異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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学園生活、1年目 ~冬季休暇~

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儀式は続く。ゆらり、ゆらりとランタンの灯りが舞う。王都にいる人々の想いを乗せて。空へと、未来へと舞い上がる。


「・・・この儀式に初めてアルゼイドの人間を迎えた時です。魔力の移動自体はスムーズに行う事ができた。元々この儀式も王が一人でやるものではなく、その時の王族総出で行っていたのです。
私が王族であった時は父と母、私と弟妹達。五人もいれば交代で儀式を進めるには充分でした。人が足りない時は、タロットワークの中でも中枢に近い者を選んで」

「はい」


私とゼクスさんは儀式を続けながら話をする。周りではお弟子さん達も入れ替わりながら進めていた。まだ半分というところ。広場は全員が入るには狭いから、入れ替わりながランタンを飛ばす事になっているらしい。


「王権を移譲し、最初の年です。アルゼイドの人間・・・王と王妃、王子達を迎えて儀式を行いました。しかし、『想い』を受け取る事はできなかったのです」

「それは・・・」

「我々も驚きました。数年続けるうちに、唐突に王の様子が変わりました。『想い』を受け取り、感じたのでしょうな。その時に確信したのです、彼等には届いていなかったことに」





********************





「・・・私が民の『想い』を受け取れるようになったのは、儀式に参加して数年経った頃だ。先王も数年かかっていた。あのランタンには古い魔法が使われていて、灯した者の祈りを乗せて飛ぶのだと。そしてその灯りを王族が受け取る事で、民と王族の絆を結ぶ」

「そんな、事が・・・」
「では俺達にはできていないという事ですか」


シリスは落胆の色を。カークは悔しいようで声を荒らげた。私は手を上げて、その声を遮る。


「お前達は今年が初めてだろう。最初から上手くいくとは思っていない。現に王妃にはこの儀式に参加させてはいない」

「なぜです?母上にも参加する権利はあるのでは」
「そうです、兄上と俺だけでなく、母上にも参加してもらった方が」

「・・・『想い』を受け取るには制約がある」





********************





「え・・・」


儀式に参加できる要素。
それは『タロットワークの血』を引いていること。

長い事議論した結果だそうだ。これまでたくさんのアルゼイド王家の人間に儀式に数年続けて参加してもらった結果、『タロットワークの血』を引いている人間でなければ『想い』を受け取る事ができない。

これまではタロットワーク家が王族だったので、その血族が儀式をしていたけれど、王権移譲した事で齟齬が出てきてしまったのだと。

アルゼイド王家には、過去何人もタロットワーク家より姫君が嫁入りをしている。婿入りした人もいるのだとか。だから『想い』を受け取る資格があるらしい。


「古来、この国を興したのはタロットワークの人間です。この儀式も一族の者が創り出した。それ故にランタンに組み込まれた魔術は『タロットワークの血』に反応するようにしてあるのかもしれません。この魔術を組み換えるには、まだ儂でも知識が足りず・・・」

「そうだったんですね。・・・え、待ってください、でもゼクスさんのお弟子さん達は?」


今儀式ができるのは、『師匠と僕達だけなので』って言ってなかったっけ?だとしたらどうして?


「彼等は皆、タロットワークの血族なのです」

「っ、」

「本家ではなく分家の出となりますな。タロットワークは名を変え、国中に散っているのですよ。この家名を名乗るのは本家だけです」


そう言う事なのか…だから…。
さっき王様と殿下達だけが上がってきたのもそれが理由なんだろうな。シュレリア様は他国から嫁いできた王女様だって聞いてるし。『タロットワークの血』を引いていることが条件なら、シュレリア様にはできない。

でも『タロットワーク』が王族でないのなら、徐々に血は薄まるのではないのかしら。ゼクスさんがランタンに組み込まれた魔術を解読するのが間に合えば、それをアルゼイド王家に変えることは可能なのかな。


