛禽類みたいになってますよ?
ぱさり、と扇子を広げて口元を隠し、うふふと笑う。
「上級貴族であれば、社交界デビューを待たずとも、幼少の頃から婚約者を決められる事は多いですわね。
社交界デビューを持って正式に婚約を進める、という形が一般的ではないでしょうか」
「もう産まれた時から品定めされてるんですか?」
「ええ、そういった家柄の方々も多くいらしてよ。
とはいえ、皆様やはり王族と縁続きになる事を望みますから、現王子殿下達の婚約者が決まるまでは、婚約話も仮として進めていた家も多かったですわね」
そうよねえ、男であれば側近候補。女であれば正妃候補を目指しちゃうわよね。
とはいえ、第一王子殿下については他国の姫君と早々に婚約が決まっていた。その為、歳が近い良家の子息子女については、側近になるべく地盤を固めていったはず。
…いや、結果的にそれが今、プリンセス街道の渋滞引き起こしてるんだけども。
「学園に第二王子殿下がおりますでしょ?
あの方にも婚約者さんはいますよね?どんな美人かと思いまして」
「カーク殿下ですわね。殿下の婚約者はエリザベス・ローザリア公爵令嬢と申しますの。ストロベリーブロンドに、ピンクトルマリン色の瞳をした美少女でしてよ?確か学園にも通われているはずですけれど、コズエ様はお見かけした事はありませんの?」
「うーん、私基本的に平民達の為の建物から出ませんし・・・」
ストロベリーブロンド…?というのはピンクが入った金髪?ってことかな。
私はあまり貴族生徒との関わりないからなぁ。メグに今度聞いてみようかな。
アリシアさんが乙女ゲーのヒロインならば、そのエリザベス嬢が悪役令嬢的な?
学園で巻き起こるイベント!スチル発生!?
…気をつけて見ておこう。気分はすっかりプレイヤーなのです。
歓談中、メイドさんがエオリアさんにお手紙を持ってきた。それを優雅な手付きで開けるエオリアさん。こういうちょっとした仕草がまた優雅なのよねえ。
読み終わると、私にそのまま手紙を差し出した。なに?
「お茶会のお誘い、ですか?」
「ええ、王妃様から是非にとのお誘いですわ」
「へえ」
「へえ、ではありませんわ。コズエ様もですわよ」
「はいっ!?」
「この間のナポレオンパイ、でしたかしら?王妃様のお茶会にお持ちしたら絶賛してましたの。それで学園が休暇になったら『必ず』連れてきて欲しいって」
「ちょっと無理ですよ!私マナーとかわかりませんし!」
「大丈夫ですわ、王妃様と私、コズエ様だけですから」
「いやいやいや心の準備とか」
「明日ですから、ドレスはこちらで準備しますわね。
気にしなくてもコズエ様のサイズは制服を作った時にもうバッチリ取ってありますから。
昨日ライラにサイズが変わってないか聞いたら、変化なしということですから、作っておいたドレスで大丈夫ですわね!」
「待って、作っておいたって何」
「こんな事もあろうかと、私、コズエ様用のドレスを何着か作っておきましたのよ!」
「こんな事、って計画通りじゃないですか!」
「ほほほほほ、このくらい淑女の嗜みですわ!
明日の手みやげスイーツは、このスワンシュークリームですわね!」
外堀は完全に埋まっていました。
私に対抗手段はない…内々のお茶会だからマナーはいらない、その代わり王妃様も自分も学生時代を思い出して、少し楽にしたいからお願い、と頼み込まれれば…
うう、休暇が休暇でなくなっていくよ…?
********************
翌日の天気はスカッと快晴。
私の気分は曇天ですけど、何か?
「おはようございます、コズエ様」
「ライラ裏切り者」
「コズエ様、これは避けては通れない道なのです」
「恨んでやる」
「私は良かれと思ってお受けしたのですが」
「どこが?王妃様のプライベートお茶会とか難易度高すぎるよ・・・」
「プライベートでしたからお受けしたんです。通常のお茶会ならばこの国の高位貴族がほとんど参ります。そんな中に出ていきたいですか?コズエ様」
「無理です」
「ですから、プライベートなんです。
前からお誘いは来ておりましたが、全て旦那様とエオリア様がお断りしております。せめて今回の王妃様とのお茶会さえ出ておけば、今後王妃様を差し置いて招待してくる方もいませんので」
「ライラさん、グッジョブです」
「お褒めに預かり光栄です」
ライラは美しいカーテシーで一礼。(学園で学びました)
私もなんとかこれだけできる。ダンス?そんなものマイムマイムくらいしか出来ません。頑張ればカチャーシーできるかもしれないけどね!
丸め込まれたような気もするが、お世話になっている代償とすれば仕方ないのか。
よし、1日だ、今日1日乗り越えよう。
マートンとセバスさん手作りのスワンシュークリームを持って、本邸へ。
ちなみにスワンシュークリームについては、セバスさんがお気に入りで自分で作らないと気が済まないらしい。マートンたじたじである。
本邸に着くと、さっそくお風呂から…
なぜお風呂から…?と思うのだが本日はエオリアさんプレゼンツなので、もう好きにさせることにしました。
髪も結い上げ、肌にはいい匂いのオイルをすり込み、綺麗なドレスを着せられる。ヒールの靴を履けば、即席お嬢様の出来上がりだ。
「見事ですわ、コズエ様!」
「サイズぴったりですね」
「私の見立てに狂いはありませんわね!
足はどうです?ヒールは高くありませんかしら」
「こっちでは履いてませんけど、元々このくらいの高さのヒールは履きなれてるんで大丈夫ですよ」
ヒールの高さは7センチってとこかな。
私は9センチとか履いてたりしたから、そこまで大変ではない。でもプラットフォーム欲しいなぁ。こっちの靴ってそこまではないのかな。
「どうかしまして?」
「エオリアさん、女性のヒールって、みんなこういう作りですか?」
「そうですわね、何か違いまして?」
私は馬車で王城に向かいながら、プラットフォームの入ったパンプスの説明をした。
高いヒールを履くと、床からの高さで足首に負担がかかるものだが、それをつま先部分にも高さを付けることによって、負担を軽減すると。
ついでにソール部分にクッション性は付けられないのかなあ?
そう話をすると、キラリと目を光らせる。
「これはいい事を聞きましたわ!
コズエ様、このお話は王妃様と一緒にしましょう」
「え、はい・・・」
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