「どうしました?」

「あ、いえ、このままだと徐々にタロットワークの血は王家には入っていかないのではないのかなと」

「その為のカーク殿下の婚約者ですな」

「え?・・・まさか、エリザベス嬢って」


ゼクスさんによると、エリザベス嬢のローザリア公爵家にも、過去タロットワークから姫君が降嫁しているらしい。それだけでなく、王家には定期的にタロットワークの血族より伴侶を選ぶようにしているそうだ。
シリス殿下の婚約者は外国の姫君だったけど、その王家にも過去タロットワークの姫君が嫁いでいるのだとか。

雁字搦めのようだが、正妃にタロットワークの血族を迎えなければ、側妃に迎えるのだとか。タロットワークは元々たくさんの家に嫁いで行っているようで、ほとんどの貴族にタロットワークの血は入っている。
…これはどこの国でも行われていることで、そうやって外の血を入れたり、戻したりして、王家の血を絶やさないように保つのだろう。


「ちょっと待ってください、それが理由だとしたら、なんで私には伝わってるんです?」

「それが不思議なんですなぁ、異世界から来たという事が作用しているとしか思えないのですがな」


う、うーん?魔法ってイメージの差で強弱発生するみたいだし、妄想力の差で私にも伝わりやすかったって事かな?

けれど、早くこの『想い』が殿下たちにも伝わればいいのにな。これを受け取る、受け取らないってかなり今後の王族の在り方に作用する気がするのよね。





********************





休憩する為に階下へ降りる。すると、ちょうどと言うべきかバットタイミングというのか。
部屋から出てきた殿下ズに会ってしまった…


「ゲ」

「休憩ですか?コズエ殿」
「お前、『ゲ』ってなんだ」

「カーク、女性に対する態度ではないんじゃないかな?」


シリス殿下に窘められるカーク殿下。
これよこれ、君に足りないのはこの優しさですよ。

私は待機していた部屋に戻り、休憩することに。殿下達も揃って着いてきた。
控えていたメイドさんがお茶を出してくれる。


「お疲れ様でした」

「ありがとうございます、シリス殿下」

「『想い』はどうですか?私達にはまだ伝わらないようだから」


シリス殿下を見ると、ちょっとしょんぼりした感じ。カーク殿下も。ルジェンダ陛下からお話を聞いたのかな。
私はお茶で唇を湿らせ、言葉を掛ける。


「・・・とても、素晴らしいですよ。言葉では表現できないくらい。ストレートに自分の中に届きます。『感謝』と『敬愛』の気持ちが」

「『感謝』と『敬愛』ですか?」
「国に対する、という事か?」

「そうですね、『今年も一年無事に過ごせました』『私達の生活を護ってくれてありがとう』『平和をくれてありがとう』・・・って所でしょうか。何より王家に対して日々の感謝を伝える想いも多いですよ」

「そうですか・・・民は私達に感謝をしてくれるんですね」
「当たり前じゃないですか、兄上」

「カーク殿下?私の『質問』に返す答えは見つかりましたか?」


『当たり前』という言葉はいただけない。まだ子供の君が使ってもいい言葉じゃないよね?私の言葉の棘に気付いたのか、カーク殿下はバツの悪い顔をした。


「それは、まだ、定まってないが」

「でしたら民からの感謝を『当たり前』と思うのはまだ早いのでは?」

「っ、」
「カーク、君が悪いよ?民からの感謝を『当たり前』だと思ってはいけない。それは国民彼等が決める事で、私達王族が決めていいことではないんだ」


さすがは次期王太子だ。権力を履き違えてはならない事を知っている。カーク殿下がこれくらいに育つにはあと何年必要なのだろう。やっぱり次男って甘やかされて育つのかしらね。


「すみません、私は儀式に戻りますので。お付き合いくださりありがとうございました」


彼等二人を残して私は部屋を出た。
さて、儀式終了までもう少しかな?ゼクスさんも休憩進めてあげないとね。

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